American Journal of Enology and Viticulture

Volume 65, No.3 (2014)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/277

V.Schneider
Atypical Aging Defect: Sensory Discrimination, Viticultural Causes, and Enological Consequences. A Review
pp. 277-284

[異常熟成臭~官能識別、栽培原因、醸造の影響(総説)]
異常熟成臭とは、発酵後の最初の亜硫酸添加から数週間~一年の期間に白ワインでみられるオフフレーバーのことである。その官能特性は防虫剤、家具のニス、アカシアの花、湿ったウール、汚い雑巾といったオフフレーバーの増加と、それに伴う早期の品種香の消失といった多岐にわたる特徴を持つ。原因物質であるindole-3-acetic acidの分解によって2-aminoacetophenoneと構造のはっきりしていない化合物が生じることがその機構であることが、多くの研究から支持されている。この経路はワインの酸素ラジカル消去活性によって制御されており、すなわち根本的な原因として、ブドウ栽培によるストレスの影響を受ける。異常熟成には酸素が反応に関与するが、酸化的な熟成とは官能や化学的な記述子において異なる反応と考えられる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/285

C.Collins, H.Gao, K.L.Wilkinson
An Observational Study into the Recovery of Grapevines (Vitis vinifera L.) following a Bushfire
pp.285-292

[山火事後のブドウ樹の回復に関する観察に基づく研究]
山火事はブドウ栽培地を含め、世界中で起こっている。ブドウおよびワイン成分に関する最近の研究において、山火事の煙に晒されたブドウから醸造されたワインは汚染されていることが示された。しかしながら、ブドウ樹に及ぼす山火事の影響、特に山火事によって焦げてしまったブドウ樹の成長およびその回復についてはほとんど情報がない。2008年、南オーストラリア州アデレード・ヒルズの圃場の一部が山火事によって焼かれてしまった。焼けてしまったブドウ樹と被害のなかったブドウ樹の成長と発生を比較するために、連続したシーズンにおいて、ピノ・ノアールとセミヨンの2品種の栄養および生殖成長を測定した。山火事後の翌シーズンで、芽数、房数、房重、剪定重および収量の減少が焼けてしまったブドウ樹で観察された。しかし、いずれの品種においても山火事でダメージを受けた2シーズン後には回復の兆しが認められた。山火事でダメージを受けたブドウ樹は、果実数および果実成長が減少したため低収量となった。山火事後のシーズンでは、新梢は剪定後に残された節上の芽からというよりはむしろコルドン上の芽から発生した。ICP発光分光法を用いて葉および果汁の成分分析を実施したが、有意な差はほとんど認められなかった。シーズン間で煙汚染が持ち越されるかどうかを調べるために、ガスクロマトグラフィー質量分析およびタンデム質量分析により、煙由来の揮発性フェノールとグアイアコール配糖体もまた定量した。しかしながら、煙由来物質の減退を示す証拠は得られなかった。本研究の結果は、剪定技術を用いてコルドンを作り直す、あるいは、剪定後に残される節数を増やすために果実の生る梢を残すなどの剪定法を含めたブドウ栽培管理技術による調節を通して、ブドウ栽培者が山火事によるダメージを受けたブドウ樹を容易に回復できることを示すものである。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/293

G.Antalick, M-C. Perello, G.de Revel
Esters in Wines: New Insight through the Establishment of a Database of French Wines
pp.293-304

[ワインのエステル:フランスワインのデータベースの構築を通した洞察]
本研究の目的は、ワインアロマ組成の知見を更新するため、フランスワインのエステルに関するデータベースを構築することである。HS–SPME–GC-MS法により30種のエステルの定量を行った。試料には1~29年熟成したフランスワイン(赤、辛口白、甘口白、ロゼ、カーボニックマセレーションした赤(ボジョレーヌーボー、BN))を用いた。低温で製造された(白とロゼ)ワインは、脂肪酸エチルエステル(EEEFAs)が多く含まれていた。一方、EEFAsの比組成はワインのタイプによらず一定で、主として炭素鎖の長さに依存していた。高級アルコール酢酸エステル(HAA)は嫌気的な発酵(BNと白ワイン)によって製造されたワインに多く、HAAの組成はワインのタイプによって異なっていた。HAAの比組成が異なることは、発酵の時の脂肪組成、酸素、窒素化合物のためであると思われる。逆に言えば側鎖を持つ酸類のエチルエステル類(EEBAs)はスキンコンタクトで製造したワイン(BN、赤ワイン)に多かった。EEBAsの比組成はワインのタイプのよらず同様であり、ethyl isobutyrateが最も多かった。以上の結果から、この特殊なEEBAsの組成は、酵母代謝における酸化還元バランスによってもたらされると考えた。さらにEEBAの濃度は白ワインおよび赤ワインにおいて熟成の年数に比例して同じ速度で増加していた。一方、熟成に伴う化学的な加水分解は、白ワインの高級アルコール酢酸エステルと赤ワインおよび白ワインのethyl decanoate およびethyl dodecanoateにおいて見られた。これらの結果は熟成したワインにおけるエステルの香気特性の理解の一助となる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/305

Peter Buffon, Hildegarde Heymann, David E. Block
Sensory and Chemical Effects of Cross-Flow Filtration on White and Red Wines
pp.305-314

[白及び赤ワインのクロスフロー濾過による官能的および化学的効果]
ワイン産業においてクロスフロー濾過は発酵後の処理法として徐々に市民権を得てきている。我々の仮説では、クロスフロー濾過は、使用する膜の特性から考えて、白及び赤ワインの官能及び化学的な特性に大きな影響を与えないだろうと考えている。このことを確認するため、カリフォルニアの白及び赤ワインを570リットルずつ3つのロットとして実験した。試験にはBucher Vaslin社のクロスフロー濾過システムで、0.22µmのpolyethersulfone製の膜を使用した。濾過をしない対照は無濾過のまま直接ボトリングラインに送液した。8カ月の間に9回の記述分析(それぞれ複数回のテストを実施)を行いワインの評価を行った。また、濾過したもの及び無濾過の試料について、UV-VISの分光分析及びAdams-Herbertson assayにより色調とフェノール化合物濃度の分析を実施した。濾過処理により白ワインでは16の記述子の中で1つが有意な違いとなった。また、同じ分析の結果、赤ワインでは16のうち6項目に官能的に有意差が見られた。無濾過のワインは、濾過したワインより2カ月のビン熟中に、土臭い、草、オーク、スモークなどの項目で高く、ミックスベリーや核果類などの項目で低くなった。クロスフロー濾過は白・赤ワインで官能特性を安定化させる特性が認められた。また、白・赤ワインにおいて色調とフェノール化合物濃度において有意な変化が見られた。しかし、フェノール化合物濃度の変化が知覚的に検出するのに十分であるかどうかが、特に赤ワインでは明確ではなかった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/315

M.M.Moyer, D.M.Gadoury, W.F.Wilcox, R.C.Seem
Release of Erysiphe necator Ascospores and Impact of Early Season Disease Pressure on Vitis vinifera Fruit Infection
pp.315-324

[Erysiphe necator 子嚢胞子の放出とブドウ果実への感染に及ぼすシーズン初期の病原圧の影響]
Erysiphe necator閉鎖子嚢果は、秋から春遅くと広い期間に裂開し子嚢胞子を放出するため、ブドウうどんこ病の第一次感染源として重要である。子嚢胞子成熟度の空間的分布をモニターし、環境制御下の圃場で保存したサンプルからの子嚢胞子の放出を計測した。分析は複数年、複数場所で実施した。第一次伝染源としての子嚢胞子の質の影響と果実の被害にどのように影響するか検討した。子嚢胞子の放出は湿度と温度と正の相関を示したが、湿度が高いと、50%以上の子嚢胞子が萌芽前に放出された。シーズンにおける気象条件がうどんこ病の発生に上向きな場合、減農薬および慣行農薬栽培は果実におけるうどんこ病を抑制することができた。シーズンにおける気象条件がうどんこ病の発生により適する場合は、果実におけるうどんこ病が増加した。まとめると、これらの知見はブドウうどんこ病において気象条件が上敵な年と適した年の差は圃場に存在する第一次伝染源の量に相関すること、第一次伝染源のレベルは萌芽前の気象条件に影響を受けること、そして、第一次伝染源を防除するための農薬散布計画の有効性はシーズン中の気象条件に相関することを示唆した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/325

M.A.Nisbet, T.E.Martinson, A.K.Mansfield
Accumulation and Prediction of Yeast Assimilable Nitrogen in New York Winegrape Cultivars
pp.325-332

[ニューヨーク州のワイン用ブドウにおける酵母資化性窒素の蓄積と予想]
ニューヨーク州の7つのワイン用ブドウ品種の成熟最終週の酵母資化性窒素(YAN)の蓄積について3年間にわたり調べ、直線回帰モデルによりYANの予想可能性について調べた。Vitis viniferaに属すCabernet franc、Chardonnay、Merlot、Pinot noirおよびRiesling、ハイブリットであるNoiretとTraminette種の果実をFinger Lakes、Hudson Valley、Lake ErieおよびLong Islandの49圃場から8月から収穫期まで毎週サンプリングした。Cabernet franc、RieslingおよびTraminetteのYANは年間平均として100 mg/L以下であり、ChardonnayとPinot noirでは200 mg/L以上であった。成熟期において収穫の5週前までであれば直線回帰モデルにより収穫期のYAN濃度を推測可能であった(R2 = 81.6%)。成熟中のYANの減少はいろいろな品種で認められた。一級アミノ窒素のレベルは一定であったので、これは主としてアンモニア(AMM)の減少によると思われた。窒素欠乏・過剰のリスクを回避するために個々の品種について適切な予防的窒素施与量を調べるため母集団分布を使用した結果、Chardonnay、NoiretおよびPinot noirではYANの濃度・偏差が大きく、結果として過剰施与に陥りやすい傾向が明らかになった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/333

L.Centioni, D.Tiberi, P.Pietromarchi, A.Bellincontro, F.Mencarelli
Effect of Postharvest Dehydration on Content of Volatile Organic Compounds in the Epicarp of Cesanese Grape Berry
pp.333-340

[Cesaneseブドウ収穫後の果実の乾燥が外果皮の揮発性有機化合物濃度に与える影響 ]
収穫後の果実乾燥は、ブドウ果実のポリフェノール濃度を上げ、また揮発性有機化合物(VOC)濃度を変化させる技術である。Cesaneseブドウを10℃、湿度45%、1.5 m/秒の風速で乾燥させた。重量が37%低下した6週目まで毎週サンプリングを行った。種子中のプロアントシアニジンは、重量が30%低下するまで、生重量および乾燥重量当たりのどちらの数値においても徐々に増加した。外果皮(果皮)から抽出したポリフェノール量は乾燥中、生重量当たりでは増加した。アントシアニンについても同様な傾向が見られた。VOCでは、ベンゼノイドが多く、続いてノルイソプレノイド、テルペノール、C6化合物が認められた。ベンゼノイド類はノルイソプレノイド類と同様に、外果皮(3312 μg/kg DW)より中果皮(果肉)(7352 μg/kg DW)に局在していた。一方、当初の予想通り、テルペノール類は中果皮(1370 μg/kg DW)よりも外果皮(1787 μg/kg DW)に局在していた。果実乾燥により、中果皮中のこれらの化合物は急速に減少し、一方、外果皮中の濃度が増加した。特に中果皮中のベンゼノイド類であるbenzyl alcoholおよび2-phenylethanol、ノルイソプレノイド類のvomifoliolおよび3-OH-β-damasconeがこのような傾向を示した。中果皮中のDiendiol1、geraniolおよびtrans-8-OH-linaloolは乾燥中に徐々に減少したが、外果皮中では増加した。C6化合物も外果皮中で有意に増加した。乾燥中の外果皮でのVOCの合成に加え、中果皮から外果皮へのVOCの移動が起きていると考えられる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/341

P.K.Boss, C.Böttcher, C.Davies
Various Influences of Harvest Date and Fruit Sugar Content on Different Wine Flavor and Aroma Compounds
pp.341-353(Research Note)

[個々のワインフレーバー・アロマ化合物に与える収穫日および果実糖濃度の影響]
近年、これは気候変動の結果だと考えられるが、多くの国において、ブドウが成熟して必要な糖度が得られるために必要な期間は短くなっており、フレーバーにおける成熟と糖度の蓄積における成熟が解離しつつある。Vitis viniferaのRieslingを用いた実験により、糖濃度と収穫日の関係を調べ、合わせて揮発性化合物の量を測定した。個々のブドウ果実のBrixを4回調査し、発酵前の糖度毎に分類し、揮発化合物をヘッドスペース法で分析した。その結果、糖濃度、収穫日、ワインの揮発化合物の間には複雑な関係があることが示された。ワイン中で有意に変化する化合物は糖度と収穫日のパターンから6つのクラスターに分類された。モノテルペン類のような良いインパクトを持つ品種香に影響する化合物は、Brixの増加に伴い徐々に増加し、収穫日との関係は希薄であった。Brixに対して減少する化合物は収穫日による影響を受け、初期のサンプリング時が高くなった。これらの化合物の大部分は高級アルコールの酢酸エステル、ケトン類およびアセタール類であった。これらの結果から、全体としては正のインパクトを与える揮発性化合物はBrixの増加と似た挙動で蓄積され、ワインに負の特性を与える化合物は変動が少なく、これらが減少するためにブドウ樹上での時間がある程度必要と考えられた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/354

A.Calderon-Orellana, L.Mercenaro, K.A.Shackel, N.Willits, M.A.Matthews
Responses of Fruit Uniformity to Deficit Irrigation and Cluster Thinning in Commercial Winegrape Production
pp. 354-362(Research Note)

[商業的な醸造用ブドウ生産における上足灌漑と摘房による果実の均一性]
果実の均一性は一般的に醸造用ブドウ生産において重要な品質パラメーターと見なされる。上足灌漑と摘房は果実品質を向上させるために普及している技術であるが、これらの栽培技術がどのようにして圃場における果実の均一性に影響を及ぼすのかについて、実験によって立証された情報は少ない。カリフォルニア州ダニガン・ヒルズで商業的に栽培されているカベルネ・ソーヴィニヨンにおいて、3年間連続で上足灌漑と摘房を施した。区画、ブドウ樹および房の3つのレベルで測定した果実の均一性を、ルビーン検定に基づく分散構成分析と分散分析(ANOVA)を用いて評価した。灌漑処理に関わらず、ブドウ樹内の房間の変動が各シーズンにおける果実の変動の第一発生源であった。ヴェレゾーン後の上足灌漑は糖度とアントシアニン量において房間の均一性を減少させた。アントシアニン量の均一性の減少は果実におけるアントシアニン合成/分解のばらつきに依るものであった。一方、糖度の均一性の減少は果実のしおれがばらついた結果であった。摘房はヴェレゾーン期の糖度の均一性を向上したが、収穫時における果実成分と果実サイズの均一性には影響を及ぼさなかった。糖度の均一性は、作物荷重、剪定量、または剪定量/作物荷重の比とは相関を示さなかったが、糖度の均一性の上昇は果実が成熟するに連れて発生した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/363

L. Guan, J.H. Li, P.G. Fan, S.H. Li, J.B. Fang, Z.W. Dai, S. Delrot, L.J. Wang, and B.H. u
Regulation of Anthocyanin Biosynthesis in Tissues of a Teinturier Grape Cultivar under Sunlight Exclusion
pp. 363-374

[太陽光除去下で栽培したタンテュリエ品種の各組織におけるアントシアニン合成制御]
Vitis vinifera Yan-73はタンテュリエに属する品種であり、果皮、果肉、果梗、梗にアントシアニンを蓄積する。このタンテュリエ品種の各組織におけるアントシアニン合成およびその制御における太陽光の影響を調査した。光透過量の測定は、光を通さない箱でカバーすることで房周りの光強度が十分減少することを示した(果皮に届く光は≤0.25%、果肉に届く光は<0.05%)。自然環境下の果肉は果皮によって太陽光が除去されている。太陽光除去は果実成熟における果皮および果肉のアントシアニン合成を減少、遅延させた。それにもかかわらず、いずれの組織も暗赤色になるのに十分なアントシアニンを蓄積した。アントシアニン量の大きな減少は果梗、梗では認められなかった。太陽光除去は果皮および果肉におけるVvUFGT、VvMybA1、VvMybA2およびVvMyc1の遺伝子発現量を抑え、果肉においてはVvMycA1遺伝子発現量も減少させた。太陽光除去はアントシアニンの組成に影響を及ぼし、果皮および果肉におけるデルフィニジンの比率を減少し、シアニジンの比率を増加した。これは、VvF3’5’H遺伝子に対するVvF3’H遺伝子の比率の変化と一致した。これらの結果は太陽光が当たらない各ブドウ組織におけるアントシアニン合成に関し新たな知見を与えるものである。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/375

L.Brilli, G.Buscioni, M.Moriondo, M.Bindi, M.Vincenzini
Influence of Interannual Meteorological Variability on Yeast Content and Composition in Sangiovese Grapes
pp. 375-380

[経年的な気象変化がSangioveseブドウにおける酵母付着数と組成に与える影響 ]
Kloeckera apiculataとCandida zemplininaはブドウや新しいマストにおいて非Saccharomyces酵母のほぼ全部を占める。これらの酵母はワインに香りの複雑さを与える二次代謝物を蓄積することが知られており、従って、これらの微生物の菌数や比率がワインの味や香りを変化させると考えられる。これらの菌数や比率は、酵母の環境に影響を与える気候変化や栽培条件といった様々な要因によって決定される。従ってこれらの変化は最終的なワインの官能特性を変化させる。本研究はBrunello di Montalcinoワイン組合(トスカーナ地域)のSangioveseのブドウ畑における酵母数や組成と主な気象要因(気温、湿度および降水量)の関係を長期(1997~2012)にわたって調査したものである。その結果、収穫の25~30日前の気候が全酵母数と関連し、特に降水量と湿度との関係が高かった(r ~0.8)。さらに、K. apiculataおよびC. zemplininaは収穫10日前(除葉期に当たる)の気温と関連した(それぞれr = *0.66および0.52)。これらの結果は気候と栽培管理が微生物相とその組成に影響を与えることを示唆している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/381

G.Ferrara, A.Mazzeo, G.Netti, C.Pacucci, A.M.S.Matarrese, I.Cafagna, P.Mastrorilli, M.Vezzoso, V.Gallo
Girdling, Gibberellic Acid, and Forchlorfenuron: Effects on Yield, Quality, and Metabolic Profile of Table Grape cv. Italia
pp. 381-387(Research Notes)

[環状剥皮、ジベレリンおよびホルクロルフェニュロン:テーブルグレープ品種イタリアの収量、品質および代謝産物プロファイルへの影響]
近年のテーブルブドウ栽培で適用されている様々な処理のうち、果実サイズと収量を増加させるために椊物成長調整剤と環状剥皮が頻繁に使用されている。特に、有核および無核テーブルブドウへのホルクロルフェニュロン(CPPU)とジベレリン(GA3)の使用が増加していることが色々な国で観察されている。この2年間の研究において、結実期に環状剥皮を、果実直径が10~11 mmになった頃にジベレリン酸(10 mg/L)を、果実直径が11~12 mmになった頃にホルクロルフェニュロン(9.75 mg/L)を処理し、イタリア種の果実サイズ、収量、化学成分および代謝産物における影響を調査した。収穫時において、すべての処理は無処理区に比べ果実の直径、長径および果粒重、房重および収量を有意に増加した。これらの処理は果実の測色パラメーターに有意な差を与えた。特に、GA3とCPPUで処理した果実では色相値が有意に高くなっており、黄色から黄緑色へ果皮色がシフトしていた。主成分分析を組み合わせた核磁気共鳴分光法によって実施した代謝産物の解析は、代謝産物プロファイルが年に依存しており、各年において、処理による影響としてアミノ酸組成のわずかな変化が観察された。処理による影響は涼しい夏であった年により強く現れた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/388

O.Makhotkina, L.D.Araujo, K.Olejar, M.Herbst-Johnstone, B.Fedrizzi, P.A.Kilmartin
Aroma Impact of Ascorbic Acid and Glutathione Additions to Sauvignon blanc at Harvest to Supplement Sulfur Dioxide
pp. 388-393(Research Notes)

[亜硫酸の補助のために収穫期のSauvignon blancにアスコルビン酸およびグルタチオンを添加した場合のアロマに与える影響]
30mg/Lの適度な亜硫酸添加の補助として、100 mg/kgのアスコルビン酸またはグルタチオンを機械収穫の果汁に追加することで、研究スケールのSauvignon blancワイン中のチオール性品種香3-mercaptohexanol(3MH)および3-mercaptohexyl acetate(3MHA)が高濃度となった。酵母による発酵初期の抗酸化効果により、酸化的な影響が制御できれば(ポリフェノール濃度の変化で確認した)3MHの生成が促進された。グルタチオンの添加により4-mercapto-4-methylpentan-2-one(4MMP)濃度が増加したが、収穫期の抗酸化添加剤の添加にかかわらず、エステルやC6アルコール、高級アルコールなどの他のアロマ化合物は、同程度の濃度で検出された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/394

H.Takato, N.Fujimori, H.Suzuki, Y.Kawagoe, Y.Nakajima, S.Suzuki
Relationship between Upper Lateral Sinus Formation and VvNAC21/22-like Expression in Grapevine Leaves
pp.394-400(Research Notes)

[ブドウ葉の先端切れ込みの形成とVvNAC21/22-like遺伝子の発現との相関関係]
ブドウ葉には3つの特徴的な切れ込みがある。本研究はULS(先端に近い切れ込み)の形成とNAC転写因子のひとつであるVvNAC21/22-like遺伝子の発現との相関関係を検討した。検討したすべての品種において、VvNAC21/22-like遺伝子は若い葉や切れ込みが小さい品種の成熟した葉では発現しておらず、深い切れ込みを持つ品種の成熟した葉で発現量が多かった。単回帰分析の結果、成熟した葉では、VvNAC1、VvCUC2、VvCUC3遺伝子の発現ではなく、VvNAC21/22-like遺伝子の発現とULSとの間に深い相関関係があることが明らかとなった。この結果は、葉の成熟過程後期におけるVvNAC21/22-like遺伝子の発現量が増すほどULSが深くなることを示唆する。VvNAC21/22-like遺伝子mRNAは葉のULSとLLS(先端から遠い方の切れ込み)に局在した。これらの結果から、VvNAC21/22-likeはブドウ葉のULS形成に働くと仮説を立てた。ブドウ葉の切れ込みは環境への適応を強化するための育種の標的となるであろう。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/3/401

A.L. Carew, W. Gill, D.C. Close, and R.G. Dambergs
Microwave Maceration with Early Pressing Improves Phenolics and Fermentation Kinetics in Pinot noir
pp.401-406(Research Notes)

[Pinot noirにおいてマイクロ波によるマセレーションと早期圧搾によりフェノール化合物濃度と発酵特性が改善される]
Pinot noirのマストに対してマイクロ波処理と早期圧搾を施すことで、発酵が速く、通常の方法より有意に資化性窒素が高く、加熱マセレーションよりさらに10%の溶液回収が可能である。UV-Visによる分光分析により、マイクロ波マセレーションにより全色素、アントシアニン、タンニン、漂白抵抗性色素量が、対照ワインと同程度かそれ以上であることが示された。マイクロ波マセレーションを加熱マセレーション法と比較したところ、果汁中では明らかだったフェノール化合物の違いは、瓶熟成したワインでは認められなかった。組織学実験では、加熱マセレーションとコントロールに比べて、マイクロ波処理した果皮は、細胞内のダメージが大きかった。これらの結果から、マイクロ波マセレーションと早期圧搾はポリフェノールが多いPinot noirワイン製造のために効果的な方法であることが示された。

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