American Journal of Enology and Viticulture

Volume 68, No.2 (2017)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/151

D. Ledderhof, A.G. Reynolds, R. Brown, M. Jollineau,E. Kotsaki:
Spatial Variability in Ontario Pinot noir Vineyards: Use of Geomatics and Implications for Precision Viticulture.
pp.151-168

[オンタリオ州のピノ・ノワール栽培園における空間的変動性:地理情報学の利用と高精度のブドウ栽培の意味]
 2008年および2009年,オンタリオ州の4ヶ所のピノ・ノワール栽培園においてブドウ樹の水分状態,土壌水分およびブドウ樹の大きさにおける相関関係を観察した.季節平均の葉の水ポテンシャルと剪定量(ブドウ樹の大きさ)を示す地図を作るため,地理情報システムを使用し,水分状態によりブドウ園を区画分けした.葉の水ポテンシャルの区画はk平均法にて確認した.いずれの年も平均よりも涼しく且つ湿度が高く,水分状態を決定する葉の水ポテンシャルの範囲は狭かった(全ブドウ園を通して-0.59から-0.95 MPa).収穫量,ブドウ樹の大きさ,作物荷重,アントシアニン量およびフェノール量は最も高い変動係数を示した.より高い収穫量,果粒重,滴定酸度,アントシアニン量および色調は低い水分状態と時々相関していた.全てのブドウ園において,ブドウ樹の大きさによる区画間には果実成分の差は認められなかった.より高い収穫量,房数および果粒重は大きいブドウ樹の区画としばしば相関した.主成分分析はブドウ園を分けることはできたが,葉の水ポテンシャルあるいはブドウ樹の大きさに基づいたクラスターは形成できなかった.ブドウ園と果実成分の変数間に顕著な相関関係が認められ,空間傾向は多くの変数と定性的に相関した.逆相関関係を示唆する有意なr2は2008年の葉の水ポテンシャルに対するアントシアニン量,色調強度およびフェノール量,ブドウ樹の大きさに対するアントシアニン量で認められ,2009年には土壌水分に対するアントシアニン量および色調強度で同様な逆相間関係を示す有意なr 2 が観察された.本研究は,地理情報学の技術を使用しブドウ園の変動性を理解することに将来性はあるが,北米東部のような不規則な天候では変動性の推進力を理解する必要が あることを示した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/169

M. Marciniak, A.G. Reynolds, R. Brown, M. Jollineau, E. Kotsaki:
Applications of Geospatial Technologies to Understand Terroir Effects in an Ontario Riesling Vineyard.
pp.169-187

[オンタリオ州のリースリングにおいてテロワールの影響を理解するための地理空間技術の適用]
 本研究の目的は,収量構成要素と果実成分の変動制が土性および土壌組成,ブドウ樹の水分状態(葉の水ポテンシャル)に関係し依存しているかを調べること,葉の水ポテンシャルの分布様式,ブドウ樹の大きさ及び他のフィールド変数が時間的に安定しているかを評価することであった.オンタリオ州ビームスビルにあるThirty Bench Winemakersのリースリング園(10 ha)でデータを収集した.ブドウ園は全地球測位システム(GPS)を用いて線引きし,6つの区画内に519樹を位置合わせした.2006年から2009年まで隔週で土壌水分量(すべてのブドウ樹)および葉の水ポテンシャル(134樹の小集団)を測定した.134樹の小集団では土性および土壌組成のデータも収集した.収量構成要素(ブドウ樹あたりの収穫量および房数)および果実サンプルは各ブドウ樹から採取し,モノテルペン分析の為,小集団からは追加で果実サンプルを採取した.ブドウ樹の大きさは剪定重により決定した.果実サンプルからBrix,pHおよび滴定酸度を測定し,追加で採取した果実サンプルは遊離および潜在的なモノテルペンの分析に使用した.地理情報システム(GIS)を使って全ての変数を地図に書き写し,時間的安定性および相関的な空間的相関関係の立証を可能にした.極端に気象条件が異なっているにも関わらず,ブドウ園の至る所で土壌水分量および葉の水ポテンシャルは時間的に安定していた.土壌水分量,葉の水ポテンシャルおよびブドウ樹の大きさの減少に伴い,BrixおよびpHの増加,滴定酸度の減少(即ち,果実成熟の亢進)が認められた.土壌水分量が高い所では,葉の水ポテンシャルの減少と果実成熟の遅れが認められた.最も砂および土の有機物が多い区画ではブドウ樹の大きさが大きくなり,果実のモノテルペン量が増える傾向にあった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/188

T.A. Oswald, C.G. Edwards:
Interactions between Storage Temperature and Ethanol that Affect Growth of Brettanomyces bruxellensis in Merlot Wine.
pp. 188-194

[メルローワインにおけるBrettanomyces bruxellensisの増殖に影響する温度とエタノールの関係]
 赤ワインにおけるBrettanomyces bruxellensis汚染の制御方法として,温度とエタノールの相乗作用を調べた.市販メルローワインを使用し,保存温度(12, 15, 18, or 21°C)とエタノール濃度[12, 13,14, 15, or 16%(v/v)]を変数として,4×5の組み合わせ試験を行った.2種のB. bruxellensis株(I1a andF3)をワシントン・ワインから単離し,揮発酸,4-エチルフェノール(4-EP)および4-エチルグアイアコール(4-EG)の定量前に,100日間培養,監視した.両株はエタノール濃度12から15%(v/v)まで増殖し,ラグフェーズの長さは温度の減少と共に増大した.両株は15%(v/v)エタノールを含むワインを除き,種々の温度×エタノール条件にて同様の増殖パターンを示した.このエタノール濃度では,18および21℃のより高い温度で,I1aよりF3は増殖が少なく,揮発酸,4-EPおよび4-EG濃度も低かった.実際,F3は21°C,エタノール15%より,18°Cで良く増殖した.両株の増殖能はエタノール16%(v/v)を含むワインでは急速に低下した.B.bruxellensis菌数が> 10 6 cfu/mLを含むワインは,4-EPおよび4-EG濃度が各々,1290及び155 μg/Lを超えるので,両物質の閾値を超える.温度とエタノールの有意の関係から,この酵母の汚染を防ぐには,エタノール> 13%(v/v)を含むワインは,保存温度を≦12°Cにすべきである.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/195

J. Cragin, M.Serpe, M. Keller, K. Shellie:
Dormancy and Cold Hardiness Transitions in Winegrape Cultivars Chardonnay and Cabernet Sauvignon.  
pp. 195-202

[シャルドネおよびカベルネ・ソーヴィニヨンの休眠と耐寒性の変遷]
 寒害は高緯度で栽培されるワイン用ブドウ(Vitis vinifera L.)の経済的損失の主な原因である.本研究の目的は,異なる耐凍性をもつ2品種(シャルドネおよびカベルネ・ソーヴィニヨン)を用いて休眠と耐寒性の変遷における相関関係を調査することであった.耐寒性は示差熱分析により計測し,休眠のステージと深さを計測するために催芽法を使用した.連続した2シーズンの冬にアイダホ州パルマで栽培されたブドウ樹から定期的に梢を採取した.いずれの品種も,日長が12.5時間までとなる9月に自発休眠に突入した.いずれの品種の寒冷順応も自発休眠中の10月に起こり,12月には最大の耐寒性まで着実に増強した.自発休眠からの解除に必要な温度はカベルネ・ソーヴィニヨン(3℃)よりもシャルドネ(-3℃)で低く,いずれの年もシャルドネはカベルネ・ソーヴィニヨンよりも早く他発休眠に移行した.10月から12月まで,シャルドネの芽はカベルネ・ソーヴィニヨンの芽よりも耐寒性が高かった.好適な条件下における休眠打破までの日数は自発休眠間に着実に増加し,他発休眠間に減少した.他発休眠間の脱順化に対する耐性は,芽の耐寒性のレベルと他発休眠期間の長さに逆比例で相関したことから,耐寒性を与えるメカニズムは生育の再開に必要なメカニズムと相互に作用していることが示唆された.本研究成果は,休眠と耐寒性の変遷に及ぼす秋の気候の影響が,後に起こる寒害に対する傷つきやすさに影響しており,世界的な気候変動下において重要な意味を持っていることを示している.休眠と耐寒性の変遷における品種間の差は,品種および栽培地の選択を改善するために役立つであろう.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/203

J.P. Londo, A.P. Kovaleski:
Characterization of Wild North American Grapevine Cold Hardiness Using Differential Thermal Analysis.  
pp. 203-212

[異なる温度分析法を用いた北米系野生ブドウの耐寒性の特徴]
 過冷却を使った休眠芽の致死温度を測定することにより,6つの北米系野生ブドウ,1つのアジア系野生ブドウ,6つの交雑ブドウを含め,33の異なる遺伝子型をもつブドウの耐寒性を評価した.耐寒性の相対レベルおよび冬のパターンが異なることに対する各ブドウの反応性を特徴づけるために,3シーズンの冬にわたり実験を行った.冬の条件において最も異なった点は,休眠期間中において野生ブドウは暖温および低温のいずれにも反応する能力が高いことであった.結果として,北米に分布する野生ブドウは南部に分布する同一種よりも耐寒性と温度の振れに対する反応性が強いことが示された.3シーズンの冬にわたった過冷却の実験結果から導き出された統計モデルは,それぞれのブドウ種は温度に対する反応性において,明らかに異なる先天的な能力持っていることを示した.これらの結果は冬の温度変動が増加すると思われる地域での将来的な育種に重要となるであろう.加えて,これらの結果は将来的なブドウ樹の改善のため,研究および計画されると思われる,温度反応性に係わる遺伝的な決定要因の可能性を示している.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/213

D.C. Orel, C.L. Reid, M. Fuchs, T.J. Burr:
Identifying Environmental Sources of Agrobacterium vitis in Vineyards and Wild Grapevines.
pp. 213-217

[ブドウ園および野生ブドウ樹におけるAgrobacterium vitisの環境由来発生源の同定]
 Agrobacterium vitis はブドウ根頭がんしゅ病の病原菌であり,ブドウ樹内で生存し,種苗に拡がることが知られている.本研究では,この細菌を商業用のブドウ園から採取した休眠芽中や葉面上で検出できることを示した.磁気捕獲ハイブリダイゼーション(MCH)とリアルタイムPCRを用いた高感度且つ高選択な手法を用いて,ブドウ園から採取した休眠芽の90%,および葉の40%以上からA. vitisを検出した.最も高い検出率は根頭がんしゅ病が大発生したブドウ園から採取したサンプルで認められた.A. vitisはニューヨークで採取した野生ブドウ樹(Vitis riparia)の22%で,カリフォルニアで採取した,V. californicaを含む野生化したブドウ樹の25%で検出された.これらのいくつかは商業用のブドウ園から2 km以上離れていたことから,野生ブドウはA. vitisの重要な接種源であることが示された.環境から腫瘍原性A. vitisを検出するために使用したMCHとリアルタイムPCRの特異性は,本法がアメリカの各地から採取された69の非腫瘍原性A. vitis株からvirD2 遺伝子を増幅しなかった事実からも証明された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/218

S. Riaz, K.T. Lund, J. Granett, M.A. Walker:  
Population Diversity of Grape Phylloxera in California and Evidence for Sexual Reproduction.
pp. 218-227

[カリフォルニアにおけるフィロキセラの集団多様性と有性生殖の証拠]
 最近まで葉面上のフィロキセラの姿はカリフォルニアでは非常に稀であり,線虫は抵抗性台木では認められなかった.葉面上のフィロキセラはヨーロー郡およびソラノ郡の台木の苗木場の母樹で現在広く広がっている.抵抗性台木における線虫も頻繁に見かけるようになった.これらの新しいタイプと思われるフィロキセラ間の遺伝的相関関係を調べるために,2009年から2011年にかけてカリフォルニア全域からフィロキセラを採集した.食葉性のフィロキセラ株は,カリフォルニア州ウィンターのNational Clonal Germplasm Repository,カリフォルニア大学デービス校(UCD)のブドウ園およびヨーロー郡およびソラノ郡の6箇所の台木の苗木場の台木の母樹から採集された.食根性のフィロキセラ株として,2006年と2007年にナパ郡のUCDオークビル研究所のブドウ園から採集された株を供試した.食根性のフィロキセラ株はナパ郡およびソノマ郡の商業用ブドウ園およびUCDの圃場でも採集された.すべての株を実験に供試し,単純反復配列(SSR)マーカーを使ってそれらの遺伝子型を決定した後,集団の遺伝構造を解析した.結果として,カリフォルニアのフィロキセラ内に遺伝的に明らかに異なる4つの集団を同定し,Davis,Foliar,Napa1およびNapa2と名付けた.Davis,Napa1およびNapa2は食根性のフィロキセラで構成されていた.オークビル研究所からの2006年および2007年の株内に同一のDNAフィンガープリント型をもつ多座の遺伝子型を検出した.より広い遺伝子多様性は,Napa1とNapa2間の有性生殖の証拠とともに,Davis,Napa1およびNapa2で認められた.食葉性の集団は,2009年までは検出されなかった多座の遺伝子型をもつ食葉性の株でのみ構成されていた.これより,無性生殖が主要な生殖様式であることが示唆された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/228

M.G. Stivala, M.B. Villecco, D. Enriz, P.A. Fernandez:
Effect of Phenolic Compounds on Viability of Wine Spoilage Lactic Acid Bacteria. A Structure-Activity Relationship Study.
pp. 228-233

[ワイン汚染乳酸菌の生存に及ぼすフェノール化合物の影響:構造-活性相関研究]
 ヒドロキシ安息香酸,ヒドロキシ桂皮酸あるいはフラバノールのようなフェノール化合物(PC)の,アルゼンチン赤ワインから分離したLactobacillus hilgardii及びPediococcus pentosaceus,の増殖に対する効果を,ワイン様の合成培地において初めて調べた.L. hilgardii 6F,L. hilgardii X 1 BおよびP. pentosaceus 12pの増殖を最も阻害したのは,400 mgのトランス-コーヒー酸あるいはパラ・トランス-クマル酸および96時間反応であった.P.pentosaceusはPCに最も感受性が高かった.PCの抗細菌,構造活性研究から,トランス-コーヒー酸とパラ・トランス-クマル酸はカテコールの水酸基とカルボキシル基の距離が8 Aで同様の電子配位であることが判明した.これらPC分子には汚染ワイン乳酸菌に対し抗細菌活性を示す,最小官能基群相対立体配置(ファーマコフォア・パターン)の存在することが示された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/234

M. Bubola, P. Sivilotti, D. Janjanin, S. Poni:
Early Leaf Removal has a Larger Effect than Cluster Thinning on Grape Phenolic Composition in cv. Teran.
pp. 234-242(Research Articles)

[早期除葉は品種テランの果実中のフェノール化合物組成に摘房よりも大きく影響する]
 本研究は,クロアチアのイストリア地方で栽培されたVitis vinifera品種テランの栄養成長,収量構成要素および果実成分に及ぼす早期除葉(ELR)と摘房(CT)の影響を評価することを目的とした.2012年および2013年に無処理区と処理区を比較した.ELRは開花前に基部から6枚の葉を取り除き,CTはヴェレーゾンの開始期に35%の房を取り除いた.いずれの処理も無処理に比べブドウ樹あたりの収量は少なくなり(ELRで22%,CTで37%の減少),収穫時のBrix値は大きくなった(ELRで1.3,CTで1.0の増加).総フェノール含量は無処理に比べELRで19%,CTで6%増加した.一方,アントシアニン含量はELRだけ無処理に比べ20%増加した.CTと比較し収量が多く,収穫量に対する葉面積比がより少ないのに関わらず,ELRはより多くのアントシアニン含量と総フェノール含量を達成できたことから,高品質のテラン果実生産においてELRはCTよりも適していることが示唆された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/243

Y. Saltman, T.E. Johnson, K.L. Wilkinson, R. Ristic, L.M. Norris, S.E.P. Bastian:
Natural Flavor Additives Influence the Sensory Perception and Consumer Liking of Australian Chardonnay and Shiraz Wines.
pp. 243-251

[天然香料添加の豪州シャルドネおよびシラーズワインの官能知覚と嗜好への影響]
 ワイン製造への添加物使用は厳密に規制されており,現在,市販ワイン製造に香料の添加は法的に認められていない:ワインに添加すると,そのワインは「ワイン生産物」となる.しかし,豪州のワイン消費者は,かつてワインへの香料添加を容認していた.消費者は現在のワイン添加物(例えば酸,タンニン,オークチップ)より,天然香料に対し受容性が高いと考えられる.本研究では,ワインアロマを増強する香料の可能性,および香り付けワインに対する消費者の嗜好調査を目的とした.4種の廉価版ワイン(シャルドネ2種,シラーズ2種)に天然香料を添加し,アロマとフレーバーを増強したワイン(フレーバードワイン,FW)を調製した記述的官能検査(DA)を行い,対照とFWの官能プロファイルを調べた.全体的に,フレーバーの添加はワインのキーとなる属性(例:柑橘アロマ,ハチミツフレーバー)を上昇させ,望まない特性(例:青臭,土の臭い)を減少させた.DAの後,消費者テスト(n = 218)により対照とFWの嗜好調査を行った.個々の嗜好スコアにより,3嗜好クラスターが識別された.シャルドネでは,クラスター1(C1)はパッションフルーツ香であり,C2は樽香,核果およびハチミツ香,C3はバター香,ハチミツ香そして果物とフェノリックな後味であった.シラーズではC1はチョコレート香,赤い果物,お菓子香であり,C2は樽香,赤いベリーそしてグリーンアロマ,C3はオークの香味,赤い果実そして菓子アロマであった.以上より,香料添加はワインの官能特徴を増強し,消費者の中にはワインとして受容する(嗜好を示す)ものも認められた.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/252

G. Zdunic, E. Maul, K. Hancevic, M. Leko, L. Butorac, A. Mucalo, T. Radic S. Simon, I. B.-Leto, M.Z. Mihaljevic, E. Maletic:  
Genetic Diversity of Wild Grapevine [Vitis vinifera L. subsp. sylvestris(Gmel.)Hegi] in the Eastern Adriatic Region.
pp. 252-257(Research Notes)

[東部アドリア地域の野生ブドウ[Vitis vinifera L.subsp. sylvestris(Gmel.)Hegi]の遺伝的多様性]
 クロアチアおよびボスニア・ヘルツェゴビナを含む東部アドリア地域の野生ブドウ[Vitis viniferaL. subsp. sylvestris(Gmel.)Hegi]に関し,遺伝的多様性は報告されていない.野生ブドウの自然個体群をそれらの自然生息地で同定し,それらの遺伝的多様性を調べ,ヨーロッパ品種と比較した.53の野生ブドウ,32の多様なクロアチアおよび西部ヨーロッパ品種および広く使用される7の台木品種を含む92の遺伝子型を21の核マイクロサテライト座で決定した.239の対立遺伝子が検出され,1遺伝子座につき平均11.4の対立遺伝子を持っており,高いヘテロ接合性(観察されたヘテロ接合性は0.461から0.897の範囲で,予想されるヘテロ接合性は0.394から0.837の範囲)を示した.野生ブドウの遺伝的多様性は品種で確認されたものより僅かに低かった.距離およびモデルに基づくクラスター分析は3つの主要グループを識別し,野生種,栽培品種および台木間で明瞭に分離された.本研究は,クロアチアおよびボスニア・ヘルツェゴビナに局在する野生ブドウ個体群の遺伝的多様性に関する知見に多大に貢献し,それらの保存および更なる特性解明のために必要な情報を与えるだろう.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/68/2/258

M. Crespan, P. Storchi, and D. Migliaro:
Grapevine Cultivar Mantonico bianco is the Second Parent of the Scicilian Catarratto.
pp. 258-262

[ブドウ品種マントニコ・ビアンコはシチリア原産カタラットの第2の親である]
 サンジョベーゼとガルガネガは古くからある高品質なワイン用イタリアブドウとして知られ,イタリア中部および南部の様々な品種の親であると考えられている.これまで,マイクロサテライト(SSR)マーカーの解析によりガルガネガは,シチリア原産の歴史的ならびに経済的に最も重要な品種「カタラット」の親であることが確認されている.古代ギリシャを起源とする品種と考えられている「マントニコ・ビアンコ」は非常にマイナーで,最近イタリアブドウ目録に記載された品種である.マントニコ・ビアンコは,サンジョベーゼをもう一方の親とする,ガリオッポなどいくつかのカラブリアやシチリア品種の親であると見なされている.これらの品種を含むイタリア中南部採集のCREA-VIT(イタリアブドウ栽培研究センター)保有の20品種と,近年採集した5つの遺伝資源を用い,13種のSSRマーカーで品種同定を行った.その結果,これらは6つの遺伝子型に集約され,マントニコ・ビアンコには,そのシノニムが様々な地域に存在することが明らかとなった.マントニコ・ビアンコとマントニコーネのSSRプロフィールは先行研究に一致した.「カタラット」の親を鑑定するため47種のSSRマーカーを用いて解析した結果,カタラットは,親と推定されるマントニコ・ビアンコおよびガルガネガと遺伝子座当たり一つの対立遺伝子を共有した.カラブリアで白ワイン用として広く利用されているブドウ品種のひとつであるカラブリア原産のグアルダバッレは,遺伝子座当たり一つの対立遺伝子をマントニコ・ビアンコと共有した.Cervusプログラムによる検定により,対立遺伝子の不一致はなく,高いロッドスコアを示したことから,両者は第一度近親関係にあることが示唆された.

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