American Journal of Enology and Viticulture

Volume 70, No.1 (2019)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/1

I.A. Zasada, A.D. Howland, A.B. Peetz, K. East, M. Moyer:
Vitis spp. Rootstocks Are Poor Hosts for Meloidogyne hapla, a Nematode Commonly Found in Washington Winegrape Vineyards.
pp.1-8.(Research Articles)

[Vitis spp.台木はワシントンのワイン用ブドウ園でよく見られる線虫,Meloidogyne haplaの貧弱な宿主である]
 ワシントン州のブドウ園(Vitis vinifera)の多くのブドウ樹は台木品種に接ぎ木されず,自根のブドウである.植物に寄生する線虫で,Meloidogyne hapla(一般名:ノーザンルートノット線虫)はワシントンのブドウ園で多く発生し,特に自根樹はその影響を受けやすい.ワシントンで台木や他の品種をM. hapla対策として導入する前に,M. haplaの宿主を明らかにしておく必要がある.温室内で台木10品種のM. haplaの宿主特性を調査した.それに加え,オレゴンとワシントンで採取した異なるM. hapla個体群,そして台木品種とシャルドネ自根苗に対するネコブセンチュウ(M. chitwoodi)の増殖能力を調査した.台木品種である,Salt Creek, Freedom, Harmony, St George, Riparia Gloire, 101-14 Mgt, 3309C, 110R,420AおよびMatadorはM. haplaに対して抵抗力が弱かった.M. haplaは個体群によりシャルドネ自根苗に対して増殖率や罹病率が異なっていた.ワシントン州パターソンのV. vinifera園から採取されたM. hapla個体群は他の個体群より増殖率が高く33~78%であった.ワシントン州アルダーデールのV. vinifera園で採取したM. hapla個体群は,他のM. hapla個体群より毒性が強かった.シャルドネ自根苗と台木マタドールはM. chitwoodiへの抵抗性は弱かった.本報告は,M. hapla対策としてのいくつかのブドウ台木に対する宿主の最初の報告である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/9

M. Moran, P. Petrie, V. Sadras:
Effects of Late Pruning and Elevated Temperature on Phenology, Yield Components, and Berry Traits in Shiraz.
pp.9-18. (Research Articles)

[シラー種の生物季節学,収量構成要素および果実特性に及ぼす遅い剪定と気温上昇の影響]
 近年の温暖化によりブドウの収穫時期が短く圧縮されており,醸造学的に果実特性が変化してきている.剪定を遅らせることで収穫期をもとに戻すことができ,果実品質も維持できる.本研究では,遅い剪定と加温がシラー種の成長と果実特性に関して相互に作用する影響を明らかにする.我々は バロッサ・バレーのシラー種を3年間用い,上部開放式培養室にて2つの温度試験区(外気温区および加温区)および3つの剪定タイミング(萌芽期の剪定,2-3葉展開期の剪定および通常の冬季剪定)を組み合わせた実験系を確立した.剪定を遅らせることにより,萌芽が23日,開花が17日,ヴェレゾンが16日遅れた.加温は冬季剪定したブドウ樹ではわずかな影響であったが,遅く剪定したブドウ樹では開花が7日早くなった.暖かい春の年では加温はより大きな効果としてヴェレゾンが7日早くなった.剪定重は遅い剪定の影響を受けず,加温により増加した.収量は遅い剪定と加温により1シーズンだけ増加したが,3シーズンのデータとしては収量の変化はなかった.剪定を遅らせることにより6処理区のうち4処理区で果実成熟が遅れた.最も大きな遅れは2-3葉展開期に遅れて剪定した無加温区の17日であった.剪定を遅らせることはアントシアニン/糖度比に影響を及ぼさなかったが,加温を併用することによりアントシアニン/糖度比が2シーズンで減少した.剪定のタイミングと加温との間に相互作用があり,剪定を遅らせた場合,加温したブドウ樹ではタンニン/糖度比が増加したが,無加温では増加しなかった.加温に関わらず温かいシーズンでは応答性が高く,剪定を遅らせることにより果実成熟の開始および進行が遅れ,収穫期が遅れた.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/19

L.F. Casassa, S.E. Sari, E.A. Bolcato, M.A. D.-Sambueza, A.A. Catania, M.L. Fanzone, F. Raco, N.Barda:
Chemical and Sensory Effects of Cold Soak, Whole Cluster Fermentation, and Stem Additions in Pinot noir Wines. P
pp.19-33.(Research Articles)

[ピノノワールワインの低温浸漬,全房発酵,および茎添加の化学的および官能的効果]
 ピノノワールワインは,2014年と2015年にそれぞれ4種類と6種類のワイン醸造技術を使用し,2連続ヴィンテージで生産された.対照ワインに加え,結果として生じるワインの低温浸漬(CS)と20%の全房(WC)および3%の茎(S)の追加と組み合わせの効果を,フェノール類,色,揮発性および官能組成への影響について調べた.ワインの基本的な化学的性質は,CS,WC,またはS処理の影響を受けたとしても,僅かであった.涼しい2014年は,CSはタンニン抽出を37%増加させたが,暖かい2015年は,対照ワインと比較してCSはタンニン抽出に影響しなかった.茎の追加により,タンニン抽出が60%増加した. 両方のヴィンテージで,CSはアントシアニン抽出と色の濃さを減少させた.β-ダマセノンの絶対濃度と臭気活性値は,CSワインよりも対照および対照+ WCワインの方が高かったので,前者のワインはCSワインよりも果実味が強いことが示唆された.ワインの官能的記述分析により,2014年ヴィンテージの対照ワインは色度が最も低く,CS + WCワインは最も色度が高いことが示された.ただし,2015年にはCSの色度が低下するという反対の現象が見つかった.対照ワインはフルーティーであったが,WCワインはフルーティーではなかったが,フローラルとビターアーモンドのアロマがより高くなった.このアロマの変化は,追加された茎の影響によるものと考えられる.ホールクラスターと茎の追加は,アロマの多様性に中程度の効果をもたらし,このピノノワールワインの官能プロファイル内で,苦味と収斂味に対し大きな効果をもたらした.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/34

N. Vendrame, L. Tezza, A. Pitacco:
Study of the Carbon Budget of a Temperate-Climate Vineyard:Inter-Annual Variability of CO 2 Flux.
pp. 34-41 (Research Articles)

[温帯地域のブドウ園における炭素収支に関する研究:CO₂フラックスの年次変動]
 農業はCO₂排出量を削減し土壌炭素隔離を高めることにより,地球規模での炭素収支を改善することができる.ブドウのような木本の作物生産は,永年生,豊富な剪定残渣,土壌の被覆管理などの生物学的,構造的および栽培管理上で特殊であり,潜在的にかなりの量のCO₂を隔離する可能性がある.しかし,ブドウ園でのこのような生態系はまだ十分に理解されていない.そこで本研究では,イタリア北東部におけるギョー仕立てのソービニヨン・ブラン園(垣根間は通年に渡り草生;剪定枝は粉砕し園内に散布)において,渦相関(EC: eddy covariance)法を用いて,2014年5月から2017年4月にかけて連続して正味の炭素量を見積もれる生態系純交換量(NEE: net ecosystem CO₂exchange)をモニターした.その結果,ブドウ園は中程度の炭素吸収源として機能し,年間平均純炭素吸収量は134gC/m 2 であった.しかし,NEEの年次変動は大きく,ブドウの生育期の環境条件が大きく影響した.夏季が多雨であった2014年では,年間の炭素吸収は調査期間中最大で207g/cm²であったが,数回にわたりの熱波が発生した2015年では,炭素吸収量は69g/cm²に減少した.夏季の気温上昇と土壌水分量の低下は,活発な活動期であるブドウ園の純炭素フラックスを大幅に低下させることが明らかとなった.それでも,ブドウ園は中長期的には炭素吸収源として機能することが示された.このことは,農業および環境政策において考慮されるべきであり,ワイン生産チェーンの標準的なライフサイクルアセスメント(原料ブドウの生産からワインの消費までの環境負荷評価)を補完するものである.また,異なる気候地域ごとにブドウ園のCO₂フラックスを長期間研究することは,世界の炭素収支におけるブドウ栽培の役割を評価し,栽培管理技術を改良し,環境の持続可能性を改善するための基本となる.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/42

D. Colangelo, F. Torchio, L. Rolle, V. Gerbi, D.M. De Faveri, M. Lambri:
Using Response Surface Methodology to Model the Clarifying Process of Muscat blanc Must for the Production of a SweetSparkling Wine.
pp.42-49. (Research Articles)

[応答曲面法を使用した甘味スパークリングワイン生産に必要なマスカットブラン・マスト清澄化プロセスのモデル化]
 この研究では,マスカットブラン・マストの,CaベントナイトまたはNaベントナイト,および中央複合設計による10~100g/hLの用量範囲の混合物での清澄化を最適化する.応答曲面法(RSM)は,ベントナイトの種類と用量が遊離(即ち,アグリコン)およびグリコシル化芳香化合物に及ぼす複合効果を推定した.熱安定性,濁度,色を更に分析した.結果は,Naを多く含むベントナイト混合物がマストの濁りを大幅に減少させ,50%以上のCaベントナイトを含む混合物は,無視できるほどの濁り減少であることを示した.RSMの表面プロットは,低用量のNaベントナイトと用量に関係なく,Caベントナイトによって芳香化合物のアグリコンが除去されることを予測した.更に,このモデルは,特に50g/hLのCa汎用ベントナイトによる,グリコシル化芳香化合物の除去を推定した.研究の実験的限界にも拘わらず,これらの結果は,ワイン醸造部門が芳香性スパークリングワイン生産を改善する上で有用である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/50

M.T. P.-Llinas, T.M. DeJong, K.S. J.-Shean, J. Girona,J. Marsal:
Performance of a Chill Overlap Model for Predicting Budbreak in Chardonnay Grapevines over a Broad Range of Growing Conditions.
pp. 50-59. (Research Articles)

[広範囲での生育条件での低温重複型萌芽期予想モデルの精度]
 モデリングによるフェノロジー(栽培季節学的)生育段階の予測は,ブドウ栽培実践上の計画や,気候変動がフェノロジーに及ぼす影響を予測する上で重要な意味を持つ.低温重複モデルは,指数関数的に減少する曲線に基づいており,この曲線は,低温および熱蓄積の間の実証済の補償関係をまとめたものである.また,休眠中の生理学的変化に関する最近の研究に基づく知見も取り入れている.本実験の目的は,Chardonnayの発芽を予測するための低温重複モデルのパラメーターを開発することである.また,低温重複モデルが従来のフェノロジーモデルよりも,萌芽を予測するのに適しているかどうかを判断したいと考えた.新しく開発したChardonnay用低温重複モデルでは,従来のモデルよりも発芽を予測できなかったが,低温重複モデルが開発された他の品種に対して,ブドウ樹に対する低温の影響の違いが明確化された.モデルを改善するために萌芽のタイミングに影響する環境および栽培上の要因を理解し,ブドウ樹の休眠期の終了に影響する要因を理解するため,さらなる研究が必要である.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/60

A. C.-Orellana, N. Bambach, F. Aburto, M. Calderon:
Water Deficit Synchronizes Berry Color Development in Crimson Seedless Table Grapes.
pp. 60-67. (Research Articles)

[クリムゾン・シードレスでは水不足は果実着色を同期させる]
 世界的に重要な生食ブドウであるクリムゾン・シードレスは,温暖な気候下で栽培すると,しばしば果粒の着色にむらが生じ,この着色不良により少なくとも30%の果実が収穫されない場合がある.果粒の成熟と着色を促すために,成熟期にDI(deficit irrigation:蒸散要求量を下回る量の給水:本研究では,通常灌漑水量の50%)が実施されているが,灌漑と果実成熟のばらつきの関係についての情報はほとんどない.チリのマイポ渓谷のクリムゾン・シードレス(棚仕立て)の商業栽培園において,2015年と2016年のヴェレゾン期から収穫期までの間にDIを実施し,果汁糖度,果肉硬度および果皮色(L,a,b値)の均一性を調査した.その結果,ヴェレゾン後の水ストレスは,果粒サイズや果肉硬度には影響しなかったが,水使用効率(灌漑水量あたりの収量)と糖度を高め,果粒着色をわずかに改善し,生食用として流通可能な収量を2%向上させた.適度な水ストレスによる収穫時の果皮色の均一化は,葉の水ポテンシャルが低いほど,未熟な緑色果粒の割合が低下することによる.一方で,ワイン用ブドウのように果汁糖度が20°Brixに達するまで収穫期を遅らせても,果汁糖度18°Brixで収穫した果実に比べて着色は向上せず,むしろ,果粒の脱粒が増加した.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/68

L.M. Schmidtke, L.J. Schwarz, C. Schueuermann, C.C. Steel:
Discrimination of Aspergillusspp., Botrytis cinerea, and Penicillium expansum in Grape Berries by ATR-FTIR Spectroscopy.
pp. 68-76. (Research Articles)

[ATR-FTIR分光分析を用いたブドウ果粒内のAspergillus属,Botrytis cinerea,Penicilliumexpansumの識別]
 減衰全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)をケモメトリックモデリングおよび機械学習アルゴリズムと組み合わせて,Aspergillus属Botrytis cinereaまたはPenicillium属のいずれかに感染させた成熟したChardonnayブドウを用いて,菌糸体の識別が可能かを調べた.B. cinereaに感染したブドウの果実と,Aspergillus属またはPenicillium属に感染したブドウとの区別ができれば,加工用にワイナリーに持ち込まれたブドウの,迅速な病原菌検出ツールとして有望である.支持ベクターによるモデリングは他のモデリング手法よりも病原体および対照試料のクラス予測において優れていたが,ランダムフォレストモデルはAspergillus属に感染した試料の分類に成功し,これらの手法が房腐れの評価に適用できる可能性が示された.ATR-FTIRの使用は,ブドウの植物衛生の評価において有用である可能性が示された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/77

S. Kri?anovi?, L. Gracin, M. Cindri?, M. Toma?evi?,K. Kel?in, K. Luki?, K.K. Gani?:
Comparison of Proteomic, Metabolic, and Growth Profiles of Brettanomyces bruxellensis Isolates from Croatian Wines.
pp. 77-78. (Research Articles)

Brettanomyces bruxellensisのプロテオミクス解析,代謝および生育特性の比較]
 Brettanomyces bruxellensisは,赤ワインの生産において最も重要な腐敗酵母の1つである.この論文の目的は,プロテオミクス,成長,および代謝の特性に関してB. bruxellensis分離株の多様性を調査することであった.ワイン生産のさまざまな段階で,クロアチアのワイン産地のいくつかのワイナリーから10の分離株を取得した.プロテオーム解析により,試験したすべての分離株と対照株で発現した12のタンパク質が明らかになった.これらのタンパク質は,Dekkera / B.のバイオマーカーとして使用できるかもしれない.これらのタンパク質のうち5つは炭水化物代謝(エノラーゼ,hxk2p,グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ,ホスホグリセリン酸キナーゼ,およびピルビン酸デカルボキシラーゼ)に関与し,4つはタンパク質生合成(伸長因子-1-α,真核生物翻訳開始因子5a,60sリボソームタンパク質13,および細胞質リボソームタンパク質s24)に関与するものであった.それぞれ1つのタンパク質が,グルコース飢餓に対する細胞ストレス応答(ヒートショックタンパク質ssb1),転写やタンパク質分解輸送,キナーゼ活性化のようなユビキチン結合経路(ユビキチン),または窒素代謝(ペプチジル-プロリル-シス-トランスイソメラーゼ)などに関与していた.マロラクティック発酵中に採取されB. bruxellensisとして同定された分離株は18個の類似タンパク質を発現し,スチール容器/木製樽またはボトル入りワインでの熟成中に分離された株はそれぞれ23および24個の類似タンパク質を発現していた.これらの分離株の生育と代謝特性を,2つの培地(グルコース複合培地とワイン用培地)で評価した.分離株の生育特性とヒドロキシケイ皮酸の変換は培地間で異なっており,グルコース複合培地の使用では,生育およびヒドロキシケイ皮酸の消費が速く,揮発性フェノールとエステルの生成量が多くなった.得られた結果から,ワインから得られたB. bruxellensisの同定および差異の検出にプロテオミクスフィンガープリントが有用であることが示され,試験分離株の成長や代謝特性等の腐敗能力が異なるこが明らかになった.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/88

M. Gatti, A. Garavani, K. Krajecz, V. Ughini, M.G. Parisi, T. Frioni, S. Poni:
Mechanical Mid-Shoot Leaf Removal on Ortrugo (Vitis vinifera L.) at Pre- or Mid-Veraison Alters Fruit Growth and Maturation.
pp. 88-97. (Research Articles)

[’Ortrugo’ (Vitis vinifera L.)の果実成長と成熟に及ぼすヴェレゾン前期または中期のシュート中間部の機械的除葉の影響]
 高品質の発泡ワインを生産するには,収穫時の果実の糖と酸の最適なバランスが重要である.温暖化傾向は酸度低下を促し,糖増加を促進する.活発に光合成を行う樹冠末端の葉をヴェレゾン期あたりで除去すると糖蓄積が遅延すると言われてきた.3シーズン(2015年~2017年)にわたり,白品種‘Ortrugo’のシュート中間部の葉を機械的に除去したものと,除葉していない対照区とを比較した.除葉はヴェレゾン前(ヴェレゾン前除葉区)または可溶性固形物含量が約12°Brixとなった時期(ヴェレゾン後除葉区)に行った.ヴェレゾン前除葉区では全3シーズンで糖は増加したが,除葉による糖度の低下は2015年,2016年のみ収穫期まで続いた(対照区と比較して,それぞれ-1.1°Brixと-1.4°Brix).酸度は影響を受けなかった.ヴェレゾン後除葉区は,成熟の間,成分変化には影響しなかった.両除葉処理区は果粒サイズの減少(-5%)と収量減(対照区と比較すると,ヴェレゾン前除葉区で-19%,ヴェレゾン後除葉区で-14%)を招いた.シーズンによる若干の違いはあるものの,処理はその成分間で果粒の形態と割合を変えたが,相対的な果皮重量は一般に増加した.全体的に,除葉効果は予想以下であり,成熟した機能的な葉をかなりな量除去することで予想される一般的な成熟遅延は,本品種に対する過剰な積算温度によるリンゴ酸の減少で相殺された.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/98

M.-Y. Chou, J.E.V. Heuvel:
Pilidium lythri Is Associated with Bunch Rot of Grapevine (Vitis vinifera).
pp. 98-108. (Research Notes)

[周年の樹下カバークロップは強樹勢‘カベルネ・フラン’成木園での樹勢を軽減する]
 湿潤で冷涼な気候により新梢の栄養成長は旺盛となり,管理コストの増大,ブドウ品質の低下を招く.ブドウ樹下の一般的な裸地管理は樹勢を悪化させる.本研究では,ブドウ成木園の強樹勢を軽減するため,樹下のカバークロップの能力を調べた.3年間,オービット(ニュー・ヨーク)の‘カベルネ・フラン’成木園で実験した.2014年以降,樹下カバークロップとしてキクニガナ(チコリー区),トールフェスク(トールフェスク区),耕地ダイコン(ダイコン区),ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ区)または雑草(雑草草生区)を,グリホサートで雑草管理した裸地(裸地区)と比較した.剪定量は,2015年で裸地区と比較してチコリー区で64%,トールフェスク区またはダイコン区で54%減少した.2016年では,主枝および側枝の成長がチコリー区で抑えられた.着果部位周辺の葉数は,2015年では樹下カバークロップ処理区全体で,2016年ではチコリー区とトールフェスク区で減少した.1樹当たりの収量は,年度や樹下カバークロップの違いによる差異はなかった.樹下カバークロップは,可溶性固形物含量,滴定酸度,pHまたは酵母同化性窒素を含む収穫パラメーターにほとんど影響を与えなかった.いくつかのカバークロップは団粒の安定性,微生物の呼吸速度,炭素の無機化のような土壌特性を改善した.新梢成長または収量要素に対する影響に対して雑草草生区,トールフェスク区,ダイコン区はごくわずか,アルファルファ区は中間的であったが,チコリー区は冷涼気候下で収量を減らすことなく成熟した新梢の樹勢を効果的に軽減した.樹勢に対する樹下カバークロップの軽減効果は,水分または養分の競合だけ明らかではなかったので,樹下カバークロップの微生物またはアレロパシーの影響のような他のメカニズムを詳細に調査する必要がある.

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/70/1/109

T. Okuda, E. Kawai, J. Harada, E. Inoue, M. Hisamoto, F. W.-Saito:
Inhibition of Polyphenol Oxidase by Quercetin Derivatives in Grape Skin.
pp. 109-113. (Research Articles)

[ブドウ果皮由来のケルセチン誘導体によるポリフェノールオキシダーゼの阻害]
 ブドウ果皮からポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害剤を分離し,ケルセチン誘導体類であることを示した.分離した阻害剤のうち,ケルセチン-3-グルコシド(Q3Glc)が主要な成分であった.PPOの阻害に対する酵素科学的な解析を,市販のQ3Glcと基質としてカテコールを用いて行った.本阻害は可逆的で,Lineweaver-Burk plotsから得られたQ3Glcの阻害のメカニズムは競合阻害であり,阻害定数(Ki)は84.6 μMであった.

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