American Journal of Enology and Viticulture

Volume 65, No.2 (2014)

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/159

L.E. Williams
Determination of Evapotranspiration and Crop Coefficients for a Chardonnay Vineyard Located in a Cool Climate
pp. 159-169

[冷涼な気候に位置するシャルドネブドウ園に対する蒸発散量と作物係数の測定]
ブドウ園の蒸発散量(ETc)とシーズンの作物係数(Kc)の値を導くために、ナパバレーのカーネロス地方に位置するシャルドネブドウ園において研究を行った。ブドウ園は、垂直に新梢を配置したトレリスを使用し、2.13 mの列に椊採された。ブドウ園のEtcは土壌水分バランス法を用いて測定した。土壌水分量(SWC)は個々のブドウ樹の2.75 mの深さの土壌プロフィール(場所あたり6つのアクセスチューブ)の4分の1で測定した。加えて、ブドウ樹は、推定されたブドウ園Etcの0.25、0.5、0.75、1.0そして1.25の散水量で灌水された。ブドウ園Etcは研究の最初の年に~400 mmであった。その後の計算されたブドウ園Etc(ポテンシャルET [ETo]とKcの積)はシーズンごとに346~503 mmの範囲で変動した。日中の葉の水ポテンシャル(Ψl)、葉の正味CO2吸収速度(A)、そして気孔伝導度(gs)は、推定されたEtc(ブドウ樹が水ストレスを受けていないことを測定するために)と誘導されたKc値を間接的に検証するために使用された。日中のΨl、Aそしてgsは、灌水処理と年をまたがって、散水量およびSWCと直線的に関連していた。Aとgsの日中の測定は、早朝から午後遅くまで、実散水量に依存した処理間の有意な違いをともなって、灌水処理間の違いを結果として示した。この研究の結果は、カリフォルニアの冷涼なブドウ園地域で栽培されているブドウ樹においてブドウ園Etcが測定された初めてのものである。この研究から推定されたEtcの値は、0.74の最大Kcを用い、2.13 m間隔の列と垂直に位置された樹冠を持つブドウ園に対して有効だろう。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/170

S.Doumouya, M.Lahaye, C.Maury, R.Siret
Physical and Physiological Heterogeneity within the Grape Bunch: Impact on Mechanical Properties during Maturation
pp. 170-178

[ブドウの房内の物理的そして生理的上均一性:成熟期の機械的特性に及ぼす影響]
機械的特性は、ワイン製造にとってブドウ果粒品質を評価するための補足的な基準として出てくる。テクスチャーは果粒を基本として1つの果粒で評価されるので、機械的特性に及ぼすブドウ内部の上均一性の影響を評価することは重要である。カベルネ・フランのテクスチャー熟度の進展は、ダブル20%圧縮試験を用いて、成熟期を通して測定された。果粒は、ブドウ園でランダムに摘むというよりも全体のブドウの房からサンプリングされた。結果は、ダブル圧縮パラメーター: F1, Grad0, Grad1, W1の明瞭で有意な進展を示した。そして、成熟の間に、粘着性は有意に減少したのに対して、凝集性は有意に増加した。機械的パラメーターの変動は、主要な生理的そして物理的特性と関連していた。機械的パラメーターは果粒の位置によって有意に異なった。これらパラメーターの中で、Grad1は果粒密度とBrix(両方ともr = −0.91)と高度に相関した。そしてW1は水含量(r = 0.87)と高度に相関した。房内の上均一性は物理的、生理的そして機械的パラメーターの異なった分布によって説明された。乾燥重量、密度、Brix、凝集性そして粘着性に対して、房の上端から下端に向かって負の勾配が示された。房の下端部分の果粒は、成熟においてより促進され、上端の果粒より柔らかかった。結果は、機械的特性を基にしたブドウ果粒品質の評価におけるサンプリング戦略に関して考察された。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/179

S.R.Schultze, P.Sabbatini, J.A.Andresen
Spatial and Temporal Study of Climatic Variability on Grape Production in Southwestern Michigan
pp. 179-188

[南西ミシガンのブドウ生産における気候変動の空間および時間的研究]
ミシガン湖沿岸のアメリカブドウ栽培地域を含む南西ミシガンの複数の場所に対する積算成長度日(GDD)を計算するために、日々の気候データを幾つかの情報源から得た。データは、ジュースブドウ生産へのミシガン気候の役割をより良く定量化するために、地域に関する、空間および時間的(1950年~2011年)パターンと傾向に対して検討された。晩春と早秋の氷点下の温度は、この地域の収穫時のジュースブドウ生産と果実品質に苛酷な影響を持ち得るため、この研究では、霜の発生と苛酷さ、そして凍結温度もまた考慮された。ミシガンの冷涼‐寒冷な気候は、最近数十年間、特に、1980年以来、年あたり3.7 GDD(基礎温度10℃)を超える地域の平均的増加をともなって温暖化した。南西ミシガンもまた、ナパバレー(カリフォルニア)と比べた時に、より高いシーズン温度変動を持つことが見出された。1980年以降、ミシガンのシーズン対シーズンの変動は、より早いペースで増加してきた。GDD増加の影響は、シーズンGDDと総可溶性固形物(Brix)を指標とした成熟度の間の強い正の相関をともない、果実品質にポジティブであった。1971年以降、生長シーズンもまた、期間において28日増加した。しかし、より暖かい気温にも関わらず、南西ミシガンの潜在的な霜の日数とそのシーズン変動は、変化しないままであり、それは、地域のブドウ栽培者にとって、リスクを与え続けている。ミシガンが、より温暖になり、その年の春の暖まりが概して早く来るとしても、ダメージを与える霜をともなう日数は、ブドウ生産にとっての気候に関連した全般的なリスクにおいて、いぜんとして深刻な影響を持っている。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/189

A.B. Iandolino and L.E. Williams ms
Recovery of 15N Labeled Fertilizer by Vitis vinifera L. cv. Cabernet Sauvignon: Effects of N Fertilizer Rates and Applied Water Amounts
pp. 189-196

[カベルネ・ソーヴィニヨン(Vitis vinifera L. cv.)による15Nで標識された肥料の回収:肥料度合いと散水量の効果]
カリフォルニア、オークヴィル近くの生産ブドウ園のカベルネ・ソーヴィニヨンの肥料回収効率(REN)に対する窒素肥料度合いと灌水量の相互影響を調査するために研究を実施した。施肥処理は、コントロール(肥料なし)と15Nで標識された硝酸アンモニウム肥料の使用(6.5と13.9 g N/ブドウ樹)から構成された。窒素肥料は開花の2週間前に使用された。灌水処理は、ブドウ園の推定水使用(ETc)の種々の分量(0.25, 0.5そして1.0)で行った。ここで、4月7日から9月9日までの1.0潅水処理に対する散水量は312 mmに相当する。日中の葉の水ポテンシャル(Ψl)はブドウ樹の水状態をモニターするために、シーズンを通して測定された。標識された窒素肥料は、施肥2週間後に葉柄と葉において検出された。灌水と施肥処理は、有意に日中のΨlに影響した。処理間で、地上のブドウ樹バイオマスに有意な違いがあった。一般に、より多くの水と/または窒素肥料を与えられたブドウ樹は、灌水上足下で施肥なしのブドウ樹と比べてより多くのバイオマスを有した。15Nで標識された肥料のブドウ樹による吸収は、施肥度合いと灌水量が増加するのにともなって増加した。RENは2つの15N施肥処理の間で有意に異なった(6.5 g N/ブドウ樹に対して29%、そして13.0 g N/ブドウ樹に対して24%)。0.25、0.5そして 1.0 Etc灌水処理に対する収穫時のRENは、有意な差は無いが、それぞれ、~24、28そして27%であった。データは、施肥量が、この研究条件下においてRENに有意な効果を持ち、最大Etcにおける灌水度合いは、灌水欠乏と比べた時に、このブドウ園のRENを増加させる傾向があることを示している。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/197

K.C. Shellie
Water Productivity, Yield, and Berry Composition in Sustained versus Regulated Deficit Irrigation of Merlot Grapevines
pp.197-205

[メルローブドウ樹の管理欠乏灌水に対する持続欠乏灌水における水生産性、収量そして果粒組成]
ワイン用ブドウ栽培種メルロー(Vitis vinifera L.)は、8回の生長シーズンにわたって、3つの厳しさの持続欠乏灌水(SDI)、すなわち、推定される作物蒸発散量(ETc)の90%を供給する標準(STD)量、そして標準量の70または35%(STD70、STD35)、または、ベレーゾン前はSTD35量そしてベレーゾンから収穫までSTD70量供給する管理欠乏灌水(RDI)形態によって灌水された。この研究は、最後の3シーズンに集められたデータを考察する。STD灌水下のブドウ樹は、大きな果粒(~1.2 gサイズカテゴリー)の比率が最も多く、そして大きな果粒は灌水形態にかかわらず、可溶性固形物とアントシアニンの濃度が低かった。そして果粒あたりのアントシアニン含量は小さな果粒(~0.6 gサイズカテゴリー)よりも高かった。類似したサイズの果粒において、可溶性固形物濃度と果粒あたりのアントシアニン含量はSTDまたはSTD35条件下よりもRDI条件下の方が高く、そしてRDIとSTD70条件下で類似していた。SDI条件下の灌水量がSTDからSTD35へ62%減少するのにともない、収量、果粒重量、そして剪定重量は減少し(それぞれ44、24、そして55%)、そして水生産性は増加した(24%)。STD70処理は、望ましい果粒組成をともなった最も質の高い果実を生産した。シーズンの水使用は、STD70条件下よりもRDI条件下のほうが15%少なかった。しかし、両処理の水生産性は、STD70に比べてRDI条件下の果粒サイズと収量が減少することにより類似していた。節水による収量の減少を受け入れるならば、RDI形態は、望ましい組成の果実を生産するための灌水オプションを提供する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/206

S.Giacosa, F.Torchio, S.R.Segade, M.Giust, D.Tomasi, V.Gerbi, L.Rolle
Selection of a Mechanical Property for Flesh Firmness of Table Grapes in Accordance with an OIV Ampelographic Descriptor
pp. 206-214

[OIVのブドウ記述学的記述因子に従ったテーブルグレープの果肉の硬さに対する機械的特性の選択]
果肉の硬さは、ブドウ品種とVitis 種(OIVコード235)に対するブドウ記述学的記述因子として、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)により提唱された官能特性である。テーブルグレープの果肉の硬さを正確に決定するために、この記述因子に従った5つの参照テーブルブドウ栽培種の分類を可能にする機器テクスチャーパラメーターが選択された。果肉の機械的特性は、テクスチャープロフィール分析とカッティング試験により決定された。結果は、果粒の直径で標準化されたブドウ硬度と粘着性は、栽培種間の変動が、果粒サイズおよび成熟度とは無関係に明白であることから、果肉の硬さの正確な機器指標であることを示した。OIVにより確立された、それぞれの果肉の硬さのグループ(柔らかい、僅かに硬い、非常に硬い)に対する果粒の直径で標準化された果粒硬度の四分位数間範囲は、それぞれ、0.074~0.117、0.121~0.158そして0.205~0.391 N/mmであった。この標準化されたプロトコールは、ブドウ品種の性質をより良く比較するために利用することができる。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/215

L.E. Williams:
Effect of Applied Water Amounts at Various Fractions of Evapotranspiration on Productivity and Water Footprint of Chardonnay Grapevines
pp. 215-221

[蒸発散量に対して様々な比率の加水量がシャルドネの生産性およびウォーターフットプリントに及ぼす影響]
蒸発散量(ETc)に対し様々な比率で加水した灌漑処理が2種の台木に継いだシャルドネの生産性に対して及ぼす影響を8年間に亘り調査した。最初の4年間に行った灌漑処理はETc値で0.25、0.5、0.75、1.0および1.25になるように加水し、次年からは加水を行わない、あるいはETc値で0.5、1.0に加水した。土壌水分バランス法を用いて、ブドウ樹の水分量を測定した。年により、すべての計測パラメーター(果粒重、可溶性固形物、pH、滴定酸度、収量および収量構成要素)に有意な影響が認められた。収量では、最も高い収量(21.9 t/ha)と最も低い収量(11.6 t/ha)で二倊ほど異なった。台木はいくつかのパラメーターに有意な影響を及ぼした一方で、その影響は年ごとに一貫しておらず、灌漑による影響は1種の台木にのみ観察された。加水量に対する収量は、ETc値で1.25および0.25の灌漑処理でそれぞれ平均4.43 t/ML、13.7 t/MLとなった。一方、ETc値に対する収量はETc値で1.25および0.25の灌漑処理でそれぞれ平均4.28 t/ML、6.45 t/MLとなった。ETc値に対し最も高いおよび低いウォーターフットプリント値は本研究期間において130~400 m3/tとなった。年ごとのウォーターフットプリント値の大きな差は収量の差に起因するものであった。加水処理を行わなかったときのウォーターフットプリント値は1998で166 m3/t、1999年で228 m3/tであった。ここで報告したウォーターフットプリント値は以前ブドウ樹で報告された値よりも低かったのは、圃場ETc値のより正確な概算値と高い収量に依るものであった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/222

T.C.Holland, P.Bowen, C.Bogdanoff, M.Hart
Arbuscular Mycorrhizal Fungal Communities Associated with Vitis vinifera Vines under Different Frequencies of Irrigation
pp. 222-229

[異なる灌水条件下におけるブドウ樹のアーバスキュラー菌根菌群落]
毎日あるいは3日に1回灌水することがブドウ樹の根に生息するアーバスキュラー菌根菌へ与える影響について、台木3309に継いだメルローおよびカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培した圃場で調査した。4年間灌水した後の根を用いて、アーバスキュラー菌根菌のコロニー形成、優先種の同定および群落の変化を解析した。コロニー形成は毎日灌水するよりも3日に1回灌水する方が高かったことから、アーバスキュラー菌根菌群落形成に灌水が影響を及ぼすことが示唆された。パイロシークエンス解析により、灌水の頻度による集団群落構成の差はないことが明らかとなった。優先種の種類およびばらつきは、2つの処理区間で一致した。2品種間におけるアーバスキュラー菌根菌群落の違いは土壌の化学的成分やブドウ樹の生理的特性の違いに依存するようであった。特に、ブドウ樹の樹勢や光合成能とともに、土壌の炭素や銅含量がアーバスキュラー菌根菌群落の変化と相関した。この結果は灌水頻度以外に環境要因もブドウ樹のアーバスキュラー菌根菌の群落構成に影響を及ぼすことを意味する。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/230

I.Maoz, A.Bahar, T.Kaplunov, Y.Zutchi, A.Daus, S.Lurie, A.Lichter
Effect of the Cytokinin Forchlorfenuron on Tannin Content of Thompson Seedless Table Grapes
pp.230-237

[トンプソン・シードレスのタンニン量に及ぼす椊物成長調整剤ホルクロルフェニュロンの影響]
サイトカイニン様に働く椊物成長調整剤ホルクロルフェニュロン(CPPU)は果実サイズを適正化するための資材として世界で広く普及している。CPPUを処理した果実は収斂味が増すことが知られていることから、CPPU処理した果実にはより多くのタンニンが蓄積されている、あるいは成熟期間におけるタンニンの消費が遅れていると仮説を立てた。3カ所の圃場において3シーズンに亘り、結実後のトンプソン・シードレスにCPPUを処理した。以前報告されているように、CPPUは果実サイズに影響し、果実成熟を遅延させた。果実直径が6 mmになった時にCPPUを処理(早期処理)した場合、最も果実が肥大した。一方、果実直径が10 mmになった時にCPPUを処理(晩期処理)した場合、最も果実成熟が遅延した。果実成熟は果実の自家蛍光の変化によっても測定したが、CPPUは果実成熟期間を通してクロロフィル由来の自家蛍光を増加させた。タンパク質沈殿法と全フェノール量による測定によって、CPPU処理は一貫して縮合タンニンの量を4倊以上増加した。無処理あるいはCPPU処理を施した果実の全タンニン量は果実成熟間で減少しなかった。これらの結果はCPPU処理を施した果実は無処理の果実よりも収斂味が増しているという官能評価結果と一致している。本研究で初めて示されたように、CPPUがトンプソン・シードレス果実のタンニン量を増加できるという事実は、果実の味の観点から考慮されるべきである。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/238

Y.Ruiz-García, J.M.López-Roca, A.B.Bautista-Ortín, R.Gil-Muñoz, E.Gómez-Plaza
Effect of Combined Use of Benzothiadiazole and Methyl Jasmonate on Volatile Compounds of Monastrell Wine
pp. 238-243(Research Notes)

[モナストレル・ワイン揮発性成分に及ぼすベンゾチアジアゾールとメチルジャスモン酸の併用効果]
椊物の誘導因子(エリシター)処理は、フェノール性物質や揮発性化合物を増加する。本研究では、ベンゾチアジアゾール(benzothiadiazole、BTH)とメチルジャスモン酸(MeJA)をモナストレル(Monastrell)ブドウのべレーゾン期に併用散布後、ワインを醸造し、得られたワインの揮発性化合物を分析した。BTHとMeJA併用処理ブドウから醸造したワインの高級アルコールやエステル類は、無処理ブドウから醸造したワインと同様であった。一方、テルペン類は処理ブドウのワインで有意に高濃度であり、中には処理ブドウからのみ検出されるものもあった。この揮発性化合物の多いワインは、記述的官能評価の結果、有意にフルーティな香りが高く、アロマが多く、マウスフィールの品質が高かった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/244

A.Schneider, S.Raimondi, C.S.Pirolo, D.T.Marinoni, P.Ruffa, P.Venerito, P.L.Notte
Genetic Characterization of Grape Cultivars from Apulia (Southern Italy) and Synonymies in Other Mediterranean Regions
pp.244-249(Research Notes)

[イタリア南部プッリャ州のブドウ品種の遺伝的特性と他の地中海沿岸地域における異吊]
イタリア南部プッリャ州で昔から維持されてきた45のブドウ系統について、13のマイクロサテライトマーカーを使用して遺伝子型を調査し、経済的または歴史的に重要で且つ保存の危機に晒されているブドウ系統の多様性を解析するとともに形態的特徴を観察した。45系統のうち12系統は同物異吊または体細胞変異体であり、残りの33系統は個別の遺伝子型であった。調査した系統の更なる同定および適切な命吊を行うために、次の試みを行った。公開されている対立遺伝子情報とプッリャ州および歴史的に関係の深い周辺地域の栽培品種の形態的特徴に関し比較した。その結果、プッリャ州の主要品種と一致した一方、他の地中海沿岸地域の品種とも一致するものも現れた。およそプッリャ州の品種の半分ほどがアドリア海(クロアチア)に沿った地域やギリシャ、他のイタリア南部の品種とよく似たものであることが判明した。他地域の伝統的な品種の同物異吊として明らかになった品種は、地中海貿易通路の歴史的確立や移民の定着時に起こったと思われるブドウ品種の伝搬について新しい知見を与える。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/250

J.M.Meyers, J.E.V.Heuvel
Use of Normalized Difference Vegetation Index Images to Optimize Vineyard Sampling Protocols
pp. 250-253(Research Notes)

[圃場のサンプリング法を適正化するための正規化椊生指数の利用]
既知の圃場内分布を用いて古典的な統計モデルを圃場に適応することは、上十分なサンプリングを引き起こす。圃場の空間構造の定量化および圃場でのサンプリング法の適正化を目的に、ワシントン州の2カ所のリースリング圃場から得られた正規化椊生指数を解析するために、手作業で収集した樹冠データに基づいて以前開発したサンプリング適正モデルを改変した。正規化椊生指数によって表されるような樹冠分布を正確に捉えるために必要である効果的なサンプリング法を決定するために、近似アルゴリズムを使用した。結果として、69%までサンプルサイズを減少し、更にランダムサンプリングに比べ90%以上までサンプリング位置間の移動距離を減少することに成功した。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/254

V.F.Laurie, S.Salazar, M.I.Campos, A.Cáceres-Mella, Á.Peña-Neira
Periodic Aeration of Red Wine Compared to Microoxygenation at Production Scale
pp. 254-260(Technical Briefs)

[製造スケールにおけるミクロオキシゲネーションと間欠通気の比較 ]
ミクロオキシゲネーション(MOX)は、ワインの特定の化学的、官能的特徴を増強する目的で使用される、ワイン製造技術の一つである。理論的には、少量の酸素を連続的にワインに吹き込むことにより、ワインの品質が改善され、酸素により生じる障害やコントロールできない酸化が避けられる。しかし、MOXと同等と考えられる、断続的空気暴露の効果については報告されていない。本試験の目的は、(MLF後の)一般的なMOXと同等の、週単位の空気吹き込みである、断続的空気暴露の化学的影響を、通常のMOX処理と比較、評価することである。変化する殆どの化学物質(例えば、遊離アントシアニンの減少や重合色素の増加など)は、通常のMOXと間欠空気吹き込みで同等であった。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/261

T.Baby, B.Hocking, S.D.Tyerman, M.Gilliham, C.Collins
Modified Method for Producing Grapevine Plants in Controlled Environments
pp. 261-267(Technical Briefs)

[環境制御下でブドウ樹を栽培するための変法]
環境制御下で果実をつける小さいブドウ樹を迅速に作製することは、ブドウ栽培、特に開花、結実および果実成熟に関する研究において非常に重要である。本研究の目的は、再現性の高い実験用ブドウ樹を作製するため、そして他の研究者が環境制御下から一貫してサンプリングできるようにするために、最適な生育条件を決定することである。環境制御下でパーライトとバーミキュライトの混合土壌に椊栽した1年目の挿し木苗(シラー)を育てるために、3つの異なる栄養素配合を試した。結実率、クリューレ・インデックスおよびミルランダージュ・インデックスを算出した。本研究の生育条件において、結実率50%以上と葉中の最適な元素濃度を達成した。自動灌水を含め、Mullins and Rajasekaran (1981)の変法である本法は、制御環境下において高い再現性とブドウ樹の生理的状態を維持することができ、どのように生育用培地がブドウ樹の栄養条件や生育条件に貢献するのかを知ることの重要性を指し示す。

英文要旨原文 http://www.ajevonline.org/content/65/2/268

S.Poni, M.C.Merli, E.Magnanini, M.Galbignani, F.Bernizzoni, A.Vercesi, M.Gatti
An Improved Multichamber Gas Exchange System for Determining Whole-Canopy Water-Use Efficiency in Grapevine
pp.268-276(Technical Briefs)

[ブドウ樹全樹冠の水使用効率を測定するための改良型マルチチャンバーガス置換システム]
良く加水されたブドウ樹と蒸発量を徐々に減少したサンジョベーゼを比較し、50日間連続24時間記録のために、自動ポット重量計測器を取り付けたマルチチャンバー型全樹冠ガス置換システムをテストした。本システムは全行程において通常のメンテナンスでスムーズに稼働し、重量分析による水分消失はチャンバー内の蒸発散量と高く相関した(r = 0.95)。シーズンおよび日中の全樹冠CO2交換率(NCER)と蒸発率(Tc)は、一日の重量分析による水分消失量(Tg)の50%および30%を給液することは、Tcに比べてより制限を受けたNCERに一貫して対応し、その結果、NCER/Tc比で表される樹冠の水使用効率(WUE)を低くすることが示された。対して、樹冠のWUEは70%Tgを維持した場合、処理間に差は認められなかった。同様に、水分供給を大きく制限した期間では、蒸気圧が弱く、散乱光と直射光の強度比が高い曇りの日に処理間のWUEの差は著しく減少した。全樹冠WUEに関して異なった時間軸で取得された本研究データは、ほとんどすべての場合においてストレス下ではWUEが増加するという、古典的な単一葉で行われた解析から得られたデータとは異なる結果を提供する。そして、本研究データは、使用する方法によっては水ストレスに対するブドウ樹の応答性に関する結論が変わってしまうかもしれないことを示唆する。

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