American Journal of Enology and Viticulture

Volume 70, No.3 (2019)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/221

J. Doring, C. Collins, M. Frisch, R. Kauer:
Organic and Biodynamic Viticulture Affect Biodiversity and Properties of Vine and Wine: A Systematic Quantitative Review.
pp.221-242.(Review Article)

[有機栽培およびビオディナミ栽培が生物多様性とブドウとワインの特性に及ぼす影響:体系的・定量的総説]
 有機栽培作物の需要は,過去数十年で指数関数的に増加した.特にワイン部門では,最も権威のあるワイナリーのいくつかが有機栽培またはビオディナミ栽培に転換するなど,これらの管理システムがますます重要になっている.本総説では,土壌特性,生物多様性,ブドウの成長(せん定枝重量)と収量,病気発生頻度,果実内成分,官能特性,およびワインの品質に及ぼす影響を従来法,有機栽培およびビオディナミ栽培の間で比較するため,十分なフィールド反復を行なった研究または十分なサンプル数から得られた実地試験による研究結果に限定してデータを収集し,メタ分析ならびに線形メタ回帰分析により解析した.有機栽培における土壌の栄養循環は,特に従来法から有機栽培に転換が完了した後に増大した.複合被覆植物の使用,堆肥施用,および除草剤無散布は,有機栽培およびビオディナミ管理下の土壌におけるより高い生物活性を説明しうる要因である.24の研究のうち17において,異なる栄養レベルの有機ブドウ栽培の下で生物多様性の明らかな増加が観察された.植物保護体制と複合被覆植物の使用は,有機栽培およびビオディナミ栽培下のより高い生物多様性を決定づける主要因である.有機栽培およびビオディナミ栽培では,従来のブドウ栽培に比べて成長が21%,収量が18%低下した.これらの低下は,従来の栽培法での成長または収量レベルと相関していなかった.有機栽培およびビオディナミ栽培下での土壌水分量およびブドウの生理活性(同化率,蒸散率,気孔抵抗)の低下は,それぞれの管理システム下での成長と収量の低減の原因でありうる.ブドウ果汁の総可溶性固形物含量は,異なる管理システム間で差はなかった.管理システム間で果実内成分の組成や果汁,ワインの品質に大きな違いは認められなかった.ブドウの有機栽培およびビオディナミ栽培の影響に関するさまざまな仮説を記述したメタ分析に基づく本総説は,多年生作物のみならず一年生作物の有機農業のさらなる研究を定義するための有用な手引きとなる.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/243

L.M. Yepes, T. Burr, C. Reid, M. Fuchs:
Elimination of the Crown Gall Pathogen, Agrobacterium vitis, from Systemically Infected Grapevines by Tissue Culture.
pp.243-248.(Research Article)

[全身感染したブドウの組織培養によるクラウンゴール病原体Agrobacterium vitisの除去]
 Agrobacterium vitisは,根頭がんしゅ病を引き起こすブドウの土壌細菌である.A. vitisに過剰感染した‘リースリング’の休眠枝や複数品種の茎やシュート頂においてA. vitisが不均一に分布することが知られている.A. vitisは茎頂培養により効果的に除去できることが示されてきた.しかしながら,先行研究における病原菌の検出感度は低かったため,近年開発された高感度で検出可能な磁気捕捉ハイブリダイゼーションリアルタイムPCR法(MCH-qPCR:試料中のA. vitisを減圧下で導管から分離・採取し,A. vitisの腫瘍成型能に不可欠なvirD2遺伝子のフランキング領域に対するビオチン化プローブを付けた常磁性ビーズでDNAを単離し,qPCRで増幅・検出)により組織培養で育成した個体のA. vitisのフリー化を評価した.根頭がんしゅ病に罹病したリースリング(31母本)の茎頂分裂組織(0.3-0.5 cm)ならびに頂芽や側芽(0.5 cm未満)の培養体から植物体を再生し試験管内でマイクロプロパゲーションした. 培養繁殖個体の予備的なMCH-qPCR分析によりA. vitis陰性個体を土壌に移植し温室で順化させた.2年に渡って順化個体より木化した枝および茎頂を含む緑枝を採取し検定した.順化約7ヶ月後(2016年)では,順化個体のうち81%において陰性が確認された.2年目(2017年)では,追加に順化した個体も含め切り戻しせん定した後に再生長させると96%の個体で陰性が確認された.順化2年目に休眠させ,その後,温室にて複数回切り戻しせん定した後に生育させた場合,100%の個体で陰性が確認された.これらの結果から,茎頂,側芽ならびに茎頂の分裂組織を培養し個体再生することで,休眠後においてもA. vitisフリーの個体が育成できることが明らかとなった.A. vitisフリー体を使用することで,クラウンゴールの早期発生を遅延させ,生産性向上が可能となると推察される.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/249

V. Englezos, K. Rantsiou, F. Torchio, M. Pollon, S. Giacosa, S.R. Segade, Vi. Gerbi, L. Rolle, L. Cocolin:
Efficacy of Ozone against Different Strains of Brettanomyces bruxellensis on Winegrapes Postharvest and Impact on Wine Composition.
pp.249-258.(Research Article)

[収穫後のワイン用ブドウのBrettanomyces bruxellensis株に対するオゾンの効果とワイン組成への影響]
 Brettanomyces bruxellensisによる汚染は,ワイン産業にとって大きな懸念事項である.ワインの品質に対するこの野生酵母の悪影響,すなわち潜在的に大きな経済的損失とフェノール性異臭の産生には,特定の管理方法を適用することが必要である.我々はバルベラ種を使ってB. bruxellensisを制御するオゾン処理能力とワイン製造への影響を調査した.オゾン処理によるB. bruxellensisの菌数を減少させる能力を調べるために,3つの異なるB. bruxellensis株の混合物をブドウの果実の表面に播種した.ブドウの果実は水(6または12分処理)または気体(12または24時間処理)でオゾン処理後,粉砕・発酵し,これらの処理がB. bruxellensisおよびSaccharomyces cerevisiaeの生育とワインの組成に及ぼす影響を評価した.微生物分析では,24時間オゾンガスで処理すると未処理のブドウ果実と比較して,B. bruxellensisのコロニーの数が2.2 log CFU/mLまで減少し,有意な差を示した.このオゾンガスで24時間処理したブドウから製造したワインは,酢酸が最も低いレベルであった.また,水で処理したブドウから製造したされたワイン(6または12分処理)から4-エチルフェノールが検出され,発酵終了時にB. bruxellensisの個体数は5.0 log CFU/mLに達した.分子遺伝解析により,3種類の試験菌株はオゾン処理により同様の結果を示した.本研究はB.bruxellensis菌株に依存せずに個体数を減らすための方法としてオゾン処理の効果を初めて示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/259

C. D’Onofrio, A. Bellincontro, D. Accordini, F. Mencarelli:
Malic Acid as a Potential Marker for the Aroma Compounds of Amarone Winegrape Varieties in Withering.
pp.259-266.(Research Article)

[乾燥によるアマローネ品種のアロマ成分の潜在的マーカーとしてのリンゴ酸]
 アマローネはコルヴィーナ種,コルヴィノーネ種,ロンディネラ種の干したブドウから製造されるワインである.乾燥工程におけるブドウの水分損失は,ブドウの熟成と組み合わされ,著しい代謝変化を引き起こす.本研究では乾燥中のアマローネに使用される各品種のリンゴ酸,総ポリフェノールおよびアロマ成分の変化を報告した.3種類のブドウの房は施設内で乾燥させることによりブドウ重量を減少させ,ブドウ重量がそれぞれ10,20,30および50%減少時にサンプリングをして測定を行った.ロンディネラ種はブドウ重量がコルヴィーナ種やコルヴィノーネ種より早く減少した.リンゴ酸はすべての品種で急速に減少し,特に20%減少時のロンディネラ種が顕著であった.その後リンゴ酸は増加した.総ポリフェノール量は20%減少時からわずかに上昇し,その後,濃縮効果以上に総ポリフェノール濃度が増加した.また,乾燥工程で減少し,すべての品種で収穫時に最も多く含まれるアロマ成分は6-methoxy-3-methylbenzofuran,4-vinylguaiacol,3,4,5-trimethoxybenzyl alcohol,vomifoliolおよびcoumaranで,コルヴィノーネ種が最も多く含まれていた.乾燥工程によりロンディネラ種はほとんどのアロマ成分が10%または20%減少時に最も多く含まれていた.コルヴィノーネ種とコルヴィーナ種は20%または30%減少時であった.以上より,試験をしたすべてのブドウ品種が乾燥中に同じような挙動を示すわけではないため,ワインメーカーはそれぞれのブドウ品種の最高のアロマ状態に到達するために,乾燥処理によるブドウの減少量(および乾燥時間)を把握する必要がある.リンゴ酸の増減傾向とアロマ成分のその傾向が一致するので,リンゴ酸量を測定することはブドウの乾燥工程におけるアロマ成分の変化を監視する簡単なツールであると考えられる.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/267

. Baumgartner, V. Hillis, M. Lubell, M. Norton, and J. Kaplan:
Managing Grapevine Trunk Diseases in California’s Southern San Joaquin Valley.
pp.267-276. (Research Articles)

[カリフォルニアの南部サンワーキン・バレーにおけるブドウ樹幹病の管理]
 大部分のカリフォルニア・ブドウ園は,一またはそれ以上のブドウ樹幹病(EscaまたはBotryosphaeria,EutypaおよびPhomopsis由来の枝枯れ病)に罹病している.これらの病原体は樹木の慢性感染症を発症させるが,病気の進行は遅く,症状が明確になるのに何年もかかることがある.予防は効果的な手法であり,病徴が現れる前に実施する必要がある.早めの予防診断のため,生食用品種‘クリムソン・シードレス’で経済的利点を分析した.時期を遅らせた剪定または剪定後の切断面への保護剤塗布を,病気の発生していないブドウ幼木園(3~5年生)と病気の発生したブドウ成木園(10年生)で比較した.カリフォルニアの南部サンワーキン・バレーでの生食用品種と干しブドウ用品種の栽培者の調査で予防診断の方法と認識が明らかなった.また,成木園で11~15年間の樹幹治療(「樹幹更新」とも呼ばれる)の経済効果を調べた.幼木園でこの経済的シミュレーションを行うと,防止の費用効果が高いことが明らかになった.しかし,樹幹病の効果を認めたにもかかわらず,25~30%の栽培者しか予防診断を行わず,幼木園で実施した栽培者はその半分にすぎなかった.さらに,予防や早期治療をした栽培者は,予防診断がより高い費用効果であることを認めている.したがって,予防診断を実施していない生産者に対しては,ブドウ成園で回避不能な病徴が予想される場合,予防診断を早めに実施すると長期的な経済効果があると強調することが必要である.ブドウ樹を外的治療すると一時的には高コストとなるが,経済分析の結果,予防への費用効果は高く,11~15年生の生食用ブドウ園を管理するのに推奨すべきであることが明らかとなった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/277

G. Allegro, C. Pastore, G. Valentini, I. Filippetti:
Effects of Sunlight Exposure on Flavonol Content and Wine Sensory of the White Winegrape Grechetto Gentile.
pp.277-285.(Research Articles)

[白ワイン用ブドウ グレケット・ジェンティーレのフラボノール含有量とワインの官能に対する日光照射の影響]
 本研究の目的は,白ブドウの組成とワインの官能特性における日光照射の影響を調べることである.2014と2015年に,白ワイン用ブドウ グレケット・ジェンティーレのブドウ樹を,結実後,除葉(LR)したクラスターゾーンにした.渋味と苦味の違いを確認するために設計した標準的な手順に従って,対照とLR処理ブドウの小規模ワイン醸造を実施し,口当たりの特性とフェノール性化合物の関係性を調査した.両年において,果実のフラボノールはクラスターゾーンLR後に増加し,また対応するワインでも高かった.果実タンニンはLR後のより高い日射照度に対してわずかな変化のみ示し,ワインにおける違いはなかった.2014年のLR処理ブドウ樹のワインはより苦くて渋いと評価されたが,2015年ではワイン間の違いはなかった.最初の年では,フラボノール濃度がより高いことが,フェノールの口当たりがより強くなったことに寄与した可能性がある.一方2年目では,すべてのワインでpHおよびアルコール含有量が非常に高いことが渋みや苦味の知覚における違いをマスクした可能性がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/286

J. R.-Loper, B.A. Workmaster, and A. Atucha:
Impact of Fruit Zone Sunlight Exposure on Ripening Profiles of Cold Climate Interspecific Hybrid Winegrapes.
pp.286-296.(Research Articles)

[寒冷気候に適応する種間雑種ワインブドウの成熟特性に関する果房周辺への日光照射の影響]
 寒冷気候に適応する種間雑種ブドウ(CCIHG)品種の導入により,新しいワイン産業が北部気候の中で発展した.しかし,収穫果の高い酸度と,これらの新しい栽培品種の果実の成分に関しては限られた情報しかなく,その結果,良質なワイン生産が困難な状況にある.CCIHGの4品種(‘Brianna’,‘Frontenac’,‘La Crescent’,‘Marquette’)の有機酸と糖の特性を2つの生育期間中に測定した.着果2週間後に,果房を遮光しているシュート上の2~3枚の葉や基部の第3節位からの側枝を除去した果房周辺露出区(露出区)と対照区の2区に分けた.生育年と品種間で,ベレーゾン期から収穫期までブドウ糖/果糖比は0.88~1.13で,酒石酸/リンゴ酸比は0.23~0.88で推移した.‘La Crescent’と‘Frontenac’ではベレーゾン期から収穫期まで高い酸度(主に高濃度のリンゴ酸)で推移した.露出区は果房周辺の果粒温度と同様,日光照射量が増加した.果実のブドウ糖と果糖濃度に対する処理効果は,品種と成長期の間で変化した.露出区では,総滴定酸度(特に測定したほとんどすべての品種のリンゴ酸濃度)が減少した.ベレーゾン期直前の葉と側枝の除去は,短い成長期とともに寒冷気候地域で生育するCCIHGの酸度を減らすための効果的な方法となった.加えて,本報はVitis vinifera品種改良のために育成されたCCIHGに頼ることとは対照的に,それらの品種のための独立した果実成熟基準を開発する必要性に焦点を当てた.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/297

J. Scharfetter, B.A. Workmaster and A. Atucha:
Preveraison Leaf Removal Changes Fruit Zone Microclimate and Phenolics in Cold Climate Interspecific Hybrid Grapes Grown under Cool Climate Conditions.
pp.297-307.(Research Articles)

[ベレーゾン期前の除葉は寒冷気候条件下で栽培する寒冷気候の種間雑種ブドウのフルーツゾーンの微気候とフェノールを変化させる]
 成熟中のブドウ果房の微気候の変化はVitis viniferaで多くの報告があるが,寒冷気候条件下で栽培された寒冷気候の種間交雑ブドウ(CCIHG)品種への影響に関する報告は少ない.一度のベレーゾン前除葉および側枝除去(「果房露出」)処理がフルーツゾーンの微気候と果汁の総フェノール濃度(TPC),単量体アントシアニン濃度(MAC),および重合色の割合に及ぼす影響を白色系品種であるブリアンナとラ・クレセントと着色系品種であるフロントナック,マルケット,プティ・パールを3年にわたり栽培し,最後の年にそれぞれ醸造した.白色系品種の果汁のTPCの違いは品種に依存し,ワインのTPCに対する処理による差はなかった.着色系品種のフロントナック,マルケット,プティ・パールでは,果房露出処理によりワインのTPC,MACおよび重合色度が増加した.MAC,TPC,重合色度,および滴定酸度に対する果房露出処理への作用は,果粒温度の上昇とフルーツゾーンへの光合成活性放射に関連していた.一度のベレーゾン前除葉と側枝の除去は,寒冷気候条件下で栽培されたCCIHG品種の赤ワインの着色を安定させるための効果的な栽培技術となるかもしれない.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/308

M.S. Smith and M. Centinari:
Impacts of Early Leaf Removal and Cluster Thinning on Gruner Veltliner Production, Fruit Composition, and Vine Health.
pp.308-317.(Research Articles)

[グリューナー・フェルトリーナーの生産,果粒品質およびブドウ樹の成長に対する早期の除葉と摘房の影響]
 従来からの着果量調節技術である摘房(CT)の効果を,収量が多く樹勢の強いグリューナー・フェルトリーナーを用いて,新しい栽培技術である開花期(TBLR)や着果期(FSLR)を基準とした早期摘葉(ELR)と比較した.生産性に影響する主要な要因である,灰色カビ腐敗病,冬の温度に対する耐性および生産にかかる経費に対する影響を2年にわたって無処理区と比較し,評価した.CTと比較して,ELRは果実品質を改善し,灰色カビによる房腐れを減らし,培者のコストを削減すると仮定した.CTによる増加は39.3%と,TBLR(12.6%)やFSLR(13.3%)処理による増加に比べて高かったが,CTもELRも果粒品質を向上させなかった.我々の結果は,ELR処理したブドウ樹でより低い結実や着粒量の低下を伴わなかったように,開花期や着粒期の除葉(5枚)は炭水化物飢餓を引き起こすには不十分であったかもしれない.さらに,TBERやFSLR処理したブドウ樹は葉数の増加や新梢伸長量の増加などの樹勢回復が生じることはなかった.房腐れの全体的な発生程度は5%未満であったが,ELRによって房腐れの総発生量(TBLR,FSLR)および房あたりの被害程度(FSLR)を低下させた.TBLRは両年の休眠中の芽の耐棟性も改善した.CTは最も有効な栽培技術であり,果粒品質の向上や耐寒性には欠くもののグリューナー・フェルトリーナーの結果枝に複数の果房を成熟させることができることを示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/318

J. J. M. Tolosa:
Influence of Nitrogen Content on Grape Non-Saccharomyces Glycosidic Activities.
pp.318-322(Research Articles)

[ブドウの非サッカロミセス酵母のグリコシダーゼ活性が窒素含有量に与える影響]
 この研究では,非Saccharomyces酵母のβ-グルコシダーゼおよびβ-キシロシダーゼ活性に対する窒素含有量の影響を調べた.酵素活性は,培地中のキシラン多糖類の存在によって誘導された.結果は,β-グルコシダーゼとβ-キシロシダーゼの酵素活性の最適化は,糖またはエタノールの含有量またはpHだけでなく,培地中のN濃度によっても決定できることが分かった.これは,非Saccharomyces酵母が産生する解糖酵素に対するN含有量の影響を研究した最初の研究である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/323

A. Gambuti, L. Picariello, L. Moio, A.L. Waterhouse:
Cabernet Sauvignon Aging Stability Altered by Microoxygenation.
pp.323-331.(Research Articles)

[マイクロオキシゲネーションにより変化したカベルネ・ソーヴィニヨンワインの熟成の安定性]
 マイクロオキシゲネーション(MOx)は,ベジタル香を抑え,アントシアニンを安定した色素に変換することで色を改善するために利用される.さまざまな濃度の二酸化硫黄(SO2)とグルタチオン(GSH)を添加したカベルネ・ソーヴィニヨンワインをMOx処理後,等量の遊離SO2濃度で瓶詰めを行い,管理された条件下で28か月間貯蔵した.ボトルの熟成後,MOx処理ワイン,特にMOx中に比較的低濃度のSO2とGSHで処理したワインは,MOx処理なしのワインと比較して,はるかに多くのアセトアルデヒドと安定した高分子色素重合体を生成し,非常に安定した色を示した.MOx処理ワインは熟成中にSO2を多く消失した.MOx処理ありなしに関わらずワイン中のSO2濃度が高いと,熟成後のタンパク質反応性タンニンが多くなり,ワインの口当たりへの影響が示唆された.MOx処理前にSO2と少量のGSHを添加すると,熟成中のワインの酸化反応が遅くなり,色の安定性が低下し,色の消失が大きくなった.これらの結果より,瓶詰め前のMOx処理は熟成中のワインの変化に劇的な影響を与えることを示した.MOx処理したワインは色がより安定していたが,SO2による保護効果がより早く失われたため,瓶詰めする前により多くのSO2が必要になる可能性がある.これらの結果より,MOx処理によって新しいワインにおいて安定剤として作用する可能性のあるフェノール類などの保護成分が除去されることが示唆された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/3/332

V. Canuti, S. Cappelli, M. Picchi, B. Zanoni, P. Domizio:
Effects of High Temperatures on the Efficacy of Potassium Polyaspartate for Tartaric Stabilization in Wines.
pp.332-337.(Technical Brief)

[ワイン中の酒石酸安定化処理のためのポリアスパラギン酸カリウムの効果に対する温度の影響]
 酒石酸安定化用のコロイド添加剤であるポリアスパラギン酸カリウム(KPA)は,最近ワインでの使用が承認され(OIV / OENO 543-2016),ヨーロッパの多くのワイナリーで採用されている.以前の研究では,酒石酸塩の安定化に対するその効果に焦点をあて,メタ酒石酸(MT)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などの他の添加剤と同等の効果があることが示されている.ただし,CMCやMTとは異なり,KPAは色に影響を与えたり濁りの形成を起こしたりせず,その効果を長期間にわたって維持することが報告されている.本研究では,高温で異なるKPA濃度で処理したワインにおけるKPAの有効性を初めて評価した.完全要因実験計画法を利用することで,赤ワインと白ワインの酒石酸安定性に対する温度,保管時間,およびKPAの用量の影響と相互作用を電気伝導率試験で評価した.本研究の結果,保存温度がKPAの有効性に最大の影響を与える変数であることが分かった.ただし,KPAは,出荷中に時々発生する可能性のある約40°Cの温度で,少なくとも45日間は効率を維持できた.導電率試験から得られた結果は,酒石酸安定性を測定するための対照として使用された低温試験の結果と一致した.

一覧に戻る
ページトップ