American Journal of Enology and Viticulture

Volume 62, No.2 (2011)

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/139

F. Di Profio, A.G. Reynolds, and A. Kasimos
Canopy Management and Enzyme Impacts on Merlot, Cabernet franc, and Cabernet Sauvignon. I. Yield and Berry Composition
pp. 139-151

[メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソービニヨンにおける樹冠管理と酵素処理の影響、I.収量とブドウ組成]
カナダ、オンタリオ州南西部ナイアガラ河口地域で、メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソービニヨンについて、ヘジング(伸びすぎた側梢の除去)のみの対照、ベレゾン時期の摘房(CT)、基部除葉(BLR)、CT + BLRの4区をランダムに設けた。CT + BLR以外は、各区のマストを無処理およびColorProあるいはColor X酵素で処理した。CTおよびCT + BLR処理は、ブドウ樹当りの収量および果実負荷量が減少したが、果房重、果房当り粒数、果粒重に一定の傾向は認められなかった。CTおよびCT + BLR処理は一般に、果粒とマストの糖度(ブリックス)が最も高く、ほとんどの場合、果粒とマストのアントシアニンとフェノール化合物濃度、色強度(A420 +A520)が最も高かった。徐葉では、果粒とマストの色強度、アントシアニンおよびフェノール化合物濃度が少し上昇したが、糖度の上昇はないか僅かであった。対照に比べ、CTおよびBLR区は、滴定酸度(TA)が減少し、pHが上昇したが、この傾向はCTよりBLR処理で顕著であった。BLRとCT + BLR区は常に、果粒とマストのTAが低く、pHが高かった。酵素処理は、マストTAを上昇し、pHを下げ、典型的に色強度、総アントシアニン、フェノール化合物濃度を上昇した。しかし、この効果は、栽培処理の影響に比べ、小さかった。CT + BLR処理は、果実の組成改善の可能性があるが、過剰な除葉は糖度とTAが低くなり、好ましくないpH上昇を招く。酵素処理は色強度を高める可能性があるが、時として、TAを上昇させることもある。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/152

F. Di Profio, A.G. Reynolds, and A. Kasimos
Canopy Management and Enzyme Impacts on Merlot, Cabernet franc, and Cabernet Sauvignon. II. Wine Composition and Quality
pp. 152-168

[メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソービニヨンにおける樹冠管理と酵素処理の影響、II.ワイン組成と品質]
前報と同じ試験区である。ほとんどの場合、摘房(CT)およびCT + 除葉(BLR)処理では、ワインのアントシアニン、フェノール化合物濃度、色強度(A420 +A520)が最も高かった。除葉は、ワインの色強度、アントシアニン、フェノール化合物濃度を少し上昇した。対照に比べ、摘房と除葉は、双方ともTAを減少し、pHを上昇した。しかし、除葉は摘房より効果が大きい傾向であった。CT + BLR処理は、常にTAが最も低く、最もpHが高かった。酵素処理は、TAを上昇し、pHを下げ、典型的に色強度、総アントシアニン、フェノール化合物濃度を上昇した。栽培と醸造の処理は、ワインフェノール、アントシアニンに影響したが、栽培処理の方が、酵素による醸造処理より影響が大きかった。栽培処理は、黒果実、黒胡椒、タバコのようなアロマや鼻に抜ける香りを高め、豆やキノコのような香りを減少した。冷涼な地域でのブドウ栽培におけるCT + BLR処理は、果実とワイン組成を改善できる可能性がある。しかし、過剰な除葉はアルコールが低くなり、望ましくないpH上昇を招くこともある。酵素処理は色強度を高める可能性があるが、時として、TAを上昇させることもある。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/169

A.K. Mansfield, J.P. Schirle-Keller, and G.A. Reineccius
Identification of Odor-Impact Compounds in Red Table Wines Produced from Frontenac Grapes
pp. 169-176

[フロンテナックから製造した赤テーブルワイン特徴香化合物の同定]
フロンテナックFrontenac (Vitis spp. MN 1047)は米国に最近導入され、中北西部で最も栽培されている、冷涼耐性ブドウ品種である。フロンテナック赤テーブルワインの一般的な香気成分の記述的分析は行われているが、品種特徴香の分析は行われていない。この特徴香分析のため、8種のフロンテナック・テーブルワインについて、ガスクロ嗅覚質量分析(GC/O-MS)とスターラーバー吸着抽出法(SBSE)を組み合わせた分析を行った。8名のパネリストがスニッフィングにて、GC/O溶離物の定量的頻度検出を行った。アルコール5種、エステル14種、ラクトン、酸類2種、揮発性フェノール2種の24種のアロマが、パネリストにより検出された。この内、23種のアロマは、GC-MSデータから同定され、内部標準との比較で定量された。フロンテナックの親ブドウであるV. riparia clone #89のワイン分析で、16種のフロンテナックのアロマは、親ブドウと同じであった。フロンテナックの2日間のスキンコンタクトによるワイン分析から、アロマ4種がこの果実由来であることが判明した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/177

E. Petit, E. Barriault and K. Baumgartner
Cylindrocarpon Species Associated with Black-Foot of Grapevine in Northeastern United States and Southeastern Canada
pp. 177-183

[合衆国北東地域およびカナダ南東地域におけるBlack-foot病に関連するCylimdrocarpon属菌種]
Black-foot病は土壌菌類の複合によって引き起こされる。もっとも一般的で病害性のある菌種は世界の主要なブドウ栽培地に広く認められ、Cylindrocarpon liriodendri (C. liriodendri) と C. macrodidymum (有性世代 = Neonectria)である。分布が限定され、病原性に関して不確かな他の種にC. destructans, C. obtusisporum, C. pauciseptatum, Campylocarpon fasciculare (C. fasciculare), および C. pseudofasciculareが含まれる。この研究の目的はまだ調査されていない合衆国北東地域およびカナダ南東地域のブドウ園におけるblack-foot病に関与する種を同定することである。この地域でのワインブドウ面積の近年の増加はこの病気のリスクの明快な理解を必要する。合衆国の11州とカナダの2州で調査を行った。属レベルの同定をコロニー形態に基づいて予備的に行った。種レベルの同定は証拠標本と高い配列相同性をもつ配列を用いて5.8S rDNA とss-チューブリンの二つの遺伝子座の系統樹解析に基づいた。著者らは、症状を示しているブドウからC. liriodendri, C. macrodidymum, および C. destructansをカナダの採集から始めて報告した。また、これまでは世界のどこでもBlack-foot症状を示すブドウから同定されていなかったC. didymum とNeonectria mammoidea類似の種を報告した。以上のことは、この地域のブドウ栽培法、主としてブドウ樹を土に埋めることの結果であることが示唆された。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/184

A. Harm, H-H. Kassemeyer, T. Seibicke and F. Regner
Evaluation of Chemical and Natural Resistance Inducers against Downy Mildew (Plasmopara viticola) in Grapevine
pp. 184-192

[ブドウのべと病(Plasmopara viticola)に対する化学的および天然の抵抗性誘導物質の評価]
化学的および天然の抵抗性誘導物質が植物のさまざまな病原体に対する感受性を減少させるために使われるようになり、そのことで農業における殺虫剤・殺菌剤の使用を削減すると考えられる。この研究では生物防除物質および植物抽出物の可能性について評価した。誘導抵抗性が誘起された状態がリーフディスクおよび鉢植え樹を用いたブドウ植物体のべと病を防除することを検証した。誘導抵抗性はパーオキシターゼ、ポリフェノールオキシターゼ、β-1,3グルカナーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、スチルベン合成酵素、PR-1タンパク質、およびカフェロイル補酵素A 3-O-メチル基転移酵素を含む感染特異的蛋白質(PR-protein)、の増加により測定した。抵抗性誘導剤候補として、セイタカアワダチソウSolidago canadensis抽出物(CanG)、アオカビPenicillium crysogenum菌糸体抽出物(PEN)、リノレイン酸 (LIN)、および黒酵母菌Aureobasidium pullulans 生物防除剤(Aureo)と化学エリシター3-DL-β-アミノ酪酸(BABA)およびベンゾチアジアゾール(BTH)を屋外の鉢植えブドウ樹のべと病菌に対して試験した。BABA, BTHおよびCanGは80%以上の防除効果があったが、PEN, LIN, およびAureoは防除効果が最少であった。BABAとAureoは遊走子を阻害することができなかったが、他のすべての試験物質においては遊走子運動性に対する濃度依存的な阻害を観察した。BTH, CanG, PEN, とLINは広い範囲の抵抗性関連代謝物の生合成を誘導したが、Aureoはどんな反応も引き起こさなかった。BABAは接種直後に壊死斑の形成とPRたんぱく質を誘導した。これらの結果は、ブドウのべと病菌に対する抵抗性を増加させるような天然の抵抗性代謝物が部分的に誘導される可能性を示唆しており、殺菌剤の使用に対し、たとえその効果を十分置き換えることができなくても併用することでその生態系への負荷を軽減する共力薬として提供できる。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/193

B.N. Austin and W.F. Wilcox
Effects of Fruit-Zone Leaf Removal, Training Systems, and Irrigation on the Development of Grapevine Powdery Mildew
pp. 193-198

[ブドウうどんこ病の発生に対する着果ゾーンの摘葉、整枝法および潅水の影響]
開花後2週における基部葉の摘除はNew York州のシャルドネ園での研究のいずれの年次でも果房のうどんこ病の被害を軽減した。対照的に開花後5週での摘葉には効果がなかった。効果はそれぞれの果房の上下1枚か2枚かの摘葉では差がなかった。垂直に新梢を誘引する整枝法(VSP)における新梢密度はUmbrella-Kniffen整枝法に比べ低く、この研究におけるある年では病気の発生の顕著な抑制に関連していた。VSP整枝法は殺菌剤散布なしでの初期の摘葉と組み合わせたとき、Umbrella-Kniffen整枝法における無処理の果房に対し平均病害程度を32%低下させた。しかしながら、研究2年目では整枝法の効果はなくなった。南オーストラリアにおいて標準的な制限潅水(RDI)法の2倍量の潅水を与えたブドウは2年間にわたり葉のうどんこ病が2-7倍となった。結果は樹勢の制御と果実収量と品質を第一の目的としたブドウ栽培法がまたうどんこ病の発生に顕著な影響を与えることを明らかにした。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/199

M. Gatti, S. Civrdi and F. Bernizzoni
Long-Term Effects of Mechanical Winter Pruning on Growth, Yield, and Grape Composition of Barbera Grapevines
pp. 199-206

[ブドウ‘バルベーラ’の成長、収量および果実品質に及ぼす冬季機械剪定の長期的な影響]
ブドウの能力を手による短梢剪定(HP)と機械による刈り込み剪定に加えて手による手直しを軽く(SMP-LF)あるいは強く(SMP-SF)行う剪定法によるVitis vinifera 品種バルベーラにおいて5年間(2005-2009)試験した。機械処理はHPに対し2-から2.5倍多い1樹当たり節数が残されたが、1樹当たりの収量は萌芽を減少させる強い相殺的な影響で処理間でほとんど同じだった。果房重および芽の結実性にはそれぞれ弱い補償作用または補償作用が全くなかった。アントシアニン濃度のわずかな減少以外に試験期間内の処理間においてブドウ果実組成のすべてで同様だった。樹勢と生産能力の差異はわずかで、1樹当たりの葉果比は処理による影響を受けなかったが、SMP剪定樹における果粒アントシアニン含量のわずかな減少は新梢密度の増加とそのことによる着果部位の日蔭の増加に起因すると思われた。冬季剪定は刈り込み剪定樹で25時間/ha以下の時間でできたので、HP剪定に比べ54-70%の剪定労力となった。このため、もし他のすべてのブドウ園管理を機械化すると、最も直立した樹冠を持つ高設のシングルワイヤ仕立てのバルベーラは70人・時間/ha以下の労力で維持できる。そのような能力は収量と果実品質の総合的な変化がなく、より効率性と競争性の高さが要求されるワイン市場における確実で信頼できる取り組み方を提案する。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/207

C. Rosa, J.F. Jimenez and P. Margaria
Symptomatology and Effects of Viruses Associated with Rugose Wood Complex on the Growth of Four Different Rootstocks
pp. 207-213

[4種類の台木の成育におけるRugose Wood Complexに関与するウイルスの症候学および影響]
St. George, Kober 5BB, LN33およびFreedomの4種類の台木において成育反応と病徴の発生を研究するためにrugose wood complex(RW)に関与するウイルスを接ぎ木接種した。研究に使用したウイルス供給源はGVA(Grapevine virus A)としてLR127, CB105およびPA94-142、GVBとしてCB120、GVDとしてLV92-07およびシャルドネから得た野生系統、ブドウ・ルペストリス・ステムピッティング・ウイルス(GRSPaV)のカベルネ・ソービニヨンから得た野生系統とした。それぞれの台木個体は、ウイルスに感染したブドウからの芽接ぎを用いて1、2または3種類のウイルス源を接種した。植物体は部分的乱塊法に従って植栽した。2年後、幹径を測定し、樹皮をはぎ、材の部分のRW症状の存在を観察し、症状の激しさに基づいて評価した。選抜した個体をRT-PCRにより調査した。幹径の最大の減少は台木の種類に関わらずGVB/GVD/GRSPaVのウイルス源の組み合わせで接種した植物体で認められた。さらに、GVB/GVD, GVA/GVB/GVDおよびGVB/GVD/GRSPaV処理はLN33において成長に最も大きい影響があり、GVA/GVB/GRSPaV、GVB/GVD/GRSPaVおよびGVA/GVB処理ではKober 5BBにおいて成長への影響が最も大きかった。概して、GVBは多重感染処理において、特に三重感染において成長への悪影響がより大きかった。単独処理では、GVDはFreedomにおいて材部に病徴がない状態で強い成長抑制が認められた。GVAの接種源のいくつかはKober 5BBおよびFreedom台木の双方で成長を低下させた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/214

K.E. Keightley
Applying New Methods for Estimating in Vivo Vineyard Carbon Storage
pp. 214-218

[実在のブドウ園における炭素貯留の評価のための新手法の適用]
ブドウ栽培における炭素と化石燃料からの炭素放出との相殺を測定できるようになってきている。ブドウ園の農業生態系に貯留された炭素は土壌採集、果実収穫および剪定量の測定と永年性の木質構造(コルドン、主幹および根系)の破壊的な収穫といった伝統的な方法により測定できる。ブドウ園における炭素貯留の動的性質を十分特徴付けるためには、一定のスケジュールでのサンプリングとブドウ樹の掘り起こしを数十年にわたり実施する必要があると思われる。そのような破壊的なブドウ樹の収穫の必要性を削減する意図で、ブドウ園を非破壊的な地上レーザー走査法を用いてサンプリングした。無機的土壌採集と果実収量を対にすることで、これらの方法はブドウ園の炭素貯留の総合的な空間的特徴付けをもたらす。ブドウの永年性木質バイオマスを測定し(n=36)、土壌を1mの深さまで採集し(n=24)、平均果実収量を組み合わせると、32.3 haのブドウ園で3,160 Mgの有機炭素が認められた。ブドウは根のバイオマスと併せて、平均して1.93 kgの乾燥バイオマス(0.87 kg炭素)を持ち、ブドウ園の永年性総炭素量の2% (60 Mg)を占める。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/219

A. Palliotti, M. Gatti, and S. Poni
Early Leaf Removal to Improve Vineyard Efficiency: Gas Exchange, Source-to-Sink Balance, and Reserve Storage Responses
pp. 219-228

[ブドウ園の効率(ガス交換、ソースとシンクのバランス、貯蔵応答)を向上するための早期除葉]
幾つかのVitis viniferaの遺伝子型において、収量の縮小における開花前の除葉の有効性を示す初期の発見をもとに、技術がどのように栄養成長、木質炭水化物の貯蔵、そして水分使用効率(WUEi)とクロロフィル蛍光のような特定の生理的特徴に影響するかを評価するために、サンジョベーゼブドウ樹において3年間の研究を実施した。開花前に葉面積の80%までの除去を適用した初期摘葉(D)を、非摘葉のコントロール(C)と比較し、ブドウ樹あたりの制限収量、果房重量、果房の着粒密度と腐敗の発生率、そして果粒の結実と質量における効果を、3シーズンの内の2シーズンで確認した。摘葉は、シーズンに関わらず、相対的な果皮質量を著しく向上させた。樹勢(剪定重量、枝の径、本葉面積)は、Dブドウ樹において有意に減少した(2008-2009データ)、一方、ブドウ樹あたりの総葉面積としてのブドウ樹の能力は減少しなかった。果実に対する葉の比率は、Dブドウ樹において、摘葉の後で1m2/kgまで著しく低下し、その後回復し、そしてベレーゾン以降、高かった。WUEと光阻害に対する耐性は本葉と副梢葉の両方に対してDブドウ樹で増加し、それは除葉後に形成され、測定期間の完熟にまでわたった。果実の糖蓄積はDブドウ樹において促進され、Dブドウ樹は、Cブドウ樹に比べて、収穫時のより高いマストBrix、フェノール化合物とアントシアニン濃度、さらに、ワインにおけるより安定なアントシアニンを示した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/229

Y.L. Park, T.M. Perring, R.K. Krell, J.M. Hashim-Buckey, and B.L. Hill
Spatial Distribution of Pierce’s Disease Related to Incidence, Vineyard Characteristics, and Surrounding Land Uses
pp. 229-238

[発生率、ブドウ園の特徴、周囲の土地利用に関連したピアス病(Pierce’s Disease)の空間分布]
Xylella fastidiosa を原因とするブドウ樹のピアス病 (PD)の空間分布パターンを特徴づけるために、サンホーキン・バレー(カーン郡、カリフォルニア州)の220ブドウ園ブロックにおいて、4年間(2001から2004)の個体数調査を実施した。PD発生率(PDを有するブドウ樹のパーセント)および発生(PDの存在または不在)とブドウ園の特徴および地理的情報システムを使った周辺環境の関係を調査するために、地球統計学と距離指標を用いた空間解析を使用した。個体数調査によって、52のブドウ園ブロックが、少なくとも1本のX. fastidiosa 感染ブドウ樹を有し、そして、これらブドウ園ブロックのPD発生率は0.001 から 29.8%の範囲であることが確認された。52ブロックのうちの36ブロックは5本未満の感染ブドウ樹を有し、その結果、空間解析は、これらブロックに対して有効ではなかった。残りの16ブロックに対して、X. fastidiosa 感染ブドウ樹の分布は、非構造、ランダム、空間傾向そして発生率の増加による集合として分類できた。11ブロックは、X. fastidiosaの一次拡散と一致するPD分布を示した。一方、2ブロックは、二次またはブドウ樹からブドウ樹への拡散を示唆する集合を示した。1ブロックの分布は一次と二次拡散の混合を示した。2ブロックにはX. fastidiosa 感染ブドウ樹の列内の繰り返し集合があった。これは、列内の近接した植物体における方向性をもった施肥、または剪定器具による細菌拡散の結果であり得る。有意に高いPD発生はフレーム・シードレスブドウ園ブロックに見られた。そして他のブドウ園の特徴(ブドウ園の経年数、剪定方法、植樹密度)はPD発生に関連していなかった。PD発生は、周辺環境と空間的に関連していなかったが、PD発生率は、カンキツ類に空間的に関連していた。この研究は、ブドウ園におけるPDの疫学とサンプリングにかかわる空間的な情報を提供する。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/239

J.C. Herrera Nunez, S. Ramazzotti, F. Stagnari, and M. Pisante
A Multivariate Clustering Approach for Characterization of the Montepulciano d’Abruzzo Colline Teramane Area
pp. 239-244

[モンテプルチアーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ地域の特徴づけのための多変量クラスターアプローチ]
地理情報学を組み合わせた多変量クラスターアプローチを、イタリア・テラモの統制保証付原産地呼称コッリーネ・テラマーネ地域内の同質ゾーン(テロワール単位)を線引し、定義するために応用した。地理的情報システム(GIS)の構成は、土地能力の地理的区別に影響する主要な要素を組込むためにセットアップされた。ブドウ樹に関連した環境指標とパラメータは補間されGISに組込まれた。主成分分析に続いて、多変量クラスターアルゴリズムを、それぞれのクラスターが同質ゾーンまたはテロワール単位を表している連続的地形気候地図を得るために応用した。テロワール単位は、地形気候地図に同一地域の土地利用情報と地質地図を重ねることにより、さらに特徴づけられた。この地域分類は、さらに先の仮説試験(特に環境とブドウ樹の相互作用および新しい栽培種の適応性における)に対する有効な枠組みを提供する。さらに、このアプローチは、合理的な地区管理と土地利用計画に対する可能性のある手段を提示している。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/245

P. Lopes, J. Marques, T. Lopes, J. Lino, J. Coelho, C. Alves, I. Roseira, A. Mendes, and M. Cabral
Permeation of d5-2,4,6-Trichloroanisole via Vapor Phase through Different Closures into Wine Bottles
pp. 245-249

[様々な栓を通じての、蒸気相を経由したワインボトル内へのd5-2,4,6-トリクロロアニソールの浸透]
この研究では、重水素でラベルした2,4,6-トリクロロアニソール(d5-TCA)で汚染された環境下で、壜詰ワインモデル溶液を貯蔵した時、外来成分の浸透性に関する様々な栓の密閉性の影響を試験した。ワインモデル溶液と栓の各部(外蓋、中蓋、内蓋)について、SPME-GC-MSを使用して、放出されるd5-TCA濃度を、時間を追って評価した。24ヶ月の貯蔵期間中に、高濃度のd5-TCAは基本的に、天然で密に固まったコルクの外側部分に保持された。この実験条件下で、天然で密に固まったコルク栓は外側の汚染物質の移行に対して効果的なバリアになった。逆に、d5-TCAは合成コルク栓を浸透しワインを汚染させた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/250

N. `tajner, D. Rusjan, Z. Koroaec-Koruza, and B. Javornik
Genetic Characterization of Old Slovenian Grapevine Varieties of Vitis vinifera L. by Microsatellite Genotyping
pp. 250-255

[マイクロサテライト遺伝子型解析によるスロベニアの古くからのブドウ品種(Vitis vinifera L.)の遺伝的特徴づけ]
38のスロベニア固有品種のマイクロサテライト遺伝子型解析を、ヨーロッパのVitis資源において高い多型性が示されている11のSSRマーカーを用いて行った。それらデータと以前の研究を組み合わせて、スロベニア・プリモリエ地方で現在栽培されている品種のなかで49の独自の遺伝子型が同定された。これらの遺伝子型は、さらに、それらの遺伝的関連性を評価するために、ヨーロッパ8カ国由来の161栽培種と比較した。スロベニアブドウ樹の間の高いレベルの遺伝的多様性が明らかになり、そして幾つかの知られていなかった関連性が発見された。同一性分析は、スロベニア栽培種の中の11グループの異名、そしてスロベニア栽培種と他の国由来の栽培種の間の3つの一致を明らかにした。類似した名前をもつスロベニア栽培種の幾つかのグループは、結果として異なったSSRプロフィールであった。スロベニアで使用されている栽培種と他のヨーロッパ諸国で使用されている最もポピュラーな栽培種の間の遺伝的距離は、クロアチア栽培種と最も近く、フランス栽培種と最も遠い関係にあることを明らかにした。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/62/2/256

A. Bellincontro, D. Cozzolino, and F. Mencarelli
Application of NIR-AOTF Spectroscopy to Monitor Aleatico Grape Dehydration for Passito Wine Production
pp. 256-260(Research Note)

[パッシートワイン製造に関するAleaticoブドウの乾燥をモニターするためのNIR-AOTF分光法の応用]
Aleatico(Vitis vinifera L.)ブドウを21.3°Brixで収穫し、温度調整された小スケールのトンネル内で、20℃、45%相対湿度、1.5 m/秒の空気流で乾燥させた。収穫後ブドウの乾燥は、果実の初期重量が平均40%失われるまで実施した。乾燥中に、各々の除梗したブドウ果粒を、反射率による音響光学式波長可変フィルター(AOTF)近赤外(NIR)分光計(1100~2300 nm)を使用し、非破壊的に分析した。溶解性全固形分(TSS)と水分含量(%)は、これらのパラメーターを予想する回帰モデルを開発する為、光学的及び非光学的情報を得る目的で、同じ果実に対して測定した。様々な統計学的前処理(乗算的拡散補正であるSavitzky-Golayの一次または二次微分フィルター)の後で、最も効果的なアプローチを明確にするため、吸光スペクトルに部分的最小二乗法が適応された。交差検定(r2)で決定する係数と平均標準誤差の平方根が、それぞれ、TSSに対しては0.93と0.89°Brix、水分ロスに対しては0.92と2.16%であったという、2つの予想モデルが(TSSに対してn = 450、水分ロスに対してはn = 600)得られた。モデルのバリデーション手順は、別個のサンプルセット(TSSに対してはn = 170、水分ロスに対してはn = 200)を使用して実施し、次の結果になった。予想の定量係数(R2)と標準誤差は、それぞれ、TSSに対しては0.92と0.72°Brix、水分ロスに対しては0.9と1.89%であった。

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