American Journal of Enology and Viticulture

Volume 68, No.4 (2017)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/401

L. Lerno, M. Reichwage, S. Panprivech, R. Ponangi, L. Hearne, A. Oberholster, D. E. Block:
Chemical Gradients in Pilot-Scale Cabernet Sauvignon Fermentations and Their Effect on Phenolic Extraction.
pp. 401-411.

[カベルネ・ソーヴィニョン醗酵における化学成分濃度勾配とそのフェノール成分抽出への影響]
 赤ワインのフェノール濃度はワインの色と口当たりに影響する. フェノール類はブドウ破砕により得られる果汁との接触を通し,果皮と種子から抽出される. 醗酵上部の果帽の生成は,この接触を阻害するので,パンチダウンやルモンタージュ等の技術が必要である. これらの技術はフェノール類の抽出に必要であるが,一方,フェノール成分遊離や吸着の動力学及び,この不均一系における反応は十分に理解されていない. これら動力学を良く理解する為,パイロットスケール(2000 L)のカベルネ・ソーヴィニョン醗酵を,連続する2年(2011および2012年)に亘り, 4種の深さ(2種は果帽,2種は液部)からサンプリングできるタンクにて,各深さで3回サンプリングを行った. 化学成分の勾配は,ガリック酸,(+)-カテキン,(-)-エピカテキン,カフタリック酸,マルビジン-3-O-グルコシド,総アントシニン, そして濃縮タンニンに観察された.アントシアニン類など,果皮フェノール類の化学物質勾配は発酵初期に増加し,醗酵が進むと消失するのが観察された. (+)-カテキンの様に主に種子のフェノール類は,醗酵を通し化学成分の濃度勾配を示した. 種子抽出の傾向はフルロログルシノール分解にて確認された.興味深い事に,フェノール類の濃度勾配はルモンタージュの後消失したが, その後数時間で再び勾配が出来た.しかし,果皮フェノール類はルモンタージュ後~8時間後に飽和に達した. 一方,種子フェノール類には飽和現象は現れなかった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/412

A. Palliotti, T. Frioni, S. Tombesi, P. Sabbatini, J.G. C.-Castillo, V. Lanari, O. Silvestroni, M. Gatti, S. Poni:
Double-Pruning grapevines as management tool to delay berry ripening and control yield.
pp. 412-421.

[ブドウ果実の成熟遅延と収量制御を目的とした結果母枝の2度せん定管理]
 サンジョヴェーゼの休眠枝を6~7節に機械せん定(長梢)した後,萌芽後に鋏で2節に短梢せん定する2度せん定が収量と成熟遅延に及ぼす影響を 2014から2016年の3ヶ年調査した.機械せん定後すぐに鋏で2節に切り戻した区を対照(standard hand-finishing: SHF区)とし, 機械せん定枝の先端2芽から発生した新梢が10 cm未満,展葉3~4枚期に2節に切り戻した区(late hand-finishing: LHF区)と発生した新梢が 20 cm未満,展葉8~9枚期に2節に切り戻した区(very late hand-finishing: VLHF区)を比較した. 2度せん定した短梢枝の芽の萌芽期をSHF区と比較すると,LHF区では14?17日遅れ,VLHF区では24?29日遅れた. ヴェレゾン期はLHF区でSHF区より4?5日遅れ,VLHF区で7?10日遅れた. VLHF区の収量はSHF区の-43%であったが,これは芽の非萌芽ならびに着果した新梢数と果房あたりの着粒数が減少したことに起因した. SHF区より22%低いLHF区の収量は,芽の非萌芽のみに起因した. 3ヶ年のデータから,VLHFは果実成熟には影響しなかった. 一方,LHF区の果実は,SHF区の果実に比べて果汁の糖含量とpHが低く,酸度とフェノール含量が高かった. これらの結果から,LHF区の2度せん定は,SHF区と比べて低コストで,摘房を必要としないレベルまで収量を低下させ, 低アルコールでフェノール含量の高いワインの醸造を可能とする管理方法であると結論される.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/422

L.E. Williams:
Dry Matter Accumulation and Nitrogen and Potassium Partitioning in the Roots and Trunk of Field-Grown Thompson Seedless Grapevines.
pp. 422-430.

[露地栽培したトムソン・シードレスの根および幹における乾物蓄積と窒素とカリウムの分配]
 1988年と1989年の2カ年に渡り,垣根仕立ての5,6年生トムソン・シードレス800株を試料とし, 永年器官と一年生器官におけるバイオマス生産ならびに窒素とカリウムの分配を樹上から採取した器官ならびに解体した樹体試料を用いて調査した. ブドウは植え付けから試験終了まで無施肥で管理し,硝酸態窒素量が3.55 mg/Lまでの井戸水を潅水し栽培した. 一年生枝,幹および根のバイオマス,窒素およびカリウム含量は萌芽前に採取した解体試料を用いて計測した. 萌芽後の生育期間中には,果房,葉および新梢を採取し調査した.すべての試料の新鮮重量を計測し,それぞれのサブサンプルを用いて乾物重量を計測した. 根は,株および列間の中間でバックホーを用いて根の伸長できない硬土層まで堀り採取した. その結果,幹と根の乾物は前年の落葉期から当年の萌芽期と開花期の間までわずかに減少し,それ以降に乾物が蓄積し,落葉期まで乾物量が増加した. 根の窒素濃度について両年に共通して見られた特徴は,1月1日以降増加し,萌芽期と開花期の間でピークに達し,収穫後増加するというものであった. 根の全窒素の消長は,その窒素濃度の消長と類似した.根系のカリウム濃度と全カリウムの生育期間中の変化はわずかであった. 幹および根の窒素喪失は,1988年には萌芽期から収穫期までの新梢(葉,茎および房)に蓄積された窒素の約11%を占め,1989年の同期間では4%を占めた. 1989年の果実収穫後の根および幹の全窒素増加量の約85%は,老化した葉からの窒素転流によるものであった. 本研究の条件下では,翌年の萌芽から収穫までの生育に対する永年器官に保持された窒素の寄与はわずかであった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/431

L.H.M. Luna, A.G. Reynolds, F.D. Profio:
Crop Level and Harvest Date Impact Composition of Four Ontario Winegrape Cultivars, I. Yield, Fruit, and Wine Composition.
pp. 431-446.

[着果量と収穫日がオンタリオで栽培した4種のワインブドウに及ぼす影響,I.収量,果実およびワイン成分]
 ワイン醸造に適した成熟果実が得られにくい冷涼な地域において,ブドウ果実成分とワイン品質に及ぼす収穫遅延と着果量制限の影響を明らかにするため, 2011年と2012年にダブル・ギヨー仕立てのリースリング,ピノ・グリ,カベルネ・ソーヴィニヨンおよびカベルネ・フランを用いて, 2段階の着果量調節と3期の収穫期を組み合わせて栽培し,収量ならびに果汁とマストおよびワイン成分を調査した. 着果量については,無摘房区(full crop: FC区)とヴェレゾン期に新梢あたり一房とした区(half crop: HC区)を設定した. 収穫期は,それぞれの品種の商業的な収穫期(T0)と,その3週後(T1)および6週後(T2)とした. HC区では,いずれの品種においても収量が低下し,果汁糖度が上昇した. また,カベルネ・フランでは,果房重量が増大した.収穫期の遅延も,果汁糖度を上昇させ,収量を低下させた. この糖度の上昇は,着果量制限したものを商業的な時期に収穫した果実(HC+T0)より大きかった. HC区と同程度の収量低下が,リースリングとピノ・グリではT2区で見られ,カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランではT1区において見られた. ピノ・グリとリースリングでは,収穫期遅延が果汁成分に及ぼすネガティブな効果はほとんどなかったが,2012年ではサワー・ロットが見られた. 一方,T2区のカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランでは,果汁,マストおよびワインの色強度が低下し,アントシアニンおよびフェノール含量が低下した. 以上から,概して収穫遅延は,着果量制限より果実とワイン品質に有益な効果をもたらしうるが, 成熟期や収穫期に降雨量の多い可能性の高い寒冷で湿潤な地域では,収穫遅延の実施については気象条件や適用品種に注意する必要がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/447

L.J. Homich, R.J. Elias, J.E.V. Heuvel, M. Centinari:
Impact of Fruit-Zone Leaf Removal on Rotundone Concentration in Noiret.
pp. 447-457.

[フルーツゾーンの除葉が品種ノワレ(Noiret)のロタンドン量に及ぼす影響]
 ロタンドンはワイン用品種に黒胡椒様アロマを付与する化合物として最近同定された. 2年にわたる本研究は,ノワレ(Vitis種間雑種)にロタンドンが存在することを示すこと, フルーツゾーンの除葉が果実およびワインのロタンドン量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. ノワレ・ワインにおいて黒胡椒様アロマの強度とロタンドン量との相関関係も検討した.除葉を行っていない対照区と フルーツゾーンから定期的に葉を取り除きフルーツゾーンへの太陽光の照射を管理した除葉区を比較した. フルーツゾーンの除葉タイミングの影響はヴェレゾン前の除葉区とヴェレゾン後の除葉区を比較することにより評価した. 2015年では,フルーツゾーンの除葉は除葉を行っていない対照区に比べヴェレゾン前およびヴェレゾン後いずれでもフルーツゾーンへの太陽光照射が増加したが, 2014年ではヴェレゾン後のみ太陽光照射が増加したという結果になった. 2015年だけであるが,ヴェレゾン後の除葉はヴェレゾン前の除葉に比べ果実成熟期におけるフルーツゾーンへの太陽光照射を増加した. ロタンドンはヴェレゾン期あるいはヴェレゾン前に収穫した果実からは検出できなかった(検出限界0.16 μg/kg). 収穫期の果実およびワイン中のロタンドン量に関しては,2014年では処理間に差は認められなかったが, 2015年においては除葉を行っていない対照区に比べフルーツゾーンの除葉を行った区でロタンドン量が有意に高かった(1.28 μg/kgに対し1.98 μg/kg). ヴェレゾン後のフルーツゾーンの除葉はヴェレゾン前のフルーツゾーンの除葉に比べロタンドン量を増加させたが, 収穫期までにその差はなくなった. 官能評価パネルにより決定した黒胡椒様アロマの強度は各処理を実施した果実から醸造されたワイン中のロタンドン量と正に相関した(p = 0.023,r = 0.791). このことは,ノワレにおける黒胡椒様のニュアンスはワイン中のロタンドン量に正に相関することを示唆する.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/458

J.E. Ayars, I. Abrisqueta, C. Parry, A. Perry, A.J. McElrone:
Water Management of Irrigated Cabernet Sauvignon Grapevines in Semi-Arid Areas.
pp. 458-467.

[半乾燥地域で灌漑されるカベルネ・ソーヴィニヨンの水管理]
 カリフォルニア州セントラル・コーストで栽培されたカベルネ・ソーヴィニヨンにおいて,4年間の不足灌漑が節水,収量,作物荷重, 成長度および果汁成分に及ぼす影響を調査した.生育シーズンを3つの期間に分けた.一期目は萌芽から結実までとし,灌漑を行わなかった. 二期目は結実から結実後3週間までであり,水利用量の75%を処理した.三期目は結実3週間後から収穫期までであり,水利用量の25/35%(LOW処理), 50%(MED処理)および75/65%(HIGH処理)に等しい不足灌漑のいずれかを実施し葉の水ポテンシャルが?1.2 MPaに達するまで灌漑を行った. 生育シーズンにおける雨量と灌漑の総量はLOW処理で91-196 mm,MED処理で145-234 mm,HIGH処理で198-273 mmであった. 生育シーズンにおける土壌水分も含めた水利用はLOW処理で230-359 mm,MED処理で288-418 mm,HIGH処理で313-378 mmであった. 収量は生育シーズンの雨量と灌漑の総量および総水利用量(雨,灌漑,土壌水分)に直線的に相関した. 収量はMED処理およびHIGH処理に比べすべての年でLOW処理が常に低かった.一方,MED処理およびHIGH処理の収量は同じであった. 剪定重および剪定枝重の平均はすべての処理で4年間の間に減少していき,果粒重も同様に減少した. 果実およびワイン成分は気象,灌漑スケジュールおよび収穫日によって年によって異なっていたが, いずれの年も灌漑処理は果実およびワイン成分へ影響を及ぼさなかった.我々の結果は, 中程度の不足灌漑(例えばMED処理)による生育シーズンの節水は収量および果汁成分への影響は最小限あるいは全くないが, 著しい節水(例えばLOW処理)は果汁成分の変化なしで収量を低下させるため経済的には支持できないことを示す.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/468

E.J. Gale, M.M. Moyer:
Cold Hardiness of Vitis vinifera Roots.
pp. 468-477.

[Vitis viniferaの根の耐寒性]
 ブドウ樹の芽は寒冷馴化および寒冷脱馴化のパターンが確認されているが,根も同じパターンに従うのか明らかではない. 根の耐寒性の閾値および/あるいは馴化パターンに関する理解を深めることは根のダメージを減少する軽減方法の開発を可能とする. 本研究の2つの主となる目的は,1)電解質の漏出に関するプロトコルを改良し,異なる熱解析に対する実験結果を定量的に比較すること, 2)Vitis viniferaの根が前提条件となる温度に順応するか否かを評価することである.自根のメルロおよびシャルドネを用いて,現在のプロトコルを最適化し, 根の耐寒性を評価した.ブドウ樹の根が環境に順応するか否か決定するために,3つの前提条件(成長期は外気温,休眠期1週間を12°C, そして休眠期1週間を0°C)を試した.前提条件の後,根をサンプリングし,?2.0,?4.0,?6.0, または?8.0°Cに曝し,根の低温ダメージの指標となる電解質の漏出を測定した.植物組織がダメージを受けた時の温度を同定するためのもう一つの指標として, 異なる熱解析から得られる低温時の発熱線のデータを使用した.結果として,シャルドネとメルロの根は芽と異なり機能的な低温馴化パターンを有していなかった.前提条件に関わらず耐寒性(< 1.2°C)に差は認められなかった.両品種の根の耐寒性の上限値を算出した(シャルドネ,中央値 ?5.9°C;メルロ,中央値 ?5.7°C).異なる熱解析はこれらの品種の低温ダメージの閾値を評価するための電解質の漏出に対する効果的な指標のひとつであった.ブドウ樹の根の10,50,および90%が死ぬ致死温度を計算したところ,それぞれ?4.0,?5.8,および?7.0°Cであった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/478

G. Ravest, M. Mamani, L. Giacomelli, C. Moser, C. Pastenes, P. Hinrichsen:
Bioactive Gibberellins Show Differential Abundance at Key Phenological Stages for Berry Growth in Table Grapes.
pp. 478-484.

[生食用ブドウの果粒肥大期における活性型ジベレリン含量の消長]
 果粒の大きさは生食用ブドウ品質の一つとして重要な要素である.開花から成熟までに起こる生理的で生化学的な,複雑な代謝は果粒の大きさに影響する. ジベレリン(GAs)は,ジベレリン酸(GA3)の外生処理で多く報告があるように,果粒の肥大成長に重要な役割を果たす. しかし,内生ジベレリンの消長と果粒の大きさとの関係は十分に解明されていない. 果粒と種子の大きさが異なる表現系を持つルビーシードレス×サルタナ(R×S)の交雑から得た果粒を供試し,異なる4つの肥大期,開花50%(FL50), 果粒径2~4 mm(CU24),2~4 mmの1週間後(CU24+1)および6~8 mm,に分けてGA代謝物質を調査した. 結果として生理活性を持つGA1とGA4が主要となることを明確にするとともに,13-水酸化経路と非-13-水酸化経路のGA生合成経路がブドウの果粒肥大に有意に作用することを 明らかにした.果粒成長を通して,これら2種類の生理活性型GAsの増加は,この代謝系が複雑に関与することを示した. FL50からCU24+1の間,GA1はGA4より高い濃度で推移した.一方,GA4の含量は整房期の後に増加し,果径6~8 mmの時まで一定の値で推移した. CU24+1期には,GA1含量はGA4の3倍量となった.以上の結果に加え,GAs生合成量の変化が果粒径の小さな無核果粒に起こることも示したが, GA4の消長は有核の大きな果粒内の消長よりもわずかに遅れて起こった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/485

L. M.-Trujillo, P. M.-Guiu, F. L.-Bonillo, J.M. Canals, F. Zamora:
Physicochemical Characterization of the Foam of White and Rose Base Wines for Sparkling Wine Production (AOC Cava).
pp. 485-495.

[スパークリング・ワイン製造のための白およびロゼ・ベースワイン泡の物理化学的性質]
 二つのベースワインの泡を,二酸化炭素を注入し溢れさせ,その泡を回収した. 泡ワイン(FW),元のワイン(CW),泡を取った残りのワイン(RW)の泡の性質,化学組成,および物理的性質を測定した. 一般的に,FWはCWやRWより,良い泡パラメータを示し,高密度で低い表面張力と粘度を示した. また,FWはタンパク濃度が高く,エタノール濃度は低く,アルコール類,滴定酸度,エステル濃度が高かった. FWの泡性質の改善は,泡のネガティブ因子(エタノールおよび脂肪酸類)が少なく,泡のポジティブ因子(タンパク)増大によると思われた.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/496

D. Migliaro, B. De Nardi, S. Vezzulli, M. Crespan:
An Upgraded Core Set of 11 SSR Markers for Grapevine Cultivar Identification: The Case of Berry-Color Mutants.
pp. 496-498.(Research Notes)

[果皮色変異系ブドウ品種同定のための11種類のSSRの基本的組み合わせの改良]
 ピノのような黒色系野生ブドウ由来の無着色,あるいは淡色系変異個体の果皮色の違いと品種同定とを行うことができる, 分子生物学的手法の改良に焦点を当てた.ここで提案する塩基配列の組み合わせは,葉から抽出した純度の高いDNAでも,粗抽出DNAでも高い精度を示した. さらに,研究室での分析時間の短縮と分子生物学的な結果を得るための費用を削減することができた.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/499

E. Longan, M. Knutsen, J. Shinkle, R.J. Chosed:
Adapting a Photochemical Reactor to the Study of UV Ecology in Vineyard Yeast.
pp. 499-503.(Research Notes)

[ブドウ園酵母のUV生態学を研究するための光化学反応槽の利用]
 ブドウには多くの酵母属が存在するが,醗酵が進むとサッカロミセス酵母に負けてしまう. 非サッカロミセス酵母(NSY)コミュニティの選択圧は紫外線(UV)であり,特にニュージーランドのように,高いUV-B (280~315 nm)のある所では顕著である. この生態学の理解は重要である.何故なら,醗酵プロセスやテロワールにおいて,ブドウ上のNSYの役割の証拠が増加しているからである. 従って,UVの酵母コミュニティへの影響を知れば,特定の酵母コミュニティが生成する味の特徴を理解する事になると考えられる. このプロセスを完全に理解するには,ブドウ園酵母コミュニティの各NSYの波長毎のUV感受性を知ることが必要で,それにより各酵母を特徴付けられる. 問題点は,伝統的なUV感受性試験には,254 nm (UV-C)照射だけが出来る装置が使われてきたことである.UV-Cは自然環境ではオゾン層により除去される. 我々は酵母のUV-B感受性(他の波長も可能)を測定できる,Rayonet RPR-100光化学反応槽を提供する.この方法は伝統的な装置より優れており, 波長と流動性をコントロール可能で生態動力学研究に適合している.我々の方法はブドウ園のコミュニティ構造を支配する生態学的プロセスをより良く理解出来, 従って,微生物テロワールが達成可能である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/4/504

F. L. Duarte, L. Coimbra, M. B.-Couto:
Filter Media Comparison for the Removal of Brettanomyces bruxellensis from Wine.
pp. 504-508. (Technical Brief)

[ワインからBrettanomyces bruxellensisを除去するためのフィルター素材の比較]
 Brettanomyces bruxellensisはワイン製造者が特に注意を払っているワイン腐敗酵母であり,フィルターによる除菌については良く分かっていない. 本実験の目的は,ワインからB. bruxellensisを除去するために,組成や孔径が異なる濾過膜について,効果を比較することであった. B. bruxellensis株を接種したワインを用い,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)の無菌処理のためのフィルター検証のガイドラインに従った実験を行った. 0.6および1.0 μmのポリプロピレンフィルター処理では,Brettanomyces細胞数が高いワインとなった. 0.45,0.65および1.0 μmのポリエーテルスルホンフィルターまたはXグレードのマイクロファイバーフィルターでろ過したワインでは,検出されなかった. この研究では,同様の孔径を有する異なる組成のフィルターにより,B. bruxellensisのろ過が異なることが示され,フィルター組成が除去機構に関連していること, Brettanomycesをワインから除去するには,フィルター組成について十分な特徴付けが重要であることが分かった

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