American Journal of Enology and Viticulture

Volume 64, No.2 (2013)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/169

A.K. Hjelmeland, E.S. King, S.E. Ebeler, and H. Heymann
Characterizing the Chemical and Sensory Profiles of United States Cabernet Sauvignon Wines and Blends
pp. 169-179

[米国産カベルネ・ソービニヨン・ワインおよびブレンド品の化学的および官能的特徴]
カベルネ・ソービニヨン(CS)は米国で栽培されている赤ブドウで、最も評判の良い品種の一つであるが、CSワインの化学的・官能的情報は限定的である。本研究の目的は、米国のCSワインおよびブレンド品の官能インパクトが付随した揮発成分の分析による、迅速なプロファイル法を開発することである。我々は61種の揮発成分を分析できる、選択イオンモニタリング(SIM)スキャン検出が可能な自動ヘッドスペース固相抽出(HS-SPME)ガスマス(GC-MS)法を開発した。モニターされる化合物にはブドウ由来ノルイソプレノイドおよびテルペン、発酵由来のエステル、高級アルコールおよびアルデヒド、ブレタノミセス由来化合物、オーク由来化合物が含まれる。メトキシピラジン類もHS-SPME-GC-MS/MSで測定した。カリフォルニアおよびワシントン州の種々の地域で製造された、幅広いスタイルの市販CSワインおよびブレンド品24種について、開発したGC法で分析した。得られた結果は、11吊の訓練パネリストによる記述的官能評価と比較し、どの化合物が官能評価に影響するかを調べた。CSワインとブレンド品は化学組成および官能評価が異なっており、部分的には、含まれるアルコール濃度が直接、間接に評価に影響していた。本研究は、ワインに含まれる化合物と官能評価の関係を更に調べる上で、ワインの揮発成分を迅速に評価する方法をワイン業界に提供する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/180

A.G. Reynolds, G. Taylor, and C. de Savigny
Defining Niagara Terroir by Chemical and Sensory Analysis of Chardonnay Wines from Various Soil Textures and Vine Sizes
pp. 180-194

[種々の土壌テクスチャーおよびブドウ樹サイズ由来のシャルドネ・ワインの化学、官能分析によるナイヤガラ・テロワールの定義付け]
ナイヤガラ半島のシャルドネブドウ園5ヶ所について、GPSと地理的情報システム(GIS)を使用し、土壌テクスチャーを描写した。3年間、剪定枝重(ブドウ樹サイズ)と土壌テクスチャーにより、各地域の代表的なブドウ樹を分類した。ワインは5栽培場所で3年間、ブドウ樹サイズ×土壌テクスチャーの組み合わせで醸造した。マストは可溶性固形分、滴定酸度(TA)、pHを分析し、ワインはエタノール、TA、pH、総フェノールを分析した。マストとワイン組成から、ブドウ樹サイズや土壌テクスチャーに、同一場所内の相違が認められたが、一定した傾向はなかった。ワインの記述的官能評価を行った。土壌テクスチャーの影響は3ヶ所(1999)、4ヶ所(2000)、3ヶ所(2001)で明白であった。1999年の3ヶ所、2000年と2001年の2ヶ所では、ブドウ樹サイズの影響が証明された。同一場所内では、土壌テクスチャーとブドウ樹サイズの一定した影響は認められなかった。官能データの傾向を見極めるため、主成分分析を行った。1999年には、土壌テクスチャーやブドウ樹サイズに明瞭な傾向は認められなかった。しかし、場所別(Lakeshore vs Lake Plain/Escarpment)に分けた2000年ワイン、土壌テクスチャーで分けた2001年ワイン、Lakeshoreの2000年ワイン、2001年の粘土テクスチャーからのワインは、柑橘系、野菜的、土様の、収斂性のある官能評価と相関した。2000年と2001年のビンテージを比較すると、収穫年と場所の効果は明白であり、2000年ワインは柑橘系、野菜的、土様の官能表現で特徴付けられ、2001年ワインは花のような、およびメロンの官能表現と相関した。以上より、土壌テクスチャー及びブドウ樹サイズはワインの官能表現にインパクトを与えるが、栽培場所および栽培年の違いが、主要な役割を果たしていると考えられた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/195

C. M. Stockert, L. F. Bisson, D. O. Adams, and D. R. Smart
Nitrogen Status and Fermentation Dynamics for Merlot on Two Rootstocks
pp. 195-202

[2種類の台木のMerlotにおける窒素状態と発酵動態]
ブドウ果汁中の適切な酵母同化窒素(YAN)レベルは酵母細胞が辛口になるまで完全に発酵するために必須である。加えて、台木品種の遺伝的差異が根の動態に、それに続く窒素吸収、樹冠バイオマス、葉の窒素濃度、および果実成分組成に影響を与えると考えられる。2種類の台木,1103Pおよび101-14 Mgtにおいて春施肥、秋施肥あるいは無施肥の処理を行った。ブドウ樹バイオマス、葉の窒素濃度、果実成分組成、果汁アミノ態窒素レベルおよび発酵動態について調査した。1103 Paulsen (Vitis berlandieri × V. rupestris cv. 1103 P)は、大きな樹冠を形成し新梢成長を大きくする根系を持つ、一方101-14 Millardet et de Grasset (V. riparria × V. rupestris cv. 101-14 Mgt)は比較的小さい樹冠と中庸な新梢成長をもたらす根系を持つ。穂木品種Merlot (V. vinifera L. cv. Merlot clone 1) をCalifornia 州Oakvilleの実験区に椊栽の二つの台木に接ぎ木した。1103P台木のMerlotは101-14 Mgt 台木に比べYANレベルが高く発酵の完了が早かった。発酵動態の差異は台木の窒素処理間で認められ、YANレベルでは説明できなかったことは窒素代謝に関連する他の要因が北郊動態に重要な役割を持つ可能性を示している。結果はNapa Valleyにおける1103P台木Merlotでは窒素補填はほとんど必要ないが、101-14 Mgt台木では発酵遅延を避けるために窒素補填の必要性があることを示唆している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/203

O. Makhotkina, M. Herbst-Johnstone, G. Logan, W. du Toit, and P.A. Kilmartin
Influence of Sulfur Dioxide Additions at Harvest on Polyphenols, C6-Compounds, and Varietal Thiols in Sauvignon blanc
pp. 203-213

[ソービニヨン・ブラン収穫時の二酸化硫黄添加のポリフェノール、C6化合物、品種チオール香に及ぼす影響]
ソービニヨン・ブラン(SB)において、ブドウに含まれる前駆体からできる3MH (3-メルカプトヘキサノール)、および3MHから発酵中にできる3MHA (3-メルカプトヘキシル酢酸)は、トロピカルな果実アロマ化合物として重要である。ニュージーランド、マルボロの3地域で機械収穫したSBブドウを原料とした。野外でブドウおよび果汁に二酸化硫黄(SO2)を0、30、60、120、300 mg/kg添加、オークランド大へ輸送し、プレス後、750 mLボトルにて、EC1118で15̊Cにて発酵した。試験はトリプルで行った。SO2無添加および低濃度SO2添加で輸送した果汁は、より酸化しており、殆どのポリフェノール濃度も低くなっていた。発酵開始に殆ど差はなかったが、120 mg/kg添加で1日、300 mg/kg添加で約12日遅れた。酸化した果汁で発酵したワインは、C6アルコール濃度が高く、対応する酢酸エステル濃度は低かった。SBワインにて3MHと3MHAの濃度が一番高かったのは、収穫時SO2を120 mg/kg添加した試験区であった。反対に、収穫時SO2添加濃度が低い果汁からできたワインは、品種香のチオール濃度が顕著に低かった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/214

K. C. Shellie and B. A. King
Kaolin Particle Film and Water Deficit Influence Red Winegrape Color under High Solar Radiation in an Arid Climate
pp. 214-222

[カオリン粒子フィルムおよび水分欠乏は乾燥気候における高日照条件下での赤ワインブドウの着色に影響する]
カオリン粒子フィルムおよび水分欠乏がワインブドウ品種Cabernet SauvignonとMalbecブドウ樹と果粒に及ぼす主要な、そして相互作用する影響についてIdaho州南西部の温暖で半乾燥気候において3年間にわたって調査した。総アントシアニンの果粒中濃度は3年間にわたりいずれの品種でも水分上足の強度の増加とともに上昇した。しかしながら、増加は果粒新鮮重の低下を伴っていた。果粒新鮮重増加とともに同等あるいはそれ以上の総アントシアニン濃度上昇が3年間のうちの水分上足が比較的厳しくなかった2年間で粒子フィルムをブドウ樹冠に処理した場合に達成された。粒子フィルムは気孔コンダクタンスと葉温に影響を与え、樹体の水分状況と品種により反応が異なった。このことは、乾燥に対する反応は粒子フィルムの効果に影響を与えることを示唆する。この研究の気候条件下では粒子フィルムと穏やかな水分上足の組み合わせはアントシアニン濃度の最大の純増加をもたらす。粒子フィルムに対する反応において品種間に差異が観察されたことから、乾燥に対して同様に反応する品種Cabernet SauvignonおよびMalbecに対する我々の結果の応用範囲を制限する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/223

K. C. Shellie and B. A. King
Kaolin Particle Film and Water Deficit Influence Malbec Leaf and Berry Temperature, Pigments, and Photosynthesis
pp. 223-230

[カオリン粒子フィルムと水分上足はMalbecの葉および果実温度、色素と光合成に影響する]
赤色果皮のワインブドウ品種Malbec (Vitis vinifera L.)に商業的利益におけるカオリンの効果について3年間にわたり粒子フィルムの有無における異なる水分上足の強度条件下で生育したブドウ樹の葉と果実の表面温度、窒素同化レベルおよび果皮の色素構成および収量について調査した。ブドウ樹は標準潅水および潅水制限の2種類の潅水処理で、高強度日射を伴う乾燥した圃場条件で生育させた。粒子フィルムはいずれの年のブドウ果粒においても単量体アントシアニンの総濃度を、さらに3年のうち2年で収穫期の可溶性固形物に対するアントシアニンの比率を増加させた。粒子フィルムは果房の東側面と西側面の間のアントシアニン濃度の差異を改善できなかった。潅水制限区のブドウ樹では粒子フィルムは7月中旬から収穫までの間30℃を超える表面温度の積算時間(分)において、東側面果粒で低下させたが、西側面果粒および東側面の葉においては効果がなかった。粒子フィルム処理した葉は、無処理の葉に比べ、午前中の同化速度を低下させ、クロロフィルa/b比を低下させ、クロロフィル/カロチノイド比を増加させた。同化反応の低下は可視光の葉面反射量と関連しなかった。粒子フィルムは収穫物の成分組成すなわち果実熟度に影響を与えなかったことは、純一次生産力が果実の成熟には充分であったことを示している。これらの結果は葉面粒子フィルム処理が高日射を伴う温暖、乾燥条件下で潅水制限をしたMalbecにおけるアントシアニンの蓄積を促進することができることを証明した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/231

C.M.L. Joseph, L.W. Gorton, S.E. Ebeler, and L.F. Bisson
Production of Volatile Compounds by Wine Strains of Brettanomyces bruxellensis Grown in the Presence of Different Precursor Substrates
pp. 231-240

[種々の前駆物質存在下におけるブレタノミセスによる揮発物質の生成]
 合成培地にヒドロキシ桂皮酸化合物であるカフェー酸、クマール酸、フェルラ酸、あるいは芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、トリプトファン、チロシンを添加し、ワインから分離したブレタノミセス(Brettanomyces bruxellensis) 5株により生成される揮発性代謝化合物を調べた。本研究の目的は基質と最終産物の関係を明らかにすることと、揮発性化合物生成の株間相違を明らかにすることである。クマール酸とフェルラ酸の存在下では、全ての菌株は同様な代謝物を生成し、主として、4-エチルフェノール(4EP)および4-エチルグアイアコール(4-EG)が生成された。他の基質では、菌株によりインパクトの高いワインアロマが検出された。ブレタノミセスの合成培地での発酵では、酸素濃度を変え、クマール酸の有無で増殖パラメーターへの影響も調べた。4EPの最高濃度は好気的発酵で得られた。クマール酸は酸素25%飽和条件にて、ブレタノミセス増殖に顕著な効果を示した。フルエアレーションでは、クマール酸添加は増殖および4EP生成に影響しなかった。クマール酸存在下では、著量の酢酸生成も観察され、4EP生成は酸化コファクターであるNAD+のリサイクルを助けている可能性がある。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/241

K. P. Fort, K. M. Lowe, W. A. Thomas, and M. A. Walker
Cultural Conditions and Propagule Type Influence Relative Chloride Exclusion in Grapevine Rootstocks
pp. 241-250

[栽培条件および繁殖体の種類はブドウ台木の相対的塩素排除能に影響する]
ブドウおよび他の作物における耐塩性育種は数十年間の研究にもかかわらず進展が遅かった。ブドウにおけるこの問題にかかわる要素の一つは組織における塩素集積により耐塩性を評価する場合に、圃場での結果と温室での結果に相関関係がほとんどあるいは全く無いことがいくつかの研究で観察されていることである。台木育種で使用する迅速な塩素排除能検定法を開発するために、多数の方法を試験した。特定の遺伝子型において、よく確立した圃場条件での成績は、鉢椊え栽培の場合には大きくなったり、同等であったり、逆になったりする結果が得られた。高温溶解粉末とした粘土 (fritted clay) 培地と緑枝挿しを用いた検定方法は試験ブドウ園における長期間の調査から報告されている値と同様の試験した遺伝子型間における順位と相対的塩素吸収が得られた。14日間の高濃度塩類遭遇のみを用いるこの検定法は高価でなく、スペースと維持管理は比較的小さく、引き続いての実験で信頼できるデータを得るために継続されている。結果は、鉢椊えで検定した場合、接木されていないブドウ樹において示された塩素排除能にはかなりの可塑性がある可能性を証明する。このことは塩素排除能が既知の遺伝子型においてそれらの圃場での成績を正確に較正する場合のシステム設計の重要性を強調する。この研究は、塩排除能を改善する台木育種プログラムに用いられるのにほぼ十分なこれらの条件を再現する経験に由来する検定を記述している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/251

W.R. Place and L.F. Bisson
Identification of HXT7 as a Suppressor of the snf3 Growth Defect in Wine and Wild-type Strains of Saccharomyces cerevisiae
pp. 251-257

[ワインと野生型Saccharomyces cerevisiae株におけるsnf3増殖上良のサプレッサーとしてのHXT7の同定]
S. cerevisiaeを背景とした実験室株YPH500は、SNF3オープンリーディングフレームが破壊された結果、低濃度のブドウ糖濃度で生育できない。反対に、ワイン酵母や他の野生型実験室酵母由来のハプロイドにおいて、SNF3の欠搊は識別可能な表現型とならない。相補性検定および四分子分析にて、ワイン酵母のsnf3サプレッサーは単一遺伝子座にコードされた優勢遺伝子であることが証明され、優勢サプレッサーとして知られるRGT2-1のように、対立遺伝子ではない。HXT7はYPH500のsnf3Δ表現型を抑制できる新規優勢サプレッサーとして、二つの低コピー数遺伝子ライブラリーから独立に発見された。クローン化されたHXT7と1 kbのプロモーターは、この抑制に充分であった。YPH背景株から得たHXT7遺伝子と、原型実験室株S288Cの配列比較より、YPH500由来株はHXT6プロモーターとHXT7遺伝子(HXT6P/7)のキメラを持つことが証明された。S288CのHXT7を欠失すると、snf3表現型が発現され、一方、HXT6の欠失はsnf3 HXT7株の増殖を僅かに消失しただけであった。HXT7と対照的に、セントロメアをベースとしたプラスミドにクローンされたHXT6P/7の発現は、snf3抑制に上十分であった。HXT7プロモーターの下流に挿入したHXT6は、snf3抑増殖上良を抑制した。ワインや野生株S. cerevisiaeにおけるsnf3の抑制は、HXT7およびHXT6遺伝子コード配列の相違からというより、HXT7タンパクの表現パターンから評価された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/258

F. Patrignani, M. Ndagijimana, P. Vernocchi, A. Gianotti, C. Riponi, F. Gardini, and R. Lanciotti i
High-Pressure Homogenization to Modify Yeast Performance for Sparkling Wine Production According to Traditional Methods
pp. 258-267

[伝統的手法による発砲ワイン生産用の酵母性能を修飾する高圧均質化]
 種々の酵母について、使用前あるいは発泡ワイン用のティラージュ溶液調製で使用前に、90 MPa圧の高圧均質化(HPH)を行った。酵母の生存率、発酵、二次発酵中の死滅動力学および熟成に及ぼすHPHの影響を調べた。スターターとして、Saccharomyces bayanus L951、S. cerevisiae ML962および市販酵母S. bayanus Lalvin CH14、S. bayanus IOC 18-2007、S. bayanus Lalvin EC1118、S. bayanus IT 1818を使用した。HPH処理および無処理の酵母により最終的に得られた発泡ワインの組成特徴と揮発成分プロファイルを評価した。HPH処理に対する感受性は酵母依存性であり、ML692を除き、HPH処理、無処理に関わらず、二次発酵40日後、全てのワインは少なくとも0.60795 Mpaに達した。40日後のサンプルの走査型電顕像から、全ての酵母はHPH処理により自己消化が加速した。SPME-GC-MSおよび電子嗅覚データは、HPH処理による有意の変化を示した。部分最小二乗解析により、L951株を除き、全てのHPH処理酵母による発泡ワインは、対照ワインと有意に異なった。HPH処理は発泡ワインのスターター・ティラージュ菌体の自己消化を修飾する汎用的方法と思われる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/268

E. González-Royo, A. Urtasun, M. Gil, N. Kontoudakis, M. Esteruelas, F. Fort, Joan M. Canals, and F. Zamora
Effect of Yeast Strain and Supplementation with Inactive Yeast during Alcoholic Fermentation on Wine Polysaccharides
pp. 268-273

[アルコール発酵中のワイン多糖類に関する上活性酵母添加および酵母株の影響]
多糖類はワイン組成に何か良い効果を及ぼすと思われる。そこで、ワイン中の多糖類を増加するため、多糖類遊離能の高い酵母の使用および多糖を遊離しやすくする前処理を行った上活性酵母の添加を検討した。本研究の目的は、赤ワインの多糖類を増加するため、これらの方法が有用かどうか調べることである。試験の結果、両方法はワインに高濃度の多糖類を付与することが判明した。多糖類高遊離酵母を使用したワインは、多糖類濃度が対照に比べ、32%多くなった。上活性酵母の添加も多糖類が有意に11~20%増加した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/274

J.E. Jones, G. Lee, and S.J. Wilson
A Statistical Model to Estimate Bud Fruitfulness in Pinot noir
pp. 274-279(Research Notes)

[ピノ・ノアール種の結実性を評価するための統計モデル]
冷涼な環境におけるピノ・ノアール種の結実性を評価するための統計モデルを開発した。本研究では、光学顕微鏡を用いて冬季休眠期に3つの異なる部位でピノ・ノアール種の結実性を比較し、萌芽3週間後に正確な結実性を確認した。花序原基の計測数と萌芽後の花序数間に大きさ違いが認められた。顕微鏡下で観察したとき、結実は最初の2節を除いて梢に沿って分布していた。対して、萌芽後に観察した正確な結実において、結実性と節の位置に相違と相関が認められた。梢中のデンプン量は結実数の重要な推測変数であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/280

A. Cabello-Pasini, V. Macías-Carranza, A. Siqueiros-Valencia, and M.Á. Huerta-Díaz
Concentrations of Calcium, Magnesium, Potassium, and Sodium in Wines from Mexico
pp. 280-284(Research Notes)

[メキシコ産ワインのカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム濃度]
高濃度のカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)は、しばしばワインにソルティ(塩味)・キャラクターを与え、ネガティブな官能評価となる。メキシコ産ワインはソルティと記述されてきたが、その特徴の原因は上明である。本研究の目的はメキシコ産ワインのCa、Mg、K、Naを分析し、他国のワインと比較することである。全般的に、メキシコ産ワインの塩類濃度は高く、特に、赤および白ワインのNa濃度は他のワイン生産国のワインと比較し、2~3倊高かった。従って、メキシコ産のワインでソルティと評されるワインの部分的原因は塩類の高濃度であり、特にNaの高濃度の結果と思われる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/285

G. Zdunić, J.E. Preece, G.S. Dangl, A. Koehmstedt, A. Mucalo, E. Maletić, and I. Pejić:
Genetic Characterization of Grapevine Cultivars Collected throughout the Dalmatian Region
pp. 285-290(Research Notes)

[ウクライナ・ダルマティア地方で収集したブドウ品種の遺伝的特性]
ウクライナ・ダルマティア地方から収集したブドウ品種(Vitis vinifera)76アクセッションを調べるために11のSSR遺伝子座を使用した。椊物材料はダルマティア地方からくまなく収集し、クロアチア・アドリアのダルマティア地方のブドウ遺伝資源コレクションを確立するために使用した。76アクセッションは63の遺伝子型を有しており、35の遺伝子型はこの論文で初めて確認されたものであった。ダルマティア地方の品種内には12の別吊が存在しており、11品種は既に公表された遺伝子型で主に隣国からの品種と同一であった。これらの結果は隣国間でブドウ品種の交換が歴史的に行われていたことを示唆した。よく似た吊前をもったいくつかの品種は異なるSSR多型を示し、それらは異物同吊であった。遺伝距離解析によって5つのグループに分類され、クロアチアにはいくつかの異なる遺伝子プールが存在することを確認した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/291

F.M. Dewey, C.C. Steel, and S.J. Gurr
Lateral-Flow Devices to Rapidly Determine Levels of Stable Botrytis Antigens in Table and Dessert Wines
pp. 291-295(Technical Briefs)

[テーブルおよびデザート・ワインの安定ボトリティス抗原の迅速定量用側方流動装置]
テーブルおよびデザート・ワインの高度安定ボトリティス抗原検出能を比較するため、2種の市販ボトリティス側方流動装置(免疫クロマト装置)を比較した。テーブルワインは1:40に、デザート・ワインは1:500にTween 20 (0.05%, v/v)を添加したリン酸緩衝食塩水で希釈した。両タイプの装置による結果は、比肩できるもので、再現性も良好であった。ボトリティス側方流動装置は、ワイン醸造者にテーブルおよびデザート・ワインの官能評価に関係する、ボトリティス抗原濃度を測定する有用な方法を提供することが示された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/64/2/296

G. Pietersen, N. Spreeth, T. Oosthuizen, A. van Rensburg, M. van Rensburg, D. Lottering, N. Rossouw, and D. Tooth
Control of Grapevine Leafroll Disease Spread at a Commercial Wine Estate in South Africa: A Case Study
pp. 296-305(Technical Briefs)

[症例研究:南アフリカのブドウ畑に拡がるリーフロール病の制御]
リーフロール病は世界中でブドウ樹に多大な被害をもたらしている病気である。ブドウ葉巻随伴ウィルス3(GLRaV-3)は南アフリカのリーフロール病ともっとも関係の深いウィルスであり、ウィルスの除去戦略にも関わらず、商業用ブドウ畑にまで急速に拡大している。2002年からリーフロール病を制御するための総合防除戦略を商業用ブドウ畑で行っており、商業レベルでの制御が可能であることを示すためのモデルとして、ワインメーカーにおいて症例研究を実施した。総合防除戦略として、ウィルスフリーのブドウ樹の椊栽、除草剤の使用、ウィルス感染したブドウ樹の間引き、休閑期における宿主椊物の除去、殺虫剤の使用、衛生管理、ウィルス媒介コナカイガラムシの拡がりを栽培技術で最小にすることも実施した。リーフロール病は2002年の100%罹病率(41.26ヘクタールに椊栽された、主に1989年から1992年に椊栽された11万1431本のブドウ樹)から2012年の0.027%(77.84ヘクタールに椊栽された20万9626本のブドウ樹のうち58本)まで減少した。この減少は、リーフロール病に完全に罹病した畑を取り換え、また、新しく取り換えた畑内に発生した3,105本の罹病樹を抜き取ことによって達成した。この制御方法はリーフロール病の拡大を削減することに成功し、結果として個々のブドウ畑の大半からリーフロール病を除去した。リーフロール病の制御を受けておらず、リーフロール病が拡大している南アフリカの一般的な現場に対して、リーフロール病を根絶できると思われるブドウ畑に低レベルでリールロール病が発症しているだけであった。

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