American Journal of Enology and Viticulture

Volume 70, No.4 (2019)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/339

M. Schwinn, D. Durner, A. Delgado, U. Fischer:
Distribution of Yeast Cells, Temperature, and Fermentation By-Products in White Wine Fermentations.
pp.339-350.(Research Articles)

[白ワイン発酵における酵母細胞の分布,温度,および発酵副産物]
 白ワイン発酵では,普通,タンクの上部から酵母を接種する.この研究の目的は,接種後の短時間攪拌の有無に拘らず,酵母を上から添加した後の,タンク内の不均一性の発生を調べることである.不均一性が,低濁度のリースリング果汁の発酵速度およびアセトアルデヒド,酢酸,ピルビン酸の形成に影響を与えるかどうかを調べた.パイロット規模(105 L)と工業規模のタンク(2500および7000 L)の種々のタンク高で温度を測定しサンプルを採取し,種々の容量と高さ対直径の比率のタンク内の温度,酵母,発酵生成物の分布を調査した.接種後に酵母を攪拌しなかった場合,最初の数日間はタンク上部の細胞数が多かった.比重が低いことからわかるように,発酵はタンクの上部で早く開始した.上から下まで,比重が最大0.040,温度が最大8.6°Cの違いが観察された.不均一性は7000Lタンクで4日間続いた.結果は,前発酵中は酵母の沈降が遅く,下方向の混合が不十分であることを示唆した.激しい発酵の間,全てのパラメータは均一に分布していた.酵母接種後の短時間の攪拌は,自然の層化による温度差を除き,発酵前の段階で均一な条件を提供した.酵母を攪拌すると,発酵時間は短くなった.酵母を攪拌すると,最終的なピルビン酸濃度が大幅に低下した.これは,おそらくタンク全体での栄養素の利用可能性が向上し,亜硫酸の需要が減少したためである.アセトアルデヒドと酢酸に違いは見られなかった.酵母が攪拌されていない場合,タンクのサンプリングバルブと温度センサーは,前発酵中にタンク全体を反映しないため,プロセス制御に悪影響を与える.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/351

G. Caccavello, M. Giaccone, P. Scognamiglio, A. Mataffo, M. Teobaldelli, B. Basile:
Vegetative, Yield, and Berry Quality Response of Aglianico to Shoot-Trimming Applied at Three Stages of Berry Ripening.
pp.351-359.(Research Articles)

[果実成熟の3段階で処理したシュートトリミングがアリアニコの栄養成長,収量および果実品質に及ぼす影響]
 気候変動による気温上昇は,ブドウ果実の糖含量を高め,ワインのアルコール濃度の上昇をもたらす.ヴェレゾン後のシュートトリミング・摘葉による葉面積制御は,果実の糖蓄積を遅延させるための適切な樹冠管理である.しかしながら,晩生品種は,ヴェレゾン開始期から収穫期までの期間が非常に長くなる可能性があり,葉面積制御が果実の炭水化物蓄積や果実の成分組成に及ぼす影響は特定の生育時期に限定される可能性がある.この研究では,2013年と2014年の2カ年に渡り,晩生品種であるアリアニコにおいて,シュートをトリミングしないものを対照とし,果実の可溶性固形物含量(°Brix)が6? [収穫の67日前(2013年), 64日前(2014年)],12? (同53日前, 52日前)および18? (同34日前,36日前)の時点でシュートをトリミングし果実組成を比較した.トリミングは第15節より上位節で新梢を切除し,トリミング後の葉面積/樹は,2013年は3 m2,2014年は4 m2であった.いずれのトリミング時期においても,トリミング処理は果実の可溶性固形物含量を低下させたが,成熟が進んだ段階でのトリミングほど,収穫期の可溶性固形物含量は低かった.いずれの時期のトリミングも果汁pH,滴定酸度,アントシアニン含量,総フェノール含量および果実(果実全体,果肉,種子)の官能スコアに影響しなかった.少なくとも晩生品種では,シュートトリミングにより効率よく果実組成を制御するためには,ヴェレゾン後のある程度成熟が進んだ時期においてシュートトリミングを実施することが重要であることが確認された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/360

X. Wang, R.D. Bei, S. Fuentes, C. Collins:
Influence of Canopy Management Practices on Canopy Architecture and Reproductive Performance of Semillon and Shiraz Grapevines in a Hot Climate.
pp.360-372.(Research Article)

[樹冠管理が暑い気候下でのセミヨンとシラーズの樹冠構造と生殖成長に及ぼす影響]
 ブドウにおいてヴェレゾン期(E-Lステージ35)の摘房(50%摘除),同時期の摘葉(冠中央部で新梢上の1/3の葉を摘除),8?12葉展開期(E-Lステージ215?17)における新梢の50%切除や軽度な冬季剪定(2芽を残す短梢剪定)などの樹冠管理は,樹冠構造と微気象を改善するため,果実の発育と成熟に有益な場合がある.この研究では,2016年?2017年と2017年?2018年の2シーズンにおいて,南オーストラリア,アデレードの高温の野外条件下で栽培されたセミヨン(上記2シーズンに加え, その前2シーズンも同じ樹冠管理を行った)とシラーズ(上記の2シーズンのみ樹冠管理を行った)を用いて,いずれの管理も行わないものを対照区とし,上記の樹冠管理方法が樹冠構造と微気象,収量構成要素,果房構造(果房容積,着粒密度,ミルランダージュ指数:緑色果粒や無核果粒の混在程度を示す指標)ならびに果実成熟に及ぼす影響を調査, 比較した.その結果,新梢間引きと摘葉により,葉面積指数が低下し,樹冠内の空隙と光遮断(樹冠周囲の光合成有効放射に対する樹冠内部の光合成有効放射光の割合)が増加した.摘房と新梢間引きは果実成長と糖の蓄積を早めたが,摘葉と軽度な剪定は果実の収穫適期を遅延させた.生殖成長のパラメータについては,摘葉の影響は比較的小さかった.軽度の剪定は果粒重量を低下させた. 新梢間引きおよび摘房は着房数を減らしたが,他の収量構成要素で補償され,この補償程度は同じ樹冠管理が続けて行われた時(4シーズン継続して行われたセミヨンにて顕著)に増大したことから,樹冠管理の影響は次シーズンのパラメータにも影響しうると考えられた.また,セミヨンでは,果粒の着粒密度と灰色カビ病の発生率とに有意な相関がみられた. ettanomyces bruxellensisによる汚染は,ワイン産業にとって大きな懸念事項である.ワインの品質に対するこの野生酵母の悪影響,すなわち潜在的に大きな経済的損失とフェノール性異臭の産生には,特定の管理方法を適用することが必要である.我々はバルベラ種を使ってB. bruxellensisを制御するオゾン処理能力とワイン製造への影響を調査した.オゾン処理によるB. bruxellensisの菌数を減少させる能力を調べるために,3つの異なるB. bruxellensis株の混合物をブドウの果実の表面に播種した.ブドウの果実は水(6または12分処理)または気体(12または24時間処理)でオゾン処理後,粉砕・発酵し,これらの処理がB. bruxellensisおよびSaccharomyces cerevisiaeの生育とワインの組成に及ぼす影響を評価した.微生物分析では,24時間オゾンガスで処理すると未処理のブドウ果実と比較して,B. bruxellensisのコロニーの数が2.2 log CFU/mLまで減少し,有意な差を示した.このオゾンガスで24時間処理したブドウから製造したワインは,酢酸が最も低いレベルであった.また,水で処理したブドウから製造したされたワイン(6または12分処理)から4-エチルフェノールが検出され,発酵終了時にB. bruxellensisの個体数は5.0 log CFU/mLに達した.分子遺伝解析により,3種類の試験菌株はオゾン処理により同様の結果を示した.本研究はB.bruxellensis菌株に依存せずに個体数を減らすための方法としてオゾン処理の効果を初めて示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/373

A. Caffrey, L. Lerno, A. Rumbaugh, R. Girardello, J. Zweigenbaum, A. Oberholster, S. E. Ebeler:
Changes in Smoke-Taint Volatile-Phenol Glycosides in Wildfire Smoke-Exposed Cabernet Sauvignon Grapes throughout Winemaking.
pp.373-381.(Research Article)

[山火事の煙にさらされたカベルネ・ソーヴィニヨンブドウ果実を用いたワイン製造中の燻煙臭を有する揮発性フェノール配糖体の変化]
 ブドウが山火事の煙に晒されると,いくつかの燻煙臭の揮発性成分がブドウ果実に付着し,配糖体化される.配糖体化した化合物はブドウの芳香には影響はないが,ワイン醸造及び熟成中に遊離の揮発性フェノールとして放出され,望ましくない「燻煙臭」がするワインができる.配糖体の直接分析をすることによって,ワインの潜在的なフレーバーに関する情報が得られ,配糖体化した前駆体からの揮発性アロマ成分のリリースに対するワイン製造の実際の効果の情報を提供する.カベルネ・ソーヴィニョンのブドウ果実の煙の汚染に関連する揮発性フェノール配糖体は,超高速液体クロマトグラフィーと精密質量分析ができる飛行時間型タンデム質量分析計を組み合わせた包括的なデータベースを使用して,実験的に識別および半定量分析を行った.三糖が結合した8つの揮発性フェノール配糖体をブドウで初めて実験的に同定した.ここで開発した方法は,ワイン製造中の31種類の揮発性フェノール配糖体の燻煙臭に関連する変化を観測することができた.ワイン製造中で最も加水分解された期間は,酵母(EC-1118)でのアルコール発酵の前半であった.その後,アルコール発酵中のワインのフェノール性配糖体のプロファイルにはほとんど影響はなかった.これは,配糖体の直接分析によってワイン製造中の31種類のフェノール性配糖体の変化を観測した最初の報告である.これらの情報は,煙に汚染された時の配糖体の変化や,煙の影響を受けたブドウやワインの官能特性に影響を与えるフェノール性化合物のリリースに関する情報を向上させることができる.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/382

K.C. Shellie:
Comparison of Sustained Deficit and Pre- and Postveraison Regulated Deficit Irrigation on Malbec and Syrah Grapevines.
pp.382-389. (Research Articles)

[マルベックおよびシラーにおける持続的不足灌漑とヴェレゾン前および後に制御された不足灌漑との比較]
 この研究の目的は,水分流動性が異なる2品種(Vitis vinifera L.)の収量構成要素および果実成分に及ぼす持続的不足灌漑と制御された不足灌漑の影響を比較することである.乾燥条件下の南アイダホでマルベックおよびシラーを栽培し,結実期から収穫まで毎週点滴灌漑を行い,持続的な需要量条件(35,70)あるいはヴェレゾンで需要量を変えた条件(3570,7035)により35あるいは70%の推定水分需要を維持した.両品種とも,7035および35処理は3570および70処理よりも高濃度のアントシアニンおよびフェノール化合物を有する果実を生産した.両品種とも7035処理の収穫量は35処理より30%多く,70処理よりも15%少なかった.7035処理は35処理よりも58%水分量が多く,70処理よりも20%少なかった.両品種とも3570と7035処理は節水に対する収穫量減少の比率,炭素同位体組成,各週の午後に計測した葉の水ポテンシャルの季節平均が同程度であった.3570および35処理は極寒に晒された後の芽の障害(低剪定量および樹当たりの低房数)が7035および70処理よりも大きく,障害からの回復も遅かった.本来の炭素同位体組成の相違に関わらず,難解な気象条件下で生産性を維持するために両品種における最善策として70および7035処理を提案する.

英文要旨原文 https://www.ajevonline.org/content/70/4/390.abstract

D. Migliaro, G. De Lorenzis, G.S. Di Lorenzo, B. De Nardi, M. Gardiman, O. Failla, L. Brancadoro, M. Crespan:
Grapevine Non-vinifera Genetic Diversity Assessed by Simple Sequence Repeat Markers as a Starting Point for New Rootstock Breeding Programs.
pp.390-397.(Research Articles)

[新しい台木育種計画のための出発点として単純反復配列マーカーにより評価された非vinifera種の遺伝的多様性]
 マイクロサテライトマーカーは遺伝資源の管理を促進し遺伝的多様性を評価するための有効な手段である.本研究では,イタリアのミラノ大学で保存されている379の台木と他の非vinifera種のコレクションの遺伝的特性を報告する.これらは,ブドウの同定に使用する9つの遺伝子座,3つのVMC遺伝子座,3つのVrZAG遺伝子座,および7つのVChr 遺伝子座を含む,高度の多型を示す22のマイクロサテライトマーカーにより遺伝的に分類された.そのうち,品種の同定,遺伝的多様性の調査,系統解析,集団の遺伝的構造の推定,コアコレクションの設計のために17の遺伝子座を記録した.本研究は232の特徴のある遺伝子型を同定した.そのうち70の台木の対立遺伝子プロファイルは文献およびデータベースにより確認した一方で,43の台木のプロファイルは初めて提案されたものであった.系統解析は77の親子トリオ(父親-母親-息子)と44の親子相関関係を浮かび上がらせ,それらの内幾つかは既知であったが,他は新規であった.遺伝的構造解析において,混合している比率が高い3つの先祖グループを示した遺伝子型の遺伝的背景を有するグループは観察されなかった.70の遺伝子型のコアコレクションは検出された対立遺伝子のすべて(373)を100%捉えることができた.これらの遺伝子型の多くは同定されていないあるいは不十分に特徴付けされていた.本研究が提供する情報は,長期間の育種計画に有効な未だ開拓されていない種を育種家が利用する上で彼らの助けになるであろう.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/398

Roberta De Bei, Xiaoyi Wang, Lukas Papagiannis, Massimiliano Cocco, Patrick O’Brien, Marco Zito, Jingyun Ouyang, Sigfredo Fuentes, Matthew Gilliham, Steve Tyerman, Cassandra Collins:
Postveraison Leaf Removal Does Not Consistently Delay Ripening in Semillon and Shiraz in a Hot Australian Climate.
pp.398-410.(Research Articles)

[ヴェレゾン後徐葉は暑い豪州のセミヨンとシラーズの熟成を一貫して遅らせることは無い]
 世界のブドウ栽培地域では,気温が高いために初期の圧縮された季節学が発生しており,ブドウに過剰な糖が蓄積している.これは,ブドウとワインの品質,およびワインの高級アルコールへの悪影響と関連している.最近の研究によると,気候に関連した初期の成熟は,房回りの上の葉の除去を遅らせることで改善できることが示されている.この方法は,他のブドウの化学的パラメータに影響を与えることなく,ブドウへの糖の蓄積を最大2週間遅らせることが示された.従って,この研究では,豪州の暑い気候でセミヨンとシラーズの成熟を遅らせるためのキャノピー管理手法として,ヴェレゾン後の徐葉を調査した.収量と収量構成要素,キャノピーのサイズ,ブドウとワインの化学的性質,および感覚的属性は,セミヨンでは4シーズン,シラーズでは2シーズンに亘り測定した.結果は,両方の品種の適用で,最初の年の成熟を遅らせることに効果はなかった.しかし,施用2年目には,セミヨンで10日,シラーズで20日の熟成の遅れが見られた.セミヨンでは,ヴェレゾン後の葉の除去は,適用の4年目に成熟を遅らせなかった.セミヨン・ブドウの化学的性質と感覚的属性に違いは観察されなかった.シラーズでは,2年目のシーズンに枯葉したブドウから得られたワインは,対照ワインとは異なり,ドライフルーツやジャミーなアロマやフレーバーなどの,熟れすぎたベリーと一致する属性が特徴であった.この研究の結果は,この技術が豪州の暑い気候でセミヨンとシラーズの成熟を一貫して遅らせるのに効果的ではないことを示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/411

T. Frioni, D. Acimovic, J.V. Weide, S. Tombesi, A. Palliotti, M. Gatti, S. Poni, P. Sabbatini:
Whole-Canopy Source-Sink Balance at Bloom Dictates Fruit Set in cv. Pinot noir Subjected to Early Leaf Removal.
pp.411-419.(Research Articles)

[開花期における全樹冠のシンク-ソースバランスが早期除葉を行ったピノ・ノワールの結実を決定づける]
 行き過ぎた開花前の除葉はブドウ樹のシンク-ソースバランスに著しく影響し,結実を減少させる.本研究では,シンクあるいはソースを変更した隣の新梢から成長段階の花序が光合成産物を引き寄せる能力を評価することを目的とし,2年間に渡り開花時の徐葉の影響を評価した.コルドン(ダブル)で仕立てたピノ・ノアールにおいて,コルドン上の半分の新梢に対し開花時に基部から10枚の葉を除葉した処理区(UT-LR)と無処理(UT-UT)とを比較した.別の処理区(TFR-UT)として,開花時に手作業にて新梢の半分でシンク(花序と新梢先端)の除去を行った.最後の処理区として,新梢の半分で基部から10枚の葉を除葉し,残りの半分でシンクの除去を行った処理区(TFR-LR)を設定した.処理を施術後,新梢における葉面積はUT-LRおよびTFR-LRで40%程度であった.UT-UTと比較した場合,UT-LRにより1つの花序が利用できる全樹冠葉面積は44%まで減少した.TFR-LRはシンク-ソースバランスに影響を及ぼさなかった.UT-LRでは結実が有意に減少した(UT-UTと比較し36%減).一方,TFR-LRおよびTFR-UTは結実に影響を及ぼさなかった.処理とは無関係に,両シーズンの結実は開花期の花序あたりの全樹冠葉面積と相関があり,早期除葉後に維持した新梢1本あたりの葉面積とは相関がなかった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/420

P. Gago, V. Laucou, J.L. Santiago, S. Boso, T. Lacombe, M. Velayos, D. Legrand, J.-M. Boursiquot, M.-C. Martinez:
Preliminary Study of Ancient DNA from a 215-year-old Grapevine Herbarium.
pp.420-426.(Research Articles)

[215年前のブドウ標本からの古代DNAの予備調査]
 Simon de Rojas Clemente y Rubio (1777~1827)は,現代のブドウ分類学の父とされる.彼は1802年から1804年の間にアンダルシアで収集した資料の調査により,ブドウの品種を分類する最初の科学的方法を開発した.マドリード王立植物園は,彼が収集して保存した資料(葉と枝)を保存している.この植物標本は,世界中のブドウ品種の植物標本として最も古いものであり,ブドウ分類学やその他の研究(遺伝的多様性,分子生物学的解析,ブドウ栽培学研究など)に非常に貴重であり,19世紀初頭(フィロキセラ以前の時代)のブドウ栽培を知るために有益な情報を持っている.本研究ではClementeの植物標本から古代のDNAの増幅に成功し,DNA抽出プロトコルとブドウの同定で一般的に使用されている単純反復配列(simple sequence repeat,SSR)の再構築を報告する.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/427

T. Verdenal, V. Zufferey, A. D.-Nagy, G. Bourdin, K. Gindro, O. Viret, J.-L. Spring:
Timing and Intensity of Grapevine Defoliation: An Extensive Overview on Five Cultivars in Switzerland.
pp.427-434.(Research Notes)

[摘葉のタイミングと強度:スイスの5栽培品種に関する広範な概要]
 本報告はVitis viniferaの白系と赤系の栽培品種であるピノ・ノワール,ガメイ,メルロー,シャスラおよびドラルの摘葉の時期と影響について報告する.ブドウの開花前,開花期および着粒期の3期に分け,摘葉(基部側6葉と基部から6個の腋芽の除去)を行った.開花前の摘葉はブドウ栽培に多くの悪影響を与え,特に着粒を影響した.開花前の摘葉は,摘葉していないブドウより収量を35%の低下させた.このことは,摘葉は収量を低下に影響が大きいことを示した.強い摘葉はショットベリー形成,日焼け,ボトリティス・シネレアの発達を増加させた.開花前の摘葉により果皮の厚さは2倍になりポリフェノール濃度を増加させるとともに,赤ワインの色と口当たりがしばしば向上した.しかしながら,白ワインにはほとんど影響しなかった.すなわち,開花前の摘葉はワインの品質評価に悪影響を与えなかった.本研究の結果は,開花前の摘葉は樹勢を低下させ高負荷着粒を抑制する可能性を示唆した.開花前の摘葉は,薬剤処理や摘房の手間を減らすための予備防除効果がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/4/435

S.C. Ledesma, M.C. Rubio, P. A.-Fernandez:
Novel and Rapid Methods for Histamine Quantification in Wine and Culture Medium.
pp.435-439.(Research Articles)

[ワインおよび培養液中のヒスタミン定量のための新しい迅速な分析方法]
 発酵飲料はヒスチジン脱炭酸酵素活性を持つ乳酸菌が産生するヒスタミンで汚染されていることが見受けられる.ワインにおいて,ヒスタミンの存在はワイン製造プロセス中の衛生状態の欠如に関連している.ヒスタミンはヒトに対して有毒である可能性があるため,これを分析することは重要である.そのために複雑な抽出手順を必要とせずに,ワインと培養液中のヒスタミン濃度を測定するために,迅速,安価かつシンプルな2つの方法(比色法と薄層クロマトグラフィー法)を開発した.新しい比色法はワインとミューラー・ヒントン寒天培地で,吸光度とヒスタミン濃度が1.0?100 mg/Lの範囲で良好な相関を示した(それぞれ r2 = 0.9981および0.9941).新しい可視化試薬を用いた薄層クロマトグラフィーでも,ヒスタミン濃度は5.0?100 mg/Lと吸光度(ワインとミューラー・ヒントン寒天培地ではそれぞれ,r2 = 0.9882と0.9839)の間に良好な相関関係が示した.どちらの方法もELISA法と高い相関を示し(比色法:r2 = 0.9972,薄層クロマトグラフィー:0.9968),良好なヒスタミン回収率(87%以上)を示した.新しい方法の検出限界は,既存の分析方法の検出限界と同等レベルであった.どちらの方法も研究や品質管理の研究室でヒスタミンをモニタリングするための日常的な分析に適している.

一覧に戻る
ページトップ