American Journal of Enology and Viticulture

Volume 60 No.3 (2009)

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/251

A.G. Reynolds and J.E. Vanden Heuvel: Influence of Grapevine Training Systems on Vine Growth and Fruit Composition: A Review. pp. 251-268.
[ブドウ整枝システムがブドウ樹の生育と果実組成 に与える影響:総説]

ブドウの整枝は樹形の形成に関連する。整枝のタイ プにより総葉面積と光を良好に受ける葉面積のパーセ ントが異なる。したがって、ブドウ樹の光合成能力は、 その整枝システムに有意に依存し、その葉の光ミクロ 気象に連動する。整枝は樹冠の光ミクロ気象を変化さ せるのに加え、果実芽の分化、果房の露出、ブドウ樹 の水分状態そして葉の蒸散のような多くの他の変数に 影響を与えるであろう。ブドウ樹の樹勢と収量のバラ ンスを達成するためのブドウ樹整枝システムの改良は、 樹冠の光ミクロ気象の最適化を通して果実成分の改善 と収量の増加を同時に行うであろう分割された樹冠シ ステムへ導く。したがって、多くの整枝システムは、 樹冠と果実の向上したミクロ気象を通してワインの品 質を改善する能力として識別される。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/269

Y. Zhao, J. Li, Y. Xu, W. Fan, and W. Jiang: Characterization of Aroma Compounds of Four Brandies by Aroma Extract Dilution Analysis. pp. 269-276.
[アロマ抽出希釈分析法による4 つのブランデーのア ロマ成分の特徴]

2 つのVSOP、2 つのXO ブランデー中のアロマ成分 を分画後、ガスクロマトグラフィー-マススペクトロメ ーター(GC-MS)とガスクロマトグラフィー-オルフ ァクトメトリー(GC-O)によって同定した。DB-Wax、 HP-5 を装着したGC-O によって、トータルで109 個の アロマ成分を、4 つのブランデーサンプル中に検出し た。最も重要なアロマ成分を同定するために、さらに アロマ抽出希釈分析法(AEDA)を用いた。結果では、 エステル類、特にエチルエステルが最も重要なアロマ であることが示された。様々なアルコール類、アルデ ヒド類、アセタール類、フラン誘導体類、ラクトン類、 フェノール成分も同定された。フレーバー希釈ファク ター(FD)に従うと、最も重要なアロマ成分は、2-メ チルプロパノール、3-メチルブタノール、カプロン酸 エチル、エナント酸エチル、カプリル酸エチル、カプ リン酸エチル、β-ダマセノン、trans-β-γ-オクタラクト ン(FD?1024)であった。フーゼル油臭を示す2-メチ ルプロパノールや3-メチルブタノールを除いて、これ らの成分はフルーティで甘く、ココナッツ様アロマに 寄与した。1,1-ジエトキシエタンやcis-メチル-γ-オクタ ラクトンは、クリーミーでココナッツ様アロマを持ち、 2 つのブランデーにおいて重要なアロマ成分(FD 1024)であった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/277

S. J. Owen, M.D. Lafond, P. Bowen, C. Bogdanoff, K. Usher, and S.R. Abrams: Profiles of Abscisic Acid and Its Catabolites in Developing Merlot Grape (Vitis vinifera) Berries. pp. 277-284.
[メルローブドウ(Vitis vinifera)果粒の生長における アブシシン酸の特性とその代謝]

植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)は、ブド ウ果実の生長と成熟に関与するシグナル分子である。 ブドウ果実の生長におけるABA 合成と代謝に関して より包括的な理解を得るために、カナダ・ブリティッ シュコロンビアの南部Okanagan Valley の商業用ブド ウ園に生育するメルローブドウのABA と代謝特性を マルチ反応モニターモードのHPLC-MS/MS を用いて 測定した。ベレゾーン前の果粒の果皮と果肉は、低か ら中程度の濃度のABA を含んでいる間、これらの組 織は高い濃度のABA 代謝物であるdihydrophaseic acid (DPA)を含んでいた。このことは、果粒生長の初期 において、多量のABA が生産され、代謝されること を示している。果肉と果皮においては、ABA の二つの ピークが見られ、最初はベレゾーンの2 週間前、次は ベレゾーン後期で、その後、ABA は果粒の成熟にとも なって減少した。 果肉と果皮のアブシジン酸グルコー スエステル(ABA-GE)はベレゾーンの少し前に上昇 し、ベレゾーン後に減少した。種子の生長においても 同様の傾向が観察されたが、ABA とDPA はともに初 期において高いレベルであり、ABA-GE は成熟まで高 いレベルを維持した。ベレゾーン期の果粒に添加され たABA は1 週間の半減期を持ち、結果としてDPA 濃 度が69%増加した。しかし、これは総ABA と代謝プ ールにおける小さな増加のみを構成した。処理は、果 粒の成熟速度、基本的なジュース組成、または果皮と 種子のタンニンには影響しなかったが、果皮のアント シアニン含量を、同じ果粒成熟度において7%増加さ せた。これらの観測結果は、ABA は果粒にほとんど取 り込まれることなく、代謝もされず、その大部分が表 層に残っていることを示している。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/285

S.A. Dhekney, Z.T. Li, T.W. Zimmerman, and D.J. Gray: Factors Influencing Genetic Transformation and Plant Regeneration of Vitis. pp. 285-292.
[ブドウ属の遺伝子組換えと植物体再生に影響する 因子]

カルス誘導培地、培養プロトコール、胚培養齢、子 葉摘出処理がブドウ属の組換え胚と植物体ラインの生 産に与える影響を研究した。葉または雄しべおよび雌 しべから誘導した胚培養をエンハンスド緑色蛍光タン パク質/ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII (egfp/npt II)フュージョン遺伝子を含むAgrobacterium で形質転換した。異なった培地上での組換え胚ライン の生産は、遺伝子型依存的であった。Vitis vinifera は、 DM とX6 培地上で培養した時に、最も多くの組換え 胚ライン(7.5%から26%)を生産した。一方、Vitis champinii およびある種のVitis ハイブリッドはNB と X6 培地に最も高い応答を示した(5%から12.5%)。 Vitis vinifera 遺伝子型の中で、メルロー、スーペリア・ シードレス、トンプソン・シードレスは、4、8、12 ヵ 月の培養齢に関係なく組換え胚ライン(11.6%から 36%)を生産した。一方、カベルネ・フラン、カベル ネ・ソービニヨン、そしてシラーは4 ヵ月培養齢から のみ胚ラインを生産した(4.1%から16%)。発芽した 胚の子葉の摘出が組換え植物体の回収率に及ぼす効果 は品種によって異なっていた。処理は、Vitis vinifera と Vitis riparia(26.7%から73.3%)において、植物体の高 い回収率をもたらしたのに対して、Vitis champinii と Vitis ハイブリッドにおいては、低い回収率であった。 組換え植物体は、Vitis champinii、Vitis riparia、Vitis rupestris、Vitis vinifera、そしてVitis 種間ハイブリッド を含むブドウ属の19 の遺伝型から再生された。PCR と定量的リアルタイムPCR により、選抜された組換え 植物体におけるegfp 組換え遺伝子の存在とコピー数 が確認された。野外で定着した組換えブドウ樹は、非 組換えブドウ樹と比べて、普通の栄養および生殖成長 を示した。成熟植物体組織における安定GFP(緑色蛍 光タンパク質)の発現パターンを、4 年間にわたり、 組換え遺伝子のサイレンシングが示されていないこと を確認するために観察した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/293

P. Gago, J.L. Santiago, S. Boso, V. Alonso-Villaverde, M.S. Grando, and M.C. Martinez: Biodiversity and Characterization of Twenty-two Vitis vinifera L. Cultivars in the Northwestern Iberian Peninsula. pp. 293-301.
[北西イベリア半島の22 Vitis vinifera 栽培種の生物多 様性と特徴]

単一栽培種のみを定植したブドウ園をともなう近 代ブドウ栽培実践は、ブドウ樹の多様性の損失の一因 となり得る。イベリア半島北部および北西部の特殊な 地理的条件は、この地域を、依然としてブドウ多様性 の高い保護区にしている。古い伝統的な栽培種の保護 は、遺伝的衰退を減らし、ユニークなワインの生産を 可能にする。スペインのMision Biologica de Galicia リ サーチセンターにあるブドウ樹コレクションとして 1993 年から栽培されている、全部で22 の古いブドウ 栽培種が、この研究で記述される。表現型と遺伝型の 多様性は、生長葉のブドウ形態学的特徴と10 のマイク ロサテライトマーカー(VVS2、VVMD5、VVMD7、 VVMD25、VVMD27、VVMD28、VVMD31、VVMD32、 VrZAG62 そしてVrZAG79)の分析を通して評価され た。これらの古い栽培種を記述すること(それらのい くつかは、今日まで記述されていない)、そして異名と 異種同名の問題を解決することは、それらの再利用に おいて必要なステップである。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/302

M. Esteruelas, P. Poinsaut, N. Sieczkowski, S. Manteau, M.F. Fort, J.M. Canals, and F. Zamora: Comparison of Methods for Estimating Protein Stability in White Wines. pp. 302-311.
[白ワイン中のタンパク安定性評価方法の比較]

いくつかのタンパク安定性テストが提案されてい るが、それらの結果はいつも一定であるわけではなく、 ワインメーカーはベントナイト添加量を決める時に迷 う。ソービニヨンブランワインで自然に生じるタンパ ク沈殿の化学的組成を、様々なタンパク安定性テスト を行った後に得られる沈殿物と比較した。安定性テス トの沈殿物の化学的組成、分子排除プロファイル、電 気泳動プロファイルを、自然に生じる沈殿物と比較し た。全ての強制沈殿物は、自然に生じた沈殿物と異な る化学的組成を示した。テストのいずれも自然現象の 完全な再現をしていない。緩慢な加熱テストではトー マチン様タンパクが沈殿せず、エタノールテストでは 多量のポリサッカライドが沈殿し、いずれのテストも 適していない。結果として、急速な加熱テストが、化 学的組成の観点から自然の組成に最も似ていて、それ ゆえに最も適切な安定性テストに近いことを示唆する。 結果は、自然のタンパク沈殿物や、異なる安定性テス トにより得られる沈殿物の化学的組成について、充分 な比較を提供する。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/312

L. Makra, B. Vitanyi, A. Gal, J. Mika, I. Matyasovszky, and T. Hirsch: Wine Quantity and Quality Variations in Relation to Climatic Factors in the Tokaj (Hungary) Winegrowing Region. pp. 312-321.
[トカイワイン(ハンガリー)の栽培地域における気 候的要因に関連するワイン生産量と品質の変動]

ハンガリーのトカイ-ヘジャイアのブドウ園地域に おけるワイン生産量と品質に関する気候要素の影響を 分析した。Makra テストを適用することによって、ワ イン生産量とワインの品質のデータ群の両方で、有意 な打開策が見出された。気候変動とワイン生産量およ び品質の間の相関関係分析では、様々な統計的方法を 用いて、ワイン生産量の最も重要な要因が、5 月、6 月、7 月、8 月の日照時間と9 月の降雨量であることが 確認された。ワインの品質については、5 月と9 月の 平均気温、降雨量と日照時間が、7 月の降雨量と8 月 の日照時間に加えてキーとなる役割を果たしている。9 月の気候の役割が最も重要で、ワインの品質の重要成 分としてのAszu(Botrytis)の形成以降、9 月中の状況 に大きく依存している。結果では、要因分析で得られ た有意な変動が、気候とワイン生産量や品質の間の一 次的相関関係を2 テストで得られた変動より、より良 く説明できることを示している。実際の7 収穫年の気 候タイプを、要因分析とクラスター分析の手段を用い て決定した。結果は、収穫年の気候タイプの分類が、 ワインの品質における変動よりも、ワイン生産におけ る変動をより効果的に説明する。概してこの研究は、 この地域におけるワイン生産量と品質との有意な相関 関係と気候変動の特徴と重要性を確認している。その 結果は、その地域におけるワイン生産のため、生産量 と品質のアセスメント戦略に役立つ。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/322

L. Guerin, D.H. Sutter, A. Demois, M. Chereau, and G. Trandafir: Determination of Activity Profiles of the Main Commercial Enzyme Preparations Used in Winemaking. pp. 322-331.
[ワイン醸造に使用する主な市販酵素製剤の活性プ ロファイルの測定]

ワイン生産のために、フランス市場で利用できる多 くの酵素製剤がある。酵素活性の評価は製造者や業者 によって実施されている。この研究では、様々な酵素 活性(ペクチン分解、ヘミセルロース分解、セルロー ス分解、グリコシダーゼ活性)を明らかにするための 方法を開発し、その後41 個の市販の酵素製剤に適用し た。41 個の製剤の酵素的プロファイルを考慮すると、 主な違いは、製剤のラベルに書かれている色抽出、清 澄化、沈降化、圧搾、または多価作用とアロマ遊離に 含まれる。しかし、その違いは、これら全ての製剤の 有効性を考えることなく、定量的というよりは非常に 定性的である。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/332

H.A. Sandler, P.E. Brock II, and J.E. Vanden Heuvel: Effects of Three Reflective Mulches on Yield and Fruit Composition of Coastal New England Winegrapes. pp. 332-338.
[ニューイングランド沿岸地域のワインブドウの収 量と果実組成に与える3 つの反射マルチの効果]

南ニューイングランドブドウ園において、収量と果 実組成に及ぼすいくつかの反射マルチの効果を評価す る3 つの研究を2 年間にわたって行った。白色の反射 織布(WRM)を2004 年と2005 年に、シャルドネ、 ピノ・ノワール、メルローのブドウ樹の下(除草帯の 被覆)で試験した。砕いたホンビノス貝の貝殻(QS) と銀色のアルミコートした反射マルチ(SRM)を、2005 年と2006 年にシャルドネ、ピノ・ノワール、メルロー の下で試験した。ホンビノス貝の貝殻は、2006 年と 2007 年にカベルネ・フランとチャンセラーにおいて非 処理のコントロールと比較した。WRM は、樹冠に対 する光合成アクティブな照射(PAR)の反射を増加さ せた。しかし、果実組成に対しては、測定可能な影響 は持たなかった。SRM は樹冠へのPAR 反射を改善し た(コントロールと比べた時)が、樹冠密度、収量、 果実組成に影響しなかった。早期の汚れや破損はSRM の一般的な問題である。除草帯へのホンビノス貝の貝 殻の添加は、土壌のカルシウムレベルを増加させ、結 果として高いpH をもたらし、Ca:Mg 比を実質的に 増加させた。QS は、いくつかの品種と年において、 樹冠密度、収量、果房数、果房重量、Brix を増加させた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/339

F. Bernizzoni, M. Gatti, S. Civardi, and S. Poni: Long-term Performance of Barbera Grown under Different Training Systems and Within-Row Vine Spacings. pp. 339-348.
[異なった整枝システムと列内ブドウ樹間隔のもと で栽培したバルベーラの長期生産力]

垂直に新梢を誘引した短梢低コルドン(SPC)、シン グルハイワイヤーコルドン(HW)、シングルギヨー (SG)、垂直スプリットダブルギヨー(DG)として確 立されている整枝システムの効果を、5 年間 (2003‐2007)にわたり、列間隔2.5 m、列内間隔0.9 m、 1.2 m、1.5 m で定植したVitis vinifera L. cv. バルベーラ ブドウ樹において試験した。短梢(SPC とHW)シス テムにおいて、計測節あたりの全新梢はSG とDG で 記録された値の約3 倍であり、一方、全葉面積として のブドウ樹能力は、試験全体を通して、SPC(6.48 m2) が最も高く、SG(2.93 m2)が最も低かったが、後者は 最も勢力の強い新梢を着けた。葉面積として測定した ブドウ樹能力は、列内間隔が増加するのにともない、 直線的に減少した。列のメーターあたりの収量は、1.5 mにおいて0.9 m の樹間に比べて~20%で減少した。 SPC とHWの高い新梢数は、長梢剪定システムの高い 新梢稔性と果房重量によって差し引かれたため、整枝 システム全体を通して、ブドウ樹あたりの収量に有意 な差はみられなかった。収穫時のマスト組成は、SPC、 HW、 SG の間で類似していたが、DG は、全体に低品 質のブドウを生産した。樹間はブドウ組成に影響しな かった。結果は、バルベーラを適切に管理した時、長 梢または短梢剪定整枝システムのどちらにおいても、 収穫物の類似した潜在的および質的発現が達成できる ことを示した。列内0.9 m の樹間は、すべての整枝シ ステムにわたって、類似のブドウ品質で、ヘクタール あたり20%高い収量を確保する方法として推奨される。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/349

RESEARCH NOTE:
M. Crespan, S. Meneghetti, and S. Cancellier: Identification and Genetic Relationship of the Principal Rootstocks Cultivated in Italy. pp. 349-356.
[イタリアで栽培されている主要な台木の同定と遺 伝的関係]

シンプルシーケンスリピート(SSR)プロフィール を27 種のイタリアで最も一般的な台木について作成 した。品種は、それらが最も広く商品化され、それぞ れの品種に対して1 クローンまたは1 系統以上をもつ 機会を供給するので、3 種を除いて、実用的な目的で 選ばれた。植物材料(全体で86 サンプル)は、主に CRA-VIT とNucleo di Premoltiplicazione delle Venezie の コレクションから供給された。Le Grau du Roi のフラン スコレクションから入手した信頼性の高い参考試料の 使用により、イタリア157-11C は、しばしば164-49C と混乱していることが確認された。台木の対立遺伝子 をV. vinifera L.の663種の遺伝型のそれらと比較したと ころ、二つのグループにおいてシングル遺伝子座の多 型が異なっており、台木に特異的な対立遺伝子があり、 それらはV. vinifera バライティーでは欠失しているこ とが示された。これらのデータは、親が不明なハイブ リッドの有望な起源の同定にとって、大変有用となる。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/357

RESEARCH NOTE:
A. Garris, P. Cousins, D. Ramming, and A. Baldo: Parentage Analysis of Freedom Rootstock. pp. 357-361.
[フリーダム台木の系統解析]

台木フリーダムは、2 つの自然受粉した親木(1613-59 とDog Ridge 5)の子孫であり、根こぶ線虫耐性の遺伝 資源である。フィロキセラの問題がブドウ園において 重要性を増しているのにともない、不特定の花粉供与 体からVitis vinifera へフィロキセラ感受性が導入され るリスクが心配される。フリーダムの系統を明らかに するために、31 種の潜在的な原種の遺伝的特徴を30 のマイクロサテライトマーカーで分析した。我々は、 フリーダムの報告されている両親(1613-59)と祖父母 (1613C)を確認し、3306C(V. riparia×V. rupestris) を1613-59 の花粉親として同定した。Dog Ridge 5 の花 粉親を同定することはできなかった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/362

RESEARCH NOTE:
H. Kobayashi, S. Suzuki, F. Tanzawa, and T. Takayanagi: Low Expression of Flavonoid 3',5'-Hydroxylase (F3',5'H) Associated with Cyanidin-based Anthocyanins in Grape Leaf. pp. 362-367.
[ブドウ葉のシアニジンを基本とするアントシアニ ン類と関連したFlavonoid 3',5'-Hydroxylase(F3',5'H) の低発現]

この研究の目的は、生育中のブドウ(Vitis vinifera L) 葉における、アントシアニン組成とアントシアニン合 成関連遺伝子の転写特性を明らかにすることである。 果皮は、生育中にシアニジンを基本とするアントシア ニン類とデルフィニジンを基本とするアントシアニン 類を蓄積し、そしてflavonoid 3',5'-hydroxylase 遺伝子 (F3',5'H)発現のアップレギュレーションを示す。一 方、ブドウ葉では、生育中にシアニジンを基本とする アントシアニン類を大量に蓄積する。この結果は、生 育中のブドウ葉におけるF3',5'H の低発現によって支 持された。ブドウ葉におけるF3',5'H の低発現とデルフ ィニジンを基本とするアントシアニン類の低いレベル は、緑色、黄色、紫色そして黒色の果皮栽培種におい て一致している。flavonoid 3',5'-hydroxylase 遺伝子 (F3',5'H)の発現は、生育中のブドウ葉において増加 した。植物において、F3',5'H はデルフィニジンを基本 とするアントシアニン類の合成を制御し、F3'H は、シ アニジンを基本とするアントシアニン類を制御するの で、ブドウ葉は、F3'H によって制御されるシアニジン 合成経路を通して大量のシアニジンを基本とするアン トシアニン類を蓄積すると推測される。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/368

RESEARCH NOTE:
M. Perez-Gilabert, E. Tellez, and F. Garcia-Carmona: Triton X-114-aided Extraction and Partial Characterization of β-Galactosidase from Grape Berry Pulp (Vitis vinifera L.). pp. 368-372.
[ブドウ果粒パルプ由来β-ガラクトシダーゼのトリ トンX-114 抽出と部分的特徴解析]

ブドウ果粒パルプから、非イオン性界面活性剤トリ トンX-114 をともなった2 時間の分解によって、β-ガ ラクトシダーゼを抽出した。その後の層分離によって フェノール化合物の~75%が除去され、その比活性に おいて8 倍に増加した酵素を水性上層に回収できた。 酵素は、o-nitrophenyl β-galactopyranoside を基質として 反応速度論的特徴を解析した。酵素は酸性側で活性が 強く、最適pH は4.2 であり、その時のVmaxとKmは、 それぞれ0.009 μmol/min/mg protein と1.2 mMであっ た。β-ガラクトシダーゼは遊離のガラクトースによっ て競合阻害を受け、Kiは0.8 mMであった。酵素は65℃ に最適温度を持っていたが、その温度安定性は、この 温度において非常に低かった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/373

TECHNICAL BRIEF:
S.C. Petrovic: Correlation of Perceived Wine Astringency to Cyclic Voltammetric Response. pp. 373-378.
[サイクリックボルタメトリー応答に対するワイン 収斂味の相関]

赤ワインの収斂味とそのワインのサイクリックボ ルタンメトリー応答との関係を説明する。フラバン-3- オールのB環の酸化から大部分生じるボルタメトリー 電流は、事前に官能評価を行っている一連の赤ワイン の収斂味と有意に相関した(R2=0.68)。電気酸化した ワインフェノール類の重合として生じる、ガラス状炭 素電極上での濃度依存的な封止膜形成が、A 環:B 環 の酸化電流比をプロットすることによってモニターで きることを示唆している。この電流比は、収斂味に高 く相関(R2=0.77)し、フロログルシノール分解によ って事前に測定したように、ワイン中のエピカテキン やエピガロカテキンのサブユニット濃度の合計に高く 相関(R2=0.84)した。これらの結果は、収斂味の電 気化学的測定が、ガラス状炭素電極での濃度と封止効 果に相関することを示している。サンプル調製のため のモデルワインマトリックスにおいて、単純な希釈を 利用することで、サイクリックボルタメトリーは、赤 ワインの収斂味と分析応答を相関させる努力の中で、 確立された分析方法(例えば、タンパク沈殿や液体ク ロマトグラフィー)と好適に比較される。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/3/379

TECHNICAL BRIEF:
A. Bosso, M. Guaita, L. Panero, D. Borsa, and R. Follis: Influence of Two Winemaking Techniques on Polyphenolic Composition and Color of Wines. pp. 379-385.
[ワインのポリフェノール組成と色に対する2 つのワ イン醸造技術の影響]

発酵浸漬中のポリフェノール(アントシアニン類や フラボノイド類)の抽出や、ラッキング時や熟成7 ヵ 月後のワインのポリフェノール組成や色に関して、ア ントシアニン抽出延長(DE)とマスト分離(SM)と いう2 つのワイン醸造技術を試験した。これらの技術 は、果皮の果帽に対する機械的操作の頻度や強度を減 少させたり、浸漬の最初の数日間、マストへの酸素吸 収を制限したりすることからなり、つい最近圧搾した マスト(DE)、または引き抜き(SM)後、取り組んで いる。ラッキング時にこれらの2 つの技術で製造した ワインは、浸漬の最初の日から開始する空気での数回 のポンプオーバーを行っている伝統的なワイン醸造技 術によって生産されるワインよりも、色がより多く、 アントシアニン濃度(トータルやモノマー)やトータ ルポリフェノール濃度(トータルのフラボノイド類、 バニリンと反応性のあるフラバン類、プロアントシア ニジン類)がより高かった。これらの違いは、熟成7 ヵ月後にほぼ安定的に維持された。ポリフェノール類 のより多い抽出は、ブドウ中に自然に存在するペクチ ン分解酵素活性の、より良い状況に原因があるようで あった。アントシアニンの抽出増加率%は、ポリフェ ノール抽出増加%より低く、収穫年やブドウの組成で 変動した。色の進展は、発酵浸漬中の酸素吸収の程度 に影響された。

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