American Journal of Enology and Viticulture

Volume 63, No.4 (2012)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/467

A.L. Robinson, D.O. Adams, P.K. Boss, H. Heymann, P.S. Solomon and R.D. Trengove
Influence of Geographic Origin on the Sensory Characteristics and Wine Composition of Vitis vinifera cv. Cabernet Sauvignon Wines from Australia
pp.467 – 476

[豪州産カベルネ・ソービニヨンワインの官能特徴およびワイン成分へ及ぼす地理的オリジンの影響]
カベルネ・ソービニヨン(CS)ワインの官能特徴およびワイン組成と豪州の地理的表示(GI)の関係を調べた。GIであるBarossa Valley, Clare Valley, Coonawarra, Frankland River, Langhorne Creek, Mount Barker, Margaret River, McLaren Vale, Padthaway および Wrattonbullyにて製造された市販ワインについて、記述的官能分析を行い、官能的に寄与する物質の特徴を調べた。有意に区別できる官能寄与物を用い、標準変量分析を行ったところ、各GIが他と明瞭に判別できることが証明された。評価に使用したワインについて、最近開発された分析法で350を超える揮発性物質を調べたところ、主要な非揮発物質も定量出来た。各GIに特徴的な物質の候補を同定するため、部分的最小二乗判別分析にて、メトキシピラジン、メントン、イソメントン、carvacrol、δ-オクタラクトン, p-メチルアセトフェノン、m-dimethoxybenzene, タンパク沈殿性タンニン, および単量体アントシアニンを含む、組成を分析した。その結果、豪州産CSワインは各地理的オリジンに関連した一般的な官能寄与物質を有することが証明された。本研究では、各GIに関連した多くの候補物質が同定されたので、更なる研究が必要と考えられる。この研究は豪州のCSワインの地域性に関する最初の研究である。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/477

M. Fragasso, D. Antonacci, S. Pati, M. Tufariello, A. Baiano, L.R. Forleo, A.R. Caputo and E. La Notte
Influence of Training System on Volatile and Sensory Profiles of Primitivo Grapes and Wines
pp. 477 – 486

[仕立て方がプリミティヴォ・ブドウおよびワインの揮発性物質および官能プロファイルに及ぼす影響]
特徴的な品種香を有するワインでは、ブドウのアロマ増強および、そのブドウとワイン組成の関係は重要性を増している。特異的なブドウ栽培条件を含む、ブドウの仕立て方は、ブドウの揮発性成分に影響する。イタリア、Apulia地域における、小木仕立て、両側ギヨー、フォアレイ(four ray)の3種の仕立て方が、プリミティヴォ・ブドウの揮発成分および得られたワインの揮発性成分と官能評価に及ぼす影響を調べた。遊離および結合体の揮発性成分をGC/MSにて分析した。訓練パネルにより官能分析を行った。小木仕立ておよび両側ギヨー仕立ては、ブドウおよびワインのアロマ前駆体と揮発成分の蓄積を改善し、ワインの官能評価も改善した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/487

I. Lesschaeve, A. Bowen, and J. Bruwer
Determining the Impact of Consumer Characteristics to Project Sensory Preferences in Commercial White Wines
pp. 487 – 493

[市販白ワインにおける官能嗜好性プロジェクトにおよぼす消費者特徴の影響調査]
ワインの消費習慣や態度の異なる3消費者を演繹的に選択し、白ワインについて官能嗜好調査を行った。市場を代表する、単一の感覚特徴だけに基づく客観的な選択を確実にする為、ワインをステップワイズに選択した。訓練された官能記述パネリスト(n = 10)により、選択ワインの官能プロファイルを決定した。消費者(n = 120)を3群に分け、12種の白ワインを評価した。ワインの記述的官能データと消費者の特徴により、消費者嗜好を説明するため、内部嗜好マッピングを行った。その結果、演繹的に選んだ消費者群間に、嗜好性の有意な相違は認められなかった。個人の嗜好スコアのセグメント化により、二つの明瞭なセグメントが明らかとなり、最も大きいセグメントは77%に相当した。消費者の多数は、演繹選択群とは関係なく、オーク様および燃えるような(高アルコール)ワインの反対である、甘くてフルーティなワインを好んだ。人口統計学的および態度の2、3の特徴が、二つの嗜好セグメントに認められたが、それらは、最初の演繹選択群と関係しなかった。今回の白ワインに対する消費者嗜好の調査結果は、他のワインスタイルでの発見や種々の消費者群から今までに得られたことを確認するものであった。即ち、多くのワインのスタイルに共通の主要な選択嗜好が、ドライさ、燃えるような(高アルコール)、オーキィな特質と反対に、甘くてフルーティな感覚の特徴によって誘導されたことを示唆した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/494

A.K. Hjelmeland, T.S. Collins, J.L. Miles, P.L. Wylie, A.E. Mitchell, and S.E. Ebele
High-Throughput, Sub ng/L Analysis of Haloanisoles in Wines Using HS-SPME with GC-Triple Quadrupole MS
pp.494 – 499

[ワインのGC-トリプル四重極質量分析付HS-SPMEによるng/Lレベルの高スループット、ハロアニソール分析]
ハロアニソール(HA)汚染は、カビのような異臭である「コルク臭汚染《を引き起こす。コルク臭汚染は、毎年ワインおよび関係産業に多大な経済的搊失を生じさせている。従って、ワイナリーやコルク製造会社では、コルクのHAをモニターするため、強力な品質管理体制を確立してきた。その化合物は官能閾値が極めて低い(2,4,6-トリクロロアニソール、TCAで~1から4 ng/L)ので、HAを官能閾値以下で検出するため、非常に高感度の分析方法が望まれている。そこで、ワイン中で頻繁に検出され、コルク臭に関係するHA (TCA、2,3,4,6-テトラクロロアニソール= TeCA、2,3,4,5,6-ペンタクロロアニソー= PCA、および2,4,6-トリブロモアニソール= TBA)を同時分析する方法を示す。GC-トリプル四重極質量分析装置にヘッドスペース固相ミクロ抽出法(HS-SPME)を組み合わせた方法は、官能閾値以下である≤1.0 ng/LレベルのHA分析が可能である。この方法は完全に自動化されており、内部標準物質の添加以外には、サンプル調製操作も必要ない。この方法は、抽出時間10分、抽出前5分間のインキュベーション時間のみが必要で、ハイスループットである。本方法は、コルク抽出物のHA分析に容易に適応可能である

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/500

P.D. King, D.J. McClellan, and R.E. Smart
Effect of Severity of Leaf and Crop Removal on Grape and Wine Composition of Merlot Vines in Hawke’s Bay Vineyards.
pp.500 – 507

[除葉および摘果の強度がホークスベイブドウ園のメルローブドウとワインの組成に及ぼす影響]
ブドウ樹の成育バランスの操作はブドウとワインの品質を向上させるために広く実施されている。これまでに報告されている収量制限から得る利益は曖昧である。この研究は基部の除葉と収量制限の果実とワイン組成に及ぼす影響および最適の品質をもたらす樹体のバランスの指標を調査するために、ニュージーランドの冷涼気候にあるホークスベイにおいて、2シーズン(2006-2008)にわたって実施した。3段階の着果部位における基部葉の除去処理を行った。摘房無の平均収量17.5 t/haに対して中程度摘房処理は平均15%、あるいは強摘房処理は35%の摘房を行った。処理はメルロー樹のベレゾン前に行った。除葉は果実組成に影響を与えなかったが、ワイン中の総アントシアニンとフラボノール ケルセチン-3-グルコシドが増加した。対照的に、摘房処理はマストの糖濃度と滴定酸度を増加させた。摘房処理はワインのアントシアニンに影響しなかったが、アントシアニン中のマルビジン-3-グルコシドの比率と総フェノールは優位に増加した。樹体バランスの容認できる指標に関連して、実験樹は新梢成長と樹冠密度が過剰でバランスが悪かった。6.0 t/ha 程度の収量制限は、日照部位にある葉面積の許容能力と、最適な成熟度に果実を熟させ高品質ワインを生産するために必要な葉面積との平衡状態をもたらす。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/508

D. Molitor, M. Behr, L. Hoffmann, and D. Evers
Impact of Grape Cluster Division on Cluster Morphology and Bunch Rot Epidemic
pp. 508 – 514

[ブドウ果房の分割が果房の形態と房枯病感染に及ぼす影響]
水平に果実を分割する(果房の中央から下部を切り落とす)ことがワイン組成を最適化するための効果的な手段の構成要素となると考えられる。この仮説を試験し、このブドウ栽培法の最適な実施時期を決定するために、果房分割の果房形態、房枯病(灰色かび病)程度および収量や可溶性固形物含量などの収穫要素に及ぼす影響をルクセンブルクのワインブドウ栽培地帯のVitis vinifera L.品種ピノ・グリおよびリースリングにおいて2010年と2011年に調査した。処理は開花前(BBCH57)からベレゾン(BBCH81)までの間に5回行った。両品種とも開花後の果房分割処理はすべて果房の構造を緩め、房枯病の程度を低下させた。果房分割が遅くなるほど、果房構造への効果がより判然としていた。密度指標は果実構造の適当な物差しであり、房枯病に対する感染しやすさの素質となる。果房分割は収量減少(30%まで)をもたらすが、収量低下は開花後の処理で時期とともに大きくなった。開花後の果房分割は着果負担を抑制し、雑菌の汚染を減少させ、成熟期間を延長させることを通してブドウ果実組成を改善することで、ブドウの熟度を改善し、ワイン品質を最適化することを助けると思われる。開花後の水平に果実を分割することは冷涼地帯における高品質ワイン生産のための効果的な栽培手法として推奨できると考えられる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/515

G.D. Hirson, H. Heymann, and S.E. Ebeler
Equilibration Time and Glass Shape Effects on Chemical and Sensory Properties of Wine
pp.515 – 521

[ワインの化学的官能的性質における平衡化時間とグラスの形状効果]
5種類のグラス(白ワイン用グラス、ボルドー赤ワイン用グラス、赤ワイン用グラス、INAOテースティング用グラス、エルレンマイヤー・グラス)を用い、ゲヴェルツトラミネール・ワインについて、平衡化時間を3種類(0、5、10分)として、グラスの形状とヘッドスペースの化学組成および官能的な特徴について調べた。ヘッドスペースの組成は、グラスの形状、平衡化時間により変化し、グラスの形状と平衡化時間にも相互関係が認められた。グラス形状のパラメーターは、平衡化時間が長い方が、ヘッドスペースの化学組成と良く相関した。種々の平衡化時間の時、香りの記述的官能強度は、グラスの形状により有意に変化した。これらの有意な効果にもかかわらず、形状パラメーター(容量、高さ、グラス口の直径、最大直径、D比、注いだ容量)と香りの記述的官能評価強度とは相関しなかった。香り強度へのグラス形状の影響は、平衡化時間0分では殆どなかったが、5あるいは10分の平衡化時間では影響が大きかった。ボルドーおよびINAOグラスは、長い平衡化時間の時、フルーティさおよび総アロマ強度を増大した。一方、赤ワイングラスはホットなエタノールの特徴を増大した。ワインは10分以上開けておくことが、定性的にも定量的にも、官能的および化学的に変化をもたらすことが確かめられた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/522

I. A. Zasada, E. Riga, J. N. Pinkerton, J. H. Wilson and R. P. Schreiner
Plant-Parasitic Nematodes Associated with Grapevines, Vitis vinifera, in Washington and Idaho
pp. 522 – 528

[ワシントンおよびアイダホ州におけるブドウ樹Vitis vinifera に関わる椊物寄生性センチュウ]
ワシントン州東部およびアイダホ州においてワインブドウ(Vitis vinifera) 園に散在する椊物寄生性センチュウの調査を実施した。もっとも遭遇する(調査園の50%以上)椊物寄生性センチュウはMeloidogyne hapla(ネコブセンチュウ), Paratylenchus spp.(ネグサレセンチュウ), およびXiphinema spp.(オオハリセンチュウ)で、 アイダホ州では Pratylenchus spp. と Helicotylenchus spp.(ラセンセンチュウ)が見られた。これらのセンチュウの発生頻度は、両州で同程度であったM. haplaを除いてアイダホ州でワシントン州東部より常に大きかった。ブドウ園で使用されている被覆作物の種類や灌漑法と前年の収量の調査は、土壌中のセンチュウの存在量に影響しなかったが、センチュウ集団の差異が地理的地域(AVAs、アメリカブドウ栽培地域)間で観察された。27の果汁用ブドウ(V. labruscana)ブドウ園についても赤および白ワインブドウ(V. vinifera)と果汁用ブドウの間のセンチュウ集団の比較をするために採集した。Meloidogyne hapla およびXiphinema spp. は果汁用ブドウ園に比べ赤・白ワインブドウ園において、より共通的に検出された。一方、Mesocriconema xenoplax と Paratylenchus spp. は赤ワインブドウに比べ白ワインブドウと果汁用ブドウにおいて、より共通的に検出された。椊物寄生性センチュウはワシントン州東部およびアイダホ州のブドウ園で共通的に検出されたが、これらのセンチュウのこの地域におけるワインブドウ生産力に及ぼす影響についての調査が残されている。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/529

L.J.R. Lawless, R.T. Threlfall, L.R. Howard, and J. F. Meullenet
Sensory, Compositional, and Color Properties of Nutraceutical-Rich Juice Blends
pp.529 – 537

[薬用栄養成分の豊富な果汁ブレンドの組成と色の性質]
椊物化学成分の豊富な果物は健康食品の性質をもち、それで製造される果汁は健康食品メーカーの第一のターゲットである。保存中の消費者受容性、組成、色、官能評価の変化を理解することは、健康成分豊富な果汁の成功に上可欠である。果汁(ブラックベリー、ブルーベリー、コンコード)をABCD混合デザインにてブレンド(3種の主要果汁、3種の2種果汁ブレンド、4種の3果汁ブレンド)した。貯蔵前の評価では、記述的官能訓練パネルは、コンコード含有ブレンドは、ブラックベリーおよびブルーベリー果汁含有ブレンドに比較し、一般により甘く、苦みが少なく、収斂味が少なく、酸味が少ないことを示した。組成、色、官能評価により、甘さは総フェノール (r = −0.88)し、総アントシアニン(r = −0.75)し、色の濃さ(r = −0.84)、収斂味(r = −0.92)と逆相関し、水溶性固形分(r = 0.92)、重合色素(r = 0.78)と正の相関を示した。消費者(n = 108)に、全体的な嗜好度を9ポイントの口述官能スケールで評価させた。平均嗜好スコアは100%コンコード果汁(7.79)が高く、中程度は100%ブルーベリー果汁(5.47)で、低かったのは100%ブラックベリー果汁(2.95)であった。消費者の受容度は、可溶性固形分、総アントシアニン、紫の色、赤色、収斂味、甘さ、ブドウの香りにより決定された。組成、色、記述的官能評価は、2℃または21℃で200日保存後に調べた。保存前には100%ブルーベリー果汁の総アントシアニンが最も高く(67 mg/100 mL)、100%ブラックベリー果汁の総フェノールが最も高く(249 mg/mL)、100%コンコード果汁の重合色素が最も高かった(23%)。2℃および21℃での保存中に、重合色素は増加し、総アントシアニンは減少した。果汁のブレンドは健康食品としてのバランスを増強し、消費者の受容度を維持した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/538

L.F. Casassa, L.S. Keirsey, M.S. Mireles, and J.F. Harbertson
Cofermentation of Syrah with Viognier: Evolution of Color and Phenolics during Winemaking and Bottle Aging
pp.538 – 543

[シラーとヴィオニエの同時発酵:ワイン製造および瓶貯蔵中の色およびフェノール類の生成]
シラーに白ブドウ品種ヴィオニエを5、10、20重量%混合し、同時発酵(cofermentation)を行い、プレス後580日まで、ヴィオニエ添加の色やフェノール化合物組成に及ぼす影響を調べた。ヴィオニエ10および20%添加は、殆どの色パラメーターを低下させた。580日後、ワインのタンニンおよび鉄反応性フェノール化合物に相違はなかった。100%シラー・ワインと5%ヴィオニエ混合ワインには、アントシアニンとフラボノールに差はなかったが、20%ヴィオニエ混合ワインは、アントシアニンとフラボノールが少なく、これらのフェノール化合物が希釈されたことが示唆された。以上の結果から、ヴィオニエの添加は、最終的なワインのフェノール組成および色の安定性を改善しないことが示唆された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/544

H. Kobayashi, S. Matsuyama, H. Takase, K. Sasaki, S. Suzuki, R. Takata, and H. Saito
Impact of Harvest Timing on the Concentration of 3-Mercaptohexan-1-ol Precursors in Vitis vinifera Berries
pp. 544 – 548

[Vitis viniferaブドウ果粒の3-メルカプトヘキサン-1-オール前駆体濃度に対する収穫時期の影響]
Vitis viniferaブドウ果粒の芳香成分3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)前駆体濃度に対する収穫時期の影響について調査した。シャルドネにおける3MH前駆体の蓄積は早朝に増加し、日中に低下した。3MH前駆体の蓄積における日変動は収穫年時に関わらずいくつかのブドウ品種に共通であった。これらの結果は早朝の収穫は日中の収穫に比べ、ワイン中の3MHおよび30メルカプトヘキシルアセテート濃度が高くなる可能性を示唆した。これらの発見は芳香性ワインの生産を目的とするブドウ栽培および醸造技術の改善に貢献できると思われる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/549

J. Ibáñez, G. Muñoz-Organero, L.H. Zinelabidine, M.T. de Andrés, F. Cabello, and J. M. Martínez-Zapater
Genetic Origin of the Grapevine Cultivar Tempranillo
pp. 549 – 553

[ブドウ品種テンプラニーリョの遺伝的起源]
テンプラニーリョ(Tempranillo)は赤ワイン用のもっとも重要なスペインブドウ品種で現在はスペイン以外の世界中のワインブドウ生産地にも椊栽されている。ブドウ遺伝資源収集系統における一塩基多型(SNP)とマイクロサテライトマーカーによる遺伝子型分類によりAlbillo MayorとBenedictoはテンプラニーリョであると同定された。これらの結論は二つの方法の組み合わせによる評価により138(SNPで90、マイクロサテライトで48)のLOD値を伴って統計的に高く支持された。Albillo Mayorはイベリア半島中央部でいまでも栽培されているよく知られた品種である。対照的にBenedictoは今日ほとんど栽培されておらず、スペインの主要なブドウ関係の書物にも歴史的な記録が欠落している。スペイン品種のほとんどを含むデータベースにおけるテンプラニーリョの推定される子孫の調査により、一つの品種ColorailloはテンプラニーリョとMaravia Dulce(元の吊称Marufo)の子孫と推定された。葉緑体マイクロサテライトマーカーの分析はテンプラニーリョが雄親であることを示した。加えて、テンプラニーリョの一つの推定の親子関係が検出され、片親はAlbillo MayorisでCastellana Blancaと関係があり、もう一方の親はBenedictoでBenedicto Falso de Aragonと関係があった。

A. Coniberti, V. Ferrari, L. Fariña, F. Carrau, E. Dellacassa, E. Boido, and E. Disegna
Role of Canopy Management in Controlling High pH in Tannat Grapes and Wines
pp. 554 – 558

[タナー・ブドウとワインにおける仕立て方の高pH制御に対する役割]
ウルグアイにおけるVitis vinifera L.タナー・ワインの主要な品質に影響するのは、高いpHである。肥沃な土壌は、樹勢を強くし、高いKの利用により、ブドウのpHが高くなる。本研究の主要な目的は、3シーズンに亘る部分的除葉と側枝除去の、果汁とワインのpH低下効果を調べることである。樹冠の陰になっている部分の部分除葉は、他のパラメーター即ち、水溶性固形分、有機酸、アントシアニン、フェノール化合物に影響せず、ブドウのK蓄積を減少し、酒石酸に対するリンゴ酸の割合を減少し、ワインのpHを低下させた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/559

J. A. Taylor and T. R. Bates
Sampling and Estimating Average Pruning Weights in Concord Grapes
pp. 559 – 563

[コンコードブドウの平均剪定重量のサンプリングと評価]
剪定重は栽培者にとってブドウ生産体系の中で樹体サイズの有用な指標となる。しかしながら剪定重は商業的な状況ではめったに調査されないが、それは栽培者が測定するためにどの程度の量が必要か決定する情報がほとんどないからである。ニューヨーク州Lake Erie Research and Extension Laboratoryでコンコード(V. labruscana Bailey)について3年間、個別樹の剪定重を集中的に調査した。個別樹および近隣樹をまとめた調査の結果から得られる集団の分散は、栽培者を支援するための無作為抽出計画を決定するのに有効である。23反復の支柱間サンプル(3樹ごとのサンプリング)に基づくサンプリング計画がサンプリングにかかる時間を最少にし、測定の正確性と情報の価値を最大限とするもとを適度に保証することが示唆された。分散の空間的分析は同じサンプリング計画が調査面積(0.93 ha)より大きいサイズの区画でも、その区画での管理手法と環境条件が均一と考えられれば外挿可能であることが示唆された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/564

M.F. González, J.M. Gascueña, and A.M. Morales
Identification and Relationships of Grapevine Cultivars Authorized for Cultivation in Castilla La Mancha (Spain)
pp.564 – 567

[カスティーリャ・ラ・マンチャ州(スペイン)で栽培を認可されたブドウ品種の同定]
26の核ゲノム・マイクロサテライト座および5つの葉緑体ゲノム・マイクロサテライト座を分析することによって、カスティーリャ・ラ・マンチャ州(スペイン)での栽培が認可されたブドウ品種の遺伝的特性の基準を樹立した。ブドウでよく認められ、監理上の問題を引き起こす命吊法の間違い(異吊や異物同吊)を確認する方法として評価すること、そして親子鑑定を行うことが目的である。結果として、Pardina種やJáen Blanco種の異吊であるVerdoncho種の遺伝的特性に差は認められなかった。Alarije種はTorrontés種と遺伝的に同一であるので、2つの法律上の身分を持っている。Albillo種、Coloraíllo種やMoravia Dulce種のように命吊に影響する異物同吊の例もいくつか認められた。これらは、異なる品種のグループを包含しており、Albillo Dorado種のように、以前の記述がないものも含まれていた。本研究では、Tempranillo種とMoravia Dulce種の交雑(すべてMoravia Dulce種を母親とする)からAlbillo Dorado種、Coloraíllo種、Moribel種が誕生したことを確認した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/568

J. Bigliazzi, M. Scali, E. Paolucci, M. Cresti, and R. Vignani
DNA Extracted with Optimized Protocols Can Be Genotyped to Reconstruct the Varietal Composition of Monovarietal Wines
pp.568 – 573

[最適化された方法で抽出されたDNAから、単一品種吊ワインの品種構成を遺伝子型で再現することができる]
試験醸造および市販の単一品種吊ワインの醸造に使われたブドウ品種を遺伝子レベルで同定するために、新しいDNA抽出法を確立した。単純反復配列(SSR)解析により、Merlot種、Pinot noir種、Zinfandel種、Riesling種、Sauvignon blanc種、Sangiovese種およびAlicante種から醸造された7つのワインを解析した。ワインから抽出されたVitis vinifera DNAの平均抽出量をRT-PCR法により評価した結果、2,199 から 87,995 gc(ゲノムコピー)/mLの範囲であった。本研究は、試験醸造および市販ワインのいずれでも、統計学的に有意な一致(PI ≤ 10−6)のもと、ワイン醸造に使われたブドウ品種を同定することに成功した初めての報告である。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/4/574

R. Chagas, S. Monteiro, and R.B. Ferreira
Assessment of Potential Effects of Common Fining Agents Used for White Wine Protein Stabilization
pp. 574 – 578

[白ワインタンパク安定化用の一般のファイニング剤の潜在効能評価]
ワイン業界では、タンパクや無機イオン交換剤を含む、種々のファイニング剤が使用可能である。これらファイニング剤は、基本的にワインのフェノール化合物レベルの制御に使用される。しかし、それらは他のワイン成分とも反応し、しばしば副作用を示す。少なくとも、ワインのタンパク混濁の可能性が指摘される。6種の一般的ファイニング剤-カゼイン、卵白アルブミン、アイシングラス、キトサン、およびポリビニルポリピロリドン(PVPP)について、マスカット・アレキサンドリア・ワインのタンパク混濁の可能性およびタンパクおよびフェノール化合物濃度に及ぼす影響を調べた。ベントナイトをポジティブ対照とし、ファイニングしないワインをネガティブ対照にした。対照と比較し、選択したファイニング剤により、異なる結果が得られた。卵白アルブミンとキトサンは、ワインを安定化しなかったが、タンパク混濁生成において、少ないが有意の減少効果が認められた。一方、キトサンとPVPPはベントナイトを助け、ワインの殆どのポリフェノールを除去した。従って、キトサンのファイニングはワインのポリフェノール画分を除去し、濁り生成可能性の減少を誘導する。PVPPは、ポリフェノール除去効果は高いが、濁り生成の可能性は残した。分析したファイニング剤はワインのタンパク含量に有意に影響しなかったが、著量のポリフェノールを除去した。しかし、ファイニングしたワインのタンパク安定性に、明らかな効果は認められなかった。以上より、これらファイニング剤は白ワインのタンパク安定性に有意な貢献をしないことが示され、白ワインの安定性にはベントナイトが一番効果的であることが再確認された。

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