American Journal of Enology and Viticulture

Volume 66, No.4 (2015)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/403

D. Pap, A.J. Miller, J.P. Londo, and L.G. Kovács
Population Structure of Vitis rupestris, an Important Resource for Viticulture
pp. 403-410

[ブドウ栽培において重要な資源であるVitis rupestrisの集団構造]
北アメリカの野生ブドウVitis rupestrisはブドウ栽培において重要な遺伝資源であるが、その自然個体群は激しく減少している。我々はミズーリ州オザーク高原およびオクラホマ州ウォシタ山地から7つのV. rupestris集団をサンプリングし、集団構造について、対立遺伝子の多様性、ヘテロ接合性および遺伝的分化を評価するために14のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決定した。我々は、V. rupestrisにおける遺伝的多様性が多くのV. vinifera野生種集団、異系交雑の被子椊物で認められるものと類似していることを見出した。我々はV. rupestris集団間で有意な遺伝的分化を検出した(確率密度関数ΦPT = 0.105)。いくつかの集団ではハーディー・ワインベルクの法則から有意な逸脱は認められず、他の集団間では緩やかな近親交配が確認された。ミズーリ州の集団とオクラホマ州の集団間の最も大きな分化はベイズンクラスタ化アプローチおよび主座標分析により指示され、明らかに地理的距離によるものであった。ミズーリ州の集団内の遺伝的分化はわずかであった。我々は集団分化および遺伝的浮動はV. rupestris固有の特性であると仮定する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/411

A. Gambuti, G. Han, A.L. Peterson, and A.L. Waterhouse
Sulfur Dioxide and Glutathione Alter the Outcome of Microoxygenation
pp. 411-423

[亜硫酸とグルタチオンはミクロオキシゲネーションの影響を変える]
SO2とグルタチオン(GSH)が高および低レベルのカベルネ・ソービニヨンワインにて、23 Lのパイロット・スケールで、ミクロオキシゲネーション(MOx)処理を行った。処理により、O2、アルデヒド、反応誘導産物が増加し、一方、アントシアニン、バニリン反応性フラボノイドおよびSO2が減少した。処理の間、低GSHワインでは遊離のSO2が枯渇し、溶存酸素レベルも低下し、同時にアセトアルデヒド、ピラノアントシアニン類、重合色素、アセトアルデヒド・アセタールが増加した。この結果は、酸素による直接の遊離ラジカル反応による、エタノールのフェントン酸化および他の酸化反応加速の可能性を示す。高濃度GSHワインでは、最初はGSHの保護効果が示され、アントシアニンは保護された。しかし、その保護効果は部分的であった。一方、GSHは恐らく、揮発性チオール類の消失を防ぐ効果を示すが、赤ワインの色素安定性を保護しない。なぜなら、SO2もGSHもMOxによる反応を調節するが、その反応は幾らか異なり、ワインの製造工程や熟成中の一つまたは他の酸化産物の制御を行うからである。SO2とGSHレベルは、大きな相違はあるが、MOx反応速度と関係しているので、MOx酸化速度の指標となり得る。しかし代替として、アセトアルデヒド・アセタール類のレベルは、MOx反応の酸化蓄積程度の有用な指標になる可能性がある。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/424

B.L. Komm and M.M. Moyer
Effect of Early Fruit-Zone Leaf Removal on Canopy Development and Fruit Quality in Riesling and Sauvignon blanc
pp. 424-434

[フルーツゾーンの早期除葉がリースリングおよびソーヴィニヨン ・ブランの樹冠成長および果実品質に及ぼす影響]
樹冠管理は質の良いワイン用ブドウを生産する上で重要である。2012年、2013年に、ワシントン州プロッサーの北に位置する商業用ブドウ畑2カ所(リースリングおよびソーヴィニヨン・ブラン)でフルーツゾーンの早期除葉を評価した。フルーツゾーンの早期除葉は3つの異なるタイミングで実施し、非除葉区を対照区とした。除葉法として、開花前、開花時および開花後4週間後に、樹冠両側のフルーツゾーンにあるすべての葉および副梢を完全に除去した。各々の樹はいずれの年も同じ処理を施された。マイナス要素はいずれの年でも全フルーツゾーンで観察されなかった。除葉を行った時、除葉のタイミングに関わらず、樹冠のフルーツゾーンにおける副梢の成長および樹冠の補充は対照区よりも少なかった。除葉はまたリースリングのフルーツゾーンにおける散布効率を上げたが、その影響は散布のタイミングと除葉のタイミングの関係に相関があった。2013年には、開花前除葉は対照区および開花後除葉4週間目での除葉よりソーヴィニヨン・ブランにおける灰色かび病による房腐れを有意に減少した(p = 0.01)。2013年には、リースリングの開花前除葉により果汁中のテルペン濃度が増加した(p = 0.03)。2012年には、リースリングの開花後除葉は開花前除葉に比べ果汁中の酸を減少した(p = 0.04)。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/435

S.C. Ward, P.R. Petrie, T.E. Johnson, P.K. Boss, and S.E.P. Bastian
Unripe Berries and Petioles in Vitis vinifera cv. Cabernet Sauvignon Fermentations Affect Sensory and Chemical Profiles
pp. 435-443

[カベルネ・ソービニヨン発酵に於いて未熟果粒と葉柄はワインの官能と化学組成に影響する]
 葉柄、花軸、葉はブドウ果以外の全ての物質(MOG)であり、ブドウ樹由来ではあるが、赤ブドウ・マスト発酵の主要なコンタミ物質である。高レベルMOGがコンタミしたブドウは、ワイナリーで格下げ評価や受け取り拒否となるが、手摘や選果をすればMOGは減少する。葉柄はマストに含まれるMOGの最も普通のものであるが、その化学組成や赤ワインへの官能や化学組成への影響はあまり知られていない。カベルネ・ソービニヨンワインに0.5%あるいは、それ以上のMOG(葉柄または未熟果)を添加し、その官能プロファイルを記述的評価(n = 12)により調べた。官能評価の結果、マストへの10%葉柄添加はワインの官能評価にインパクトを与え、対照ワインに比べ、花のようなアロマを増加し、苦味を減少した。また、未熟(青い)ブドウから製造したワインと比べ、より高いボディーを与えた。この官能評価結果は、マスト中で多くなった葉柄がテルペン濃度を増加したことと関連した。メトキシピラジンは、カベルネ・ソービニヨンワインの有害コンタミ物質である。マストに未熟果を増加させれば、させるほどワインの主要メトキシピラジン、3-イソブチル-2-メトキシピラジンが増加した。0.5%あるいは、それ以上の未熟果を発酵中に添加したワインは、葉柄を添加して製造したワインに比べ、官能評価で酸味が強くなり、葉および緑色野菜の香りがより強かった。以上の結果は、ワインメーカーにブドウ収穫方法選択の、ワインの官能と組成へ影響の大きさの理解を提供する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/444

L. Lerno, M. Reichwage, R. Ponangi, L. Hearne, D.E. Block, and A. Oberholster
Effects of Cap and Overall Fermentation Temperature on Phenolic Extraction in Cabernet Sauvignon Fermentations
pp. 444-453

[カベルネ・ソービニヨン発酵の粕帽と全体の発酵温度のフェノール成分抽出への影響]
赤ワインのフェノール類含有量はワインの色、口当たり、熟成ポテンシャルに影響する。多くの発酵パラメーターやワイン醸造技術がフェノール抽出に影響するが、一般的に、発酵温度が最大の因子であることが知られている。しかし、発酵中の温度は一定ではなく、粕帽と液の間に温度勾配が生じる。フェノール類抽出への温度の影響を調べるため、120 Lスケールでカベルネ・ソービニヨンの発酵を行った。そこでは、活発な発酵の間、粕帽とマストの温度を一定に、あるいは粕帽とマストの温度勾配を一定に保持した。発酵中、毎日2回サンプリングし、フェノール類含有量はHPLCにて単量体を分析し、総アントシアニンと重合タンニンはUV-可視スペクトロメーターで測定した。実験の結果、粕帽とマストの温度は、その由来に依存したが、フェノール類抽出に大きな影響を与えた。果皮フェノールについては、温度は抽出速度に影響したが、最終濃度に影響しなかった。温度を上げると、抽出が速くなった。種子のフェノール類については、発酵温度を上昇すると、抽出速度と最終濃度の双方が上昇した。以上より、フェノール類の抽出には、マストの温度は粕帽の温度より重要であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/454

Y. Zhang and M. Keller.
Grape Berry Transpiration Is Determined by Vapor Pressure Deficit, Cuticular Conductance, and Berry Size
pp. 454-462

[ブドウ果実の呼吸を蒸気圧負債、クチクラ・コンダクタンスおよび果実サイズで決定する]
3つの遺伝的に異なるVitis品種を用いてブドウ果実の呼吸を決定する生育変化や要因を調査した。呼吸率は、カスタム設計した房用チャンバーを使用して房全体で測定し、切り取ったブドウ果実の重さを測ることによって個々の果実でも測定した。2つの方法で得られた結果はよく一致していた。チャンバー法は、切り取った果実の呼吸は変化しないという仮定を実証し、また、房全体の呼吸に対し穂軸の呼吸はわずかであることも示した。果実の呼吸は、呼吸の駆動力の主な決定因子である蒸気圧負債とともに振幅した。果実における呼吸率と、よりわずかではあるが、クチクラ・コンダクタンスは果実が赤/紫(~13 Brix)の時にピークを迎え、その後果実成熟が進むにつれ減少した。果実成熟後期でのクチクラ・コンダクタンスの減少によって、果実の呼吸率と果実表面積間の正の直線関係が果実の成熟後弱くなった。果実の呼吸とクチクラ・コンダクタンスの生育ステージのパターンは類似しているにも関わらず、コンコード(Vitis labruscana)果実は、メルローやシラー(V. vinifera)果実に比べ、一貫してクチクラ・コンダクタンスが大幅に低かった。これらの結果は、果実の呼吸が外的要因(気温および相対湿度)と品種特異的要因(主に果実表面積やクチクラ・コンダクタンス)の両要因によって決定することを示した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/463

J.C. Danilewicz
Folin-Ciocalteu, FRAP, and DPPH• Assays for Measuring Polyphenol Concentration in White Wine
pp. 463-471

[白ワインのポリフェノール濃度測定の為のフォーリン・チオカルト、FRAP、DPPHアッセイ]
 白ワインのポリフェノール濃度測定の為、3種の方法、フォーリン・チオカルト(FC)、第2鉄還元抗酸化力(FRAP)および2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル・ラジカル(DPPH)法を比較し、SO2の影響も比較した。目的は、白ワインの酸化において、どの方法がポリフェノール濃度を一番よく示すかを調べる事である。FRAPアッセイは、Fe(III)がワインに於いて、より強い酸化物であり、亜硫酸は最大の影響を示した。DPPH法は溶媒に含まれる塩基性及び酸性上純物の影響が大きく、頑強な方法ではなく、ワインの酸性サンプルは校正標準に比較し、反応速度が遅くなった。DPPHアッセイではSO2による増大が遅く、FRAPアッセイと異なり、初発にキノン類が生成されないことが示された。FCアッセイは選択性が一番低く、値も一番大きかった。SO2が除かれたとき、3種の方法におけるポリフェノール濃度は同様で、ワインを同様に評価できた。しかし、FRAPアッセイはDPPHより頑強で、FC法より酸化可能性のあるポリフェノール濃度を良く示すことから、好適であった。得られた値はサイクリックボルタンメトリーを用い報告された範囲であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/472

A.M. Sparrow, R.G. Dambergs, K.A. Bindon, P.A. Smith, and D.C. Close A. Pons:
Interactions of Grape Skin, Seed, and Pulp on Tannin and Anthocyanin Extraction in Pinot noir Wines
pp. 472-481 (Research Note)

[ピノ・ノワールワインにおけるブドウ果皮、種子、パルプのタンニンとアントシアニン抽出に対する相互作用 ]
 果粒の組織成分(果皮、種子、パルプ)をピノノワール・ブドウより単離し、各成分のタンニン含有量を測定した。更に、ワインのフェノール・プロファイルを決定する為、粕帽攪拌ミクロ仕込みにおいて、マストから各ブドウ成分を除くか、2倊量を添加し、各果粒成分の役割を調べた。果汁とワインの単量体アントシアニン、総タンニン、非脱色性色素濃度を、酵母添加時(0日)から瓶熟成12ヶ月後(400日)まで7回測定した。マストに添加した場合、顆粒パルプはワイン・タンニン濃度の減少と関係し、その効果は種子タンニンに対し、更に選択的であった。結果として、全果粒発酵でのワインのタンニン組成は、果皮タンニンに最も選択的に影響された。非脱色性色素形成は、発酵中に種子が存在する処理でより多かった。しかし、マストに種子を2倊添加した時、ワインの種子タンニンは増加したが、アントシアニン濃度は一定のままであり、熟成中の非脱色性色素濃度も増加しなかった。果皮2倊添加処理は、熟成ワインの非脱色性色素およびタンニン濃度を上昇させた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/482

H. Fraga, R. Costa, J. Moutinho-Pereira, C.M. Correia, L.T. Dinis, I. Gonçalves, J. Silvestre, J. Eiras-Dias, A.C. Malheiro, and J.A. Santos
Modeling Phenology, Water Status, and Yield Components of Three Portuguese Grapevines Using the STICS Crop Model
pp. 482-491 (Research Note)

[STICS Crop Modelを用いた3つのポルトガル固有ブドウの季節学、水分状態および収量構成要素のモデリング]
ブドウ栽培はポルトガルの経済成長において重要な役割を担っている。季節学、水分状態、収量および潜在的なワイン特性といったブドウ栽培上のパラメーターによる初期予想を得ることができれば、ブドウ栽培者にとって非常に価値が高く、ブドウ栽培に影響するであろう。本研究は、Simulateur mulTIdisciplinaire pour les Cultures Standard (STICS) crop modelをポルトガルのブドウ生産条件および品種に適応した最初の試みである。気候、土壌および管理方法といったいくつかの栽培地特異的なパラメーターを評価した。ポルトガルのドウロおよびリスボアのブドウ栽培地のブドウ畑から品種特異的パラメーターを計測した。モデルの構成には、ポルトガルで最も重要な3品種(アラゴネス、トゥーリガ・フランカ、トゥーリガ・ナショナル)を供試した。全体的にみれば、STICS crop modelは収量、季節学ステージおよび水分状態のシミュレーションに成功したが、アルコール濃度の予測については失敗した。相対的に高いモデル精度は、収穫の計画、ブドウ畑での作業スケジュール、灌漑の方法およびワイナリーの戦略計画といった、ブドウ畑での作業やワイン醸造技術の成績を向上するであろう。STICS crop modelは、特に気候変化の効果を考慮することで、ポルトガルのブドウ栽培で短期および長期戦略を計画するための支援ツールとして上手くいきそうである。ワイン産業の出資者がSTICS crop modelを使用することにより得られる効率性の向上 は、ポルトガル内におけるワイン部門の競合性および持続可能性を増加すると期待される。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/492

P.W. Noyce, J.D.I. Harper, C.C. Steel, and R.M. Wood
A Practical Method for Staging Grapevine Inflorescence Primordia in Season 1, with Improved Description of Stages
pp. 492-501

[発生ステージの記述を改善するとともにシーズン1のブドウ花序原基を観察するための実用的な方法]
現在でも、走査型電子顕微鏡(SEM)だけがブドウ樹の陰芽中における花序原基の発生ステージを観察する唯一の方法である。この方法はこの論文で扱ういくつかの限界を持っている。我々は、花序原基のステージを同定し、多くの段階的な連続写真を撮ることにより単一のデジタル画像として立体写真を記録できる解剖光学顕微鏡を使用した、より実用的なもう一つの技術を提案する。この技術により、我々は月ごとにシャルドネの第一陰芽を解剖し、シーズン1の第一陰芽中の花序原基の発生ステージを調査した。我々の結果は、SEMの調整およびそれによる画像取得に比べて、この方法は花序原基を観察するためのより簡単で迅速且つダメージを最小限にできる方法であることを確認した。我々は陰芽を解剖するためのガイダンスを提供するとともに、ステージ0から4の花序原基のより詳細な記述および、これまで利用できなかったステージ5、6、7の花序原基の新しい記述を提供する。この研究はブドウ生理学の基礎知識を向上し、陰芽を含めた将来のブドウ研究を強化するだろう。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/502

L. Cinquanta, D. Albanese, F. De Curtis, F. Malvano, A. Crescitelli, and M. Di Matteo
Rapid Assessment of Gray Mold (Botrytis cinerea) Infection in Grapes with a Biosensor System
pp. 502-508

[バイオセンサーを用いたブドウの灰色かび病感染の迅速診断]
 Botrytis cinereaは灰色かび病の原因菌であり、ワイン生産者に莫大な経済的搊失を引き起こす。ワイン用ブドウの灰色かび病の広がりは肉眼的に評価されているが、この方法は評価者の先入観が入る傾向にある。本研究において、我々は、Botrytis cinereaの異なる感染程度を示すワイン用ブドウ中のグルコン酸およびグリセロールを評価するために、スクリーン印刷炭素電極を用いた電流測定バイオセンサーから構成される酵素反応に基づく迅速且つ単純なスクリーニング法を使用した。電流測定バイオセンサーの定量限界の下限はグルコン酸で3 mg/L(1%より少ない感染率に相当)、グリセロールで35 mg/Lであった。0.5 mL/分の流速での反応時間は直線性範囲において0.5から2分の範囲であった。本研究は、ブドウにおけるグルコン酸およびグリセロールの迅速分析のための電流測定バイオセンサーの効率性を示している。この方法により、いずれの物質の濃度もB. cinereaの感染と高い相関関係があることが確認された(R2 = 0.98)。このように、ブドウ果実のB. cinerea感染率を決定する従来の方法よりもブドウあるいは果汁中のグルコン酸を測定するために開発されたバイオセンサーは正確且つ迅速であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/509

L.E. Williams
Recovery of 15N-labeled Fertilizer by Thompson Seedless Grapevines: Effects of N Fertilizer Type and Irrigation Method
pp. 509-517 (Technical Briefs)

[トンプソンシードレス樹による15Nラベル肥料の回収:窒素肥料と灌漑法の影響]
カリフォルニア州サンホアキン・バレーで栽培されているトンプソンシードレスの窒素肥料の回収効率を明らかにするために研究を行った。ブドウ樹は点滴灌漑あるいは畝間灌漑が行われ、 15NラベルKNO3あるいは 15Nラベル(NH4)2SO4で施肥した。施肥は開花後直ぐに25 g N/ブドウ樹(~28 kg N/ha)で1回実施した。点滴灌漑の追加施肥は、4月20日から20週までの間15NラベルKNO3を10回実施した(~31 kg N/haに相当)。総バイオマス量、窒素濃度および根域も含めブドウ樹すべてに含まれる15N量を測定した。点滴灌漑されたブドウ樹では、2つの窒素肥料(硝酸態 vs アンモニア態)間の窒素回収率(~40%)に有意差は認められなかった。また、KNO3を1回散布したブドウ樹に対する2週間ごとに施肥を分割処理したブドウ樹の比較においても、有意差は認められなかった。畝間灌漑されたブドウ樹の窒素回収率は~12%であった。ブドウ樹によって吸収された15Nラベル肥料の局在性は施肥処理の方法によって有意に影響を受けた。点滴灌漑されたブドウ樹ではアンモニア態窒素のおおよそ47%が房で検出された一方、分割処理した点滴灌漑ブドウ樹では硝酸態窒素の30%だけが房で確認された。根で最も検出量が高かったのは硝酸態窒素を点滴灌漑したブドウ樹であった(単一処理、分割処理ともに)。これらの結果は、灌漑方法が窒素肥料の窒素回収率に大きく影響すること、灌漑方法と窒素のタイプがブドウ樹に吸収された窒素の局在性に影響することを示した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/518

R. Dordoni, D. Colangelo, M. Giribaldi, M.G. Giuffrida, D.M. De Faveri, and M. Lambri
Effect of Bentonite Characteristics on Wine Proteins, Polyphenols, and Metals under Conditions of Different pH
pp. 518-530 (Technical Briefs)

[種々のpHでのベントナイトのワイン・タンパク、ポリフェノール、金属類への影響]
 白ワインの種々のpHにおける、タンパク組成、ポリフェノール含有量、金属濃度そして熱安定性へのベントナイトの影響はまだ評価されていない。そこで、典型的な白ワインpH範囲(3.00~3.60)で、4種のNaベントナイトを用い、ファイニング処理前後に加熱した時のタンパク、ポリフェノール、金属類、濁り生成傾向を評価した。可溶性ワイン・タンパクは電気泳動(SDS-PAGE)にて分離し、ゲルイメージを定量的ソフトウエア(Bio-Rad, Hercules, CA)で比較した。ワインの濁り傾向、金属、ポリフェノールは加熱試験とOIVの国際法で調べた。低分子量のタンパクは、pH値に関わらず、全ての種類のベントナイトで効率よく除去された。高および中程度分子量タンパクは、除去が少なく、その効率はpHに依存し、変化が多かった。液胞のインベルターゼ(GON1)およびトーマチン様タンパクのVVTL1画分の減少は、pH 10以下でベントナイトにより誘導された。これらのベントナイトは、酸性pHの陰性効果の影響は少なかった。清澄化していないエルバルーチェ(Erbaluce)ワインの濁り生成傾向の減少は、pH 3.17、3.30、3.60で50~60°C、60~80°C、70~80°C加熱のベントナイト清澄化サンプルで特に顕著であった。高pHでのグリコプロテイン(YGP1とHmp1)の低除去は温度安定性向上に寄与した。カチオンの交換、特にNaとKは、ワインとベントナイト間で、粘度鉱物の差よりワインpHに関係した。最後に、ポリフェノールの除去程度はタンパクの除去量に相関した。タンパク除去が生じないとき、ポリフェノールの減少は、ベントナイトの特異的表面積および表面荷電により決定された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/531

M. Žulj Mihaljević, U.C.M. Anhalt, E. Rühl, M. Tomić Mugoša, V. Maraš, A. Forneck, G. Zdunić, D. Preiner, and I. Pejić
Cultivar Identity, Intravarietal Variation, and Health Status of Native Grapevine Varieties in Croatia and Montenegro
pp. 531-541 (Technical Briefs)

[クロアチアおよびモンテネグロ固有のブドウ品種の品種同定、品種間変異および健康状態]
クロアチアおよびモンテネグロ(南東ヨーロッパに位置する)には、保存が限られ、ウィルスフリーの樹が失われていくことによって、将来上可逆的に失われると思われる多くの固有(原産)ブドウ(Vitis vinifera L.)品種が存在する。それらの消失を避け、固有品種の維持を助ける目的で苗木販売者が直ぐに使える純種のウィルスフリー樹を確立するために、極めて稀で無視されてきた固有ブドウ樹の遺伝子型を評価する共同プロジェクトを立ち上げた。いくつかの圃場を探索する間に、クロアチアおよびモンテネグロの22の異なる地域から集められた284のアクセッションを、ブドウ記述学に基づくin situレベルでの記述、9つの単純反復配列(SSR)マーカーによる遺伝子型の同定、一般的な椊物ウィルスの感染を確認するための血清学的試験、配列特異的増幅多型(S-SAP)マーカーによる品種間変異評価に供試した。我々は53の他に類を見ないSSRプロフィールを確認した。そのうち25の遺伝子型はこれまでに報告されていないものであり、更に分析する価値がある。European Vitis Databaseおよび他者が公表した研究内の、稀で記述が乏しいいくつかのアクセッションの遺伝子型とこれらの遺伝子型プロファイルとを比較した結果、適切な吊前にし、これらの地域においてこれらの品種の歴史や分布に関する新しい情報を提供するための助けとなる、これまで知られていない同種異吊や同吊異種が確認された。ウィルス診断により、ブドウリーフロール病ウィルス1および3による感染が高頻度で検出され、苗木の選択が緊急に必要であることが示された。品種間変異評価は突然変異の集積が起こっていることを示しており、クローン選抜の必要性を強く示唆する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/542

T. Garde-Cerdán, J. Portu, R. López, and P. Santamaría
Effect of Foliar Applications of Proline, Phenylalanine, Urea, and Commercial Nitrogen Fertilizers on Stilbene Concentrations in Tempranillo Musts and Wines
pp. 542-547 (Technical Briefs)

[テンプラニージョ・マストおよびワインにおけるプロリン、フェニルアラニン、尿素および市販窒素肥料の葉面散布がスティルベン濃度に及ぼす影響]
 レスベラトロール(RSV)を多くしたワインは、RSVの多くの健康効果により、付加価値のある生産物になると考えられる。本研究の目的は、葉面窒素散布のテンプラニージョ・マストおよびワインのスティルベン濃度に及ぼす効果を調べることである。窒素源としてはプロリン、フェニルアラニン、尿素および市販の2種の肥料で、肥料にアミノ酸添加、無添加とした。ブドウ樹への散布時期は、ベレゾン期およびベレゾン1週間後とした。スティルベン濃度はマストとワインで良い相関がみられ、濃度はワインの方が多かった。尿素処理は、マストとワインのスティルベン濃度上昇による、RSVおよびパイシード合成に好適であった。フェニルアラニン処理ブドウから製造したワインは、対照ワインと比較しトランス-パイシード濃度が高かった。しかし、プロリン処理および市販肥料処理は、マストとワインのスティルベン濃度に影響しなかった。以上より、ブドウ園でのフェニルアラニンおよび尿素の葉面散布は、スティルベン合成促進に使用可能で、健康促進効果のあるマストとワインが得られる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/4/548

D. Molitor, L. Hoffmann, and M. Beyer
Flower Debris Removal Delays Grape Bunch Rot Epidemic
pp. 548-553

[フラワーデブリスの除去がブドウの房の腐敗の流行を遅らせる]
 開花後のブドウの房に、通常、部分的に付着して残るフラワーデブリス(壊死したフラワーキャップ、花糸、葯、受精していない発育上全の子房、発育上全の果粒)の除去が、Botrytis cinereaにより起こるブドウの房の腐敗の流行に及ぼす影響を調査する圃場試験を、2011年から2014年の期間、ルクセンブルクの白ブドウ樹(Vitis vinifera L.)cv. ピノ・グリ(4試験)そしてcv.リースリング(2試験)において実施した。ブドウの房は、未処理(コントロール)、(i)フラワーデブリスを房から除去した(brush)、(ii)房をbotryticide(活性成分フェンヘキサミド;botryticide)で処理した、または、(iii)房をbotryticide溶液に浸したはけでブラシがけした(botryticide-soaked brush)(3つの処理すべて、成長ステージBBCH73で行った)。6試験すべての平均において、房の腐敗の流行(5%発病度に達するその年の日)は未処理のコントロールに比べて有意に(p < 0.045)遅れた(それぞれ、3.7日(brush)、4.3日(botryticide)、5.7日(botryticide-soaked brush))。3つの処理の間で、流行の遅延に有意な差異は無かった。従って、フラワーデブリスの除去は、おそらく、ブドウ栽培において、農薬使用の低減、または、部分的な置き替えに貢献するであろう。自動でフラワーデブリスを除去するための効率的な技術的解決策が開発される必要がある。

一覧に戻る
ページトップ