American Journal of Enology and Viticulture
Volume 69, No.3 (2018)
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/189
J.C. Danilewicz, M.J. Standing: Reaction:
Mechanisms of Oxygen and Sulfite in Red Wine.
pp. 189-195
[赤ワイン中での酸素と亜硫酸の反応]
モデルワイン中でのカテコールや(+)カテキンの空気酸化について調べたところ,SO₂: O₂のモル比は2:1になることがわかっている.この場合1モル相当のSO₂は生成する過酸化水素と反応し,もう1モルはキノンと反応する. しかし,さらに最近の研究では,実際のワイン中ではこの反応比率はさらに低く,実際にはSO₂の抗酸化力は強くないことが示唆された.本研究では6つの赤ワインの空気酸化について調べ,異なる初発SO₂濃度におけるO₂とSO₂の取り込み量について詳細に検討した.実際にいくつかのワインでは,反応開始時には比率が低い場合が見られたが,酸化が進むと比率は上がり,十分な時間を経ると,最終的には比率は2:1に近づいた.SO₂の初期濃度が低く,その利用可能性が限定される場合,その効果は増強された.最初に添加されたSO₂ により単純なキノンが還元され,その中間付加体が加水分解されることでカテコールと硫酸が生成することが提唱されてきた.この機構によれば,ワイン中にはより安定な初期中間付加体を生成するポリフェノール類が含まれ,これがゆっくり分解することが考えられる.その結果,全亜硫酸濃度を測定した時にこれらの中間付加体からSO₂が放出され,見かけ上反応していない状態となり,比率が低くなると考えらえた.十分な時間が経つと,全ての中間付加体は分解し,硫酸を放出し,比率が2:1へと増加する.また,SO₂はモデルワイン中と同様に過酸化水素と反応することが考えられた.従って,見かけのモル比は1:1を下回ることは考えられず,本研究でも下回る比は認められず,前報と矛盾した結果となった.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/196
M. Gatti, C. Squeri, A. Garavani, A. Vercesi, P.Dosso, I. Diti, S. Poni:
Effects of Variable Rate Nitrogen Application on cv. Barbera Performance: Vegetative Growth and Leaf Nutritional Status.
pp.196-209
[可変レート窒素施与がバルベラの栄養成長と葉の栄養状態に及ぼす影響]
樹勢と収量またはそのいずれかの様々なレベルによって特徴付けられるブドウ畑区画における可変レート施肥は,最も有望な精密農業方法の1つである.本研究は,バルベラ園(0.64ha)での4年間の研究から,リモートセンシング(ラピッドアイ衛星;5mピクセルの解像度)による正規化植生差指数(NDVI)より導かれた3つの異なる樹勢レベル(L=低,M=中,H=高)に対する地上検証結果を提示した.各樹勢レベルにおいて,窒素(N)肥料無施与(0kg/ha)標準的施与(60kg/ha),および樹勢に応じた0,60,120kg/haの可変レート施与(Variable Ratepplication:VRA)からなる3つの施肥方法による比較試験を行なった.施肥試験の効果は,同じ解像度でNDVI衛星画像を撮影するとともに,樹冠指数(Canopy Index : CI)が得られるMECS-VINEセンサー(垣根仕立て作物の樹冠発育と微気候を記述する複数のパラメータを同時に検出しマッピングするマルチパラメータ・センシングシステム)による近接センシングを追加して評価した.地上検証は,樹の成長パラメータ(新梢長,葉面積,節数)と葉の栄養状態(第1果房に対生した葉の無機元素量)を記録することに基づいて行なった.その結果,樹勢レベルLにおける樹の生育バランスが最適であることが示された.樹勢レベル間のばらつきは,3年目と4年目で有意に減少した.これは,樹勢レベルLの樹が高N施肥に反応して樹勢が増強したというよりはむしろ,樹勢レベルHの樹がN無施与により早く応答したことによる.一方,施肥方法に関連する平均効果は有意ではなく,施肥方法×樹勢レベルおよび施肥方法×年次の相互作用はほとんど見られなかった.しかしながら,地上での検証結果をCI指数と比較したところ標準施与に対して可変レート施与は樹勢レベル間のばらつきを低減しうることは非常に明白であった.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/210
P.A. Howe, R. Worobo, G.L. Sacks:
Conventional Measurements of Sulfur Dioxide (SO₂ ) in RedWine Overestimate SO₂ Antimicrobial Activity.
pp.210-220
[赤ワインにおいて従来法で亜硫酸(SO₂)を測定すると,SO₂ の抗菌活性を過大評価することになる]
空気酸化やヨウ素滴定,フローインジェクション法など従来のSO₂ の測定法では, 分析中にアントシアニンとSO₂の弱い複合体が可溶化することにより, 特に赤ワインにおいて分子状SO₂の濃度を過大に見積もっていることが知られている. アントシアニン- SO₂複合体や,他の弱い付加体の影響を受けない亜硫酸濃度測定法として,ヘッドスペースのガス検出管法などが存在する. しかし抗菌活性を分析する場合,従来法(従来法分子状SO₂と表記)や複合体・付加体の影響を受けない方法(新方法分子状SO₂と表記)のうち どれが良いかはよくわかっていない.本研究では,種々の濃度のSO₂を添加した白ワインおよび疑似赤ワイン (アントシアニン抽出物を白ワインに添加)を調製した. 白ワインでは従来法分子状SO₂ と新方法分子状SO₂は関係性が高かったが,赤ワインでは従来法分子状SO₂ が有意に高くなった. ワインにSaccharomyces cerevisiae EC1118を植菌し,生存率と培養能を一定の間隔で試験した.培養能と生存率は ,白・赤ワインでは新方法分子状SO₂0.5~2.0 mg/Lの処理で有意に減少し,白ワインでは従来法分子状SO 濃度0.5~2.0mg/Lの処理で減少したが ,赤ワインでは酵母を抑制するのに従来法分子状SO₂濃度2.0 mg/L以上の濃度が必要であった. 本結果は,アントシアニン- SO₂複合体の抗菌活性は無視できる程度であり,従来法による分子状SO₂の分析は, 赤ワインの抗菌活性を予想するには適していないことを示している.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/221
C.C. Hickey and T.K. Wolf:
Leaf Removal Effection Cabernet franc and Petit Verdot: I. Crop Yield Components and Primary Fruit Composition.
pp.221-230
[カベルネ・フランとプチ・ヴェルドの除葉効果.Ⅰ.果実収量と第一果房の果汁成分]
果房への光照射が果実の品質に及ぼす影響に関する研究の一つとして摘葉の時期と摘葉程度がカベルネ・フランとプチ・ヴェルドの収量およびの果実構成成分にどのように影響するかを評価した.処理は3区からなり,(i)無摘葉区NO,(ii)第一果房の反対側の葉の除去およびすぐ上の節位の葉の除去(MED), (iii)第2果房のすぐ上の節位の葉から亜主枝までのすべての葉の除去(HIGH).2年目から処理区として開花直前に結果枝の基部から6節の葉と側枝を除去した(P-B)区を追加した.結果として,着果後の葉の除去は収量に影響しなかった.一方,開花前の葉の除去は両品種ともに無摘葉区に比べ収量を減少させた. 両品種において,P-Bは2年にわたり49~50%の収量を減少させ,その減少は果房重の減少が主たる要因であった.開花前の除葉を同じブドウで行ったところ2期連続で両品種の収量を減少させた.HIGHとP-Bの両区においてプチ・ヴェルドの果汁Brixを低下させたが,カベルネ・フランには影響しなかった. また,両品種の滴定酸度はP-BよりHIGHで低下した.着果後の果房周辺の摘葉は果実への日照を改善しながら,収量を確保することが示された.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/231
C.C. Hickey, M.T. Kwasniewski, T.K. Wolf:
Leaf Removal Effects on Cabernet franc and Petit Verdot: II. Grape Carotenoids, Phenolics, and Wine Sensory Analysis.’
pp. 231-246
[カベルネ・フランとプチ・ヴェルドの除葉効果.Ⅱ.カロテノイド,フェノール,ワイン官能評価]
湿潤条件下での果房周辺の摘葉は果実内成分に対する効果よりも病害への対策として行われることが多い.果房周辺の管理は,栽培地の温度や日照を考慮することなく,気象条件の異なる地域間で同様に行われる.果房周辺の葉を1~2枚にすることがアメリカ合衆国東部の湿潤な地域で推奨されている. 本研究はこの栽培管理が適切かどうかを,果房周辺の葉および腋芽の除去の時期や程度の調整が果房収量とワインとしての評価にどのように影響するかをカベルネ・フランとプチ・ヴェルドを供試して調査した.着粒前の除葉と腋芽の除去は,無処理区[NO],基部側の果房の節とすぐ上の節からの除去[MED], 上位の果房から亜主枝までの除去[HIGH]の3処理区と開花前に基部から6節の葉や腋芽を除去[P-B]する処理区とを調査した.P-Bはカベルネ・フランよりプチ・ヴェルドの全フェノールを常に増加させたが,全アントシアニン含量には影響しなかった.カロテノイドは芳香性物質の前駆体として重要であり,定量した.NOとMED処理区に比べHIGHとP-B処理区は,ベレーゾン後よりベレーゾン前にカロテノイド含量を増加させた.HIGHとP-B処理区はまた,カロテノイド,特にゼアキサンチンをベレーゾン後に多く分解した.P-B処理区から収穫したブドウで醸造したワインはMED処理区のブドウで醸造したワインより色度がより高くなった.果房周辺の除葉は果実内成分を適度に改善し,病害の発生を抑える環境にした.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/247
A.-K. Walther, D. Durner, U. Fischer:
Impact of Temperature during Bulk Shipping on the Chemical Composition and Sensory Profile of a Chardonnay Wine.
pp 247-257
[バルク輸送中の温度がシャルドネワインの化学成分および官能特性に与える影響]
ワイン産業における物流の最終的な目標の一つとして,ワインメーカーから消費者への商品の輸送中にワインの品質を保持することがある.本研究ではシャルドネワインを用いて,オーストラリアからドイツへのバルクワインの輸送中の温度を測定し,化学および官能特性への影響を調べた.本実験の目的は,スケジュールと物流条件を最適化し,大陸間の輸送における時間-温度の関係性を調べることで,最終的に化学・官能的に望まれない変化を最小限にすることである. 2015年11月から2016年10月までの期間で,3回の大陸間輸送を行った.それぞれの輸送は58~63日間で行い,24,000Lのワインを入れたフレックスタンクを20フィート(約6メートル)のコンテナ6基を使用して移動した.コンテナは船上の3つの異なる場所に置いた.すなわちデッキ上,船首に近いデッキの下,さらに後方のデッキ下である.コンテナ内の気温は4~47℃で港停泊中の昼間に最高温となった.コンテナの設置場所により5℃のワインの温度差が生じた.春・秋分時では,6月および12月の夏・冬至時期より6℃ワイン温度が下がった.温度が高い状態に晒すと,亜硫酸濃度が下がり,黄色が増加した.デカン酸エチル,ドデカン酸エチル,酢酸フェニルエチルは空輸の場合よりコンテナ船での輸送の方が下がり,ジエチルリンゴ酸,ジエチルコハク酸,デカン酸,ドデカン酸はコンテナ船の場合温度により増加した.記述分析をした結果,出荷スケジュールや物流条件が高温になる場合,ハチミツの強度が上がりフレッシュ感が下がった.ワインの温度が25℃以上に達する場合,フレッシュ感の低下が顕著となった.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/258
A.Rezazadeh, B.J. Sampson, E.T. Stafne, D. M.-Shaw, S.J. Stringer, K. Hummer:
Susceptibility ofBunch Grape and Muscadine Cultivars to Berry Splitting and Spotted-Wing Drosophila Oviposition.
pp. 258-265
[裂果およびオウトウショウジョウバエの産卵に対する交雑種およびマスカディンブドウ品種の感受性]
果実の裂果は病虫害を引き起こす果実表面の裂け目を形成する生理障害である.オウトウショウジョウバエDrosophila suzukii (Matsumura)はブドウを含む果実を攻撃し,世界的に果実品質および果実収量を減少させるショウジョウバエの一種である.本研究では,果実の裂果およびオウトウショウジョウバエの攻撃に対する交雑種およびマスカディンブドウの感受性を調査した.10品種は2016年および2017年に収穫した.トンプソン・シードレス(Vitis vinifera)は地元で購入した.調査した果実品質は,Brix(可溶性固形物),総酸,pH,果実硬度,果皮の破断荷重であった.ヴィラール・ブランおよびOK392は果実の裂果に対し最も感受性が低かった(0%).マスカディンブドウは最も高い果実硬度を示したが,裂果に対する感受性も高かった(特にフライ・シードレスで88%の裂果発生率を示した).可溶性固形物,果実硬度および裂果間に有意な相関は認められなかったが,裂果と総酸の間に負の相関が認められた.ピアス病抵抗性品種および耐性品種もまたオウトウショウジョウバエの来襲に対し大部分は抵抗性あるいは強い耐性のようである.オウトウショウジョウバエのメスは300g/mmを超える果実硬度をもつ果実には産卵できないようである.ブドウ果実の外被における傷や割れ目はオウトウショウジョウバエの繁殖成功度を400%まで増加させることから, よく管理されたブドウ園はオウトウショウジョウバエの大集団の受け皿とはならないことが示唆された.果実の大きな被害に苦しんでいるブドウ園はオウトウショウジョウバエに夏の宿主を提供しているのかもしれない.総合的に言えば,ピアス病抵抗性交雑種およびマスカディンブドウは亜熱帯気候に高く適用でき, オウトウショウジョウバエという新しい侵略的なショウジョウバエに耐性を持っている.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/266
P. Domizio, L. Lencioni, L. Calamai, L. Portaro, L.F. Bisson:
Evaluation of the YeastSchizosaccharomycesjaponicus japonicus for Use in Wine Production.
pp. 266-277
[ワイン製造における酵母Schizosaccharomycesjaponicus の評価]
ワイン製造におけるSchizosaccharomycesjaponicus UCD2489のスターター・カルチャーとしての評価を行った.Sch. japonicus遊離酵母,Sch. japonicus固定化酵母,市販Saccharomyces cerevisiae (EC1118),および両酵母の混合培養について,トレビアーノ・ブドウ果汁の実験室発酵にて発酵動力学的比較を行った. 逐次(sequential)および同時発酵(coinoculated)の大部分はS. cerevisiaeの存在にて遂行された.UCD2489の固定化酵母による混合培養は,EC1118単独発酵と比較すると,エタノール・レベルが顕著に減少した.酢酸濃度は同時発酵を行うと,EC1118発酵と同レベルとなった.UCD2489のリンゴ酸消費能は特に同時発酵で,EC1118により阻害されたので,酸レベルは両酵母の酵母数あるいは同時発酵のタイミングを調節することで調整できることが示唆された.接種条件に依存し,Sch. japonicusはS. cerevisiaeより~2倍高濃度のグリセロールを生成した.揮発性化合物の分析により,全てのSch. japonicusワインにて,酢酸エチルのようなアロマに影響を与える物質が増加し,非固定化酵母の同時発酵ではアセトアルデヒドが多くなり,重要な香り物質である酢酸イソアミル,ヘキシル酢酸,フェニルエチル酢酸,エチルイソブチル,エチル酪酸は官能閾値を超えた.UCD2489により生成される多糖はS. cerevisiae単独より~4.7倍多かった.ワイン・タンパクの濁り物質の減少は,多糖濃度と相関した.以上より,Sch. japonicusはワイン製造に使用すると,酸度および最終的なエタノール濃度を減少し,グリセロール,揮発性物質を増加するので,ワイン製造に有用であり,活性な多糖はタンパク安定性を上昇し,Sch. japonicusの潜在的利点が示された.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/278
J. M.-Garcia, T. G.-Martinez, J. Moreno, J.C.Mauricio, M. Ogawa, P. Luong, L.F. Bisson:
Impact of Yeast Flocculation and Biofilm Formation on Yeast-Fungus Coadhesion in a Novel Immobilization System.
pp. 278-288
[新規固定化法による酵母・カビ共粘着における酵母凝集およびバイオフィルム生成の影響]
「バイオカプセル」と呼ばれる新規な酵母固定化法を開発した.本方法では,S. cerevisiae酵母細胞はPenicillium chrysogenumカビの菌糸を介して接着する.カビは生存していないが,死滅後も菌糸は残る.この固定化では従来の発酵法と比較し,高い酵母密度となり,収率が向上し,バイオ触媒の再使用が可能である.酵母細胞は特異的細胞表面分子の相互作用(凝集)または表面接着(バイオフィルム生成)により互いに接着する.バイオカプセル生成に関する,この二つの特徴的付着機構の役割は不明である.酵母-カビ共固定化の凝集に対するバイオフィルム生成の影響を調べる為,UC Davisのコレクションから菌株のスクリーニングを行い,それらの株の凝集能とバイオフィルム生成能を定量的に測定した.このスクリーニングで,18酵母株の凝集能およびバイオフィルム生成能が同定された.酵母株は種々の凝集能およびバイオフィルム生成能を示し,二つの対照株では更にP. chrysogenumとの特異的固定化能を評価した.7株は異なる凝集とバイオフィルム生成パターンを示した.バイオフィルム生成酵母株は,P. chrysogenumと高い固定化率を示し,より一定のバイオカプセル生成を示した.反対に,凝集する酵母は,より小さい,一定しないバイオカプセルを生成した.酵母株によりバイオカプセルのサイズと数は変化したが,生成されるバイオカプセルの総量は全ての株で類似であった.これらの結果は酵母-カビ共固定に影響するパラメータに光を当て,バイオカプセルの一定性改良に道を開き,この新規固定化法の応用分野を広げると思われる.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/289
M.P. Daugherty, R.P.P. Almeida, R.J. Smith, E.A.Weber, A.H. Purcell:
Severe Pruning of Infected Grapevines Has Limited Efficacy for Managing Pierce’s Disease.
pp. 289-294.
[ピアス病感染樹の強剪定はピアス病の管理に限定的な効果をもつ]
第一次感染後,病原性細菌は特定の組織や宿主の特定部位によく局在化する.そのような場合,感染部位を取り除くことや樹幹の基部から仕立て直すことによって感染を除去できるかもしれない.我々はピアス病の病原菌であるXylellafastidiosaによる感染を除去することを目的に強剪定の効果を検討した. 北カリフォルニアのブドウ園にてブドウ樹を調査し,罹病度0~3に分類した.次に,接木部の上10センチの幹を切るという強剪定を行い,新たに仕立てた樹冠を長期にわたり観察した.強剪定した82%(284/346)のブドウ樹が翌年のシーズンに感染なしと判断されたが,通常の剪定を行った3分の1(112/324)のブドウ樹は強剪定せずとも病気から回復した(少なくとも無病徴である)ことが示唆された.さらに,6箇所のブドウ園のうち5箇所では強剪定したブドウ樹の大多数は,再仕立てされてから2シーズン後までにピアス病の病徴を示した(最も高いブドウ園で81%,86/106,全体では71%,245/346).これらの結果は,ピアス病の管理に強剪定が適応できるかという点において,強剪定では感染樹からX. fastidiosaを除去できないことを示唆する.
英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/69/3/295
L. A. Lerno, S. Panprivech, R. Ponangi, L.Hearne, T. Blair, A. Oberholster, D.E. Block:
Effect of Pump-over Conditions on the Extraction of Phenolic Compounds during Cabernet Sauvignon Fermentation.
pp. 295-301
[カベルネ・ソーヴィニヨン発酵中のポンプオーバーのフェノール成分抽出に及ぼす影響]
赤ワインの発酵では,アルコール発酵中に生成する果帽管理は,発酵中温度の適正な維持,フェノール成分の抽出促進に必要である.ポンプオーバーは果帽管理法として最も普通に行われ,果帽より下から発酵果汁を引き出し,これを果帽上にスプレーする.温度維持およびフェノール成分抽出のポンプオーバーの効率は,ポンプオーバーの容量および頻度に影響されると考えられるが,その効果は高度にコントロールされた環境下で完全に調査されたことはない .研究レベルのカベルネ・ソーヴィニヨン発酵(100L)を行い,そこでポンプオーバーの容量と頻度をシステム的に変化させ,発酵中のフェノール成分をモニターした.ポンプオーバーの容量と頻度は,研究スケールの発酵では,フェノール成分抽出に有意に影響しなかった.しかし,その結果は発酵槽サイズあるいはデザインに依存した.ポンプオーバー容量は発酵槽の半量,一日2回が発酵中の最低限のフェノール成分抽出および温度管理に必要であった.しかし,処理5ヶ月後に瓶詰めしたワインの分析を行ったところ,有意の差は認められなかった.