American Journal of Enology and Viticulture

Volume 63, No.3 (2012)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/301

R.M. Callejón, B.Margulies, G.D.Hirson, S.E.Ebeler
Dynamic Changes in Volatile Compounds during Fermentation of Cabernet Sauvignon Grapes with and without Skins
pp301-312

[果皮の有無によるCabernet Sauvignonブドウ発酵時の揮発性化合物の変化]
ワイン中の揮発性化合物は様々な由来から発生する、例えば、発酵中にブドウから抽出されるもの、発酵中酵母により生成するもの、発酵後の貯蔵あるいはその他の加工において生じるものなどである。発酵中ブドウから抽出される揮発性化合物に影響を与える要因については、あまり研究されておらず、発酵中にブドウから生成するワインアロマの生成・遊離過程や機構が少しでも理解できれば、メーカーがワインの組成やアロマを制御する上で役に立つと考えられる。本研究では、スキンコンタクトの時間がアロマ化合物の濃度変化に与える影響をCabernet Sauvignonブドウの発酵中に調べた。ヘッドスペースのSPME法をGC-MSと組み合わせ、発酵中の揮発性化合物をモニターした。スキンコンタクトの時間とタイミングによって揮発性化合物の組成は変化した。いくつかの化合物は果皮を共存させた発酵中に高くなったが、他の化合物(特にダマセノン)では果皮は「結合《あるいは揮発性化合物の遊離を抑制する方向で働いた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/313

H.Hopfer, S.E.Ebeler, H.Heymann
How Blending Affects the Sensory and Chemical Properties of Red Wine
pp. 313-324

[ブレンドは赤ワインの官能的あるいは化学的な特性にどのように影響するか]
Cabernet Sauvignon、Merlot、及びCabernet francの3種の単独品種から製造されたワインを用いて、2品種混合ワインを11種類、3品種混合ワインを4種類作成し、官能特性を記述分析で解析した。さらに化学分析(固相マイクロ抽出とGC-MS、ポリフェノールの組成、滴定酸度・揮発酸度、及びpH)を調べ、ブレンドしたワインの官能特性がこれらの化学的なパラメーターと一致するかを評価した。全データを多変量解析した結果、官能及び化学分析の全体から得られる結果は官能特性だけで得られた結果とよく一致したが、化学分析項目のうち記述分析と同じ結果を与えるものは無かった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/325

M.Gatti, F.Bernizzoni, S.Civardi, S.Poni
Effects of Cluster Thinning and Preflowering Leaf Removal on Growth and Grape Composition in cv. Sangiovese
pp. 325-332

[サンジョベーゼ種の生育と果実成分に及ぼす摘房と開花前の除葉の影響]
高収穫量を示すVitis vinifera サンジョベーゼ種を用いて、開花前の除葉(D)、開花前の早期摘房(ECT)、果実の生育誘導期における摘房(LCT)といった栽培技術を3シーズンにわたって試験し、除葉や摘房をしていない対照区と比較した。D処理では、第一葉および第1節から6節までの葉の除去、ECT処理とLCD処理では、末端の房から選んだ50%の房を除去、あるいは樹勢の弱い梢上の房の除去を行った。対照区に比べ、枝あたりの収穫量はECT処理やLCT処理で-45%、 D処理で-32%に減少した。D処理では、糖度、アントシアニン濃度の大幅な増加が見られ、総フェノール量も最も高かった。収穫量構成要素もまた処理の影響を著しく受けた。D処理の枝では、房も果粒も小さくなっており、そのため果粒間のスペースが広がり、他のブドウと比べて、果皮と種がよく成長した。すべての処理は最終的な果実に対する葉の比率を増加させながらも、栽培管理作業はこの増加とは本質的に関係していなかった。D処理では、高糖度は高い滴定酸度と一致し、逆に、ECT処理とLCT処理においては、低い滴定酸度と高いpHが高糖度と一致した。全体的な結果として、単一の収穫量構成要素に起こる多様な代償の結果として、栽培管理作業に依存して、異なった収穫量‐果実成分パターンが引き起こされることが明らかとなった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/333

B.P.Holzapfel, J.P.Smith
Developmental Stage and Climatic Factors Impact More on Carbohydrate Reserve Dynamics of Shiraz than Cultural Practice
pp. 333-342

[生育ステージおよび気象要因は栽培管理作業よりもシラー種の炭水化物貯蔵により影響する]
越冬中にブドウ樹に蓄えられた炭水化物貯蔵量は翌シーズンの結果に結びついており、貯蔵量を調製することを通じて収穫量を管理する方法が考えられている。本研究では、連続した4シーズンを通して、各種の栽培管理作業によってシラー種の炭水化物貯蔵が変化する程度を調査した。ヴェレゾーン期に3分の1あるいは3分の2の房を摘房した結果、ブドウ樹中の非構造性炭水化物(TNC)濃度が、2シーズン後に対照区の7%、3シーズン後に20%まで増加した。収穫後第5節まですべての新梢を残した結果、萌芽後の炭水化物の移動が増加することによって、2シーズン後に14%まで、3シーズン目の開花時に27%までTNC濃度が減少した。フルーツセットからヴェレゾーン間に、あるいは収穫後に灌漑を行った結果、ブドウ樹のTNC濃度に有意な影響は認められなかった。評価した5つの処理において、根の炭水化物貯蔵量に影響を及ぼす処理は確認されなかった。収穫後に新梢を残すと、2シーズン後に主芽壊死が増加し、3シーズン後には花の数が減少するなど、生殖成長に著しい影響を及ぼした。これらの結果は栽培管理作業を通じて炭水化物貯蔵量が変化する機会があることを示す一方、炭水化物貯蔵量のシーズンごとのパターンを本質的に変化させる栽培管理作業はないことを示している。生育ステージあるいはシーズンごとの気象要因は炭水化物貯蔵量により強く影響を及ぼすこと、そして、栽培管理作業を変えることにより炭水化物貯蔵量を操作することはシーズンごとの収穫量の振れを短期間で調整するというよりは長期間かけて生産性を調整するのに適していることが示唆された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/343

Andrew G. Reynolds, David Sorokowsky, William Gensler
Evapotranspiration-Based Irrigation Scheduling for Syrah: Assessing Vine Water Status by Petiole Electrical Potential
pp. 343-356

[シラー種のための蒸発散に基づく灌漑スケジュール:葉柄電気ポテンシャルによる水分状態の把握]
2004から2007年まで3列につき12本のシラー種(台木110R)が椊栽されているダニガン・ヒルズ(カリフォルニア)の区画において、3種類の蒸発散(ETo、100%、50%、20%)と樹冠容量(0.6または0.2-0.9)から試算された2種類の作物係数(Kc)を組み合わせた6種類の灌漑法を試した。処理はフルーツセット期に開始し、収穫1週間前まで継続した。日中の水ポテンシャル(ψ)は25ETで最も低く、しばしば-1.5 MPまで低下した。葉柄電気ポテンシャルは、特に2005年と2006年において、ψと同じパターンを示したことから、電気ポテンシャルはブドウ樹の水分状態をモニターするために使用可能であることが示唆された。灌漑処理はほとんどの収穫量構成要素に影響を及ぼさなかった。果粒重はEToが減少するに従い直線的に減少し、25ETで最も軽かった。Kcの変化は果粒重を増加した。2004年と2006年において、可溶性固形物(Brix)はEToが減少するに従い増加し(>25 Brix)、2005年では、25ETが最も低いBrix(<25)であった。Kcの変化はBrixを減少した。EToが減少するに従い滴定酸度が減少したが、Kcの影響に一貫性は認められなかった。2シーズンにおいて、pHはEToが減少するに従い直線的に低くなったが、Kcの影響に一貫性は認められなかった。2004年と2006年において、25ET/0.6(>4.15)において最も高いpHを示し、100ET/0.2-0.9 および 50ET/0.6の果実のpHは最も低かった。2004年において、総アントシアニン量および総フェノール量はEToが減少するに従い増加したが、2005年と2006年ではEToの減少に比例して減少した。官能評価では、25ETは他の果実を思わせる要素に影響せずに赤い果実香を減少し、最も微かな野菜香と強いラベンダーおよびチョコレート香をもたらした。鼻後において、25ETは強い黒い果実香、アニス、アルコール/熱の刺激、粘性と余韻を示した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/357

M.S.Lenz,R.Isaacs,J.A.Flore,J.S.Howell
Photosynthetic Performance of Pinot gris (Vitis vinifera L.) Grapevine Leaves in Response to Potato Leafhopper (Empoasca fabae Harris) Infestation
pp. 357-366

[ポテトヨコバイ(Empoasca fabae Harris)の侵入に対する応答におけるピノ・グリ(Vitis vinifera L.)ブドウ葉の光合成能力]
ポテトヨコバイ(Empoasca fabae Harris)は北アメリカにおいてブドウ樹を侵食する多食性の害虫である。ピノ・グリのような感受性のブドウ栽培種において食害の症状は、葉の黄色化、葉のカップ状化、そしてブドウ樹の成長阻害を含む。2つの温室実験が、E. fabaeにより光合成とその他の生理的過程がどのように影響を受けるかを決定するために実施された。実験Iにおいて、新梢に沿って異なった4か所のピノ・グリの葉に、それぞれ0, 1, 2, 4または8のE. fabae幼虫を43時間、侵入させ、侵入レベルと葉の位置の関係が光合成にどのように影響するかを測定し、光合成応答に対するダメージの閾値があるか否かを決定した。Empoasca fabaeの侵入は、炭素同化(A)、蒸散(B)そして気孔伝導性(Gs)に反比例し、内部のCO2濃度(Ci)に正比例した。AとGsの間には正の相関があり、一方、AとCiには負の相関があった。これは、Aの減少が気孔そして非気孔性制限の両方によることを示している。椊物に搊傷を起こすのに必要な昆虫の数として定義される搊傷の閾値が、ほとんどの葉の位置におけるA、E、Gs、Ciに対して計算された。実験IIにおいて、光とCO2の利用がE. fabae の侵入によってどのように影響を受けるかを測定するために、同一の葉の侵入そして非侵入領域に対して応答カーブが作成された。E. fabae侵入に応答したAの減少は、葉組織が光とCO2を利用する能力の低下に起因していた。Aの減少は、Gsの減少およびCiの増加と関連していた。このことは、気孔性および非気孔性の制限が侵入後における光合成補償の徴候と関連していることを示している。これらの結果は、E. fabaeの侵入が、内部組織そして気孔に対する影響をとおして、葉の光合成産物を生産する能力に迅速に影響することにより搊傷を引き起こすことを示している。これらの影響は、低い侵入レベルにおいて、おそらく一過性であるが、葉組織は高い侵入レベルにおいて上可逆的搊傷につながる障害を受ける可能性がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/367

M.P.Diago,B.Ayestarán,Z.Guadalupe,S.Poni,J.Tardáguila
Impact of Prebloom and Fruit Set Basal Leaf Removal on the Flavonol and Anthocyanin Composition of Tempranillo Grapes
pp.367-376

[テンプラニーリョ種ブドウのフラボノールとアントシアニン組成に与える開花前と結実期の基底葉除去の効果]
基底葉の摘葉の方法と時期がテンプラニーリョ種ブドウのフラボノールとアントシアニンの量と特徴に及ぼす影響を調べた。基底葉の除去は2つの生育ステージ、開花前と結実期に手作業および機械作業により行った。フェノール化合物の組成はHPLC-UV-Visによりブドウ抽出物において測定された。13のアントシアニンとフラボノール化合物が同定そして定量された。摘葉の時期と方法にかかわらず、基底葉の除去は、高い可溶性固形物で表される、より熟した果実を導き、酸度を低下させ、フラボノールとアントシアニンの蓄積に有利であった。このことは、摘葉されたブドウ樹において観察される収量あたりの総葉面積の増加と関連していた。アントシアニンについては、摘葉されたブドウ樹のそれらの濃度と果粒において観察されたより大きな相対的果皮質量の間に有意な関係があった。一般に、基底葉を摘葉したブドウ樹の果粒に観察されるフラボノールとアントシアニンの増加は、摘葉が機械により実施された時に大きい傾向があった。全般に、開花前と結実期の摘葉の間に、明らかな差はみられなかった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/377

Y.Zhang, Imed E. Dami
Foliar Application of Abscisic Acid Increases Freezing Tolerance of Field-Grown Vitis vinifera Cabernet franc Grapevines
pp. 377-384

[アブシジン酸の葉面散布は、圃場栽培のカベルネ・フラン種ブドウ樹(Vitis vinifera)の耐凍性を増加させる]
この研究の目的は、圃場栽培のブドウ樹の耐凍性をアブシジン酸(ABA)の葉面散布を用いて増加させる方法を発展させることである。固有の目的は、外からのABA処理に応答することによる、圃場栽培のカベルネ・フラン種ブドウ樹の形態学そして生理学的変化を評価し、そして、結果として耐凍性を増強するABAの葉面散布の最適な時期を決定することである。2つの場所で栽培されているカベルネ・フラン種ブドウ樹を、ベレーゾン、ベレーゾン後20, 30, 40そして55日に対応する異なった生育ステージにおいて、400 mg/Lと600 mg/LのABAで処理した。ABAは、収量構成または基本的な果実化学成分組成に影響しなかった。しかし、それは、アントシアニン濃度を増加させ、休眠を促進し、芽の含水量を減少させ、そしてシミュレートされた凍結事象下において、最終的に、凍結耐性を増加させた。ABAによる凍結耐性の増加は、2つの場所における*19℃と*23℃の自然の凍結処理に続く芽の傷害を評価することにより確認された。ABAの効果は、処理時期によりおそらく増加しており、それは、ベレーゾンそしてベレーゾン後20から30日で最大であった。結果は、ABA処理が休眠を促進する能力を持ち、そして、凍結耐性を増加させ、そして寒冷地域に生育するブドウ栽培種の冬季の傷害に対して保護する予防ツールとして使用され得ることを示唆している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/385

Pat Bowen, Carl Bogdanoff, Brad Estergaard
Effects of Converting from Sprinkler to Drip Irrigation on Water Conservation and the Performance of Merlot Grown on a Loamy Sand
pp.385-393(Research Note)

[壌質砂土で栽培されているメルローの水保持と生産力におよぼすスプリンクラーから点滴灌水への変更の効果]
オーバーヘッドスプリンクラーから点滴潅水に変えた効果が、果房の間引きをしたメルローブドウ樹としていないブドウ樹の果実生産、葉のガス交換、成長におよぼす影響を測定した。点滴またはスプリンクラー灌水は、列の土壌水分が8%未満に枯渇した時に壌質砂土に使用された。灌水の頻度は、スプリンクラーよりも点滴灌水下で平均して50%高くなったが(年あたり18回に比べて27回)、平均において64%少ない水(年あたりのブドウ樹あたりで1580 Lに比べて574 L)が、点滴灌水下で使用された。土壌プロフィールにおける水分マップは、灌水方法に応じて水分分布とドライダウン動態に違いがあることを明らかにした。複数年におよぶ土壌ドライダウン進度の増加は、根が点滴灌水土壌体積内で増殖したことを示した。点滴灌水に変えることで、地表の草の成長と生存は減少した。ブドウの樹勢、葉のガス交換そして収穫量は減少したが、収穫量は2年目に回復し、樹勢は4年目までに回復した。気孔伝導性と葉のガス交換は点滴灌水下で低いままであった。蒸散水利用効率は、最初の3年間、スプリンクラー灌水に比べて、点滴灌水下の方が高かった。流入水利用効率は、4年間にわたり、点滴灌水下において平均で2.5倊高かった。果実の成熟は、それぞれの年で、スプリンクラー灌水に比べて点滴灌水により促進された。果実の成熟は果房照射の増加および、より高い環境温度と関連していた。果房の間引きもまた、果実成熟を促進したが、それぞれの年の収穫量をかなり減少させ、灌水方法とわずかに小さな相互影響しか持たなかった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/394

E.Gómez-Plaza,L.Mestre-Ortuño,Y.Ruiz-García,J.I.Fernández-Fernández,J.María López-Roca
Effect of Benzothiadiazole and Methyl Jasmonate on the Volatile Compound Composition of Vitis vinifera L. Monastrell Grapes and Wines
pp. 394-401(Research Note)

[モナストレル種(Vitis vinifera L.)ブドウとワインの揮発性物質組成におよぼすベンゾチアジアゾールとジャスモン酸メチルの効果]
ベンゾチアジアゾールとジャスモン酸メチルは、幾つかの椊物防御物質の外性エリシターとして記述されている。この研究の目的は、成熟過程の初期段階におけるベンゾチアジアゾールとジャスモン酸メチルのモナストレル種ブドウ(Vitis vinifera L.)果房への散布がブドウの揮発性物質の合成に影響するか(他の果実で観察されているように)、そしてこの効果が、結果としてのワインにおいて技術的な意義を持つかを決定することである。結果は、両処理は、ともにブドウの揮発性物質、特に、ベンゾチアジアゾール処理ブドウにおけるテルペン類とノルイソプレノイド類のレベルを増加させることを示した。処理ブドウから得られたワインもまた、テルペン類とノルイソプレノイド類のより高いレベルを示した。ジャスモン酸メチル処理ブドウから製造したワインのこれら揮発性物質のレベルは、コントロールブドウから製造したワインよりも、ほぼ2倊高かった。揮発性物質レベルにおけるこれらの違いは、センサリー的に検出可能であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/402

M.A.Kelm,A.Versari,G.Paola Parpinello,J.H.Thorngate
Mass Spectral Characterization of Uva Longanesi Seed and Skin Extracts
pp.402-406

[Uva Longanesi種子及び果皮抽出物の質量分析]
収穫時期のUva Loganesi種の種子及び果皮から調製したポリフェノールをクロマトグラフィーで解析した。Uva Longanesiの種子抽出物はプロアントシアニジン含量が高く(平均49 g/100 g抽出物)、このうち42%がポリマー、28%ほどがオリゴマーであった。エピカテキンが伸長鎖の主要(75%程度)な構成成分であり、末端鎖ではカテキンが主要(67%程度)であった。エピカテキンがレートは伸長鎖(11%程度)及び末端鎖(9%程度)の両方に含まれた。成熟した果皮では、ガロイル化した末端鎖は減り、伸長鎖のガロイル化率が増加した。種子プロアントシアニジンの平均重合度は、サンプリングの時期に関わらず、比較的一定(平均2.7サブユニット)であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/407

F.R.Pinu,S.Jouanneau,L.Nicolau,R.C.Gardner,S.G.Villas-Boas
Concentrations of the Volatile Thiol 3-Mercaptohexanol in Sauvignon blanc Wines: No Correlation with Juice Precursors
pp.407-412

[Sauvignon blancワイン中の揮発性チオール化合物3-Mercaptohexanolの濃度:果汁中の前駆体との相関は無い]
揮発性チオール化合物3-Mercaptohexanol (3MH)とそのアセチル誘導体である3-mercaptohexyl acetate (3MHA)はSauvignon blancのアロマに重要な影響を与える化合物である。これらのチオール化合物はワインによって少なくとも20倊は異なり、ブドウ果汁の差異がこのような大きな差異の原因である。これらのチオール化合物は果汁中にある前駆体から酵母の作用によって生成する。少なくとも4種の前駆体が提案されているが、これらの変換効率は低い。3種のチオール性前駆体の濃度を、55種のSauvignon blanc果汁について分析し、研究室の条件でこれらの果汁からワインを製造し、その最終的なチオール化合物濃度と比較した。個々のワイン中の2つのチオール化合物と、果汁の3つの前駆体の間には良い相関関係が見られた。しかし、果汁中の前駆物質と最終的なワインのチオール化合物の間には相関がみられなかった。したがって、これらの前駆体は、最終的なワインのチオール化合物の濃度に微小な影響しか与えないのか、あるいは果汁ごとに変換効率を規制するファクターが存在するのではないかと考えられる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/413

L.Rolle,S.Giacosa,F.Torchio,S.R.Segade
Changes in Acoustic and Mechanical Properties of Cabernet Sauvignon Seeds during Ripening
pp. 413-418(Technical Briefs)

[成熟期におけるカベルネ・ソービニヨン種子の音波的そして機械的性質の変化]
機器による機械的そして音波的変数を、異なった成熟期に収穫されたカベルネ・ソービニヨン種ブドウの果粒種子に対して測定した。この研究の主な目的は、有用な成熟の指標を提供するために、ブドウ種子のテクスチャー特性に対する成長変化の影響を評価することである。機器により測定したテクスチャー特性のほとんどは、大きな試料内変動性により特徴づけられた。以下の指標、すなわち、変形指数、音波エネルギーそして平均音圧は、成熟度の指標になり得ると考えられた。機器による機械的そして音波的変数の間の相関関係の研究は、弾性のヤング率が音波的変数と最も強い正の相関持つことを立証した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/419

S.Boso,V.Alonso-Villaverde,M.C.Martínez,H.H.Kassemeyer
Quantification of Stilbenes in Vitis Genotypes with Different Levels of Resistance to Plasmopara viticola Infection
pp. 419-423(Technical Briefs)

[Plasmopara viticola(ブドウべと病菌)の感染に対する耐性レベルの異なるVitis遺伝子型のスチルベン化合物の定量]
スチルベン系フィトアレキシンは病害耐性と関連している。Vitisに属す種において、スチルベンシンターゼはUV照射、各種抽出物による処理、そしてBotrytis cinerea(灰色かび病菌)またはPlasmopara viticolaの接種により誘導される。この研究の目的は、スチルベン生産と、遺伝子型が異なるVitisのP. viticolaに対する耐性レベルの間の関係を調査することである。異なったブドウ遺伝子型(Vitis vinifera 栽培種のテンプラニーリョ, トウリガ・ナシオナル, ピノ・ノワールそしてカベルネ・ソービニヨン、Vitis riparia栽培種のグロワール・ド・モンペリエ)のPlasmopara viticola耐性能力を抗菌性のスチルベン系フィトアレキシンの蓄積能力によって評価した。これら遺伝子型に属す椊物体から取ったリーフディスクにP. viticolaの胞子嚢を接種し、病害のレベルを5日後に測定した。スチルベン生産は類似の葉材料において、接種後、6, 24, 48, 72時間で定量した。P. viticolaの感染後、耐性遺伝子型のV. ripariaは、抗菌性スチルベンであるɛ- とδ-ビニフェリンの高い生産を示し、それは病源菌の生育を抑制し、胞子形成を阻害した。実際、この遺伝子型は最も低い胞子形成値と関連していた。しかし、V. vinifera遺伝子型においては、これら化合物と耐性の間に関連性は見られなかった。P. viticolaに対する耐性におけるスチルベン系フィトアレキシンの役割を明確にするには、さらなる研究が必要である。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/63/3/424

Alessandro Matese, Alfonso Crisci, Filippo Salvatore Di Gennaro, Edoardo Fiorillo, Jacopo Primicerio, Piero Toscano, Francesco Primo Vaccari, Stefano Di Blasi, Lorenzo Genesio
Influence of Canopy Management Practices on Vineyard Microclimate: Definition of New Microclimatic Indices
pp. 424-430(Technical Briefs)

[樹冠管理実施がブドウ園の微気候におよぼす影響:新しい微気候指標の定義]
気象パラメーターはブドウ樹(Vitis vinifera L.)の生産の量と質に重要な影響を持つ。広く使用されている生物気候学の指標はブドウ園内の微気象学的変動、特に、ブドウ成熟過程において重要な日内変動を表すのに適していない。この研究の目的は、果房内温度、樹冠気温、果房によってさえぎられる太陽光照射の1時間ごとのデータの3年間(2008, 2009, 2010)の統計的データセットに基づいて、微気象学的指標の新しいセットを作成し、異なった樹冠管理技術により誘導される日々の微気候サイクルの違いを区別するそれらの能力を評価することである。データはトスカナ(イタリア)の3つの気候地域に位置するサンジョベーゼとカベルネ・ソービニヨンを椊えた4つのブドウ園において集めた。このデータセットからスタートし、幾つかの新しい微気象学指標を、日内の時間区分に対する2つの異なる基準、すなわち、静的な固定した1時間ごとの統計に基づく基準と、動的な太陽の高さによる昼間区分に基づく基準を用いて定義した。結果は、日内データをもとにした指標が、日々の指標よりも、ブドウ園の微気候のより良い表現を提供し、樹冠管理実施によって誘導される微気候の違いを強調することを可能にした。処理に対してより敏感な指標は、果房パラメーターによりさえぎられる太陽光照射に関連したものであり、1日の真ん中の時間帯における微気象学的パラメーターの平均を表す白昼指標に関係していた。提案された指標は、異なった樹冠管理実施により誘導される微気象学的条件の特徴を強調し、そして、それゆえに、環境パラメーターのブドウ園内の空間的変動の評価を強調する。

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