American Journal of Enology and Viticulture
Volume 59 No.1 (2008)
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/1
J. M. Cortell, H. K. Sivertsen, J. A. Kennedy, and H. Heymann: Influence of Vine Vigor on Pinot noir Fruit Composition, Wine Chemical Analysis, and Wine Sensory Attributes. pp. 1-10.
[ピノノワールの果実成分、ワインの化学分析、ワインの官能特性に及ぼすブドウ樹の樹勢の影響]
ブドウ樹(Vitis vinifera)の樹勢の変動と、果実の組成、果実の化学分析、ワインの化学分析、官能特性の間の相関を調査した。検討は、民間のヴィンヤードで行い、同じクローン、同じ台木、同じ樹齢、同じヴィンヤード管理法で行った。2003年に、研究用ワインを製造するため、2箇所のヴィンヤード敷地内の樹勢区域を設定する為、ブドウ樹の樹勢パラメーターを使用した。醸造法は同じである。記述式官能分析と部分最小二乗法(PLS)を2年物のワインに対して施した。ワインとモデル抽出物をHPLCで分析した。有意差のある官能特性は、土臭、化学臭、加熱臭、甘味、酸味、苦味と収斂味であった。収斂味は、ワインを区別するための最も重要な特性であった。弱い樹勢のワインは、強い樹勢のワインより非常に強い収斂味を持った。正相関した変数は、果実当たりの種子の数、果実の総タンニン量(mg/kg)と果皮タンニン(mg/kg)であり、一方、種子当たりの総フラバン-3-オールモノマー量、果実当たりの総フラバン-3-オールモノマー量、果実の酸度、果実重量は、官能特性と負に相関した。興味深いことに、種子のタンニンはモデルにおいて重要な変数ではなかった。果実の総タンニン量とワインの収斂味には強い相関があり、種子より果皮由来のタンニンに相関した。測定した収斂味と予想された収斂味の間に強い相関があった。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/11
B. W. Zoecklein, T. K. Wolf, L. Pelanne, M. K. Miller, and S. S. Birkenmaier: Effect of Vertical Shoot-Positioned, Smart-Dyson, and Geneva Double-Curtain Training Systems on Viognier Grape and Wine Composition. pp. 11-21.
[ヴィオニエ・ブドウとワイン組成に対する、垣根式、スマート・ダイソン式、ジェネバ・ダブルカーテン式整枝法の影響]
バージニア州北部で生育するヴィオニエ・ブドウとワインを、整枝法を関数として評価した。処理法には、垣根法(VSP)、スマート‐ダイソン法(SD)、ジェネバ・ダブルカーテン法(GDC)が含まれ、全処理法のブドウ樹は、畝間を3.0 m、樹間を2.4 mとした。GDC法は一般的に、房数と収穫量が増えることに加えて、果実ゾーンの太陽光遮断と果実の暴露が増えるが、一方、SDやVSP法と比較して、コルドン1 m当たりの剪定重量が減少した。収穫量調整は6シーズン中の開花期とベレイゾン期の間に行った。結果として平均収量は10.5 kg/ブドウ樹(GDC)、9.9 kg/ブドウ樹(SD)、6.0 kg/ブドウ樹(VSP)であり、SD樹冠下方は、それと対応するSD樹冠上方より30~40%少ない収穫量であった。果実負荷(剪定重量当たりの収穫量)は一般的に4と12の間であった。GDCの果実負荷は3シーズンで20に達したが、SDは1シーズンで14であった。収穫あたりの葉面積比率は1シーズンで決定し、全ての系で果実kg当たり1.8 m2/kgを超えた。果実は同じBrix値で収穫したが、処理間の果実重量、pH、滴定酸度、リンゴ酸量、酒石酸量の変化に有意差はなかった。揮発成分はヘッドスペース固相マイクロ抽出GC-MSを用いて分析した。果実は、リナロール、α-テルピネオール、β-ダマセノン、n-ヘキサノール濃度において、整枝法間で一貫した違いを示した。SDは、果汁とワインの両方で定量した殆どの遊離揮発成分にて、最も高い濃度を示したが、GDCのワインは時々、フェノールのないグリコシドが最も高い濃度になった。3点比較官能試験で、ワインアロマにおいてGDCとSDの間に、またフレーバーにおいてVSPとSDの間に差が明確になった。GDPのワインは他の系に比べて、より高いフルーティーさとフローラルなアロマを有していた。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/22
S. Guidoni, A. Ferrandino, and V. Novello: Effects of Seasonal and Agronomical Practices on Skin Anthocyanin Profile of Nebbiolo Grapes. pp. 22-29.
[ネッビオーロの果皮に含まれるアントシアニン組成に及ぼす季節および栽培方法の影響]
果皮に含まれるアントシアニン組成に及ぼす季節および50%摘房、50%除葉の影響を、イタリア北西にあるバルバレスコのワイン生産地で栽培されるネッビオーロで調査した。2年間の気候条件は栽培方法と強い相関関係を示した。2000年は暑く、雨が多かったのに対し、2001年は冷涼でとても乾燥していた。水分条件が良かったことから、葉面積/収穫量の比率は2000年で高く、2000年の50%除葉ブドウ樹および2001年の50%摘房ブドウ樹でのみ最適であった。これらのブドウ樹は収穫時に最も高い可溶性固形物含量を示した。収穫前にアントシアニン濃度が減少したために、最終的なアントシアニン濃度には有意な差は認められなかったが、アントシアニン濃度は、無処理のブドウ樹と比較して、2000年の50%摘房ブドウ樹でのみ増加した。2000年と比較して、2001年の干ばつはブドウ樹の栄養成長、糖生産(-8.3%)およびアントシアニン量(-20.7%)を抑制した。個々のアントシアニン組成濃度は、化学構造、樹冠管理法および季節による気候条件の結果として変動した。ペオニジン-3-グルコシド/マルビジン-3-グルコシドの比率は、2000年の1.9から2001年では1.2まで変動した。この変動は無処理のブドウ樹よりも処理したブドウ樹でより大きかった。アントシアニンの蓄積は2つの異なる段階に分けることができる。主にブドウ樹の栄養条件、次に栽培方法によって影響を受け、急激に増加する第一段階と、季節条件が根本的な役割を果たす第二段階(最終段階)である。3’および5’位が置換されているアントシアニン(デルフィニジン-3-グルコシド、ペチュニジン-3-グルコシド、マルビジン-3-グルコシド)よりも、3’位が置換されているアントシアニン(シアニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-グルコシド)は気候条件および栽培方法に強く影響されるようである。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/30
D. S. Intrigliolo and J. R. Castel: Effects of Irrigation on the Performance of Grapevine cv. Tempranillo in Requena, Spain. pp. 30-38.
[スペイン・レケーナで栽培されるテンプラニーリョの生産性に及ぼす灌漑の影響]
スペインのレケーナでテンプラニーリョを栽培するブドウ園で6年間、栄養成長、ブドウ樹の蒸発散、収穫量、果実およびワイン成分に及ぼす灌漑の影響を調査した。ブドウ樹は、短梢剪定したダブル・コルドン方式に仕立てた。雨にさらされたブドウ樹は年平均368 mmの降雨を受け、そのうち169 mmは4月から収穫時期までに降った。灌漑されたブドウ樹は、降雨量に加え、年平均86 mmの灌水を受けた。灌漑により、栄養成長とブドウ樹の蒸発散は増加した。結果として、灌漑されたブドウ樹の収穫量は31%高くなった。この収穫量の増加は主に果実の大きさが大きくなったことに因るものであり、土壌の水分バランスから導き出されるブドウ樹の蒸発散と相関関係にあった。灌漑したブドウ樹と灌漑していないブドウ樹では、剪定枝量に対する収穫量の比率および収穫量に対する葉面積の比率が同程度であったことで示されるように、灌漑はブドウ樹の需要と供給のバランスを変えなかった。年にかかわらず、灌漑はワイン成分にわずかな負の影響を及ぼした。灌漑はリンゴ酸と酒石酸のバランスを変え、リンゴ酸を増加させ、酒石酸を減少させた。灌漑はまたワインのpHを増加させ、アントシアニン濃度の僅かな減少により色の強度を18%減少させた。しかしながら、果汁およびワイン成分に及ぼす灌漑の影響は年により大きく変動した。これは、多分年による雨量とブドウの状態によるのであろう。ブドウの状態が良い場合、灌漑は収穫量の増加によるワインのアルコール濃度への負の影響を軽減する傾向にあった。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/39
B. P. Bordelon, P. A. Skinkis, and P. H. Howard: Impact of Training System on Vine Performance and Fruit Composition of Traminette. pp. 39-46.
[トラミネーゼの生産性および果実成分に及ぼす仕立て方の影響]
3つの仕立て方式、コルドン方式、平垣根方式、スコット・ヘンリー式で自根栽培されているトラミネーゼの生産性を5年間調査した。収穫量、樹の大きさおよび樹冠密度は仕立て方に大きく影響を受けた。果実成分(可溶性固形物、pH、滴定酸度およびモノテルペン量)は仕立て方により僅かに影響を受けた。樹冠を2つに分けるスコット・ヘンリー方式に仕立てたブドウ樹が最も収量が多く、樹の大きさも最も大きかった。その結果として、5年間で平均7.8の作物荷重(剪定枝重量に対する収穫量の率)となり、この値は一般的に受け入れられている8-12の範囲の下限値であった。平垣根方式では、22%収穫量が低かったが、ブドウ樹の大きさは同程度であった。その結果として、5年間で平均6.0という低い作物荷重となった。コルドン方式は中間的な収穫量、樹の大きさを示し、5年間で平均8.1の作物荷重となった。区画分析により測定した樹冠の密度は、仕立て方で異なっていた。コルドン方式の樹は、4層の葉からなる密度の濃い樹冠、2%の樹冠空隙で、20%の房が日に当たるのに対し、スコット・ヘンリー方式、平垣根方式では、1または2層の葉からなる樹冠、10%の樹冠空隙であり、40%の房が日に当たっていた。樹冠密度、作物荷重率の差にもかかわらず、収穫時の果実成分はすべての仕立て方で類似していた。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/47
F. M. Dewey, M. Hill, and R. DeScenzo: Quantification of Botrytis and Laccase in Winegrapes. pp. 47-54.
[ワイン用ブドウ中のBotrytisおよびラッカーゼの定量]
2005年および2006年にカリフォルニア州セントラル・バレイから収穫したワイン用ブドウ約2000サンプル中の腐敗レベルを、人による果実の選果法と搾汁した果汁中に含まれるBotrytis抗原を定量するELISA法によって測定した。また、同じ果汁中に含まれるラッカーゼ活性とBotrytisのレベルを比較した。プレートを用いた常法のELISA法と免疫クロマトグラフィー法によってBotrytisを定量するために、Botrytis属特異的モノクローナル抗体(BC-12.CA4)を使用した。果汁サンプルの標準物質は、Botrytisに自然感染したシャルドネ果実および感染していないシャルドネ果実を注意深く手摘みしたものを用いた。腐敗率は感染した果実の重さと数に基づいて表した。ブドウ果汁を含む培地上で育てたBotrytis菌糸の凍結乾燥物および貴腐ワインの希釈液から得られた抽出物もまたBotrytis抗原の標準物質として使用した。ラッカーゼの活性は、亜硫酸非依存的検出法により決定した。Botrytis抗原に対する免疫分析によりワイナリーで分別された機械摘み果実の人為的選果による腐敗の評価と果汁中のラッカーゼ活性との相関関係は乏しかった。しかしながら、ラッカーゼ活性と注意深く手摘みした果実から得られた果汁中のBotrytis腐敗レベル間では、高い相関性を示した(R2=0.7217)果汁サンプル中のラッカーゼのレベルと頻度は、収穫時期の終わりに向けて増加した。2005年では、シャルドネ、シラー、ジンファンデルの果汁中に、2006年ではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの果汁中によく検出された。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/55
M. E. Tarter and S. E. Keuter: Shoot-Based Sampling of Vitis vinifera Clusters. pp. 55-60.
[新梢を基準としたブドウ房のサンプリング]
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネの個々の房の重さは、各々の房が育った新梢上につく房の数と相関があることがわかった。この結果と他の知見に基づいて、対象となる新梢上で育った房の幾何学的解析および分布特性を用いた手法を利用した新しいサンプリング戦略を考案した。ブドウ樹はランダムに選び、新梢は規則正しく選抜した。その後、房をランダムに選抜した。特徴的でない大きな房を過剰に選抜するなどの主観的判断に帰する偏りを最小限にすることが必要であるために、このような無作為と作為を混合したサンプリング法が考え出された。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/61
R. K. Krell, T. M. Perring, J. M. Hashim-Buckey, and T. R. Pinckard: Susceptibility of Vitis vinifera L. cv. Redglobe and Thompson Seedless to Pierce’s Disease. pp. 61-66.
[ピアース病に対するレッドグローブおよびトンプソン・シードレスの感受性]
植物体内でのバクテリアの全身移行率をモニターすることにより、Xylella fastidiosa感染およびピアース病に対するレッドグローブおよびトンプソン・シードレスの感受性を調査した。2本の新梢を残した2品種の挿し木苗を用意し、一つの梢にX. fastidiosaを接種し、接種していない梢でバクテリアの移行をモニターした。第一の実験では、接種後6、12、18週間目に、レッドグローブの接種していない梢でトンプソン・シードレスよりも有意にX. fastidiosaが検出された。第二の実験ではバクテリアを分離した品種が感染に影響を及ぼさないか検討するために、両品種から分離したバクテリアをそれぞれの品種に接種した。その結果、いずれの品種から分離したバクテリアをいずれの品種に接種しても差は認められなかった。しかしながら、レッドグローブは有意に生存率が低かった。接種後30日目では、トンプソン・シードレスの生存率が51%だったのに対し、レッドグローブではたった2-7%の生存率であった。加えて、接種後26週目では、生き残った9つのレッドグローブの苗のうち4つが新梢を伸ばしていたのに対し、トンプソン・シードレスは生き残った50の苗のうち43の苗が新梢を伸ばしていた。接種後29週目に行なったELISAによる診断では、生き残ったすべてのレッドグローブの苗から伸びたすべての新梢でバクテリアの感染が確認されたのに対し、トンプソン・シードレスでは82%だけであった。全体的にみて、レッドグローブは、ピアース病の感染および枯死を引き起こす病気の進展に対し、トンプソン・シードレスよりも感受性であった。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/67
A. J. De Lucca, M. Klich, S. Boue, T. E. Cleveland, T. Sien, and T. J. Walsh: Fungicidal Activity of Plant Saponin CAY-1 for Fungi Isolated from Diseased Vitis Fruit and Stems. pp. 67-72.
[罹病したブドウ果実および梗から分離したかびに対する植物サポニンCAY-1の抗菌活性]
10属からなるかびを罹病したブドウ果実から分離した。これらのかびを、Alternaria属、 Aspergillus japonicu、 Cladosporium cladosporioides、 Colletotrichum属、 Curvularia brachyspora、 Epicoccum purpurascens、 Greeneria uvicola、 Nigrospora sphaerica、 Trichoderma属、 Penicillium sclerotiorum、 P. thomiiと同定した。トウガラシ(Capsicum frutescens)の抗菌性サポニンであるCAY-1は、7.5 μMより高濃度で、Alternaria属と E. purpurascensを除くすべてのかびの発芽胞子(培養後8時間)を死に到らしめた。一方、未発芽の胞子(培養後0時間)には影響しなかった。サポニン処理前にかびを24時間培養した場合、CAY-1はすべてのかびの胞子に対して効果がなかった。これらの結果は、CAY-1は胞子発芽の初期段階で殺菌効果があることを示している。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/73
RESEARCH NOTE:
M. M. Anderson, R. J. Smith, M. A. Williams, and J. A. Wolpert: Viticultural Evaluation of French and California Chardonnay Clones Grown for Production of Sparkling Wine. pp. 73-77.
[スパークリングワイン製造のために育てたフランスおよびカリフォルニアのシャルドネ・クローンの栽培評価]
カリフォルニア州ソノマ地区のロス カーネロス・アメリカ政府公認ブドウ栽培地域でのスパークリングワイン製造のために管理されたブドウ園で、13のシャルドネ・クローンの栽培特性を評価した。2つのカリフォルニア・クローン(FPS 4とFPS 72)と11のフランス・クローン(ディジョン・クローンNo. 75、76、78、96、352およびシャンパーニュ・クローンNo. 118、121、124、130、131、132)を使用した。1998年から2001年まで、収量、収量構成要素、果実成分(可溶性固形物、pHおよび滴定酸度)および栄養成長を測定した。収穫は可溶性固形物を基準に行なった。収量、房あたりの果実数、果粒重、房の重さおよび新梢当たりの房数はクローン間で有意に異なっていた。FPS 4とフランス・クローンNo. 96、352は最も多い収穫量であり、FPS 72は最も少なかった。他のクローン間では大きな差は認められなかった。FPS 72の低収量は果粒重が軽く、房当たりの果実数が少ないためであった。他のクローンの収量構成要素は4年間を通して異なっていた。FPS 4とFPS 72は収穫時期に最も高い滴定酸度を保っていた。栄養成長はクローンおよび年の両方の影響を強く受けた。FPS 72は最も多い剪定量であり、クローンNo. 118は最も少なかった。剪定量に対する収穫量の比率はFPS 72で最も低く、FPS 4で最も高かった。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/78
RESEARCH NOTE:
A. D. Marta, L. Martinelli, and S. Orlandini: Leaf Wetness Spatial Variability within Grapevine Canopy. pp. 78-82.
[ブドウ樹冠内での葉の濡れの空間的変動]
葉の濡れ時間は重要な農業気象変動値であり、病気の発生と深く関与している。ブドウ樹冠内の葉の濡れの空間的変動についての知見は、病害防除管理を向上する上で重要である。10日間夜に行なった肉眼による観察と成長シーズン中の葉の濡れ時間をモニターするためのセンサーを通して、異なるブドウ樹冠で葉の濡れ時間を評価した。葉と空気の温度を測定するために、8つの熱電対温度センサーを樹冠内にセットし、データを収集するための農業気象観測地を実験圃場の側に設置した。この研究の目的は、コルドン仕立てのブドウ樹冠内の葉の濡れの空間的変動を捉え、微小気候の温度との相関関係を検討することである。その結果、葉の濡れ時間は樹冠層に依存してコルドン仕立てブドウで変化していた。葉の温度も同じように変動していることから、葉の温度は葉の濡れ時間に影響することが示された。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/83
RESEARCH NOTE:
C. Collins and B. Rawnsley: Effect of Gibberellic Acid and Paclobutrazol on the Incidence of Primary Bud Necrosis in cv. Shiraz (Vitis vinifera L.). pp. 83-87.
[シラーの主芽壊死率に及ぼすジベレリンとパクロブトラゾールの影響]
主芽壊死率に及ぼすジベレリンおよびパクロブトラゾールの影響を評価するために、シラーで実験を行なった。開花1週間前、開花時、開花1週間後にジベレリン(100 mg/L)を処理することにより、主芽壊死率は増加した。開花1週間前および1週間後に成長抑制剤パクロブトラゾール(100 mg/L)を処理すると、主芽壊死率が減少した。ジベレリン処理後の新梢の長さおよび枝の直径は無処理区に比べ有意に長く、太くなった。これらの結果は、新梢の樹勢、ジベレリンおよび主芽壊死間に強い相関関係が存在することを示唆する。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/88
RESEARCH NOTE:
R. Ocete, M. Lara, L. Maistrello, A. Gallardo, and M. A. Lopez: Effect of Xylotrechus arvicola (Olivier) (Coleoptera, Cerambycidae) Infestations on Flowering and Harvest in Spanish Vineyards. pp. 88-91.
[スペインのブドウ園での開花および収穫に及ぼすトラカミキリ(Xylotrechus arvicola、コウチョウ目カミキリムシ科)の侵食の影響]
スペインのいくつかの名醸地では、過去10年間でブドウの病害虫になった樹を食べる昆虫、トラカミキリ(Xylotrechus arvicola)によって脅かされている。幼虫はブドウ樹内に大きなたくさんの穴を掘ることから、侵食を検出し、制御することは難しい。テンプラニーリョに及ぼすトラカミキリの侵食の影響を検討するために、ラ・リオハのブドウ園で開花と収穫時期の間、研究を行なった。その結果、花序の大きさと花の数は減少し、健全な樹から採取した房に比べ、房は小さく、ばら房となり、平均5倍軽くなった。さらに、侵食された樹から得たブドウから醸造したワインは有意にアルコール度が低く、有機酸濃度が高かった。これらの結果は、トラカミキリによる樹のダメージは収穫量およびワイン成分ともに影響することを示している。トラカミキリの被害報告が増えることは、ブドウ園の総合病害虫管理法にトラカミキリを考慮しなければならないことを意味する。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/92
RESEARCH NOTE:
S. Rayne and N. J. Eggers: 4-Ethylphenol and 4-Ethylguaiacol Concentrations in Barreled Red Wines from the Okanagan Valley Appellation, British Columbia. pp. 92-97.
[ブリティッシュコロンビア州、オカナガン・ヴァレー地区産の樽貯蔵赤ワイン中の4-エチルフェノールと4-エチルグアイアコールの濃度]
カナダ、ブリティッシュコロンビア州のオカナガン・ヴァレー地区にて市販の188樽貯蔵ワイン・サンプルについて、安定同位体希釈分析(SIDA)を使用し、4-エチルフェノールと4-エチルグアイアコール濃度を測定した。4-エチルフェノールと4-エチルグアイアコールの濃度はそれぞれ平均で56 μg/Lと29 μg/Lで、97~99%の値は、この成分が対応する匂い閾値より少なかった。その分析成分の平均値は、調べたオカナガン産ワインにおいて、他の地域産由来で以前報告された値より低かった。4-エチルフェノールと4-エチルグアイアコールの濃度は、溶存酸素レベルと正に相関し、セラーの温度と負に相関した。分析成分濃度と、温度、調査期間中のワインの樽熟成期間、樽の年数、ラッキング回数、ブドウの品種、オーク樽のタイプ、オークの焼きレベル、樽業者の個性との間には相関が観察されなかった。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/98
RESEARCH NOTE:
W. L. Applequist, H. Johnson, and G. Rottinghaus: (+)-Catechin, (-)-Epicatechin, and Gallic Acid Content of Seeds of Hybrid Grapes Hardy in Missouri. pp. 98-102.
[ミズーリ州産ハイブリッドブドウ・ハーディーの種子中の(+)-カテキン、(‐)-エピカテキン、ガリック酸含量]
アメリカ中西部では、純粋なヴィティス・ヴィニフェラ種が余り良く生育しない。この地域で拡大しているワイン産業は、ヨーロッパのハイブリッド・ブドウまたは自生ブドウ、ノートンやシンチアーナのようなハイブリッド種に依存している。これらハイブリッド種の健康に良い植物化学成分の含量に関しては殆ど知られていない。このような成分は、モノマー型フラバン-3-オール(例えば(+)-カテキン)やそれ由来のオリゴマーおよびポリマー型成分を含み、それらは種子の中で濃縮されている。それゆえに、ブドウの種子エキスは抗酸化サプリメントとして使用される。同じ東ミズーリで栽培された8種類のヨーロッパ系ハイブリッド・ブドウとノートンブドウ種子の(+)-カテキン、(‐)-エピカテキン、ガリック酸含量を調べた。広い範囲の違いが観察された。収量の良いハイブリッド種であるXⅠ 1-86は、乾燥脱脂種子重量に対して6.12 mg/gの(+)-カテキンと5.48 mg/Lの(‐)-エピカテキンを含み、同じ手法で分析したシャルドネ種子の量より有意に多かった。特定の地域で高い植物化学成分含量を示す栽培種を用いることで、サプリメント産業に原料を供給する機会を増やすことになるかもしれない。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/103
TECHNICAL BRIEF:
J. Skibsted Jensen, H. H. Malmborg Werge, M. Egebo, and A. S. Meyer: Effect of Wine Dilution on the Reliability of Tannin Analysis by Protein Precipitation. pp. 103-105.
[タンパク沈澱によるタンニン分析の信頼性に関するワイン希釈の影響]
タンニン定量に関する既報の分析方法は、牛血清アルブミンを使用しタンニンを選択的に沈澱させることによる。様々なタンニンレベルを有するワインに対するタンパク沈澱によるタンニン分析の信頼性を、5つの市販赤ワインを様々に希釈してタンニン濃度を測定することで評価した。希釈しすぎたり濃縮しすぎたりした両サンプルのタンニン濃度は、体系的に過小評価しており、それはそれぞれ、沈澱生成閾値と沈澱のための不十分なタンパク量によって説明できた。これらの知見に基づき、タンパク沈澱タンニン分析におけるタンニン反応の妥当な範囲を決定し、これらの問題を最小限に抑えた。
英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/59/1/106
TECHNICAL BRIEF:
D. P. M. Bonerz, M. S. Pour Nikfardjam, and G. L. Creasy: A New RP-HPLC Method for Analysis of Polyphenols, Anthocyanins, and Indole-3-Acetic Acid. pp. 106-109.
[ワイン中のポリフェノール、アントシアニン、インドール-3-酢酸の分析のための新しいRP-HPLC法]
ワイン中にある主なフェノール化合物とインドール-3-酢酸を測定するための逆相HPLC法を報告する。サンプル調整は必要なく、分析時間はサンプル当り57分である。その方法は、酸性水とアセトニトリルを使用し、主なフラボノイドフェノールやノンフラボノイドフェノール、IAAを分離し定量するために、C18カラム、フォトダイオードアレイ、蛍光検出器を組み合わせたものである。検出限界は、フェノール化合物で0.1~1.0 mg/L、IAAで2 μg/Lの範囲であった。ハンガリーワインをこの方法で分析すると、文献で報告された濃度と同じフェノール化合物濃度を示した。白ワイン(53 μg/L)中のIAA濃度も以前に公表された文献と一致した。しかし、以前は報告されていなかったが、赤ワイン中の濃度は平均で838 μg/Lであり、白ワイン中で見出された濃度より大幅に高かった。