American Journal of Enology and Viticulture

Volume 60 No.1 (2009)

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/1

C.M. Lund, M.K. Thompson, F. Benkwitz, M.W. Wohler, C.M. Triggs, R. Gardner, H. Heymann, and L. Nicolau: New Zealand Sauvignon blanc Distinct Flavor Characteristics: Sensory, Chemical, and Consumer Aspects. pp. 1-12.
[ニュージーランドのソービニヨン・ブランの特異的フレーバー:官能的、化学的および消費者からの側面]

オーストラリア、フランス、ニュージーランド、スペイン、南アフリカおよびアメリカのソービニヨン・ブランのフレーバーにおける特徴を訓練したパネル(14名)により特定した。16項目の特性(甘く汗臭いパッションフルーツ、トウガラシ、パッションフルーツの果皮/軸、ツゲ/猫の尿、草の香り、ミネラル/火打石、シトラス、バーボン、リンゴキャンディー、トロピカル、ミント、新鮮なアスパラガス、缶詰アスパラガス、石果、リンゴ、サヤエンドウ)について調べた。主成分分析により地域および国の違いを表現した。ニュージーランドのマルボロのソービニヨン・ブランはトロピカルで甘く汗臭いパッションフルーツと表現され、フランスおよび南アフリカのものは火打石/ミネラルやバーボン様の香りと描写された。これらのワインを化学的に分析したところ、マルボロ産のワインはメトキシピラジンとチオール化合物が多かった。消費者によるテスト(105件)ではニュージーランド人にはニュージーランドスタイルのソービニヨン・ブランが好まれることが有意に明らかとなった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/13

R.L. Hanlin and M.O. Downey: Condensed Tannin Accumulation and Composition in Skin of Shiraz and Cabernet Sauvignon Grapes during Berry Development. pp. 13-23.
[果実成熟におけるシラーおよびカベルネ・ソーヴィニヨン果皮中の重合タンニンの蓄積と組成]

ブドウに由来する重合タンニンはワインの渋味、苦味、色調の安定性およびに熟成能力に重要な役割を果たしている。ワイナリーの特徴としてタンニンを操作、管理するためのブドウ栽培戦略を展開するためには、果実の成熟を通して、栽培地域、品種、季節によるブドウ中のタンニン組成の変動を理解することが必要である。ブドウ果実中のタンニン蓄積および組成に関する最近の知見は、ブドウ種子のタンニンを調査している多くの研究とともに、単一品種、単一地域での結果をもとにしている。タンニン蓄積および組成の差異を探索するために、オーストラリア南東のサンレイシアで2シーズン、シラーおよびカベルネ・ソーヴィニヨン果皮を、フロログルシノール存在下で、酸分解し、分析を行った。果実成熟を通して、サブユニット組成、全タンニン量および重合度の測定には、液体高速クロマトグラフィーを使用した。タンニン蓄積および組成はいずれの品種およびシーズンでも類似しており、着果時期でタンニン量はもっとも多く、ベレゾーン期に向かって減少した。本研究で観察されたブドウ果皮のタンニン蓄積および組成のパターンは、南オーストラリアのマクラーレン・ヴェイルのより冷涼な土地で育てられたシラーで報告されたもの(タンニン量はベレゾーン期に最も多かった)と異なっていた。サンレイシアとマクラーレン・ヴェイルでのタンニン蓄積および組成の違いは、品種あるいはシーズンの違いよりも、タンニン組成により大きな影響を与える地域による影響であるかもしれない。地域間の相違を明らかにし、タンニン蓄積に影響するであろう環境因子を決定するためには、更なる研究が必要である。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/24

M. Krasnow, N. Weis, R.J. Smith, M.J. Benz, M. Matthews, and K. Shackel: Inception, Progression, and Compositional Consequences of a Berry Shrivel Disorder. pp. 24-34.
[Berry Shrivel 障害の発端、進行および成分分析]

Berry Shrivel(BS、果実にしわが寄る障害)はブドウの成熟障害であり、収穫前および収穫時に、果実にしわが寄る、可溶性固形物が少ない、という症状が出る。BSの果梗組織は緑のままで壊死していあにという点で、BSは房枯れ病(bunchstem necrosis)とは明らかに異なっている。BS果実は、ベレゾーン後までは通常の果実より幾分か硬かったが、その後通常の果実より速く軟らかくなった。ベレゾーン後のいずれの果実も可溶性固形物を増加させたが、目に見える症状が出現する数週間前に、BS果実は糖の蓄積を停止した。通常の果実に比べ、BS果実は水欠乏により果粒重が軽く、しわが寄るのと同時に中果皮細胞が減少し始めた。BS果実では果皮に含まれるアントシアニン蓄積が減少したが、収穫時の果皮のタンニン量は増大した。果実あたりの酒石酸およびリンゴ酸の量は収穫時でほぼ同量であったが、BS果実から得られた果汁のpHは、通常の果実に比べ低かった。BS症状を示した房を持つブドウ樹に生っているしわが寄っていない果実の糖含量、可溶性固形物含量、pH、アントシアニン含量および果皮タンニン含量は、BS果実と通常の果実との中間の値であった。この結果から、BS障害は、個々の房あるいは果実の障害というよりも、ブドウ樹全体の障害であることが示唆された。試験した1つの場所では、BSブドウ樹は通常のブドウ樹よりも常に弱い負の水ポテンシャルを示したが、他の場所では示さなかった。BSブドウ樹と通常のブドウ樹について、ウィルスおよびピアース病を引き起こす細菌Xylella fastidiosaの感染を調査したが、違いは認められなかった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/35

J. Ibanez, A.M. Vargas, M. Palancar, J. Borrego, and M. Teresa de Andres: Genetic Relationships among Table-Grape Varieties. pp. 35-42.
[テーブル・ブドウ種間の遺伝的相関]

テーブル・ブドウ種間の遺伝的相関を核および葉緑体DNAのマイクロサテライト分析により調査した。マルチプレックスPCR法を用いて、25の核DNAマイクロサテライト遺伝子座で376系統を分類した。遺伝子座における平均対立遺伝子数は9.96であり、遺伝子型が偶然一致する確率は1.66x10-21であった。遺伝子型、形態、そして文献データ間の比較により、異名、同名、材料の取り間違えなどを明らかにした。本研究において、Afus、Ali、Ahmerbou、Ahmer、Chasselas、Muscat of Alexandriaのような種のグループを明らかにした。交雑の方向性を明らかにするために、273系統を含む非重複の遺伝子型を用いて、文献データおよび葉緑体半数体DNAの解析とともに、テーブル・ブドウ種の解析を行った。多くの場合、これらの種を生じた交雑についての情報は、特にタネなし品種では、正しかった。それにもかかわらず、Cardinalといったいくつかの種は、記述されている、または文献で示唆されている交雑から生じていないようであり、他の親種が浮かび上がってきた。以前の情報が見つからない、または不完全である他の場合では、いくつかの種の遺伝的起源が解明された。例えば、Alphonse Lavallee、Admirable de Courtiller、Calmeriaの祖先を示唆した。尤度比による数値分析により、示唆された交雑の信頼性を確認した。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/43

J.F. Harbertson and E.D. Harwood: Partitioning of Potassium during Commercial-Scale Red Wine Fermentations and Model Wine Extractions. pp. 43-49.
[工業規模での赤ワイン発酵中およびモデルワイン抽出時におけるカリウムの分画]

ワシントン州コロンビア盆地の自根メルローブドウの果皮、種子、パルプのカリウム濃度を測定した。スキンコンタクト時間およびアルコールの終濃度を変えた工業規模(7,892 kg)での発酵試験を行った。処理区間を比較したところ、エタノール濃度が高いものやマセレーション時間を延長したものと比較して、コントロールでは有意にカリウム濃度が高かった。発酵期間中のカリウム濃度の経時変化を調べたところ、破砕後が最も高く、スキンコンタクト中に減少し、その後は一定となった(161日まで)。ブドウおよびパミスのカリウム濃度を比較すると、種子からのカリウムの溶出は微量であり、果皮では逆の現象が起こり、同時期にカリウムの吸着が認められた。ブドウ果皮からのモデルワインへの抽出実験では、カリウムの抽出はpHが低いほど増加し、果皮中のマイナスに荷電した多糖類へのイオン結合が原因であると考えられた。この説は、カリウム液中で果皮を浸漬した場合、ペクチナーゼを入れた方が、抽出が多くなることからも支持された。モデルワインへの抽出実験の結果、エタノールとカリウムの両濃度が果皮のカリウム抽出率を限定し、原料果実よりも果皮への吸着を高めることが示された。したがって、果皮中のカリウムを保持・増加させるためには、マスト/ワイン中やモデルワイン中のエタノールやカリウムの濃度が重要であることが示された。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/50

T. Yamane, K. Shibayama, Y. Hamana, and H. Yakushiji: Response of Container-Grown Girdled Grapevines to Short-Term Water-Deficit Stress. pp. 50-56.
[短期間の水欠乏ストレスに対するコンテナ栽培した環状剥皮ブドウ樹の反応]

葉CO2同化率(A)、気孔伝導度(gs)、蒸散速度(E)、葉の水ポテンシャル(ΨPD)および茎径の変動を調べることにより、水欠乏ストレスに対するコンテナ栽培した環状剥皮ブドウ樹の反応を調査した。灌水停止初期では、A、gsおよびEは、対照区のブドウ樹に比べ、環状剥皮ブドウ樹で低かった。Aおよびgsは、灌水停止後それぞれ4日後、5日後に減少した。ΨPDは、灌水停止後6日目に、対照区ブドウ樹で-1.13 MPa、環状剥皮ブドウ樹で-0.67 MPaであった。対照区ブドウ樹よりも環状剥皮ブドウ樹でより高い水ポテンシャルを示したことは、環状剥皮ブドウ樹では水消費量が低いことを示唆する。日中の茎の収縮度は対照区ブドウ樹よりも環状剥皮ブドウ樹で小さかった。環状剥皮により減った水消費量は、コンテナ内の土壌水分の枯渇を減少させ、環状剥皮ブドウ樹での高いΨPDおよびその結果として茎収縮の減少を引き起こした。環状剥皮と短期間の水欠乏ストレスとの組み合わせ処理は、葉の萎凋や翌シーズンにおいて新梢の成長抑制を引き起こさなかった。これらの結果は、ビニールハウス内のコンテナ内で栽培するという条件下での、水欠乏ストレス、特に短期間の強い水欠乏ストレス、に対する環状剥皮ブドウ樹の反応を示している。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/57

A. Bellincontro, I. Nicoletti, M. Valentini, A. Tomas, D. De Santis, D. Corradini, and F. Mencarelli: Integration of Nondestructive Techniques with Destructive Analyses to Study Postharvest Water Stress of Winegrapes. pp. 57-65.
[ワイン用ブドウに与える収穫後の水ストレス分析のための破壊検査による非破壊検査のための技術蓄積]

糖度21°Brixで収穫した赤Cesaneseブドウを手除梗し、穴をあけたプラスティックトレイに入れ、これを小さな通気トンネル中におき、10°C で1.5 m/秒、10°Cで2.5 m/秒、および20°Cで1.5 m/秒で通気した。相対湿度は45%であった。通気実験はブドウ重量が20%減少した時点、すなわち10°C 1.5 m/秒では26日後、10°C 2.5 m/秒では22日後、および20°C1.5 m/秒では16日後に終了した。糖濃度は24?25 Brixに増加した。低温化でより高速に通気をしたブドウから生産される二酸化炭素量は、通気が弱い、あるいは20°Cの場合に比べ常に高かった(~30%)。果実は処理にかかわらず、硬さを失い(変形率の増加)、色相角が増加し、彩度が減少した。高速通気の場合、20°Cで暗所放置した場合と磁気共鳴による中果皮のイメージは同じであった。エタノールをアセトアルデヒドにするアルコールデヒドロゲナーゼの分析では、20%の重量損失の場合、10°Cの場合に比べて20°Cでは有意に高い活性が認められた。傾向分析(F)では温度や風速においてストレスが異なることが示された。近赤外音響光学分光(NIR?AOTF)分析では、処理と重量損失により特異的な波長での吸収の変化が見られた。10°Cではポリフェノール量が有意に減少した。また20°Cではフラボノールとスチルベン類が増加し、20°Cでは水分ストレスが高いことが示唆された。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/66

T. Furiya, S. Suzuki, T. Sueta, and T. Takayanagi: Molecular Characterization of a Bud Sport of Pinot gris Bearing White Berries. pp. 66-73.
[白ブドウをつけるピノ・グリに起こった芽条変異分子機構の解明]

芽条変異は永年果樹の茎頂細胞で起こる体細胞変異である。我々は、ピノ・グリで認められた果皮の白色変異の分子機構を解明した。芽条変異したピノ・グリの果皮では、アントシアニンの蓄積も、UFGT (UDP glucose-flavonoid 3-o-glucosyl transferase)遺伝子の発現も認められなかった。VvmybA遺伝子クラスターの両サイドに存在するCAPS(cleaves amplified polymorphic sequence)遺伝子マーカーを用いた解析により、芽条変異したピノ・グリは赤色果皮に関与する対立遺伝子を1つと白色果皮に関与する対立遺伝子2つをヘテロで有すことが明らかとなった。しかしながら、赤色果皮に関与する対立遺伝子には大きな欠損が起こっており、その結果、果皮の白色変異が引き起こされていた。加えて、マイクロサテライト解析により、芽条変異したピノ・グリの果皮は1遺伝子座あたり3つの対立遺伝子を持つことが明らかとなった。これは、芽条変異したピノ・グリの果皮は遺伝的に異なるL1およびL2細胞層を持っていることを示唆する。以上の結果から、我々は、今回調査したピノ・グリの芽条変異は果皮のL1細胞層の赤色果皮に関与する対立遺伝子に大きな欠損が入ったことによって起こったものであり、L1細胞層とL2細胞層との転移で起こったわけではないと結論付けた。これらの知見および芽条変異の更なる解析は、白色変異を引き起こす遺伝子変異に新しい情報を与えるとともに、ブドウ栽培の歴史に対する我々の理解を深めることであろう。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/74

F. Cosme, J.M. Ricardo-da-Silva, and O. Laureano: Effect of Various Proteins on Different Molecular Weight Proanthocyanidin Fractions of Red Wine during Wine Fining. pp. 74-81.
[赤ワイン清澄化中の種々の分子量のプロアントシアニジン画分における各種タンパク質の効果]

平均重合度1.5 (FI)、3.4 (FII)、4.9 (FIII)のプロアントシアニジン画分に対するタンパク質の影響を調べた。カゼインとカゼインカリウム塩は同じ分子量分布を示したが、カゼインはカゼインカリウム塩の2倍FI画分を効果的に減少させた。中程度分子量多分散性ゼラチンはすべてのタンニン画分において同程度(~20%)の減少を示した。低分子量ゼラチンは主として低い平均重合度(FIおよびFII)のタンニンフラクションを除去したが、高分子量のゼラチンは高重合度画分に対する影響が少なかった(5%)。分析に用いた2種のアイシングラス(魚類ゼラチン)はFII画分を減少させた。FIおよびFIII画分は浮き袋由来のアイシングラスが魚皮由来のものより2倍効果的に除去した。清澄化したワインの場合、卵アルブミンはFIII画分において平均重合度を24%下げたが、全体の測定では6~14%の減少であった。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/82

RESEARCH NOTE:
V.P. Saxton, G.L. Creasy, A.M. Paterson, and M.C.T. Trought: Behavioral Responses of European Blackbirds and Australasian Silvereyes to Varying Acid and Sugar Levels in Artificial Grapes. pp. 82-86.
[人工的に作成したブドウ果実中の酸および糖濃度の変化に対するクロウタドリおよびハイムネメジロの行動評価]

酸濃度の減少は、収穫に近づくにつれ増加する鳥の被害を導く原因の一つであると長い間考えられてきた。酒石酸およびリンゴ酸の濃度を変え人工的に作成したブドウ果実(糖および他の果実成熟時の成分を一定に調製した)を、クロウタドリ(Turdus merula)およびハイムネメジロ(Zosterops lateralis)に野外で提供した。いずれの鳥においても、酸濃度の変化に対し果実の消費量には直線的な相関は認められなかった。糖濃度を上昇すると反応は認められたが、成熟果実中の酸濃度の減少は、収穫時期の鳥の被害を増加させる要因ではないのであろう。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/87

RESEARCH NOTE:
M.R. Steele, A.A. Gitelson, D.C. Rundquist, and M.N. Merzlyak: Nondestructive Estimation of Anthocyanin Content in Grapevine Leaves. pp. 87-92.
[ブドウ葉中のアントシアニン含量の非破壊的評価]

葉中のアントシアニン含量は植物の生理的状態について価値のある情報を提供する。生化学的パラメーターを評価するために、正確で、効率が良く、且つ実用的な方法が必要である。反射率の測定は、葉中のアントシアニン量を評価するための迅速且つ非破壊的な手段である。本研究の目的は、ブドウ葉中のアントシアニン含量を評価するために、非破壊的手法の能力および精度をテストすることである。アントシアニンン濃度と4つの植生指標であるNIR(近赤外/緑比)、赤/緑比、ARI(アントシアニン反射指標)およびMARI(ARIの改変法)間の相関関係を証明した。アントシアニン含量のためのアルゴリズムを補正した。Saint CroixおよびSaint Pepinの2品種から収集した葉を独立した実験に使用し、初期補正後変数調整をしない条件下で、推定アントシアニン含量の精度を評価した。確認試験中のアントシアニン含量は3~45 nmol/cm2 とばらつきが認められたが、ARIおよびMARIアルゴリズムは、それぞれ3 nmol/cm2 および 2.3 nmol/cm2 の二乗平均平方根誤差で、正確にアントシアニン含量を推定することが可能であった。このアプローチは、アントシアニン含量を非破壊的に正確に測定するため、およびブドウ畑の管理に関わる決定事項を補助するため、航空あるいは衛星データを分析する手で持ち運べる小型機器の開発につながる可能性がある。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/93

RESEARCH NOTE:
L. Rolle, F. Torchio, G. Zeppa, and V. Gerbi: Relationship between Skin Break Force and Anthocyanin Extractability at Different Ripening Stages. pp. 93-97.
[異なる成熟段階における果皮破砕力とアントシアニン抽出度との相関]

2つの異なる成熟段階において、果皮の硬さが異なるブドウからアントシアニンを抽出する際の抽出度を評価した。果皮の硬さは、迅速且つ低価格技術であるテクスチャ解析により評価した。異なる濃度の塩水にBrachetto種のブドウ果実を浮かべることにより、補正を行った。果皮の硬さは、パンクチャ衝撃試験により計測した。各成熟段階で、異なる果皮の硬さをもつ果実を2グループに選抜した(ソフト < 0.40 N、ハード > 0.50 N)。果皮からのアントシアニン抽出は、アルコール水溶液中で調べ、果皮の溶解動態を計測した。各成熟段階において、硬い果皮のほうが高いアントシアニン抽出度を示した。抽出液中に存在するアントシアニン組成において、成熟段階と果皮の硬さの間に有意な相関関係が認められた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/98

RESEARCH NOTE:
S.I. Sheppard, M.K. Dhesi, and N.J. Eggers: Effect of Pre- and Postveraison Smoke Exposure on Guaiacol and 4-Methylguaiacol Concentration in Mature Grapes. pp. 98-103.
[成熟ブドウ中のグアヤコールおよび4-メチルグアヤコール濃度に及ぼすベレゾーン前後での煙処理の影響]

ベレゾーン前、ベレゾーン後および成熟期に、ポンデローサ松を燃やして発生させた煙を、シャルドネ、メルローおよびピノ・グリの果実に処理した。グアヤコールと4-メチルグアヤコール量は、安定同位体比測定法により、成熟後収穫したブドウから計測した。グアヤコールおよび4-メチルグアヤコールはともに煙処理の間にブドウに吸収され、ブドウの収穫後も残存した。検出限界以上の濃度を持つ煙処理ブドウのグアヤコール量とグアヤコールと4-メチルグアヤコール比との間に、正の相関関係が観察された。グアヤコール濃度は2~26 μg/Lの範囲内であった。これらのブドウからグアヤコールの閾値を超えているワインを作ることができ、その濃度はオークとの接触で生じる濃度と同じオーダーであった。1時間の煙処理は結果としてワインのセンサリーの評価に影響を与えるであろう。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/104

RESEARCH NOTE:
E. Wegscheider, A. Benjak, and A. Forneck: Clonal Variation in Pinot noir Revealed by S-SAP Involving universal Retrotransposon-Based Sequences. pp. 104-109.
[レトロトランスポゾン配列を利用したS-SAP法により示されたピノ・ノアールのクローン差異]

レトロトランスポゾン配列を利用したS-SAP(sequence-specific amplified polymorphism)法により、ピノ・ノアールのクローン解析を行った。5つのクローン(20Gm、1-44Gm、18Gm、20-13Gm、1-84Gm)を30組のS-SAPプライマー(5つの MseI および6つのレトロトランスポゾンプライマー)を用いて解析した。全体で670のマーカーが認められ、4.8%のクローン間差異から、5つのクローンのうち4つは区別することが可能であった。このS-SAP法は、ブドウゲノムに挿入されたレトロトランスポゾンから生じる多型をランダムに選抜するのに効果のある方法である。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/110

RESEARCH NOTE:
M. Muganu, G. Dangl, M. Aradhya, M. Frediani, A. Scossa, and E. Stover: Ampelographic and DNA Characterization of Local Grapevine Accessions of the Tuscia Area (Latium, Italy). pp. 110-115.
[トゥーシア地方(イタリア ラツィオ州)のブドウのブドウ分類学的およびDNAレベルでの特徴づけ]

イタリア、ラツィオ州トゥーシア地方に存在するブドウは、歴史的資料にも記載されている。この地方のブドウとして最も頻繁に記述されている系統について、ブドウ分類学的および分子レベルでの特徴づけ(35の形態および16のマイクロサテライト遺伝子座)を行った。SSRマーカーは異名のブドウを識別することが可能であった。また、以前報告されているマイクロサテライトのプロファイルと比較でき、他のブドウとの分岐を示すことが可能であった。ブドウ分類学的特色として、同じ遺伝的型をもついくつかの系統間では、クローン評価に役立つであろう微妙な特徴が異なっていた。

英文要旨原文 http://ajevonline.org/cgi/content/abstract/60/1/116

RESEARCH NOTE:
G. Masson and R. Schneider: Key Compounds of Provence Rose Wine Flavor. pp. 116-122.
[プロヴァンス地方のロゼワインのフレーバーに特徴的な化合物]

プロヴァンス地方のロゼワインのフレーバーに関するガスクロマトグラフィーおよび官能検査を用いた詳細な研究をロゼワイン研究センターで実施した。本研究では種々の発酵および品種由来の揮発性化合物の嗅覚寄与について調べた。アロマ除去およびフレーバー再構成実験の結果、エチルエステル類および高級アルコールのアセチル体が、分析が容易で果実香でアミル様なロゼワインの香りとして重要であることが分かった。さらに他のタイプのワインにおいて良く知られている品種香化合物について調べたところ、ロゼワインのカギとなるいくつかの化合物を同定できた。すなわち2つの揮発性チオール(3-mercaptohexanolおよび3-mercaptohexyl acetate)、2つのフラン化合物(furaneolおよび homofuraneol)、そしてC13ノルイソプレノイド(β-damascenone)である。これらの化合物はロゼワインセンターでは通常測定しているものであり、ブドウ樹の開発やロゼワイン製造における評価手法での品質指標として使われている。

一覧に戻る
ページトップ