American Journal of Enology and Viticulture

Volume 58 No.3 (2007)

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/291

S.H. Lee, M.J. Seo, M. Riu, J.P. Cotta, D.E. Block, N.K. Dokoozlian, and S.E. Ebeler: Vine Microclimate and Norisoprenoid Concentration in Cabernet Sauvignon Grapes and Wines. pp. 291-301.
[カベルネ・ソーヴィニヨンのブドウおよびワインにおけるブドウ樹の微小気候とノルイソプレノイド濃度]

ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて、β-ダマセノン(megastigma-3,5,8-trien-7-one)、TDN (1,1,6-trimethyl-1,2-dihydronaphthalene)およびヴィティスピラン(6,9-epoxy-3,5(13)-megastigmadiene)の量を測定することによって、光照射とブドウ樹の微小気候がカベルネ・ソーヴィニヨンのブドウおよびワインにおけるC13-ノルイソプレノイド濃度に及ぼす影響を調査した。最も光照射した実験区(すべての第一葉および側葉を除去)で光強度および温度が最も高く、ブドウおよびワインにおけるTDNとヴィティスピランの量が最も高かった(p < 0.05)。しかしながら、少しずつ日陰処理した実験区では、すべてのノルイソプレノイド量が変化に富んでおり、その変化は日陰処理の状況に依存していた。葉を取り除いていくと、C13-ノルイソプレノイド濃度は直線的であり(r > 0.90; p < 0.1)、光照射量と正の相関関係が認められた。対して、葉の除去を行わない最も日陰処理した実験区では、ノルイソプレノイドの高い量を示した。特に、?-ダマセノン濃度は葉を除去しない時が最も高かった。ブドウ樹の南側からサンプリングしたブドウとそれを醸造したワインのノルイソプレノイド量は、北側に比べ多かった。しかしながら、葉層数もまたノルイソプレノイドと相関関係にあった(r > 0.89; p < 0.1)。ブドウのノルイソプレノイド量とそれから醸造するワインのノルイソプレノイド量は有意に相関関係にあった(p = 0.025)。これらの結果は光照射量に加え、葉の除去および房の微小気候がブドウとワインのノルイソプレノイド量を有意に変えることを示唆する。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/302

J.R. Rodriguez-Perez, D. Riano, E. Carlisle, S. Ustin, and D.R. Smart: Evaluation of Hyperspectral Reflectance Indexes to Detect Grapevine Water Status in Vineyards. pp. 302-317.
[ブドウ畑におけるブドウ樹の水分状態を検出するための分光反射特性の評価]

灌水は果実収量および果実成分組成のともに影響を与えるため、灌水の計画は重大である。我々は、Vitis viniferaピノ・ノアール種が栽培されているブドウ畑で、葉の水分含量、EWT(equivalent water thickness、葉内の水分層の厚さを表す)および葉の水ポテンシャル(Ψ)を評価するために、野外測定用分光リモートセンシングデータ(350nmから2500nmまでの反射と透過を計測)を使用できるか否か検討した。データから我々は、2つの分光学的アプローチ、植生指標(VIs)を直接観察し、包絡線除去分析法(CRA)で解析することによって、相関関係を通して、ブドウ樹の水分状態を評価するための多くの反射パターンを検討することができた。CRAは水分含量に敏感な吸収帯の最大深度(MBD)およびそのバンド領域(BA)を得るために利用した。相関関係は、Simple Ratio VI(SR2; R2 = 0.916)による葉でのEWT、MBD970によるCRA(R2 = 0.917)およびBA1160(R2 = 0.897)で高かった。SR2の樹冠でのEWTと水ポテンシャルの相関関係は有意ではなく、それは多くのVIsの特徴であった。樹冠での夜明け前の水ポテンシャル(ΨPD)および真昼の幹の水ポテンシャル(Ψstem)では、それぞれModified Triangular VI(MTVI2; R2 = 0.360)および赤/緑比植生指標(RGI、R695/R554; R2 = 0.462)が最も適していた。樹冠レベルでの水分状態では、最高の結果は、RGI(R2 = 0.619)とStructure Intensive Pigment Index(SIPI、葉緑素に感度のある指標、R800-R445/R800-R680)を用いたΨstem-ΨPDの差を利用した時に得られた。一方、BA1600ではCRA(R2 = 0.477)、MBD970ではCRA(R2 = 0.509)であった。これらの結果は、分光データを用いた非侵襲モニタリングが個々のブドウ樹の水分状態を評価する現法を進歩させる可能性を示した。大規模ブドウ園の水管理に使用するための空間的に解析した水ストレスの評価を提供するために、航空機搭載型分光画像装置を用いて同様な計測が利用できるかもしれない。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/318

K. Skogerson, M. Downey, M. Mazza, and R. Boulton: Rapid Determination of Phenolic Components in Red Wines from UV-Visible Spectra and the Method of Partial Least Squares. pp. 318-325.
[紫外-可視スペクトルおよびPLS法を用いた赤ワイン中のフェノール化合物濃度の迅速測定] 

様々な発酵段階の200種の赤ワインの紫外-可視スペクトルおよびHarbertson-Adams法により測定した複数のグループのフェノール濃度をPLS(Partial Least Square回帰)法で解析した。各フェノールグループに対する予想関数は多変量法を用いて計算し、その後、これを用いて200種の独立試料のフェノール測定値の推測に用いた。予測値と測定値の相関係数(r2)は、アントシアニンで0.88、タンニンで0.86、非タンニン性鉄反応フェノールで0.82、全フェノールで0.88、低分子ポリマー性色素で0.82、高分子ポリマー性色素で0.41、全ポリマー性色素で0.76であった。本方法は発酵中の赤ワインにおいて、色調およびフェノール濃度の迅速定量に有用である。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/326

F.B. Fritschi, H. Lin, and M.A. Walker: Xylella fastidiosa Population Dynamics in Grapevine Genotypes Differing in Susceptibility to Pierce’s Disease. pp. 326-332.
[ピアース病に対して感受性の異なるブドウ遺伝子型内のXylella fastidiosa 個体群数の変動]

木部に生息する細菌Xylella fastidiosa はブドウにピアース病を引き起こす病原菌であり、抵抗性品種を育種することは、ピアース病に対する抵抗性を示す生殖質の同定及び特性決定を含めた長期管理戦略である。遺伝的に異なるグループに機械的にX. fastidiosaを接種し、接種後113日間温室内で育て、ELISA法により樹幹と葉組織内のバクテリア濃度を測定した。X. fastidiosa濃度は遺伝子型、植物組織、接種位置に対しての位置およびこれらの3つの要因の相互作用によって影響を受けた。接種後113日での樹幹内のX. fastidiosa濃度に基づいて、9621?67、Muscadinia rotundifolia、Vitis arizonica/candicans、V. arizonica/girdiana、V. candicans、V. girdiana、V. nesbittiana および V. shuttleworthii はピアース病に対して抵抗性を示した。対して、V. vinifera、V. aestivalis、9621?94 および V. champiniiは樹幹組織に高濃度のバクテリアが存在した。接種後34日、77日および113日で葉身を連続的にサンプリングしたところ、遺伝子型間でX. fastidiosa濃度の異なるパターンを示した。M. rotundifolia、9621?67、V. girdianaおよびV. arizonica/candicansのX. fastidiosa濃度は第一回目のサンプリングで減少していたが、その他すべての遺伝子型では増加していた。広範囲の遺伝子型で認められたX. fastidiosa濃度の特徴は、樹幹内でのX. fastidiosaの個体群数および増殖を著しく限定する遺伝的背景を見込んだ選抜を行うための、ピアース病抵抗性ブドウ育種での一つの指標となる。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/333

A. Ezzahouani and L.E. Williams: Effect of Irrigation Amount and Preharvest Irrigation Cutoff Date on Vine Water Status and Productivity of Danlas Grapevines. pp. 333-340.
[Danlas種のブドウ樹の水分状況と生産性に及ぼす灌水量と収穫前灌水中断時期の影響]

水を与えていないブドウ樹(NI)あるいは3つの灌水中断時期(果房形成期での初期中断EC、ベレゾーン期での後期中断LCおよび中断せずTI)から構成される小区画で2つの灌水量のうち1つを与えられたブドウ樹を持つ、モロッコのVitis vinifera Danlas種が栽培されているブドウ畑で灌水実験を行った。真昼の葉の水ポテンシャル(Ψ1)、樹冠温度(Tc)および土壌水分含量を測定した。真昼のΨ1 は土壌水分量(r = 0.89)、環境温度(TA、r = -0.71)および蒸気圧差(r = -0.62)と有意な相関関係を示した。最も多収量および果粒重はTI ブドウ樹で、次にLCブドウ樹で、測定された。NIブドウ樹は収穫時に最も低い可溶性固形物量を示した。NIとTIの比較により、収量はTC-TAとともに増加し、Ψ1も増加した。この研究の条件下では、収量および果実品質を維持するために-2.5度の平均TC-TA、または-1.0MPaのΨ1で十分であった。一方、-1.2MPaのΨ1値は水ストレスを示すようである。実験を行ったブドウ畑の蒸発散はこの土地でブドウ樹に通常通り灌水している量よりも大きく、Ψ1値および温度差も大きかった。しかしながら、この土地で生産されたブドウは早生として市場に予定されているので、これらの結果は、有意な減収量なしで、ブドウ樹に不十分な灌水処理をする、あるいは灌水をベレゾーン期に中断することが出来ることを示している。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/341

G.L. Main, R.T. Threlfall, and J.R. Morrisz: Reduction of Malic Acid in Wine Using Natural and Genetically Enhanced Microorganisms. pp. 341-345.
[天然および遺伝子機能向上微生物を用いたワイン中のリンゴ酸濃度の減少]

天然界より選抜した酵母ICV-GREおよび71B、MLF菌Lalvin 31および遺伝子機能向上酵母ML01を用いて、Vignoles種のワイン製造中のリンゴ酸の微生物的減酸について比較した。ICV-GRE酵母は18%のリンゴ酸を消費し乳酸の生産は認められなかった。また、ICV-GREで発酵したワインにLavin 31を添加したところ、残っていたリンゴ酸は乳酸になり、クエン酸の一部が消費された。ICV-GRE + Lalvin 31処理により生成する乳酸は、ICV-GREのリンゴ酸消費によって、ML01の場合よりも少なく、適定酸度も最も低かった。ML01は5.7 g/Lのリンゴ酸(100%)を、最初の60時間の発酵で効果的に乳酸へと変換した。ML01で製造したワインは他の処理の場合よりSO2の濃度が高かった。二つ目の実験の結果、ML01は34.6 mg/LのSO2を生成し、これはICV-GREの3倍、71Bの6倍の濃度であった。ML01により生成される乳酸とSO2の量は、目的とするワインのスタイルによって醸造家に注目されるであろう。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/346

A. Prajitna, I.E. Dami, T.E. Steiner, D.C. Ferree, J.C. Scheerens, and S.J. Schwartz: Influence of Cluster Thinning on Phenolic Composition, Resveratrol, and Antioxidant Capacity in Chambourcin Wine. pp. 346-350.
[シャンブルサン・ワイン中のフェノール組成、リスベラトロールおよび抗酸化活性に及ぼす摘房の影響]

ワイン用ブドウ品種シャンブルサン(Vitis spp.)のワイン成分組成、全フェノール、全アントシアニン、抗酸化物質およびリスベラトロール含量に及ぼす摘房の影響を3年間検討した。サンプルの滴定酸度およびpHは常法で測定した。全フェノール、アントシアニン濃度および抗酸化活性は特定の試薬と反応後分光光度計で測定した。ワイン中のcis- および trans-リスベラトロールおよびその配糖体のレベルはフォトダイオードアレイ検出器付きのHPLCで分析した。摘房はpHを除く基本的なワイン成分組成に影響を与えなかった。しかしながら、全アントシアニン、全フェノールおよび抗酸化活性の増加によって示されるように、摘房はワインのポリフェノール組成を増加した。加えて、摘房はフリーのリスベラトロール(cis- および trans-型)およびその配糖体を含めた全リスベラトロール量を増加した。全フェノール、全アントシアニン、リスベラトロールおよび抗酸化活性間で正の相関関係が認められた。シャンブルサンの摘房を行うことにより、アントシアニン、全フェノールおよび抗酸化活性を増加した、健康に良いワインを醸造できると結論付けた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/351

M. Keller and L.J. Mills: Effect of Pruning on Recovery and Productivity of Cold-Injured Merlot Grapevines. pp. 351-357.
[冷害を受けたメルロー種の再生と生産力に及ぼす剪定の影響]

樹幹組織が冷害を受けた後のブドウ樹の再生と生産力に及ぼす剪定時期と芽数が及ぼす影響を検討するために、圃場実験を行った。1999年に植栽し、両側水平コルドンで仕立てた自根メルロー種を用いて、萌芽前の短梢剪定、萌芽後の短梢剪定、後にもう一度剪定を行う萌芽前の短梢剪定(二度剪定)、最小限の剪定およびすべての節で除芽を行った最小限の剪定を2003年と2004年に行った。平均として、晩秋の低温により芽の25%が死んだ。組織の褐変化として認められる樹幹の傷害に関しては、わずかな木部傷害をもつ師部傷害が20から100%で変化した。師部傷害は、2年連続した生育シーズンで、萌芽、成長、果実形成組成および果実成分には影響を及ぼさなかった。剪定による枝の芽数の違いは新梢数、房数および収量に比例して異なった。最小限の剪定はいずれのシーズンでも最も高い収量を示した。一方、二度剪定および除芽は最も低い収量という結果であったが、除芽した枝では基部の隠れていた芽から新梢が成長した。可溶性固形物は収量と負の相関関係にあったが、剪定によって全体の収量は低く、果実成分組成は影響を受けなかった。2年とも暖かいシーズンであったにも関わらず、新梢数および房数が多いものも含めて、多くの枝はシーズン中に衰弱することはなかった。これらの結果は、選定時期および芽数は冷害時の枝の生存および再生に影響を与えず、その後の生育および成熟にほとんど影響しないことを示唆した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/358

M.O. Downey, M. Mazza, and M.P. Krstic: Development of a Stable Extract for Anthocyanins and Flavonols from Grape Skin. pp. 358-364.
[ブドウ果皮のアントシアニンおよびフラボノール類抽出の安定化法]

一般的に用いられる溶媒を用いて、ブドウの果皮からのアントシアニンおよびフラボノール類の抽出物における不安定性について研究した。アントシアニンおよびフラボノールグリコシド類はともに弱酸抽出溶媒中で不安定であり、最も普通に用いられている1%塩酸-メタノール溶液中で最も不安定であった。アントシアニン類の不安定性は以前に報告されているが、フラボノール-グリコシドの不安定性については今回の論文が始めての報告となる。これらの知見により、アントシアニン(malvidin-3-O-glucoside, malvidin-3-O-acetylglucoside, and malvidin-3-O-p-coumaroylglucoside)およびフラボノール(quercetin-3-O-glucoside and quercetin-3-O-glucuronide)の抽出効率を最大とし、抽出およびHPLC分析中の分解を減少させた方法を開発した。塩酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、まれ陰惨などで酸性化したメタノール溶液、酸性化したエタノール、0~100%までのメタノール水溶液についてについて調べた。最も効率的な溶媒は50%メタノール水溶液で、アントシアニンおよびフラボノールの抽出率およびHPLC分析に先立つ安定性の面でも優れていた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/365

G.L. Main and J.R. Morris: Effect of Macerating Enzymes and Postfermentation Grape-Seed Tannin on the Color of Cynthiana Wines. pp. 365-372.
[シンシアナ種ワインの色調に及ぼすマセレーション酵素と発酵後の種子タンニン処理の影響]

シンシアナ種(Vitis asetivalis)の色素抽出と保持におけるマセレーション酵素および発酵後の種子タンニンの影響について調べた。5つの酵素(Trenolin Color DF、Lallzyme EX-V、Crystalzyme Tinto、Rohapect VR-CおよびVinozyme G)で処理したマストおよび対照として二次発行中に酵素剤を添加しないコントールの色調について測定を行った。全ての処理において、赤色は3日目で最も高く、その後減少した。Trenolin Color DF、Lallzyme EX-VおよびVinozyme Gでは発酵終了期において赤色が最も高く、青および黄色の比率がコントロールより低かった。発酵終了後のブドウ種子タンニン処理(Grap’TanPC処理の有無)を、各酵素処理と組合わせて行った。瓶詰め食後および11ヶ月または22ヶ月貯蔵したワインにおいて、微小ではあるがマセレーション酵素およびタンニン添加による有意な差が検出された。Lallzyme EX-VおよびVinozyme G処理はコントロールと比較して、重合体色素生成を促進し、イオン化したアントシアニン濃度が高かった。Grap’TanPCの添加は酵素処理と似た効果を示し、アントシアニン類、重合化、イオン化したアントシアニンおよび黄色の色を促進した。瓶中での熟成時間は酵素やタンニン処理より大きな影響を与えた。酵素処理およびタンニン処理したワインでは、ともに色調に対する統計的な有意差が認められたが、色調の差は少なく、商業的に重要であるとは考えられなかった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/373

C.M. Lucy Joseph, G. Kumar, E. Su, and L.F. Bisson: Adhesion and Biofilm Production by Wine Isolates of Brettanomyces bruxellensis. pp. 373-378.
[ワインから調整したBrettanomyces bruxellensisの生産する粘着物質およびバイオフィルム]

 種々の地域かのワインから単離したBrettanomyces bruxellensisについて、粘着物質およびバイオフィルム生成能を色素残留試験により研究した。40種類の単離株のうち、38種類は低糖濃度の場合6時間以内に表面に粘着する性質を示した。別組の36株のうち15株はバイオフィルム生成能を示し、そのうち8種は実験条件下で多量のバイオフィルムを形成した。Brettanomyces株のバイオフィルムの形成および粘着性は培地のpHが増加すると増えた。タイ王国より分離した株が生成するバイオフィルムについて、種々のクリーニング剤の除去効果について調べた。試験した大部分のクリーニング剤はBrettanomycesの粘着力およびバイオフィルム生成に対して多少の減少効果を持ち、腐食性ソーダが最も高い効果を示した。最もバイオフィルムを生産した8種の株は、1つがタイ王国の株、ニュージーランドが1株、カリフォルニアが2株、チリが1株、フランスが1株、マルタが2株であった。したがって、バイオフィルム生成能は地理的に広く分布していると考えられる。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/379

V. Renouf, M.C. Perello, G. de Revel, and A. Lonvaud-Funel : Survival of Wine Microorganisms in the Bottle during Storage. pp. 379-386.
[貯蔵瓶内のワイン関連微生物の生存について]

 ワイン関連微生物が瓶内で生存・生育する能力を調べるため、以前あるいは最近瓶詰めされたワインの微生物分析を行った。調べた微生物のうち、腐敗酵母であるBrettanomyces bruxellensisが主要であり、瓶詰め前に本菌を除去する効果的な方法が必要である。この論文では種々のフィルターについて試験した。個々の方法は瓶詰め後のワインの微生物分析および揮発性フェノール化合物分析のために長年にわたり評価されてきたものである。孔径が小さいほど、微生物は除去された。細菌の除去には0.3 μmのフィルターが必要であり、1.0 μmのフィルターでは酵母の除去は可能であった。さらに強い条件でワインをろ過すると、弱い条件でのろ過や無ろ過のワインに比べ、揮発性フェノール化合物の濃度が低下した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/387

J. Mutanen, J. Raty, E. Gornov, P. Lehtonen, K.E. Peiponen, and T. Jaaskelainen: Measurement of Color, Refractive Index, and Turbidity of Red Wines. pp. 387-392.
[赤ワインの色調、反射インデックス、濁度の測定]

 赤ワインの光学的な特性はワインの特性評価に用いることができる。赤ワインに関する従来の光学的測定は光の透過スペクトル分析により得られる。しかし赤ワインの色調だけが光学的指標ではなく、ワインの反射インデックスおよび濁度もより包括的な分析に適用可能である。本実験の目的は、透過率による光学測定と反射スペクトルおよび濁度を組合わせた方法を紹介し、そのデータ解析をすることである。赤ワイン評価のために多機能反射計を導入した。異なる生産国で製造された12本の市販赤ワインについて透過率、色調、反射インデックス、および濁度を測定し、複合光学測定体系を試験した。異なるタイプの光学測定を取り入れることで、ワイン醸造の過程を特定し、ワインの認証の助けになると考えられる。色調、反射インデックス、濁度に加え、反射により得られる角度と反射インデックススペクトルを赤ワインの光学特性を示す新しいパラメーターとして導入した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/393

RESEARCH NOTE:
P.E. Blom and J.M. Tarara: Rapid and Nondestructive Estimation of Leaf Area on Field-Grown Concord (Vitis labruscana) Grapevines. pp. 393-397.
[ブドウ畑で育てられたコンコルド(Vitis labruscana)種における葉面積の迅速且つ非破壊的測定法]

ブドウ樹の葉面積を評価する一つの要因である、新梢における葉面積を迅速且つ非破壊的に計測する方法として、新梢基部の直径、新梢における葉数および新梢の長さ、という3つの潜在的変数を調査した。ブドウ畑で育てられたブドウ樹で5年間それらの計測を行った。新梢基部の直径は最も迅速な方法であるが、新梢における葉面積の良い指標とはならなかった。新梢の長さ及び新梢における葉の数は、新梢における葉面積の平方根と直線的な相関関係を示した(それぞれR2 = 0.90およびR2 = 0.85)。年による、あるいはシーズンによる相関関係においていくつかの変数は、温度が高い期間の作用として相関関係を表すことで減少した。さらに、非直線的モデルでは、変数に対する新梢における葉面積の比率を利用することが可能であった。この比率を用いることにより、樹冠の成長の変動を説明することができ、シーズン初期の新梢の成長時期に葉面積の評価を行うことができる。シーズン初期では、長さ及び数の計測は新梢に付き0.5分で行うことが可能であるが、樹冠が成長し、新梢が絡み合うので、サンプリングは徐々に遅くなり、新梢に付き2.5分程度となる。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/398

RESEARCH NOTE:
L.A. McGaha, B. Jackson, B. Bextine, D. McCullough, and L. Morano: Potential Plant Reservoirs for Xylella fastidiosa in South Texas. pp. 398-401.
[南テキサスにおけるXylella fastidiosaの潜在的植物宿主]

テキサス州ガルフコーストに育つVitis vinifera は、細菌Xylella fastidiosaにより引き起こされるピアース病に必ず接触する。この細菌の宿主となりえる別の植物種を同定するためには、病気の激しいこの地域は素晴らしい環境を提供する。40科に相当する100種および1種の在来植物および観葉植物を用いて、ELISA法、PCR法およびリアルタイムPCR法によりX. fastidiosa の存在を調査した。17植物は2つ以上の検出法でX. fastidiosaに陽性であった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/402

RESEARCH NOTE:
R. Vasconcelos Botelho, A. Pozzobom Pavanello, E.J. Paioli Pires, M. Monteiro Terra, and M.M. Lopes Muller: Effects of Chilling and Garlic Extract on Bud Dormancy Release in Cabernet Sauvignon Grapevine Cuttings. pp. 402-404.
[カベルネ・ソーヴィニヨンの挿し木での休眠芽の休眠打破に及ぼす低温処理およびニンニク抽出物の影響]

休眠芽の休眠を打破するための化学薬品処理は暖かい冬を経験したブドウ畑では必要である。一つの芽を持つ挿し木に1.5%あるいは3.0%のニンニク抽出物あるいは1.5%シアナミド溶液を処理した。対照区として、水を処理した。これらを処理する前に、6度以下で0、136、336および508時間低温処理した。すべての処理において、対照区に比べ、萌芽率が向上した。休眠打破に最も効果の高かった処理は1.5%シアナミドであり、低温処理しなくとも、35日後には80%の芽が萌芽した。ニンニク抽出物もまた萌芽を促進し、168、336および504時間の低温処理により35日後には70%以上の休眠打破が認められた。カベルネ・ソーヴィニヨンの低温要求性は336時間程度であると考えられた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/58/3/405

TECHNICAL BRIEF:
C. Riponi, N. Natali, and F. Chinnici: Quantification of Hen’s Egg White Lysozyme in Wine by an Improved HPLC-FLD Analytical Method. pp. 405-409.
[改良HPLC-FLD分析によるワイン中のHen’s Egg White リゾチームの定量]

 赤および白ワイン中のリゾチーム測定のための逆相HPLC改良法を考案し評価した。一般に用いられている紫外280 nmの測定に対して、蛍光分析を用いることにより10倍の感度が得られた。クロマトグラフィーの分離、マトリックスへの吸着現象、試料の酸性化、蛍光強度の安定性など、測定に影響する要因と分析の信頼性について評価した。その結果、本方法は直線がよく、正確で、同時にリゾチームの最小検出量が減少した(0.18 mg/L)。本方法は技術的目的や最終生産物中の残存リゾチームの定量に用いることができ、アレルギー過敏性の消費者に対する予期できない事態に対するリスクを軽減できる。

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