American Journal of Enology and Viticulture

Volume 69, No.4 (2018)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/307

C.M. Plank, B.C. Trela:
A Review of Plastics Use in Winemaking: HACCP Considerations.
pp.307-320. (Research Articles)

[ワイン醸造におけるプラスチック利用に関するレビュー:HACCPの考慮すべき点]
 食品および飲料業界においてプラスチックの使用は広く行き渡っており,ワインにおいても同様にその使用が拡大している.プラスチックの適用性と耐久性を改善するために使われる一般的なプラスチック添加剤には,フタル酸系可塑剤やビスフェノールが含まれる.フタル酸エステルはポリ塩化ビニル(PVC),潤滑剤,乳化剤などの多くの製品に使用されている.ビスフェノールA(BPA)のようなビスフェノールやBPAを含まない代替品(BPA-NI)は,プラスチックを硬化させるために使用され,ポリカーボネートやエポキシコーティングにおいて一般的に使用されている.プラスチック容器およびクロージャからワインへのビスフェノールや可塑剤の移行は,ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)および液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)などの分析機器を使用して研究されてきた.食品は,食品との接触工程や包装材料を通してプラスチック添加物で汚染される可能性があり,環境上およびヒトの健康上の懸念につながる.この研究は,現在の食品への用途,特にワインにおけるプラスチック添加物と潜在的な浸出液に関する規制,危害分析と重要管理点(HACCP)によるアプローチ,代替可塑剤,および生物由来のプラスチックについて概説した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/321

M.L. Z.-Mendoza, N.K. Edwards, M.G. Madsen, M.A.-Kistrup, L. Puetz, T. S.-Ponten, J.H. Swiegers:
Influence of Oenococcus oeni and Brettanomyces bruxellensis on Wine Microbial Taxonomic and Functional Potential Profiles.
pp. 321-333. (Research Articles)

[Oenococcus oeniとBrettanomyces bruxellensisがワイン微生物の分類学的および機能的ポテンシャルプロファイルに及ぼす影響]
 乳酸菌,酵母,その他のワイン微生物叢の相互作用はワインの品質に影響を与える.Oenococcus oeniの一部の株は,シンナモイルエステラーゼ活性を持ち,ヒドロキシ桂皮酸(HCA)を産生する.その後HCAはBrettanomyces bruxellensisの一部の株で代謝され,オフフレーバーを産生する.メタゲノム解析を用いて,この研究では,特にフレーバー形成に関して,カベルネ・ソーヴィニヨンワインの微生物叢の分類学的および機能的ポテンシャルプロファイルに対するO. oeniおよびB.bruxellensisの影響を調べた.メタゲノムのデータセットは,シンナモイルエステラーゼ活性の有無に関わらず,2つのO.oeni株と組み合わせて,3種のB.bruxellensis株の播種で生成した.微生物プロファイルへの影響は,O.oeniとB.bruxellensisの組み合わせや,播種物がワインへ到達する量に依存し,未同定の条件に左右される.(例えば,微生物の相互作用由来).本研究では,HCAからオフフレーバーを生成するB.bruxellensisはその株に依存することが確認された.興味深いことに,微生物播種がない試料にもこの可能性を秘めており,天然のブドウ由来の微生物叢もHCAのレベルに影響を及ぼし得ることが示唆された.実験的検証によって補完したメタゲノム分析は,またB. bruxellensisの存在がL-リンゴ酸をL-乳酸へ変換する微生物の機能的潜在性を干渉しないことを示した.我々はメタゲノムアプローチが,O.oeniとB.bruxellensisが同時に存在することによって影響を受けるフレーバーなどの複雑なワインの微生物叢の特徴を明らかにするのに役立つことを示す.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/334

J.J. Q.-Granados, R.M. B.-Herrera, S.P. de la Cueva,J.A. R.-Henares, M. N.-Alarcon, C. S.-Sanchez:
Use of ISO 5495:2009 to Determine Sensory Preferences of Consumers of Spanish Red Wines with Designation of Origin. P
p.334-341.(Research Articles)

[原産地指定スペイン赤ワイン消費者の官能的嗜好の決定]
 スペインには,保護された原産地指定に属する90のワインがある.従って,同じ原産地指定で生産された全てのワインは,非常に類似した特性を持ち,これらの特性は他の地理的地域で生産されたワインに見られる特性とは異なる.研究の目的は,異なる原産地指定のスペイン赤ワインに関する消費者の好みを決定することである.ISO 5495:2009を使用し,原産地指定のスペイン赤ワインの消費者の好みを決定した.このテストの結果,単にマーケティングや歴史的伝統に基づく基準以外に,ある起源の指定を別の指定より選択する,特定の基準がないことが示された.起源の優先指定は,南部の指定とは異なり,主にスペイン北部の指定であった.好みに影響する可能性のある,他の要因へのリンクは見つからなかった.このタイプのワインのスペインの消費者を代表するテイスターのサンプルの嗜好を研究し,消費者のワイン選択の基準は何かを理解しようとしている.この研究は,スペインへのワイン輸出にとって興味深いものである.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/342

M.E. Hall, G.M. Loeb, W.F. Wilcox:
Control of Sour Rot Using Chemical and Canopy Management Techniques.
pp. 342-350. (Research Articles)

[化学物質および樹冠管理による白かび病の抑制]
 白かび病(Sour rot)はブドウ果実の腐敗とともに果実内での酢酸生成によって特徴づけられる複雑な病気であり,一般的にミバエ(Drosophila)と関連がある.病因学および疫学的に不確実な点が多いことから,白かび病に対する信頼のおける管理方法の開発は限られてきた.しかし現在は,酵母,酢酸菌およびミバエが病気の発生に共同的に働いていることが知られている.我々はVitis種間雑種であるヴィニョル種を用いてこれらの生物を標的とし,各種の抗微生物剤(年により,ピロ亜硫酸カリウム,水酸化銅,BLADポリペプチドあるいは二酸化水素と過酢酸の混合物)および殺虫剤(年により,スピネトラムあるいはゼータ-シペルメトリン)の収穫前の単独あるいは併用散布による3年間にわたる圃場試験を実施した.病斑出現前の15°Brixで予防的に散布を開始した時,抗微生物剤と殺虫剤の毎週散布により3年間すべてで無処理のブドウ樹に比べ平均64%の防除効果を示した.一方,病斑出現まで殺虫剤に抗微生物剤を添加しない場合は防除効果が減少した.予防的な散布計画において殺虫剤のみを散布した場合,3年のうち2年の圃場試験で十分な防除効果を示し,処理区内の果実から回収されるミバエの数は有意に減少した.一方,抗微生物剤は殺虫剤と併用したときにのみ効果を示した.我々は,商業農場において隣接した畝でHW(high wire cordon)あるいはVSP(vertical shoot positioned)方式で仕立てられたヴィニョル種を用いて本病害の発症を調査した.3年間のモニタリングにおいて,新梢が垂れ下がり果実に覆いかぶさるような樹冠を形成し,フルーツゾーンと地表間の樹冠密度がVSPよりも高いHWで仕立てたブドウ樹において発病度は有意に高かった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/351

R.P. Schreiner, J. Osborne:
Defining Phosphorus Requirements for Pinot noir Grapevines.
pp.351-359.Research Articles

[ピノ・ノワールのリン酸施用量の指標]
 ピノ・ノワールのリン(P)の影響の調査は,リン施用量を厳密に管理した小区画で行った.101-14台木のピノ・ノワールはP施用量を4区設定し,4年にわたり調査した.ブドウ樹の成長,収量,果汁組成は2012年から2015年の4年間調査し,醸造試験は2012年から2015年の3年間行った.Pの無施用は3年後にはヴェレゾン期の葉面積の減少と収量の低下を引き起こした.P施用量の軽減は開花や結実に影響しなかった.果汁中のP含量は,P施用量を0や20%にした低量区において著しく低下した.しかしながら,32mgP/Lという低いP含量の果汁であっても,アルコール発酵が終了する期間には影響しなかった.以上の結果はP施用量の低下は,ピノ・ノワールの開花結実や発酵状況に影響する前に,樹冠の縮小や収量の減少が現れることを示唆している.ヴェレゾン期の葉身内のP含量が1.0gP/kg (DW)が,オレゴン州西部の高級ワイン生産のための果汁品質と収量を得るためのブドウ栽培指標として提案されている.従って,栽培者は測定誤差や個体によるばらつきを考慮し,ヴェレゾン期には葉身のP含量が1.2gP/kg DW程度になったときには,注意深くブドウ樹を観察する必要がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/360

S. C. Frost, J. W. Blackman, A. K. Hjelmeland, S. E.Ebeler, H. Heymann:
Extended Maceration and Cap Management Impacts on the Phenolic, Volatile, and Sensory Profiles of Merlot Wine.
pp.360-370.(Research Articles)

[メルローワインのフェノール性,揮発性および官能特性における長期マセレーションと果帽管理の影響]
 本研究は9つの果帽管理とマセレーション技術の官能的および化学的影響を評価することを目的とした.Vitis vinifera L. cv. Merlotに対し,長期マセレーション(EM)を0,1,2,4,6,8週間にわたって実施した.加えて,パンチダウン処理と2つの浸漬果帽処理を評価し,合計で9つの処理を行った.これらの処理を説明するため,記述分析,ポリフェノール測定,基本的なワインパラメーターそして揮発性化合物分析を用いた.EMは得られたワインの渋味を明確にし,果帽管理は苦味やコショウ様のスパイスアロマを改変させた.全体で,測定された29の揮発性化合物のうち27個が有意な処理効果を示した.従って,最終的な揮発性特性における,これらワイン醸造実践の重要性を示している.15の重要な揮発性化合物について,EM期間との相関が示された.特にマセレーション2週間後,ワインのエステル特性の変動性減少がみられた.EMは6週間後にのみしか収斂味に有意な影響を与えなかったことから,本研究の結果は,EMはこれまでに考えられてきたほど収斂味に影響を与えない可能性を示した.さらに果帽管理処理の結果,パンチダウン法かポンピングオーバー法かによって苦味が改変できることを示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/371

F. Yuan, R.P. Schreiner, J. Osborne, M.C. Qian:
Effects of Soil NPK Supply on Pinot noir Wine Phenolics and Aroma Composition.
pp.371-385. (Research Articles)

[ピノノワールワインのフェノール化合物およびアロマ組成における土壌NPK供給の影響]
 本研究では,ブドウの窒素(N),リン(P),カリウム(K)の供給がピノノワールワイン組成に与える影響を評価した.ピノノワールブドウは二重ポットシステムで3年間栽培した.N,P,Kは様々なレベルにし,その他の栄養成分は一定にして施肥した.施肥では,Nは7.50mMの総N供給量(対照)から低い1.125 mMの間で異なる5つのレベルで変化させ,PとK供給は最も低い0mMを含めた4つのレベルに変えた.3年間それぞれ製造されたワインを分析した.N供給は,揮発性化合物,特に発酵由来のエステルや高級アルコールへの影響を含むワインの組成に大きな影響を与えた.Nの供給率が低いとワイン中の総フェノール含有量は増加した.一般的にN供給の減少で直鎖のエステルやアルコールは減少するが,ワイン中の分岐鎖エステルやアルコールは増加する.低Nワインは,3年のうち2年で揮発性硫黄化合物の値が低かった.N供給はまた,ワイン中のブドウ由来化合物に影響した.N供給を減らすと,すべての年にわたってβ-ダマセノン濃度の低下を引き起こしたが,モノテルペンにおけるN供給の影響は年ごとに一貫していなかった.P供給の変化は,ワインの揮発性物質について再現性のある影響は与えなかった.栄養素供給に応じた揮発性物質組成の変化は,最終的に香りの知覚と全体的なワイン品質に影響する可能性があるため,さらなる調査が必要である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/386

G. Badr, J.S. Hoffman, T.R. Bates:
Effect of CaneLength on Concord and Niagara Grapevines.
pp. 386-393. Research Articles

[結果母枝長がコンコードとナイアガラブドウ樹に及ぼす影響]
 ニューヨーク州フレドニアに植栽のコルドン仕立てのコンコードとナイアガラにおいて,2001年から2005年までの間に,剪定後の結果母枝長が樹のサイズ(剪定枝量),収量および果汁の可溶性固形物量に及ぼす影響を調査した.コンコードは,2節の短梢(芽の見落としによる3節の場合を含む),5節または10節の結果母枝長の3区で,1樹あたりそれぞれ100芽に剪定した.ナイアガラはコンコードと同様の剪定区で1樹あたり80芽に剪定した.標準的な計測に加えて,2004年から2005年にかけて各区の結果母枝のそれぞれの節位ごとに収量を調べた. 結果母枝の節位により結実性にパターンがあり,最大収量はコンコードで3?6節位,ナイアガラで2?6節位の新梢上でみられた.これは,剪定区間で差異はなかった.樹あたりの芽数は剪定区間で一定であったため,試験開始以降5年のうち2年で,2節の短梢せん定区よりも5節および10節剪定区で,充実した花芽と収量が多かった.より長い結果母枝上でのより高い収量は,着果過多ぎみの大きな着果負担値(Ravaz index:収量/剪定枝量)を示し,ブドウ樹サイズ(当年冬季の剪定枝量)を低下させた.対照的に,2節短梢剪定は,バランスの取れた着果負担値と適切な樹のサイズを維持した.最後の2年間では,より長い結果母枝区では生産能力が低下した状態で当年の生長を開始したため,収量もしくは可溶性固形物量に剪定区の間で差はみられなくなった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/394

D. J. Killeen, R. Boulton, A. Knoesen:
Advanced Monitoring and Control of Redox Potential in Wine Fermentation.
pp.394-399. Research Articles

[ワイン発酵時における酸化還元電位の高度化モニタリングと制御]
 発酵果汁中の酸化還元電位,またはレドックス電位は,ワイン発酵中の果汁や酵母細胞内の反応に影響を与える可能性がある.赤ワイン発酵中に空気を導入する量によって,酸化還元電位を監視および制御する能力を100Lスケールで3通り実証した.制御下の発酵中のブリックス曲線および酸化還元電位パターンを,無曝気発酵におけるものと比較した.レドックス制御システムは,還元酸化電極を備えた市販のpHメーターとカスタムデザインの電子制御装置で構成した.この研究ではレドックス電位を215mVで制御でき,発酵全体を通して制御されていないレドックス電位よりはるかに上回っていた.数理モデルを使用した発酵曲線の分析により,酵母細胞の生存率や生存細胞の比維持速度は,発酵中の酸化還元電位を制御することにより有意に増加した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/400

Z.M. Cartwright, D.A. Glawe, C.G. Edwards:
Reduction of Brettanomyces bruxellensis Populations from Oak Barrel Staves Using Steam.
pp.400-409. (Research Articles)

[蒸気を用いたオーク樽側板からのBrettanomyces bruxellensis数の削減]
 赤ワインに関連する汚染酵母Brettanomyces bruxellensisはオーク樽から除去することが難しい場合がある.異なるトーストレベルのフレンチまたはアメリカンオークを示す新樽(16L)と古樽(225L)を得た.市販のカベルネ・ソーヴィニヨンワインを新樽に移し,B. bruxellensisを接種し6から7か月間熟成させた.すべての樽を分解し,直径2.5cmの穴から削り屑を集めるか,または側板を3×10cmのブロックに切り,さらに更に厚さ4mmの断面に切ることにより,木材への酵母の浸透を評価した.更に側板中心からのブロックを,断面に切る前に異なる時間蒸気にさらした.培養細胞を検出するために,削り屑と断面を強化培地(削り屑)またはワイン回復培地(断面)へ移した.一般的に,側板には深さ4mmまで10³cfu/m㎥以下の菌数が含まれ,オークの種類や樽齢によっては5から8mmの間でより低い10²cfu/m㎥以下の菌数が検出される場合がある.蒸気処理の間,深さ4.5mm部分が55℃に達するのに2から3分を要したが,深さ9.5 mm部分ではやや長い時間が必要であった(~4分).4mmの断面に存在する酵母は,不活性化するために9分の合計蒸気処理時間が必要であったが,深さ5から9 mmまででは12分間必要であった.ワイナリーにとって個々の樽の酵母浸透深度を日常的に決定することは不可能であるため,汚染された樽でのB. bruxellensis(/i>による今後の感染を制限するため,最低12分の最少蒸気処理時間が利用可能である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/410

O. Aguin, V. Ferreiroa, J.M. G.z-Jartin, A. Alfonso, L.M. Botana, J.P. Mansilla, M.J. Sainz:
Pilidium lythri Is Associated with Bunch Rot of Grapevine (Vitis vinifera).
pp.410-416. (Research Notes)

[Pilidium lythri はブドウ房枯病に関与する]
 ブドウの房枯病は糸状菌の複合感染によって頻繁に引き起こされる.スペイン北西部における収穫期の房枯病に関与する,非ボトリティス糸状菌に関する研究では,温暖で湿潤条件が収穫期前に長期化したある農場のアルバリーニョ種の房でピンク色の菌塊を示す腐敗果が観察された.本研究の目的はその腐敗果を引き起こす糸状菌の同定とブドウにおける病原性の解明である.ピンク色の菌塊からは房枯病に関与する既存の属に形態的に一致しない糸状菌が分離された.形態学的および分子系統樹解析によりその分離株はイチゴにtan-brown腐敗病を引き起こす日和見病原菌Pilidiumlythriに属することが示された.収穫期に頻繁に房枯病を引き起こす非ボトリティス糸状菌はPenicillium brevicompactum,Penicillium expansumやTalaromyces purpurogenusであり,P. lythriの分離頻度は低かった.病原性試験により,P. lythriはリーガルシードレス種およびレッドグローブ種の果実にtan-brown腐敗病を引き起こすことが示された.P. lythriは健全果に直接感染することができることから,ブドウ房枯病に関与する病原菌で間違いないと思われる.果実にP. lythriが存在することが生食用および醸造用ブドウの収穫後腐敗に関与しているのかもしれない.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/4/417

G. Allegro, A.B. B.-Ortin, E.G.-Plaza, C. Pastore, G.Valentini, I. Filippetti:
Impact of Flavonoid and Cell Wall Material Changes on Phenolic Maturity in cv. Merlot (Vitis vinifera L.).
pp. 417-421. Research Notes

[フラボノイドおよび細胞壁マテリアルの変化がメルロー(Vitis vinifera L.)栽培品種のフェノールの成熟に及ぼす影響]
 黒ブドウ品種において,収穫前の最後の数週間のフラボノイド濃度とその組成の変化は,ブドウの成熟の進行と,関連する官能特性の改善を部分的に説明する.この研究の目的は,メルローのフェノールの熟成度に関与する要因をより理解するために,ブドウの成熟後期の間の全量並びに抽出可能なアントシアニンおよびタンニンを分析し,果皮の細胞壁マテリアルの性質を決定した.2年連続で総アントシアニンと抽出可能アントシアニンは収穫まで増加したが,タンニン濃度はわずかな変動のみであった.市販の種子由来タンニンに対する細胞壁マテリアルのより高い親和性は最後の成熟段階で観察され,特に高分子タンニンやガロイル化型が優勢的であった.アントシアニンの増加は成熟の進行とともに,より色の濃いワインを得られる可能があり,種子由来タンニンに対する果皮の細胞壁マテリアルの親和性の増加は,収斂性の減少の役割を果たす可能性がある.この研究はさまざまな要因がフェノールの成熟度にどのように影響を与えるかを示しており,メルローにおいて初めての知見である.

一覧に戻る
ページトップ