American Journal of Enology and Viticulture

Volume 66, No.1 (2015)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/1

A.K. Hjelmeland and S.E. Ebeler
Glycosidically Bound Volatile Aroma Compounds in Grapes and Wine: A Review
pp. 1-11

[ブドウ及びワイン中に存在する糖結合性揮発性アロマ化合物(総説)
椊物において揮発性アロマ化合物は「遊離《のものと、糖に結合した「結合《(配糖体)の両方が知られている。「結合《では、化合物にはニオイが無いが、糖の結合が加水分解されると揮発するようになる。ブドウやワインの場合、大部分の揮発性アロマ化合物は「結合《で存在することが知られている。本総説ではブドウとワインに存在する配糖体について、その構造、生合成経路、椊物における役割、および分析法に焦点を当てた。これらの化合物とそのワイン製造中の濃度変化に関する研究について概説する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/12

A. Campisano, M. Pancher, G. Puopolo, A. Puddu, S. Lòpez-Fernàndez, B. Biagini, S. Yousaf, and I. Pertot:
Diversity in Endophyte Populations Reveals Functional and Taxonomic Diversity between Wild and Domesticated Grapevines
pp. 12-21

[内生菌の多様性は野生ブドウと栽培ブドウ間の機能的および分類学的多様性を示す]
内生菌は持続可能なバイオ農業を実行するための優れた能力を持っている。本論文では、農業と農業環境がどのようにして内生菌群に影響するかの我々の知識を更新するために、我々は野生ブドウおよび栽培ブドウから分離した内生細菌の個体群間の差を調査した。少なくとも4年間同じ気候で栽培した88の野生ブドウおよび栽培ブドウから分離した細菌を同定した。代表的な155分離株について、クオラムセンシングに基づく分類、酵素生産性、抗生物質耐性、椊物成長促進能(PGP)、生物防除能(BiCo)を含めた30の特徴により分類した。微生物の多様性は栽培ブドウ(6属)よりも野生ブドウ(25属)で大きかった。自動リボゾーム遺伝子間スペーサー解析法(ARISA法)による分子フィンガープリントは野生ブドウ内により多くの多様性が存在することを示した。形質の特徴による多変量解析は、野生ブドウや栽培ブドウから分離した分離株が同じ属に属しているときでさえ、それらがしばしば他と全く異なった集団を形成することを示した。興味深いことに、野生ブドウから分離した内生菌よりも栽培ブドウから分離した内生菌がPGP および BiCo 試験において好成績を示したことから、栽培ブドウの微生物群叢における分類学的多様性の減少は農業に関連した特徴の消失に対応しなかったことが示された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/22

B. Hed, H.K. Ngugi, and J.W. Travis
Short- and Long-Term Effects of Leaf Removal and Gibberellin on Chardonnay Grapes in the Lake Erie Region of Pennsylvania
pp. 22-29

[ペンシルヴェニアのエリー湖地域のシャルドネブドウに及ぼす除葉とジベレリンの短期および長期効果]
2007年から2012年の6シーズンにわたって、ボトリチス腐敗果房、房形態、収量、そして果汁組成に及ぼす房ゾーンの除葉のタイミングと花へのジベレリン処理の影響をシャルドネブドウ樹(Vitis vinifera)において評価した。すべての実験区画は、プレクロージャーとベレーゾンにおいて、ボトリチスに特異的な殺菌剤の散布を受けた。ベレーゾン、結実後、またはトレースブルームにおける除葉は、ボトリチスの発病度を、除葉しないものに比べて、平均において、それぞれ14、47、または71%減らした。トレースブルームにおける除葉(LRTB)は、ボトリチスの発病率と発病度を、それぞれ5そして4シーズンにおいて減少させ、そして、2007~2010年は、2回の追加の殺菌剤散布(開花期と収穫前)と同程度、または、2011~2012年は、より効果的であった。このことは、殺菌剤の投入量を減らす可能性を示唆している。ジベレリンはLRTBよりも小さな効果だったが、5 mg/L において2008年のボトリチスの発病率、そして25 mg/Lにおいて2010年のボトリチスの発病度を減らした。ボトリチスの発生は、房あたりの果粒数、そして房のセンチメートルあたりの果粒数(緊度)の増加に伴い増加した。房あたりの果粒は、LRTBにより、2007年、2010年そして2011年において減少し、そして、10 mg/Lジベレリン(2007年)そして25 mg/L(2011年)において減少した。センチメートルあたりの果粒は、LRTBとジベレリンによって、2007年、2008年そして2011年において減少した。結実後における除葉は、果汁組成において、2007年、2011年そして2012年の滴定酸を減少させるという最も注目すべき効果をもたらした。収量は2008年において、LRTBにより減少したが、その後のシーズンでは、収量への有意な効果は観察されなかった。ボトリチス腐敗果房を減少させるLRTBの効力は、最もコンパクトな房をともなった年で最も高かった。このことは、この処理の価値が、果房腐敗の可能性が高まるのにともなって増加することを示唆している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/30

F. Buscema and R.B. Boulton: Phenolic Composition of Malbec
A Comparative Study of Research-Scale Wines between Argentina and the United States
pp. 30-36

[マルベックのフェノール化合物組成:アルゼンチンとアメリカにおける研究規模のワインの比較研究]
フェノール化合物は、色調、呈味、マウスフィール、熟成ポテンシャルなどワインの品質に大きな役割を担っている。本研究は、カリフォルニア(米国)とメンドーサ(アルゼンチン)の150 Lスケールで製造したワインのフェノール化合物の比較を目的とした。カリフォルニアの16ワイナリーおよびメンドーサの26ブロックを一貫性、地域の代表性などの観点で選抜した。約6~9カ月熟成した状態で、HPLCによるアントシアニン類および低分子フェノール化合物の分析を行った。HPLC分析で得られた個々のアントシアニン、低分子フェノール化合物、および全フェノール量の33フェノール化合物についてケモメトリクス(計量化学分析)を用いて比較を行った。メンドーサのMalbecワインはカリフォルニアのワインとフェノール化合物組成が異なっていた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/37

Patrícia Coelho de Souza Leão, Maria Auxiliadora Coelho Lima, João Paulo Dias Costa, Danielly Cristina Gomes da Trindade
Abscisic Acid and Ethephon for Improving Red Color and Quality of Crimson Seedless Grapes Grown in a Tropical Region
pp. 37-45

[熱帯地域で栽培されるクリムゾン・シードレスブドウの赤色と品質を改善するためのアブシジン酸とエセフォン]
この研究は、ブラジルのSão Franciscoリバーバレーで栽培されているクリムゾン・シードレスブドウの色特性と品質に、アブシジン酸(ABA)とエセフォンを異なった量と回数で散布する効果を調べることを試みた。実験は3成長シーズン(すなわち、生産サイクル)にわたって、ブラジルペルナンブーコ州のペトロリーナの生産ブドウ園で行われた。処理はコントロール(ABAまたはエセフォン無し)、エセフォン単独、またはABAをともなったエセフォン、そして400と600 mg/Lで散布されたABAで構成された。ABAは4つの異なった散布方法で試験された:剪定後90~97日(DAP)のベレーゾンにABAを1回散布;半分の散布量を2回散布、すなわち、第1回はベレーゾンまたは果粒軟化期(90~97DAP)、第2回をベレーゾン後17~20日(DPV);17~20 DPVで1回散布;そして200または300 mg/LのABAをエセフォンと組み合わせて散布。ABAとエセフォンの散布は収量、房重量、果粒の直径、果皮の弾力、可溶性固形物または糖含量に影響しなかった。滴定酸は90 DAPそして17 DPVにおける200 mg/L ABAの散布によって影響されたが、最初の生産サイクルにおいてのみであった。果肉(パルプ)の硬さは、エセフォン単独または300 mg/L ABAと組み合わせた時、第3回のサイクルにおいてのみ影響された。2012年において、ベレーゾン(97 DAP)における200または300 mg/L ABAと組み合わせたエセフォン散布は、結果として、有意により濃い果皮カラー、より低い明度(L*)そしてより高いb*値をもたらし、このことは、より成熟が進んだことを示している。3つ全ての生産サイクルにおいて、ABAとエセフォンの散布は、アントシアニン含有量を増加させ、結果として、より濃い赤果粒カラーをもたらした。この応答の大きさはサイクル間で変動した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/46

L.V. Bao, I.B. Scatoni, C. Gaggero, L. Gutiérrez, J. Monza, and M.A. Walke
Genetic Diversity of Grape Phylloxera Leaf-Galling Populations on Vitis species in Uruguay
pp. 46-53

[ウルグアイのVitis種におけるブドウフィロキセラ葉瘤個体群の遺伝的多様性]
ブドウフィロキセラ(Daktulosphaira vitifoliae)はもっぱらVitis種、すなわち、優先的にアメリカVitis種の葉とヨーロッパVitis viniferaの根を餌にする。過去15年間にわたり、V. viniferaの葉における広範囲な摂食と瘤が、イタリア、ブラジルそしてペルーで観察されてきた。V. viniferaの葉へのD. vitifoliaeの寄生が非常に高い密度で検出された。この予想外の昆虫の行動の理由は知られていないが、可能な説明として、勢のある椊物が古いブドウ園に入れ替わる新しい状況における、より活発な自生株に対する選択圧力、改良プログラムによる椊物の耐性の消失、または昆虫の外来系統の移入がある。この研究の目的は、ウルグアイのフィロキセラの葉瘤固体群の遺伝的多様性を評価し、それらの間の遺伝的距離を推定し、そしてウルグアイと外国のフィロキセラ個体群(ブラジル、ペルーそしてヨーロッパ)を比較することである。同一椊物由来の根と葉のサンプルの間の遺伝的距離もまた推定された。4つの多型性マイクロサテライトプライマーが、この研究で使用された。同一椊物由来の葉そして根の昆虫個体群の分析において、台木の1つの遺伝子型とV. vinifera(栽培穂木)の1つの遺伝子型をともなった、異なる昆虫の遺伝子型が、接ぎ木されたブドウ樹で見出された。ウルグアイの葉瘤昆虫個体群に対する遺伝子座あたりの対立遺伝子の平均数は4.25であった。個体群内の個体間に見られた遺伝的差異は88%(SE = 2.298、p < 0.001)、そして個体群間で12%(SE = 0.319、p < 0.001)であった。0.221(p < 0.001)のFSTは個体群間の制限された遺伝的流れを示唆している。分析された遺伝子座に対して検出されたHardy-Weinberg平衡からの有意な偏差と負のFIS値は、ともに単為生殖が生殖方法であり得ることを示唆している。この研究で見出された遺伝的多様性は、環境の変動に対する宿主の適応に対して考慮すべき可能性を示している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/54

L.W. DeVetter, C.A. Dilley, and G.R. Nonnecke
Mulches Reduce Weeds, Maintain Yield, and Promote Soil Quality in a Continental-Climate Vineyard
pp. 54-64

[大陸性気候のブドウ園におけるマルチによる雑草の低減、収量の維持、そして土壌の質の向上
雑草は、水と栄養分をブドウ樹と競い合うことによりブドウ園の生産性を低下させる。雑草を管理するために、栽培者は、一般に除草剤そして/または耕作を適用し、それは土壌の質を危うくする。中西部のような大陸性気候のブドウ栽培の拡大にともない、ブドウ樹の生産性、果実の質、そして土壌の質を維持するための持続可能な雑草管理戦略が必要である。我々の目的は、中西部ブドウ園における4つの雑草管理戦略を評価することである。データはMaréchal Fochブドウ樹(種間ハイブリッド)が椊えられたアイオワ州に設置されたブドウ園から集められた。処理は4回繰り返され、次の内容を含んでいた。(1)耕作、(2)除草剤散布、(3)麦わらのマルチ、そして(4)ほふく性の赤ウシノケグサ(Festuca rubra L. Pennlawn)の生きているマルチ。雑草コントロール、ブドウ樹の生産性、果実の質、そして土壌の質が2004年~2010年にかけて測定された。麦わらと生きたマルチは、耕作と除草剤に比べて、より顕著な雑草コントロールを提供した。剪定重量が耕作と生きたマルチ区画で減少したが、ブドウ樹の収量は処理によって影響を受けなかった。滴定酸とpHを除き、果実の質に違いは検出されなかった。麦わらマルチ区画は、分析された土壌サンプルにおいて、より多くのリンとカリウムを含む傾向があった。水で満たされた細孔スペースと水分含量もまた、麦わらマルチ区画で、より高かった。マルチ区画の両タイプは、より高い有機物、総有機炭素そして安定な凝集含有物を持っていた。土壌酵素活性とミミズ総数として測定された生物的活性は、マルチ区画において高められた。我々の結果は、麦わらと生きたマルチが、雑草の個体数を減らし、ブドウ樹の生産性を維持し、土壌の質の幾つかの指標を改善し、そして大陸性気候のブドウ栽培にとって、持続可能な雑草管理戦略であることを示している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/65

F.J. Berli, R. Alonso, J. Beltrano, and R. Bottini
High-Altitude Solar UV-B and Abscisic Acid Sprays Increase Grape Berry Antioxidant Capacity
pp. 65-72 (Research Note)

[高い標高の太陽光UV-Bとアブシジン酸噴霧はブドウ果粒の抗酸化能を増加させる]
紫外線-B(UV-B)放射がブドウ樹の抗酸化性防御システムを活性化し、アブシジン酸(ABA)がシグナル伝達経路のダウンストリームを作動することが提唱されている。ここで、我々は、太陽光のUV-BとABAの噴霧が、高い標高のブドウ園で栽培されているVitis vinifera L. cv.マルベックの果粒の品質指標と果実収量に及ぼす影響を、5つの生長ステージと3回の生長シーズンに対して研究した。ブドウ樹は、開花前15日から、周囲の増加した太陽光UV-B(+UV-B)またはUV-Bをフィルターで除いた太陽光(−UV-B)にさらされた。これを1 mM ABA(+ABA)または水(−ABA)の毎週の噴霧を、ベレーゾン前27日から行うことと組み合わせた。果皮のフェノール化合物(アントシアニンと総ポリフェノール)は+UV-Bと+ABAによって増加し、UV-BとABAの間で有意な相互作用があった。与えられた糖含量の増加に対して、抗酸化活性とフェノール化合物含量は、−UV-B/−ABA処理の果粒よりも、+UV-B/+ABA処理の果粒において高かった。+UV-Bと+ABAは、果粒数を減少させることで相互に影響し合った。これは、おそらく、より高いエチレンの放出が理由であろう。そして、さらに、収穫時の糖濃度に影響することなく、房重量を付加的に減少させた。椊物を防御する抗酸化物質は、糖蓄積、果粒の保持、そして生長(果実収量)を犠牲にして、+UV-B/+ABAにより誘導された。糖蓄積と果粒生長に及ぼすUV-BとABAの影響は、生長ステージに依存した。高い標高のブドウ園において、太陽光UV-BとABA散布は、赤ブドウ果粒の品質指標を増加させることで相互に影響し合った。果粒品質指標に及ぼすUV-BとABAの効果は、濃度基準(ワイン造りの観点から重要な)において有意であり、そして果粒あたりの基準において付加的であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/73

N.A. Bokulich, M. Swadener, K. Sakamoto, D.A. Mills, and L.F. Bisson
Sulfur Dioxide Treatment Alters Wine Microbial Diversity and Fermentation Progression in a Dose-Dependent Fashion
pp. 73-79 (Research Note)

[亜硫酸処理により発酵経過中のワインの微生物学的多様性は濃度依存的に異なる]
ワイン製造において抗菌剤としての亜硫酸(SO2)の使用は確立された一般的な方法となっている。単一濃度でのSO2の抗菌効果については多くの研究があるが、様々な濃度での、あるいは酵母添加を行った場合の微生物的な増殖の変遷については知見が少ない。ハイスループットシーケンス法を用いて、酵母添加による累積効果や0~150 mg/LのSO2処理がワイン発酵中の細菌や真菌の集団に与える影響を調べた。濃度が25 mg/L以下の場合、SO2処理は乳酸菌やGluconobacter属の増殖性に濃度依存的に影響したが、他の細菌や真菌はSO2処理の影響を受けなかった。微生物相はSO2処理が25 mg/L以上で安定化し、発酵力は100~150 mg/Lの高濃度SO2により低下した。酵母添加だけを行った場合は微生物的な安定化に働き、SO2無添加の場合、細菌の生育は抑制されたが、SO2濃度が増加するとこの効果は加法的にはならなかった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/80

A. Dag, A. Ben-Gal, S. Goldberger, U. Yermiyahu, I. Zipori, E. Or, I. David, Y. Netzer, and Z. Kerem
Sodium and Chloride Distribution in Grapevines as a Function of Rootstock and Irrigation Water Salinity
pp. 80-84 (Research Notes)

[台木と灌水塩分に関係したブドウ樹のナトリウムおよび塩素イオン分布]
 台木の塩耐性は、多くの場合、ナトリウム(Na)および塩素(Cl)イオンの取り込みを制限する能力をもとに評価される。ここで、我々は、3つの灌水塩分レベル(電気伝導度1.2、2.7そして4.2 dS/m)がRuggeri、Paulsen、216/3そして101/14台木に接ぎ木されたカベルネ・ソーヴィニヨンブドウに及ぼす影響を評価した。生長パラメーターは塩分レベルにより影響されたが、台木により影響されなかった。そして、収量は、どちらの変数によっても影響されなかった。Ruggeriと216/3は、穂木の葉柄、木質そしてマストのNaとClの制限された取り込みと蓄積において最も効果があった。台木は、特異的にブドウ樹からNaとClを排出した;216/3とRuggeriは、それぞれ、NaとClに対して最も高い能力を示した。Clに比べてより多くのNaが木質組織に蓄積した。17.5%と同程度に高い枯死率が、最も高い塩分の水を用いて灌水された塩排出の乏しい台木に対して見られた。塩障害と枯死に至る耐性メカニズムの明白な崩壊は、おそらく、Naが木質組織における危険なレベル達したことによるであろう。NaとClを新梢と果実から排出する能力は、(a)マストとワインの塩イオン濃度を減少させることによりワインの質を増加させ、そして(b)塩に長期間さらされることに起因する枯死率を減少させることが明らかになった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/85

R. Mink, R. Kölling, S. Sommer, H.G. Schmarr, and M. Scharfenberger-Schmeer
Diacetyl Formation by Oenococcus oeni during Winemaking Induced by Exogenous Pyruvate
pp. 85-90 (Research Notes)

[ワイン製造時のOenococcus oeniによるジアセチルの生成に及ぼすピルビン酸添加効果]
ピルビン酸はOenococcus oeniのジアセチル合成における主要な代謝物質である。従って、細胞内のピルビン酸濃度が増加すれば、ジアセチルの蓄積が起こると考えた。本研究では、ワイン製造時にピルビン酸を添加した場合のジアセチル生成に与える効果と、Oenococcus oeniのジアセチル関連遺伝子の発現への影響を調べた。Oenococcus oeniによるジアセチルの生成は、ワイン製造の初期段階において酵母由来のピルビン酸によって誘導された。さらに、ピルビン酸を添加した場合、α-acetolactate synthase(alsS)遺伝子の発現が1.6倊に増え、ジアセチルの濃度も0.4から2.3 mg/Lに増加した。ピルビン酸添加後24時間でalsSの発現は最大(10倊に増加)になったが、ジアセチルの濃度はそれ以上増加しなかった。さらにalsDはこの時点で過剰発現(9倊)していたことから、α-acetolactateがアセトインに変換されていると思われた。以上の結果より、ピルビン酸添加はワイン製造初期におけるOenococcus oeniによるジアセチルの生成を誘導することが示された。さらにピルビン酸由来のジアセチルの蓄積は、alsDの応答の遅延によってアセトイン生成が抑制することで生じると考えられた。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/91

K. Sasaki, H. Takase, F. Tanzawa, H. Kobayashi, H. Saito, H. Matsuo, and R. Takata
Identification of Furaneol Glucopyranoside, the Precursor of Strawberry-like Aroma, Furaneol, in Muscat Bailey A
pp. 91-94 (Research Notes)

[マスカット・ベリーAにおけるフラネオールグルコピラノシド(イチゴ様アロマを持つフラネオールの前駆体)の同定]
2,5-Dimethyl-4-hydroxy-3(2H)-furanone(フラネオール)は、幾つかのVitis labrusca とそのハイブリッド(V. labrusca × V. vinifera)のワインブドウにおけるイチゴ様アロマのもととなることが報告されている。この研究は、高速液体クロマトグラフィー*タンデム質量分析を用いて、日本のハイブリッドブドウであるマスカット・ベリーA[V. labrusca(Bailey)× V. vinifera(Muscat Hamburg)]の果汁中のフラネオールグルコピラノシドを同定した。コンコード(V. labrusca)とマスカット・ベリーAの果汁中のフラネオールグルコピラノシドとフラネオールの濃度は、他のV. vinifera品種のそれに比べて大変高かった。フラネオールとそのグルコピラノシドは主にマスカット・ベリーAの果肉に蓄積されることも示された。これらの発見は、ブドウにおける生成メカニズムの解明とマスカット・ベリーAワインの特徴的なイチゴ様アロマを理解するのに寄与すると期待される。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/66/1/95

J.F. Harbertson, M. Mireles, and Y. Yu
Improvement of BSA Tannin Precipitation Assay by Reformulation of Resuspension Buffer
pp. 95-99 (Technical Briefs)

[再溶解緩衝液の見直しによるBSA-タンニン沈殿法の改良]
タンパク質沈殿性のワインタンニンの分析は、方法の単純さ、タンニン濃度と収斂味との強い相関により一般的な方法となってきた。ワインに対するこれまでのタンパク質沈殿法は、タンニン-タンパク質沈殿を可溶化し、酸化鉄による発色反応をサポートするために5%のSDSとtriethanolamine(TEA)pH 9.4のアルカリ性緩衝液を使用してタンニン及び色素重合体を測定する。しかし、本方法ではおそらくアルカリpHの可溶化溶液によりフェノール化合物が酸化し、これによりバックグラウンドが高くなる問題があった。様々な緩衝液組成について調べた結果、TEAとSDSではなく、TEAと尿素とすることでpHが下げられることが分かった。pHが7および8の尿素-TEA緩衝液により有意にバックグラウンドの吸光度・ドリフト時間が下がり、また回収できるタンニン量も増えた。タンニン濃度と鉄反応性フェノール化合物の動向は、様々な希釈試料(100~1200 mg/Lカテキン換算)においても維持された。pHが7および8のTEA-尿素緩衝液により、タンニンの回収率が上がり、バックグラウンドが下がることにより、これまでのタンパク質-タンニン沈殿法が改善されると思われる。

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